第23話 え、パパが勇者!? 帰還後、父が語った“力の正体”は言葉にできないものだった⁉
朝の光が、静かに部屋へ差し込み、
鳥の鳴き声と、台所から漂うスープの香りが部屋を満たしていた。
亮「……うん、もう朝か」
体を起こす。昨日とは違い、力がしっかりと入る。
隣のベッドでは、みゆの穏やかな寝顔があった。
あんな「おはよう、パパ」
椅子に座っていたあんなが、ほっとした笑みを浮かべた。
亮「おはよう。……あんな、徹夜しただろ」
あんな「ちょっとだけね。パパがまた無茶しないか見張ってただけ」
もっふる「ピィー♪」
口では呆れたように言いながら、その表情は優しい。
みゆもゆっくりと目を開ける。
みゆ「……おはよう」
亮「おう。無理するなよ」
もっふる「ピィ♪」
顔を見合わせると、自然と微笑みがこぼれた。
宿の一階で出された朝食は、いつものパンとスープだった。
亮「……うまいな」
あんな「普通のスープなんだけどね」
みゆ「疲労回復による味覚補正、かな」
亮「よし、食べたらギルドに報告だな」
あんな&みゆ「そうだね」
食後、身支度を整え、ギルドへ向かう。
ギルドの扉を開けた瞬間――
ざわっ。
視線が一斉に集まった。次の瞬間
冒険者たち「お、おい……戻ってきたぞ」
「無茶したって話、聞いたぜ……!」
「よく帰ったな!」
「無事で本当に良かった!」
「お前ら、すげーよ!」
温かな歓声が広がった。特に――
男性冒険者たち「おはよう、あんなちゃん!」
「みゆちゃん!体は大丈夫!?」
「無理はダメだぞ、俺が代わりに護るから!」
あんな「え?えーー?わ、私!?」
みゆ「……統計的に言って、視線が私とお姉ちゃんに偏ってる」
亮「だよなぁああああーー!! 美人姉妹だから当然だけどーー」
受付カウンターの奥でリーナが微笑んで手を振る。
リーナ「亮さん、ギルドマスターがお待ちです。奥の部屋へどうぞ」
亮「ああ……行ってくる」
二人に笑いかけて、ギルドマスター室へと向かう。
背後ではまだ歓声が続いていた。
冒険者たち「みゆちゃーん!笑ってー!」
みゆ「笑顔の提供は有料です」
冒険者たち「それでもいい!!」
亮(……元気そうで、何よりだ)
ドアをノックすると、低い声が返る。
ガリオス「入れ」
部屋に入ると、ガリオスが腕を組んで座っていた。
ガリオス「座れ」
亮は静かに腰を下ろした。
ガリオス「まずは報告だ。薬草は――調薬して、ティオの母親に届けた」
亮「……そうか。助かるのか?」
ガリオス「ああ。容体は落ち着いた。命は助かる」
亮は胸の奥から力が抜けるのを感じた。
亮「よかった……」
ガリオス「ティオには、お前たちはギルドの緊急案件でこれなくなったと伝えてある」
亮「……ありがとう」
ガリオスはしばし黙り、そして低く言った。
ガリオス「だが、今回はただの成功談じゃ済まされねぇ。何があったのか、全部話せ」
亮「分かった」
亮は起きたことを順に話していった。
亮「ただ、説明できないのがあるんだ」
ガリオス「ん、なんだ?」
亮「守りたいって思ったんだ。あんなと、みゆと……誰かの泣き顔とか、もう見たくなくてさ。
そう思うと……体の奥から、勝手に力が湧き上がる。発動させてる感覚はないんだ。
俺が使ってるというより、向こうから勝手に『出てくる』感じで」
少し息を吐き、続けた。
亮「ゴブリンキングの時と、今回は……違った。
同じ“守りたい”気持ちだったのに、出てくる力も、体の感覚も、違う」
ガリオス「……信じがたい話だ」
亮「だろうな。俺だって分からない」
次の瞬間、ガリオスは大きく息を吐き、目を細めた。
ガリオス「……だが、嘘をついている目じゃねえ。もう、無茶を責めるつもりはない。
結果だけ見れば――お前は帰ってきた。娘たちもだ。……よく、帰ってきたな!」
亮「……ああ」
こうして――
神崎亮は、守りたいもののために一歩を踏み出した。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、静かに次の局面へ進んでいく――。




