第31話 え、パパが勇者!? 同時攻撃したら魔法だけ跳ね返されたんですが――!? 魔法反射スライムにパパ悲鳴!
第三階層
階段を降りきった先の通路は一直線だった。
天井は高く、壁や床はつるりと滑らかで、淡い光が全体を照らしている。
歩くたびにコツ、コツと心地よい音が響いた。
亮「おー、明るいな。第二階層と全然雰囲気違うぞ」
あんな「さっきとは全然違うね!」
もっふる「ピィー♪」
その時、あんながハッと気づいたように声を上げた。
あんな「あれ?第二階層で、パパの“定番フラグ”何も起きなかったね!」
みゆ「統計的に見ても、かなりの例外!」
亮「おっ、フラグは存在しないということが証明された⁉」
あんな&みゆ「それはなーーい!」
あんな「それは単に、もっふるが全部先に片付けてたから」
みゆ「察知、進路選択、妨害、殲滅。第二階層のトラブル要素、全部事前処理」
あんな「つまり、パパのフラグより、もっふるの方が優秀って証明されたね」
亮「そっちかーー!」
もっふる「ピィー♪」
通路の奥から「ぽよん……ぽよん……」と奇妙な音が反響してきた。
あんな「よし、じゃあ今回は――」
一歩、前に出て剣を構える。
あんな「みゆ、一緒にいくよ!」
みゆ「了解!」
現れたのは、第一階層のものより一回り大きく、クリスタルのように硬質な輝きを放つ、淡い青紫色のスライムたち。
その体は、鏡のように周囲の景色を映し出している。
あんな「……来るよ! みゆ」
みゆ「了解。全弾、叩き込みます」
二人は息を合わせて前へ出た。
あんなが風を切って飛び込み、それと同時にみゆが杖を突き出した。
みゆ「《チェイン・フレア》(連鎖火球)」
五発の火球が螺旋を描き、スライムの群れへ着弾する――はずだった。
――ポヨヨンッ!
火球がスライムの表面に触れた瞬間、パチンと不気味な音を立てて、すべての魔法が180度反転した。
亮「えっ? あれ、こっちに来てな――ぎゃああああっ!?」
弾け飛んだ火球は、後方で観戦(?)していた亮を目掛けて一直線!
ドゴォォォンッ!!
亮「熱い熱い! 尻が! 尻が燃えるぅぅぅ!」
あんな「なんで魔法が反射してんのよ!」
みゆ「……魔法無効化じゃなくて……完全反射。私の魔法、すべてがパパへの凶器に変換されます」
亮「そんな恐ろしい変換あるの!? 冷静な分析はいいから杖を下ろして! 」
スライムたちは、自分たちが最強の盾を持っていることを理解しているのか、ぷるぷると小刻みに震えながら、亮を追い詰めるように距離を詰めてくる。
みゆ「……テスト。二発目」
亮「テストすなーーーっ!!」
ポヨンッ!
亮「ひゃああっ!? 今度もこっちに帰ってきた――!」
みゆ「確定。魔法無効じゃなくて……反射タイプだね」
あんな「魔法がダメなら、私の出番だね! 」
みゆ「……了解。お姉ちゃん、殲滅を任せます」
もっふる「ピィー!」
あんなは剣を握り直し、前へ出た。
鋭い踏み込みと共に放たれた一閃。
魔法を弾き返したはずの鏡のような体躯が、あんなの物理的な一撃には無力だった。
――パリンッ!
ガラスが割れるような音を立てて、一体のスライムが霧散する。
みゆ「魔法耐性はあるけど、物理防御は普通のスライムと同じ」
亮「なるほど……みゆには厳しいけど、あんなには優しい階層ってことか!」
あんな「そういうことだね」
亮「あんな……! お前、マジで頼もしいよ……!」
あんな「パパ、泣いてないで避けて! ほら、右から一匹来てる!」
亮「わ、わわっ! とうっ!」
狭い通路を縦横無尽に駆け抜け、流れるような剣筋で次々と青紫の影を断ち切っていく。
最後の一体が消えると、通路の中央が淡く光り、宝箱が現れた。
亮「……死ぬかと思った。このダンジョン、俺に厳しすぎない?」
みゆ「……定番フラグ、しっかり回収完了。お疲れ様でした」
亮「お、宝箱だ。気を取り直して!」
軽く腕を回し、
亮「よ〜し、それじゃあ――いざ、オーーープン!!!」
(カチャ)
中には、回復薬が整然と並んでいた。
亮「おおーありがたい!」
みゆ「普通なら、ここで消耗する階層だったってことね」
あんな「魔法が効かないから、回復薬を用意してくれてるんだ」
みゆ「在庫的に、ちょうどいいです」
もっふる「ピィ♪」
こうして――
第三階層は、見事な役割分担で切り抜けた神崎家ともっふるだったが、
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
次の階層で、その“当たり前”が静かに揺さぶられることになるのだった。
順調に階層を重ねる神崎家を待っていたのは、まさかの物理攻撃完全無効スライム!?
剣がポヨンと跳ね返され、絶体絶命のパパが下した決断は……『全員で全力疾走』!?
次回、第32話『え、パパが勇者!? 第四階層はスライム増殖で家族全力疾走!』
走って、避けて、魔法で焼く! 息切れ必至の迷宮攻略が始まります!
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パパが調子にのりますけど、私たちが止めまーす⁉
もっふる「ピィー♪」




