第13話 え、パパが勇者!? 号令係パパと最強姉妹ー!?
王都へと続く街道。草原を渡る風が心地よく、道の先に青空が広がっていた。
そんな中、もっふるがちょこちょこと駆け足で道端の茂みに向かった。
もっふる「ピィッ!」
亮「ん? どうした、もっふる?」
その声に続いて、あんなが駆け寄った。
あんな「……パパ! 誰か倒れてる!」
茂みの奥には、鎧を着た二人の青年が倒れていた。鎧は傷つき、血がにじんでいる。
みゆ「生命反応はあるけど、かなり消耗してるわね」
亮「うわっ……大丈夫なのか!? 助けられそうか?」
みゆ「任せて……《ヒール》!」
柔らかな光が青年たちを包み込む。裂けた傷口がじわりと閉じ、血のにじみが消えていく。
青年A「う……助かった……」
青年B「助けてくれて感謝する」
青年は胸元に手を当てたまま、息を呑んだ。
青年A「傷が……塞がっている……すごい。あなたたちは一体……?」
亮「いやいや! 通りがかりのスローライフ一家ですよ!」
あんな「……スローライフで人助けって、やってるのパパぐらいだと思うけど?」
みゆ「“スローライフ”の定義を再構築した方がいいわね!」
あんな「で、それは置いといて……あなたたちは?」
青年A「これは失礼をした。王国騎士団のルークと」
青年B「カイルです」
ルークたちによれば、十人ほどの盗賊に襲われ、荷物を奪われたという。
その荷物は、王国へ届ける重要な任務品らしい。
だが、話の途中で——。
盗賊A「お前たち、まだ生きてやがったのか!」
盗賊B「おい、余計なのが増えてるぞ!」
盗賊C「おおー、美人姉妹もいるじゃねぇか!」
亮「お、わかってるねー!、そうだろ~!」
あんな「いやいや、盗賊に褒められても嬉しくないから」
亮「そうか。よし、褒めたのは認める。でも娘はやらん!」
みゆ「パパ、話の流れがおかしいから」
盗賊C「おい……お前ら、俺たちの存在忘れてない?」
盗賊A「俺たちは盗賊だぞ!!」
あんな「盗賊って言われても……今の流れで脅しになると思う?」
みゆ「まあ、どう転んでも返り討ちよ!」
あんな「パパ、ここは私たちに任せて!いくよ、みゆ!」
みゆ「了解、お姉ちゃん!」
その瞬間、風が鳴った。
あんなの剣が光の軌跡を描き、みゆの風魔法が爆ぜる。
次の瞬間には、盗賊たちは全員地面に転がっていた。
亮「おお〜!見事な連携プレーだなぁ!ところで、パパの出番は?」
もっふる「ピィ♪ 」
もっふるの鳴き声が“ない”と言っているように聞こえたのか、あんなとみゆが同時に吹き出し、亮もつられて笑った。家族の笑い声が草原にふわりと広がった。
その余韻が静かに消えていくと——
ルーク「本当にあなたたちは一体何者なんだ?治癒も戦闘もこなすなんて……」
亮「いや、ただの家族旅行者です!」
あんな「……え、さっきは“スローライフ一家”って言ってなかった?」
みゆ「パパって、ほんと定義ぶれがちよね」
捕らえた盗賊たちを尋問すると、奪われた荷物は近くの洞窟のアジトにあることがわかった。
亮「よし、アジトに行くぞ!」
あんな「また即決なんだから……」
ルーク「危険です。しかも、見ず知らずの人にそこまでしてもらうわけには……」
みゆ「いつものこと。想定内!」
もっふる「ピィ! 」
神崎家ともっふる、二人の騎士は、協力してそのアジトに向かうことに。
洞窟の入口付近に近づくと、見張りの影がちらりと動いた。
あんな「……入口に見張りがいるわ。私がやる!」
剣が閃き、見張りは音もなく倒れた。
亮「おお〜! さすがだー!」
みゆ「内部は三十メートルほどの洞窟構造、左奥に二十人ほどの生命反応があるわ」
亮「よし、突入だ!」
数分後——
亮「ふぅ……全部終わったな!」
もっふる「ピィ〜♪」
盗賊頭「ば、化け物姉妹だ……」
亮「おいおい、言い方ってもんがあるだろ……ま、強いのは事実だけどな!そのうえ美人だろ〜!」
あんな「はいはい、でも今回のパパ、ほんと出番なかったねー!」
みゆ「……パパは号令係で確定」
亮「いや、それも大事な役割だぞ!」
ルーク「ははっ……確かに号令は大事だな」
もっふる「ピ、ピィ〜♪」
みんなが思わず笑い出した。
カイル「それにしても、姉妹の強さには本当に驚かされます」
ルーク「改めて、本当に助かった。ありがとう。君たちがいなければ任務は失敗していた」
カイル「それに、こいつらはこの辺りを荒らしていた盗賊団です。討伐隊を出す予定だったのですが……まさか一家で片付けるとは」
亮「えっ、そんなに有名な盗賊だったの!?」
あんな「……たまには“やらかし”が良い方向に出るのね」
みゆ「パパにしては、かなり珍しいケースね」
ルーク「恩に着る。よければ、王都まで共に行かないか?」
亮「もちろん! みんなで一緒に行こう!」
草原の風が再び吹き抜けた。
王都への道のりは、まだ長い。だが、神崎家の旅はいつだって騒がしく、そして温かい。
もっふる「ピィ♪」
――その鳴き声には、仲間と共に歩む未来への期待が込められていた。
こうして――
号令係パパと最強姉妹、そして新たな仲間との縁が生まれた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)がますます騒がしく温かく続いていく。




