第30話 え、パパが勇者!? 第二階層は“頼れる仲間”が多すぎる!? 暗闇迷路をもっふるが完全攻略!
第二階層
階段を下りるごとに、背後の光が遠ざかっていく。
一段、また一段。最後の一段を踏みしめたとき、世界から「色」が消えた。
しん……と静まり返った通路に、足音だけが響いていた。
亮「おー真っ暗。ここから難易度上がるやつ。これぞ――定番のダンジョン展開だな!」
あんな「パパ、その“定番”ってだいたい事故の前触れだよ?」
みゆ「統計的にも、定番発言後のトラブル発生率は高いね」
もっふる「ピィー!」
あんな「それにしても暗いね!みゆ、お願いできる?」
みゆ「お姉ちゃん、任せて!……《ライト》……」
みゆが杖を掲げるが、小さな火花が散るだけで、光の球は形を成さずに消えた。
あんな「どうかした?」
みゆ「……魔法無効化階層、ここでは、魔法が封じられてる」
あんな「嘘でしょ!? この闇の中を勘だけで進めってこと!?」
亮「これぞダンジョンの醍醐味……」
あんな「パパ、そんなこと言ってる場合?」
もっふる「ピィ!」
その時だった。
少し先の闇の中で、ふわりと淡い、青白い光が灯った。
スライムが、その透き通った体全体をぼんやりと輝かせながら、ぴょん、と跳ねている。
あんな「光るスライム……?」
みゆ「発光型。数秒ごとに点灯」
光は一定ではない。
場所によって、光っている時間も、暗い時間もバラバラだ。
亮「なんだろうな。光ってる間なら、行けそうな気が――」
亮が一歩踏み出す。
――その瞬間。
スライムの光が、消えた。
同時に、周囲が再び完全な暗闇に沈む。
その瞬間だった。
――シュッ!
闇を切り裂くような鋭い風切り音。
亮「ぶふぉっ!?」
バンッ!
と何かが亮の顔面にクリーンヒットした。
亮「痛っ、冷たっ!? なんだ今の、誰か投げた!?」
あんな「パパ!? 大丈夫!?」
亮の叫び声が、ダンジョン内に響く。自分の声が、何重にもなって返ってくる。
拳ぐらいのサイズのスライムが、どこからともなく飛び出し、亮の顔にぶつかっていた。
痛みはそれほどでもない。だが、身体の奥から、どっと力が抜ける感覚。
亮「……なんか変な感じが……」
あんな「パパ!?」
再び、先で光るスライムが跳ねる。
攻撃してくる様子はない。ただ、光って、跳ねているだけ。
みゆ「通常時は非攻撃性。光っている間は安全」
あんな「じゃあ、さっきのは……」
みゆ「光が消えている間に動くと、闇に潜む『守護個体』が飛んでくる」
亮「どっから!?」
みゆ「……発生源不明。回避不能の必中攻撃」
この階層内のどこからか、悲鳴が聞こえてくる。
???「キャーーー!!」
???「ギャァァァ!!」
???「もう帰るー!!」
迷路のどこか。
遠くの闇から、他の冒険者たちの悲鳴が木霊する。姿の見えない敵に翻弄される恐怖が、迷宮の空気を冷たく支配していた。
あんな「精神削りに来てるわね……」
みゆ「攻撃力は低いけど、確実に心を折る!」
亮は深呼吸して、もう一度光るスライムを見据える。
――ぽう。
光る。
――消える。
亮「……タイミング、むずっ」
あんな「……どうしよう、どっちが右か左かも分からなくなってきた……」
進もうとしては止まり、止まっては進む。
三人とも、無駄に動いてしまい、何度も冷たい一撃を受ける。
亮「よし、慎重に……あいたっ!」
あんな「きゃっ! また来た!」
みゆ「……想定より周期が不規則」
三人が暗闇の恐怖に飲み込まれそうになった。
そんな中――十字路に差し掛かった。
左右どちらも同じ暗さで、通路の形もほとんど変わらない。
亮「どっちだ……?」
一歩進むだけで、戻ってこられなくなりそうな気配があった。
亮「よし、左だ!」
もっふる「ピィッ!」
次の瞬間、もっふるは光るスライムの点滅に合わせて右へ進む。
その動きには迷いがなく、まるで“正解の道”を知っているかのようだった。
あんな「もっふる?」
亮「え、そっち?」
あんな「道案内してくれるの?」
もっふる「ピィ!」
光っている瞬間だけ、迷いなく歩みを進め、
光が消える直前に、まるで彫像のようにピタリと足を止める。
再び光る。
また、進む。
あんな「……え? もっふる、一度も撃たれてない?」
みゆ「……完璧。点滅の周期、スライムの配置、すべてを完全に読み切ってる」
もっふるの動きに合わせて進むと、スライムは一切飛んでこなかった。
光っている時に進む。
暗い時は、待つ。
迷路は複雑で、何度も分岐が現れた。
だが、もっふるは迷うことなく「光の道」を選び出し、三人を導いていく。
光るスライムの配置と点滅の周期を読み、安全な方向だけを選んで進んでいく。
あんな「もっふる、すごいわ……」
亮「頼もしすぎる相棒だな……」
そして、ついに。 最後の光るスライムを越えた瞬間、重苦しい闇がスッと晴れ、柔らかな光に満ちた小部屋に辿り着いた。
亮「はぁぁ……助かった……」
あんな「もっふる、ありがとう!」
みゆ「あなた本当に天才!」
もっふる「ピィ♪」
中央には、ひとつの宝箱。
亮「……クリア?」
あんな「みたいね」
みゆ「戦闘なし。精神消耗型ギミック階層」
もっふる「ピィ♪」
亮はその前に立ち、軽く腕を回した。
亮「よ〜し、それじゃあ――いざ、オーーープン!!!」
宝箱を開けるとランタンが入っていた。
あんな&みゆ「……」
亮「ランタン……?」
あんな「暗闇階層、だから……?」
みゆ「今更?」
亮「最初に欲しかった……!」
もっふる「ピィ♪」
こうして――
暗闇迷路ダンジョンで、もっふるに導かれながら第二階層を突破した神崎家。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
もっふるの「ピィ♪」とともに次の階層へ向かう――。
第二階層をもっふるの無双(?)で切り抜けた神崎家が次に挑むのは、つるつるピカピカの第三階層!
余裕のあんなとみゆでしたが、放った魔法がまさかの反射……!?
逃げ惑うパパと、もっふるに負けじと奮闘する姉妹の活躍にご注目!
次回、第31話『え、パパが勇者!? 同時攻撃したら魔法だけ跳ね返されたんですが――!?』
神崎家の連携が試されます!




