第34話 え、パパが勇者!? 床が光って撃ってくるんだけどー!? 恐怖のタイルと必死のモグラ叩き
第六階層
セーフティゾーンを抜け、神崎家は階段をゆっくりと降りていった。
第五階層の温もりが遠ざかり、代わりにひんやりとした空気が肌を撫でる。
亮「おお……なんか雰囲気変わったな」
あんな「綺麗に並んでるね。でも、なんか嫌な予感する」
みゆ「タイルのサイズ、約30センチ角。人工的な幾何学模様」
もっふる「ピィ……?」
まるで巨大なチェス盤のような通路だった。
白と灰色のタイルが一直線に続き、奥には薄暗い空間が広がっている。
亮「なんかゲームみたいだな! こういうのワクワクする!」
あんな「パパ、フラグ立てないで……」
みゆ「注意。この配置……何かが起きる前兆」
もっふる「ピィッ!」
その瞬間――
ピカッ。
亮「ん? 今、床光らなかった?」
あんな「え? どこ?」
みゆ「右前方のタイル。光度上昇……」
ズドォォォンッ!
亮「ぎゃあああああああああああああああ!」
光の魔法が一直線に飛び、亮の足元をかすめた。
あんな「パパ!?」
みゆ「攻撃……!タイルが魔法を撃ってきた__⁉」
亮「ちょっ……なんで!? 床が攻撃してくるの!?」
もっふる「ピィーー!」
次は左前方のタイルが光りだす
ピカッ。
ズドォォォンッ!
亮「うわあああああああああああああああ!」
あんな「パパ、避けて!」
みゆ「光ってから攻撃まで約5秒。パターン化されてる」
亮「そんな冷静に言われても無理だって!」
タイルがまた光る。
ピカッ。
ズドォォォンッ!
亮「ぎゃああああああああああああああああああ!」
あんな「なんで攻撃が、パパにしか飛んでこないの……?」
亮「知らんがなぁぁぁぁぁ!」
みゆ「……鑑定」
みゆの目が淡く光る。
みゆ「タイル型魔物『トラップ・フロア』。遠距離攻撃は無効。魔法も弓も効かない。物理的な衝撃のみを受け付ける。……つまり、光った個体を5秒以内に叩けば沈黙する」
亮「えぇ!? 魔法効かないの!?」
みゆ「完全に無効」
あんな「じゃあ……叩くしかないってこと?」
みゆ「モグラ叩きの要領。光ったタイルを叩くと倒せる。5秒以内に叩かないと光の魔法で攻撃される」
亮「5秒って短いよ!しかも光の魔法!?そんなの聞いてない!」
みゆ「今、言った」
亮「言うの遅いよぉぉぉ!」
あんな「パパ、何で叩くの?ハンマーないよ?」
亮「え?じゃあ……剣で叩けばいいんじゃない!?」
みゆ「剣でも可。耐久値は……まぁ、なんとかなる」
亮「なんとかって何!?」
タイルが光る。
ピカッ。
あんな「パパ! 右前!」
亮「うおっ!? ちょっ、待って待って!」
亮は慌てて、剣を地面に思い切り叩きつけた。
ガンッ!
タイルが砕け、光が消える。
亮「よし! 倒した!」
タイルが光る。
ピカッ。
みゆ「パパ次、左後方。」
亮「左後方?無理無理無理!」
あんな「パパ、頑張って!」
もっふる「ピィー!」
亮「うわああああああああ!」
ガンッ!
なんとか叩き潰す。
しかし――
ピカッ、ピカッ。
みゆ「二つ同時!右とその前!」
亮「二つ!? 無理だって!」
あんな「パパならできる!」
亮「根拠のない信頼やめてぇぇぇぇ!」
亮「うわあああああああああああ!」
ガンッ! ガンッ!
なんとか両方叩き潰す。
亮「はぁ……はぁ……死ぬ……」
みゆ「まだ終わってない。次、後方」
亮「後ろ!? なんで後ろ!?」
あんな「パパ、振り返って!」
亮「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
ガンッ!
もっふる「ピィー!」
亮「……終わった?」
みゆ「まだ続く。通路は一直線。あと10数メートル」
亮「まだあるの!? 俺もう無理……」
ピカッ、ピカッ、ピカッ。
あんな「パパ、次光った!」
みゆ「右前、左前、後方……三つ同時」
亮「三つ!? 無理無理無理無理!」
もっふる「ピィーー!」
亮「もっふるまで焦らせないでぇぇぇ!」
ガンッ! ガンッ! ガンッ!
亮「はぁ……はぁ……はぁ……」
みゆ「パパ、あと少し」
あんな「頑張って!」
もっふる「ピィ……」
そして――
最後のタイルが光る。
ピカッ。
あんな「パパ、最後!」
みゆ「5秒以内に叩けばクリア」
亮「うおおおおおおおおおおおお!」
ガンッ!
タイルが砕け、通路全体が静寂に包まれた。
みゆ「……クリア判定。敵反応なし」
亮「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
あんな「パパ、お疲れさま!」
もっふる「ピィ♪」
亮「俺……今日だけで寿命10年縮んだ気がする……」
亮は膝に手をついて息を整える。その時――
カコンッ。
通路の中央に、宝箱が現れた。
亮「おおっ! 宝箱だ!」
あんな「開けてみよう!」
みゆ「罠は……なし。安全」
亮はその前に立ち、軽く腕を回した。
亮「よ〜し、それじゃあ――いざ、オーーープン!!!」
パカッ。
中には、ずっしりとした鉄製のハンマーが入っていた。
亮「……ハンマー?」
あんな「これって……」
みゆ「モグラ叩き専用武器。推奨装備」
亮「今更!? 俺、剣で頑張ったのに!?」
あんな「パパ……」
みゆ「効率の悪い戦い方、お疲れさま」
もっふる「ピィ♪」
亮「いやいやいや!もっと早く出してよーー!」
あんな「でも……パパの叩き方、ちょっと面白かったよ?」
みゆ「データ的には、パパの動きは“必死の舞”だった」
亮「舞!? 俺、踊ってたの!?」
もっふる「ピィー♪」
亮「笑うなぁぁぁぁぁ!」
家族の笑い声が、タイルの通路に響いた。
亮はふと気づいたように顔を上げた。
亮「ところで、一人で叩かないといけなかったの?」
みゆ「そんなルールは存在しない」
亮「え?そうなの⁉」
あんな「まあまあ、パパの運動不足解消になったということで……!」
もっふる「ピィ♪」
亮「そんなぁーーーーー!」
こうして――
第六階層のギミックダンジョンを突破した神崎家は、
新たなハンマーを手に、さらに奥へと進んでいく。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)、
ダンジョンは今日も容赦なく彼を振り回すのだった。
モグラ叩きでボロボロになったパパを待っていたのは、赤と青の『温度調整』地獄!? 一匹倒せば灼熱、もう一匹倒せば極寒……。
パパのうかつな一撃が、神崎家を異常気象に巻き込む!
次回、第35話『え、パパが勇者!? 一匹で灼熱!? 属性の天秤ー!?』。
姉妹の完璧な連携と、パパの空回りにご期待ください!




