表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義妹の引き立て役はもう終わりにします  作者: 水空 葵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/49

24. 身を守る方法

「――そうか、分かった。

 誤った情報を流した見張り役は牢に入れるように」


 練習になりそうな魔物の群れを探して移動していると、イアン様が馬車の外から何かの報告を受けた。

 風の音で外からの言葉は聞き取れなかったけれど、雰囲気から良くない事が起きているのは理解できる。


「アイリス、練習は中止だ。すぐに引き返す」

「何があったのですか?」

「練習に丁度いい魔物の群れというのは、誤った情報だった。つまり、何者かが俺達の暗殺を謀ったということだ」


 イアン様の言葉に、背筋を冷たいものが流れる。

 今回は無事で済んでいるけれど、一歩間違えれば今頃私はこの世に居なかった。


 私達の暗殺を企てている人は今も王都に居るはずだから、逃げ戻ることさえ憚られる。

 けれど、イアン様は王宮の中の方が安全だと考えているらしい。


「王宮に暗殺者が居たらどうするのですか?」

「今は居ないと断言しよう。大聖女アリス様が遺した結界魔法で分かるようになっているんだ」


 私が問いかけると、イアン様は私の耳元でそう囁く。

 結界の存在は今まで聞いたことが無かったけれど、彼が嘘を言っているようには思えない。


 きっと王家が代々秘匿してきたのだろう。

 そんなものを私が知って大丈夫なのか心配になるけれど、イアン様に信頼されている証だと思う。


 彼のことは裏切りたくないから、この事は何があっても話さないと決めた。

 もし脅されたら……治癒魔法を改変して舌を無くせばいい。


「……王宮内なら安全なのですね。私はアースサンド邸に帰れるのでしょうか?」

「王宮から信頼出来る護衛を出そう。そうすれば、万が一裏切り者が居ても対処できる」

「ありがとうございます。自分でも身を守れるようになりたいのですけど、守るための魔法はあるのでしょうか?」


 最悪の状況でも対処するための方法はあるけれど、そういう状況にならないことが一番だ。

 今なら護衛が守ってくれるけれど、護衛の目が離れる時もあるから、対策はした方が良いのよね。


「防御魔法や支援魔法を使えば守れるようになる。しかし、魔力を消費するから常に使い続けることは難しいと思う」

「咄嗟の時に使えるように、防御魔法も練習したいです」

「分かった。戻ったらすぐに準備しよう」


 イアン様は快諾してくれたから、あとは私次第。攻撃魔法よりも防御魔法の方が難しいそうだから、今までみたいにとんとん拍子にはいかないと思う。

 でも、途中で諦めるつもりは欠片も無かった。


 そうして覚悟を決めていると、ちょうど王宮に辿り着く。

 出迎えの人数は普段の倍以上で、今日は非番だったはずの護衛の姿も見える。


 攻撃魔法を警戒しているようで、馬車を降りるとすぐに護衛達に囲まれる。

 すると、私達を囲うようにして何かの魔法が広がった。


「今の魔法、何ですか……?」

「防御魔法だよ。他人にかけるものは、今のように目に見えるんだ」

「自分にかけると見えないのですか?」

「ああ。今も使っているが、分からないだろう?」


 玄関に入り陽の光が遮られたはずなのに、イアン様の周りには何も見えない。

 魔力の気配も感じられないから、言われなければ彼が防御魔法を使っていると分からなかった。


「……本当に普段と変わらないのですね」


 それから少しして、私達は普段から魔法の勉強に使っている部屋に入った。

 イアン様はいつもとは違う魔法書を手にしていて、ここに防御魔法のことが書かれているらしい。


「これは防御魔法で、この白い方は支援魔法が書かれている。支援魔法の方が効果が高いから、これを先に身に着けよう」


 並べられた二冊のうち、支援魔法の方は防御魔法の倍の厚さがある。

 この中でも防御魔法に関する内容は一部だとは思うけれど、いきなりこの量を身に着けるのは難しそうだ。


「この量をですか……?」

「全部ではないから、アイリスなら今日中に使えるようになると思う」

「今日中!?」


 あまりの無茶振りに、思わず声を上げてしまった。

 ここが社交界なら、無礼に粗相に……あまり考えたくない失態だ。


 でも、イアン様は苦笑いを浮かべるだけで、ついに魔法書が開かれる。

 そこには治癒魔法よりも複雑怪奇な魔法式が書かれていて、理解するだけでも時間がかかりそうだ。


「俺は支援魔法を使えないから、先生が来るまでは魔法書で頑張って」

「イアン様……」

「アイリスなら大丈夫だ」

「そういう問題ではありません!」


 抗議の視線を向けたけれど、一蹴されてしまった。

 仕方なく魔法書に目を通しているけれど、正直何がどうなっているのか分からない。


 それでも最後まで目を通すと、ようやくこの魔法の仕組みが理解出来た気がした。

 試しに詠唱しながら使ってみると、一瞬だけ魔力が吸われただけで、何も起こらない。


「……やっぱり、一人では難しいです」

「いや、成功していると思う」


 イアン様はそう口にすると、私に手を差し出してくる。

 そして、こんなことを口にした。


「痛かったらすぐに言って」

「何をするのですか?」

「手を握って、痛くなければ成功しているということだから、その実験だ」


 彼の手を握りながら問いかけると、少しずつ握る力が強められる。

 でも、痛みなんて欠片も感じなかった。


「俺が本気で握っているのに痛くないとは、しっかり効果が出ているよ」

「ナイフを刺しても無傷で済むでしょうか?」

「試しても良いが、先に治癒の効果がある水を用意した方が良い」

「分かりました」


 言われた通りの準備を済ませると、イアン様から小ぶりなナイフを手渡される。

 試しに指先に刃を突き立てたけれど、尖ったものに押されている感覚があるだけ。


 それに、治せるとはいえ自分を刺すなんて、怖くて中々力が入らなかった。

 だからナイフを持ち上げて、手の上に落としてみる。


 すると、何か硬いものに当たったような「カンッ」という金属音が聞こえてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ