第28話 え、パパが勇者!? ダンジョン初挑戦は朝から波乱!? 厄介なCランクパーティと一触即発!?
まだ日が昇りきらない時間、亮はやたら元気だった。
亮「よーし! ダンジョンに向かうために、まずは買い出しだー!」
あんな「……朝からテンション高いね、パパ」
みゆ「統計的に、パパがテンション高い日はトラブル率が上がる」
亮「え、そうなの?大丈夫だよー!」
もっふる「ピィー」
亮が宿屋の扉を勢いよく開け、勝手に先へ歩き出す。
あんなとみゆは顔を見合わせ、ため息をつきながら後を追った。
もっふるは跳ねるように先導し、道具屋の看板が見えてくる。
道具屋に入ると、亮は勢いよく棚を指さした。
亮「回復薬、全部――!」
あんな「いややめよ。買い占めは迷惑だよー」
みゆ「必要な分だけで十分。“全部買う=強い”っていうパパの思考は非効率」
亮「ぐっ……正論……!」
もっふる「ピィ!」
必要な道具をそろえ、王都近郊のダンジョンへ向かう。
そして――
巨大な石造りの入口が姿を現した。
亮「おお……これがダンジョン……! テンション上がってきた!」
あんな「パパ、落ち着いて!」
みゆ「入口でテンション上がる人、初級冒険者あるある」
亮「いやいや、ワクワクするでしょ!」
もっふる「ピィ♪」
亮「よし! じゃあ――」
そんな時だった。
「……おい」
低く、威圧的な声が背後から響く。
振り返ると、赤を基調とした装備の一団が立っていた。
胸元には、燃え上がる輪の紋章。
大盾を背負った筋骨隆々の男性――ガルド・ヘインズ。
その隣には、剣を腰に下げた若い男性、レオン・バルクス。
そして――
その後ろから、三人の女性が並んで歩いてくる。
剣士のセリナ・フェルド。
魔法使いのリュシア・ノアール。
ヒーラーのミレイア・クロウ。
ガルドが一歩前に出る。
ガルド「俺たちはCランクパーティ《紅蓮の輪》だ」
穏やかな口調だったが、その目には明らかな"値踏み"の色があった。
亮「おお!紅蓮の輪の人たち!よろしくお願いします!」
ガルド「ここは俺たち《紅蓮の輪》が先に入る。 Fランクは後だ」
亮「え? そうなの?俺たちEランクになったのだけど……」
ガルド「EでもFでも一緒だ!」
亮「いやいや、一緒じゃないよ……」
みゆ「雑な分類」
あんな「それにランクで順番決まってないよね?」
みゆ「ギルド規約上、先着順。C級だから優先、という条項は存在しない」
ガルド「チッ……」
横から、剣士の男――レオンが困ったように口を挟む。
レオン「まあまあ、別に急がなくても――」
「レオン、黙って」
冷たい声で遮ったのは、女性剣士セリナだった。
セリナ「Fランクが中で邪魔になると困るの。 命も、ね?」
その隣で、魔法使いのリュシアが微笑む。
リュシア「ダンジョンは危険なのよ?…“運が悪い”と、入口で事故もあるし?」
ヒーラーのミレイアは、何も言わずに冷ややかな視線を送る。
亮「えーっと……Eランクなんだけど」
あんな「パパ……」
みゆ「典型的な“威圧型マウンティング”。実力誇示による排除行動ね」
もっふる「ピィ……」
亮は首をかしげて、にこっと笑った。
亮「じゃあ、どうぞ先に入ってください!」
ガルド「……は?」
亮「俺ら、ゆっくりでいいので!」
セリナ「……調子狂うわね」
リュシア「ふふ、物分かりがいいのは嫌いじゃないわ」
《紅蓮の輪》は、そのままダンジョンの中へ入っていく。
去り際、ガルドが振り返る。
ガルド「中で会っても、助けは期待するなよ」
亮「はーい!」
姿が見えなくなった後。
あんな「……パパ、今の絶対絡まれるよ」
みゆ「確率は高い。 “中で再遭遇イベント”発生率、八割」
亮「えぇ……?」
もっふる「ピィ♪」
「……あー……」
近くで準備をしていた中年の冒険者が、気まずそうに頭をかいた。
中年冒険者「気にすんなよ。あいつら、ああいう連中だから」
亮「え、そうなんですか?」
中年冒険者「実力はある。C級なのも伊達じゃねえ。でも……」
あんな「でも……?」
中年冒険者「評判は、あんまり良くねえな」
別の冒険者――軽装の女性が、小声で続ける。
女性冒険者「弱い相手には強気で、ランクが上の人たちには妙に大人しいタイプ」
みゆ「……典型的な選別行動」
中年冒険者「中でパーティが崩れた時、“見捨てた”って話も聞く」
亮「えっ、それは……」
中年冒険者「だからよ。あいつらと一緒になったら、気を付けろ」
あんな「ご忠告、ありがとうございます」
女性冒険者「Fランクでも、あ、今はEランクか、あんたたち、空気がいいからさ」
亮「空気?」
女性冒険者「変にピリピリしてないって意味」
もっふる「ピィ♪」
女性冒険者「巻き込まれないようにしてね」
亮「……はい!ありがとうございます」
冒険者たちがそれぞれ準備に戻る。
あんな「パパ、聞いた?」
みゆ「要注意パーティ、確定ね!」
亮「ま、でもさ。俺たちは俺たちで、ゆっくり行こう。ダンジョンは逃げないしな」
あんな「……パパならそう言うと思った」
みゆ「予測通り」
もっふる「ピィ♪」
こうして――
静かに口を開けた巨大ダンジョンの前で、
神崎家と《紅蓮の輪》、それぞれ別の思惑を胸に刻みながら、同じ闇へと足を踏み入れることになる。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
まだ足を踏み入れてもいないダンジョンの前で、静かに不穏な気配を孕み始めていた――。
ついにやってきた神崎家のダンジョン初挑戦!
第一階層で待ち受けていたのは、お約束のスライムと……これまたお約束の『宝箱の罠』!?
パパの不注意で大ピンチかと思いきや、まさかの勇者覚醒(?)が炸裂します。
次回、第29話『え、パパが勇者!? 第一階層はスライムと宝箱の罠だらけ!?』。
神崎家の賑やかな冒険、ここからが本番です!




