第16話 え、パパが勇者!? 冒険者ギルドで大騒ぎー!?
王都の門を無事に通過した神崎家は、整備された大通りを進みながら、初めての“王都”を目にしていた。
王都の光はどこか柔らかく、街並みを静かに照らしていた。
白い石畳を踏みしめ、神崎家とルークは冒険者ギルドへと向かっていた。
亮はしばらく周囲を見回して、そっと家族に向かって言った。
亮「……なんか、すげぇな。ほんとに“王都”って感じだ」
あんなは小さく微笑み、父の隣を歩く。
あんな「パパ、気を引き締めてね。ここ、田舎の村とは全然違うんだから」
もっふる「ピィ〜」
家族のやり取りに、隣を歩くルークが頷いた。
ルーク「せっかく来たんです。王都を存分に堪能してください。……今回は静かに登録して、静かに終わらせましょうね?」
亮「ん? 今、“静かに”って二回言わなかったか?」
ルーク「え、気のせいですよ。たぶん……」
やがて、通りの向こうに木製扉と、ギルドの紋章が見えてきた。
木造の扉は重厚で、内部からは冒険者たちの笑い声、武具の金属音、そして依頼の呼び声が絶え間なく聞こえる。
亮「おお〜っ! ここ……絶対アニメで見たやつだ! 武器とかの装備を売ってるとこだ!」
みゆ「パパ、ここは武器屋ではありません」
あんな「でも、雰囲気はわかる気がするわ」
もっふる「ピィ〜♪」
ルーク「さ、まずは登録だ」
ギルドの扉を押し開けると、活気に満ちた空気が一気に流れ込んだ。
カウンターの奥で受付嬢が微笑んだ。
受付嬢「ようこそ冒険者ギルドへ。私は受付のリーナです。本日はどのようなご用件でしょう?」
ルーク「彼らの冒険者登録を頼む」
リーナ「登録ですね。では、お名前と職業を」
亮「神崎亮、職業は……えーっと、勇……パパ?」
あんな「パパは剣士でいいの」
亮「お、おう……剣士で!」
あんな「私も剣士でお願いします」
みゆ「私は魔法使いでお願いします」
本当に名前と職業だけの簡易記入で、驚くほどあっさり終わった。
リーナ「では、Fランク冒険者として登録完了です。これで、王都内及び王国内のクエストも受けられますよ」
その後、ランク制度や依頼の仕組みなど、簡単な説明が続いた
亮「説明ありがとうございます。Fランク……なんか初心者感あって好きだ!」
みゆ「パパは初心者です」
亮「言い方ぁ!」
もっふる「ピィ♪」
リーナがふと、亮の足元のもっふるに気づく。
リーナ「その子……かわいいですね。獣魔の登録もしますか?」
亮「あ、お願いします! こいつは俺の相棒で――もっふるだ!」
リーナ「もふ……もふ? 種族はなんですか?」
亮「種族?アレ…アヴ…? もっふる?」
みゆ「パパ、それは、名前だよー」
亮「あ、ああ……そうだった」
リーナは、もっふるを見て首をかしげる。
リーナ「……え? この翼……耳……尾……。ま、まさか……」
周囲の冒険者も気づき始めた。
冒険者A「おい……あれ、“アヴィレプス”じゃねぇか?」
冒険者B「いやいや、あいつ……羽の色、金じゃねぇか?」
冒険者C「金翼!? 嘘だろ……千に一体の希少種だぞ!?」
ざわ……ざわ……!
あんな「あー……始まったわね」
みゆ「騒動確率、上昇しました」
亮「やっぱ珍しいんだな……門番にも言われたし。もっふる、すげぇな!」
もっふる「ピィ♪」
リーナは慌てて立ち上がる。
リーナ「ちょ、ちょっと待ってください! 金翼なんて……本当に!?」
ルーク「リーナさん、落ち着いてください! 騒ぎすぎです!獣魔登録お願いします」
リーナ「失礼しました。登録完了です」
だが、亮はさらに追い打ちをかける。
亮「あ、あと魔石の買い取りお願いします! リーネ村で魔物を倒した時の!」
アイテムボックスから取り出した袋をカウンターの上に置く。
リーナ「では確認しま――っ!? ゴ、ゴブリンの魔石が……五十個以上……!?」
さらに、大きな魔石を取り出すと、
冒険者たち「デカッ!?」「何だあれ!?」
リーナ「こ、これは……ゴブリンキングの魔石……!?」
ざわああああああ……!
ルーク「だーかーら! 落ち着けと言ってるだろ!!」
あんな「パパ、さすがに出しすぎ」
みゆ「完全に火に油です」
亮「えっ、だって買い取ってくれるんだろ!?」
冒険者「そんなの、ただの新人冒険者ができるわけないだろ――」
一同の視線が一斉に神崎家へ。
亮「え? あれって普通じゃなかったのか……?」
あんな「普通じゃないわよ」
みゆ「むしろ異常です」
リーナ「す、すみません……確認を取りますので、少々お待ちください!!」
完全にパニック気味だ。
ルークはため息をつきながら亮の肩を軽く叩いた。
ルーク「亮さん……お願いですから、今日はもう余計なことをしないでください。俺の胃が死にます」
亮「え、えぇ!? 俺なんかしたか!?」
あんな「全部よ」
みゆ「ほぼパパです」
もっふる「ピィ♪」
こうして、神崎家の王都ギルド初日は――
静かに登録して終わるはずだったのに、なぜか大騒ぎになってしまうのであった。
王都での初めての夜。
ルークが紹介してくれた宿屋「白風亭」は、温かなランタンの灯りがそっと揺れ、木の香りが漂う落ち着いた空間だった。
一階は広い食堂になっており、女将さんが次々と料理を並べていく。
女将「ほらほら、冷めないうちに食べておくれ。たくさん歩いただろ?」
亮「うおおお!? なんだこの肉! 口の中でホロホロって溶けたぞ!?」
あんな「うわ……これ、すごく美味しい……」
みゆ「女将さん、これ味付けどうやって……データ化したい……!」
もっふる「ピィ〜〜♪」
女将「ふふ、いっぱい食べていきな!」
その晩、神崎家は山ほどの料理を平らげ、幸福感に包まれて眠りについた。
こうして――
王都初日から全力で騒ぎを起こした神崎家は、
美味しいごはんと笑顔に包まれて静かに夜を迎えた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、
王都でも遠慮なく走り出すのであった――!
あけましておめでとうございます。
亮「今年こそは……本当に、のんびりスローライフを……!」
あんな「……パパ、それ去年も言ってました」
みゆ「統計的に見て、今年もトラブル発生率は高めですね」
もっふる「ピィ♪」
相変わらず先行きは怪しそうですが、
家族で力を合わせて、笑いながら進んでいきます。
亮・あんな・みゆ・もっふる
「今年もよろしくお願いします! ピィー!」




