【第11話】 え、パパが勇者!? 異世界で迎える、穏やかな一日々
リーネ村での滞在も、一週間が過ぎようとしていた。
朝は畑仕事、昼は村の子どもたちと遊び、夜は焚き火を囲んで笑い合う。
異世界での生活は、想像以上に“穏やか”だった。
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畑には、細長い穂をつけた植物が一面に並んでいた。
見た目は稲に似ているが、どこか違う。
村の青年「これは“リーネル”って言うんです。干して殻をむいて、粉にして食べるんですよ」
亮「粉にして……なるほど、パンや練りものにするのか」
青年「ええ。焼いたり、湯で練ったりして主食にします」
亮は穂を手に取り、軽く弾いてみた。小さな粒が指先に転がる。
亮「……この感じ、昔の日本で見た“裸麦”っぽいな。でも、粒のまま炊いたら、もしかして……」
あんな「まさか、また“炊く”気なの?」
亮「もちろん! これは試さずにいられん!」
みゆ「もう完全に職人スイッチ入ってるー」
あんな「ふふ、こういう時のパパ、ほんと楽しそうだね」
亮「いやー、火と鍋が語りかけてくるんだよ」
あんな&みゆ「……また始まった」
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その日の昼下がり。
焚き火の前で、亮が大鍋を構えた。村人たちが興味津々で見守る。
亮「こういうのはな、火加減が命なんだ」
鍋にリーネルと水を入れ、焚き火の上にかける。
湯気の立ち方をじっと見つめながら、亮が小さく口ずさんだ。
亮「……“はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、赤子泣いてもふた取るな”」
あんな「……それ、呪文?」
亮「(笑)……日本で昔から伝わる呪文だなー」
みゆ「理論じゃなくて、感覚なのね」
亮「ふっ、“炊飯道”とはそういうもんだ!」
もっふる「ピィ♪」
村人たちは笑いながら見守る。
やがて、鍋の中からふんわりと香ばしい香りが立ちのぼった。
亮「そろそろ……よし、開けるぞ!」
蓋を取ると、淡い金色の粒が湯気の中で輝いていた。
スプーンですくって一口。
亮「……うまい! お米とはちょっと違うけど、これはこれでうまいな……。香ばしくて、噛むほどに味が出る。うーん、“ご飯”の親戚って感じだ!」
あんな「ちょっと違うと言いながら、すごく満足そう」
みゆ「確かに食感は面白い。新しい料理になりそう」
村のばあさん「腹にやさしいねぇ。これなら子どもにもいいわ」
亮は笑った。
――この異世界にも、“命を育む穀物”が息づいている。
まだ見ぬ“本物の米”を探す旅の始まりに、胸が高鳴った。
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その夜、村の広場では小さな宴が開かれた。
焚き火を囲み、リーネルを炊いた香りが夜風に溶けていく。
村長「亮さんたちのおかげで、森が浄化されたおかげでこの村も平和になりました。本当にありがとうございました」
亮「いえいえ、こちらこそお世話になりました!」
村人「この“リーネルご飯”、村の名物にしましょう!」
亮「はっはっは、それいい! “リーネルおにぎり”とか売れるかもな!」
みゆ「……どこで売るつもりなの?」
あんな「そもそも市場があるかどうかもわかってないでしょ」
亮「ま、細けぇことは後で考えよう! まずは形にするのが大事だ!」
みゆ「出た、“考える前に動く”理論……」
あんな「パパ、ほんと懲りないね」
村長「それなら、王都に行ってみてはどうです? 王都なら冒険者ギルドもあります。登録すれば旅や情
報集めにも便利ですよ」
みゆ「王都って……魔法の本とか、そういう資料もあったりするのかな。もしかしたら、帰る手がかりが見つかるかも」
あんな「……うん、私も、帰れるなら帰りたい。でも――今はもう少し強くならなきゃ。みんなを守れるくらいに」
亮「よし、決まりだな!」
あんな「……何が?」
亮「王都で“米”を探す!」
みゆ「やっぱりそれね」
家族の笑い声が、夜空に響いた。
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翌朝。
神崎家の三人ともっふるは、村人たちに見送られながら手を振った。
村の人たちが心を込めて作ってくれたお弁当を、亮はそっと「アイテムボックス」にしまった。
まるで、それは大切な時間をそっと抱きしめるように。
あんな「パパ、準備OKね」
亮「ああOKだ。それにしても便利だな、このアイテムボックス。家族旅行のときにも欲しかったよ」
みゆ「それ、異世界限定機能だから」
もっふる「ピィ♪」
亮「よーし! 王都に向けて出発だ!」
あんな「食べ物目当てじゃないといいけど……」
みゆ「でも、そんなパパが一番楽しそう」
青い空の下、家族三人と一羽のもっふるが歩き出す。
リーネ村での穏やかな日々を胸に、彼らは次の舞台――王都へ。
――そして、その空のさらに高く。
女神は、穏やかな微笑みを浮かべていた。
女神「ふふ……あの勇者たち、今日も楽しそうですね。まったく、予想を超える存在です」
使命感ではなく、純粋な気持ちで森を癒し、人々を救いながら、
ただ幸せを分かち合い歩む彼らの姿。
それは、知らぬうちにこの世界の平和をも導いていく。
その物語は、ぬくもりと笑顔の中で、静かに紡がれていく。
こうして――
リーネ村での穏やかな日々を胸に、神崎家は“王都”への旅立ちを決めた。
ツッコミどころ満載な、家族の異世界スローライフ(?)が――次の舞台へと歩き出す!
第一部 ー完ー
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
第一章「召喚編」は、これにて一区切りとなります。
スローライフを目指していたはずの神崎家ですが、
気づけばトラブル続き?の始まりとなってしまいました。
果たして本当に、穏やかな日常は訪れるのか……?
(だいたい、パパ次第です)
このあと少しだけ番外編を挟み、
第二章では新たな舞台で、また賑やかな日々が始まります。
引き続き、神崎家の異世界生活を楽しんでいただけたら嬉しいです。
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第一章の区切りとして、
「なぜこの家族を書いたのか」
少しだけnoteに書いてみました。
裏話なので、
気になった方どうぞです。
https://note.com/brainy_quail4292/n/n30820ecfbfca




