神話
その地では、古くから人間と魔族との間で生存競争が続いていました。
魔族は獰猛で、あらゆる生物を捕食しました。また、彼らが撒き散らす瘴気は、他の生き物にとって致命的な毒となりました。
一方で、人間は数百年の間に急速に数を増やし、その版図を広げていきました。
両者の衝突は避けられない運命でした。
肉体の強さでは魔族に劣っていた人間でしたが、卓越した知恵と集団での行動力によって、次々と魔族を打ち倒していきました。
劣勢に追い込まれた魔族は、やがて一体の強大な力を持つ魔族のもとに集結します。
後に「魔王」と呼ばれるその魔族は、バラバラだった魔族たちをまとめ上げ、人間たちと同じような軍隊を組織しました。
統率された魔王軍の力は圧倒的で、人間たちは次第に追い詰められていきました。
人間たちは「魔法」と呼ばれる力を使い、魔王に対抗できる強者を召喚します。
異なる世界からやってきたその人間は「勇者」と呼ばれ、人間たちの希望の象徴となりました。
誰もが、勇者の登場によって戦局が一変すると信じていました。
勇者は確かに強靭な肉体と強大な魔力を備えていました。しかし、その心は決して強いとは言えませんでした。
迫りくる魔族、流れる血、今まで経験したことのない痛み、浴びたことのない期待――それら全てが、彼の心を蝕んでいったのです。
そして、勇者は剣を置きました。
こうして、人間たちは魔族に敗北しました。多くの町が蹂躙され、破壊し尽くされてしまいました。魔族に奪われた土地には、彼らの瘴気が色濃く残り、耐性のない者は息をすることすらできませんでした。
生き残ったわずかな人間たちは、魔族から逃げ続けました。逃げて、逃げて、ついには地の果てにまで辿り着いたのです。そこで彼らは、最後の大きな賭けに出ました。
人間たちは魔法の力を使い、自らの身体を決して解けることのない永遠の氷に閉じ込めました。
この封印を解くには、誰かが再び魔法を使うしかありません。しかし、もし誰か一人を残しても、その者はすぐに魔族に殺されてしまうでしょう。
そこで人間たちは、一人の魂に特別な魔法をかけました。死後、再び転生し、魔族のいない世界で人間たちを蘇らせるために――。