【外伝】 異世界に来たらスライムが大量湧きして、娘たちが楽しそうに倒し始めた⁉
このお話は、本編の合間にちょっとだけ広がる神崎家の寄り道編です。
読まなくても本編の流れに影響はありませんが、
読んでいただけると、もっと楽しんでもらえると思います。
お茶でも飲むような気楽さで、のんびり読んでいただければ嬉しいです
異世界へと転移したばかりの神崎家は、まだ右も左もわからないまま、どこまでも続く草原を歩いていた。 見渡す限り緑の波。遠くの空には、現実世界では見たことのない大きな月が昼間なのにぼんやりと浮かんでいる。
パパこと亮は、胸いっぱいに風を吸い込みながらのんきに言った。
亮「いや〜、異世界って空気うまいなぁ!」
あんな「パパ、それどこ行っても言ってるよ」
みゆ「酸素濃度は地球とあんまり変わらないだけだと思うけど」
家族のいつもの掛け合いが草原にぽつぽつ響いた――そのとき。
ぷるん。
足元で小さく跳ねる音がした。
あんな「……え?」
半透明の青いゼリーの塊が、ぽよん、と草の上に現れた。
みゆ「スライム……だと思う」
亮「おお〜っ! これ! これだよこれ! 異世界といえばスライム!」
スライムはぷるんと揺れて、三人に近づいてくる。
亮「よーしよし。怖くないぞ〜?」
あんな「パパ、素手で近づくのやめて……」
みゆ「触りに行くのはリスクしかないよ?」
楽しそうに近づいていくパパを、あんなとみゆが左右から同時に引っ張る。
あんな「ちょっと! スライムとは言え、魔物なんだから気をつけて!」
そんなやりとりの最中――。
ボコッ。 ぷるん。 ぽよん。
草むらが揺れ、青いスライムが、ひとつ、またひとつ……。
みゆ「……パパ?」
亮「……あれ、増えてる?」
気づけば、十匹以上が同時に跳ねていた。
あんな「……よしっ。みゆ、やるよ!」
剣を構えたあんなの横で、みゆは杖を軽く構えた。 異世界に来た直後だというのに、身体が自然と構えをとる――これも女神の加護なのだろう。
みゆ「了解、確実に行こう!」
スライムたちが、一斉に跳びかかってきた。
あんな「はっ!」
剣が風を切り、一匹のスライムが真っ二つに裂けて弾けた。
みゆ「《ファイア・ボール》!」
火の玉が飛び、スライムが小さな爆発とともに消し飛んだ。
亮「おおおお……! すげぇ!」
パパはまるで我が子の運動会を見る親のように拍手している。
だが、スライムの攻撃はまだ終わらない。
次から次へ、草むらの奥から湧くように押し寄せてくる。
あんな「パパ、下がってて! まだ来る!」
みゆ「湧きポイントかな……!? 一時的な無限湧きタイプ?」
だが姉妹は怖がるどころか、表情がどんどん生き生きしていく。
あんな「これ……意外と楽しいかも!」
みゆ「わかる。攻撃通ると気持ちいい」
亮「お、おお……頼もしい……!」
迫りくるスライムを前に、あんなが声を上げる。
あんな「みゆ、右をお願い!」
みゆ「了解。任せて!」
二人は背中合わせになり、左右から押し寄せるスライムを次々に撃破する。 剣が走り、魔法が飛ぶ、スライムが爆ぜるたびに、草原に青い飛沫が舞う。
あんな「いける! これ全部倒せちゃうよ!」
みゆ「初戦闘とは思えないね、私たち!」
最後の一匹が大きく跳び、パパの顔めがけて一直線に飛んでいった。
亮「うおおおお!?」
あんな「パパ危ない!」
みゆ「――っ! 《エア・ショット》!」
風弾が放たれ、スライムは撃ち落とされて弾け飛んだ。
草原に、静寂が戻る。
亮「……ふたりとも、めっちゃ強いじゃん」
あんな「えへへ……ありがと」
みゆ「これなら安心だね」
亮「よーし! これなら家族で異世界でも余裕だな!」
あんな「もう……パパは戦ってないよ?」
みゆ「見てただけで満足するの、ある意味すごい」
そんなツッコミと笑いが混ざる中、草原の風が三人の頬を撫でていく。
異世界での最初の戦闘は、こうして愉快に幕を下ろしたのだった。
こうして――
スライムの群れを撃退した草原に、姉妹の笑顔とパパの拍手が響いた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)は、草原での小さな冒険をひとつ刻んだ――。
今回の外伝もお読みいただき、ありがとうございました。
本編とは少し違う、神崎家のゆるい日常やちょっとした寄り道が、気楽に楽しんでいただけていたら嬉しいです。
こうした寄り道エピソードでは、神崎家の“素の姿”や“裏側で起きていた小さな出来事”など、
本編だけでは描ききれない部分を、これからも気ままに綴っていきます。
また次の物語でも、ふらりと遊びに来ていただけたら嬉しいです。




