卒業式
春の日差しが柔らかく降り注ぐ体育館に、中学校最後の卒業生たちが整列している。郷子は制服の胸元をそっと押さえ、思わず深呼吸する。
「はぁ…もう卒業なんじゃねぇ…」郷子は小さく呟いた。温也が隣で肩をすくめる。
「ほんまにな…楽しかった日々も、吹奏楽部での毎日も、もう過去になっちまうんやな」温也の声には、少しの寂しさと、達成感が混じっていた。
体育館のあちこちから、吹奏楽部の仲間たちの笑い声や小さなざわめきが聞こえる。郷子はふと、思い出の数々が頭をよぎった。
楽器の音を合わせ、ロングトーンの練習に汗を流した日々。後輩たちとボケツッコミを交わし、笑い転げた放課後。温也と一緒に音色を作り上げた時間。すべてが、胸の奥で温かく光っていた。
「郷子、泣きよるん?」温也が小声で囁く。
「うん…なんか、自然に…涙が…」郷子の目には、もう堪えきれずに溢れそうな涙が光る。
「わかるで…俺もじゃ…」温也も目を細める。大阪弁の柔らかい響きが、郷子の心をさらに温めた。
式が進み、答辞や送辞が読み上げられる。郷子は自分の胸に手を当て、言葉にはできない思いをかみしめた。青春をかけた日々、仲間との笑い、温也との相思相愛の時間。すべてが、この学舎に刻まれている。
答辞を読み終え、仲間たちと顔を見合わせると、思わずみんながにっこり笑った。その笑顔に、郷子の目から自然と涙がこぼれる。温也もそっと手を握ってくれる。
「これからも、一緒にがんばろうな」温也の声に、郷子は小さくうなずく。
卒業証書を受け取り、退場の列に並ぶ。外の春風が、二人の顔に優しく当たる。胸の奥には寂しさもあるけれど、未来への希望がしっかりと芽生えていた。
「高校でも…吹奏楽、頑張ろうな」郷子が微笑むと、温也も笑顔で返す。
「もちろんじゃ。郷子と一緒なら、どこまでも頑張れるわ」
二人は肩を寄せ合いながら、学舎を後にする。思い出に包まれた日々は心に深く刻まれ、これから始まる新しい高校生活に向けた一歩が、確かに踏み出されていた。
春の光の中、郷子と温也の青春は、まだ終わらない。
そして卒業祝いということで、近くの料亭で湯田家と上田家の合同で、卒業祝いが開かれる。
料亭の座敷は、郷子と温也の中学卒業を祝う華やかな空気に包まれていた。冬の柔らかい光が差し込む中、座布団に座る両家の両親たちは、子どもたちの成長に目を細めている。
「いやあ、二人ともほんまに大きゅうなったのう」と、湯田家の父・光が笑顔で頷く。
「中学の三年間、あっという間やったね」と母・瑞穂も優しく微笑む。
上田家の父・望は、温也のやんちゃな様子を思い出して「ほれ、あの頃の温也くん、宿題もせんと楽器ばっかりやったんやろ?」と冗談めかす。母・桜もくすくすと笑いながら「ほんま、温也くん、お熱出したりしよったしね」と付け加える。
温也は「そや!でも今は勉強もちゃんと…まあまあやけど」と笑い、郷子が「はあ?ちゃんとじゃないじゃん!」とツッコミを入れる。泉は「郷子さんのツッコミ、ほんま絶好調やね」と時折ギャグをぶち込み、座敷を笑いで包む。
光が少し感慨深げに言う。「中学2年の4月に大阪からこっちに引っ越してきて、まだすぐの頃は、みんなも慣れんくて大変やったなあ。でも、今こうやって笑顔で卒業を祝えるのは、ほんまに嬉しいわ」
瑞穂も頷く。「温也も郷子さんも、すぐに仲良くなって、部活も勉強も頑張って…ほんまにえらかったね」
両親たちは笑いながらも、時折じんわりと胸を押さえるように頷く。
「二人とも、ほんまによぅ頑張ったのう…」と光が目元を潤ませ、瑞穂もそっと手を握る。
「ワシらの子どもたちの笑顔見とるだけで、もう幸せじゃ」と望が微笑むと、桜も「これからも応援してるよ」と静かに頷く。
温也がグラスを高く掲げて「乾杯や!この三年間に、そしてこれからの高校生活に!」と声を張ると、郷子と泉、そして両家の両親も一斉にグラスを合わせた。
「ほんま、二人ともよく頑張ったなあ」と桜も微笑む。
「これからも、音楽と勉強、両方頑張れよ」と光が優しく声をかけると、温也も郷子さんも少し照れくさそうに笑う。
座敷は笑いと涙、そして温かい祝福の声で満ち、郷子と温也、そして泉の三人はまるで兄妹のように笑い、時には涙を見せながら、家族の一員として温かい空間に溶け込んでいた。
料亭の座敷に集まった両家の家族や泉を前に、郷子は少し恥ずかしそうに体を正した。中学の卒業を迎え、気づけば身長は165センチまで伸び、胸もふくよかになり、女性らしさを増していた。
「私…心も体も、こんなに大きくなりました。お父さん、お母さん、ありがとうございます」
光と瑞穂は、目に涙をためながら頷く。光が少し声を詰まらせて「ほんまに、ええ娘に育ったのう」と笑みを浮かべ、瑞穂も「郷子さん、成長したね。もう立派な娘や」と優しく抱きしめるように手を差し出した。
望と桜も穏やかに微笑む。「温也くんも郷子も、ほんまに立派になったのう」と望。桜も「これからも二人仲良う、高校生活頑張ってな」と静かに頷く。
泉は茶目っ気たっぷりに、「郷子さん、めっちゃ大人っぽくなったなあ」と笑いを混ぜて声をかける。郷子も少し照れながら、「ほんまに、みんなのおかげです」と答えた。
温也は隣で小さく拳を握り、「俺も負けんように頑張るわ」と微笑む。郷子と温也、そして泉の三人は、笑いと涙の交差する座敷で、家族や友人たちに見守られながら、ひとつの節目を迎えていた。
座敷には温かい拍手が響き、笑い声と感謝の言葉に包まれた、穏やかで幸せな卒業の夜だった。
春の柔らかい日差しの中、郷子と温也は掲示板に貼られた合格者一覧を目にした。
「温也……見つけた!」
「郷子、俺もあったわ……!」
二人とも、希望していたバイオ研究の最先端が学べる、山口農林高校の食品化学科への入学が決まったのだ。手にした受験票を握りしめながら、自然と笑みがこぼれる。
「やったね、温也!」
「郷子、ほんまに……やったな!」
温也の妹・泉はまだ中学入学前で、今日は兄の付き添いとして一緒に来ていた。
「お兄ちゃん、おめでとう!」と小さな手を握りながら笑顔を見せる。郷子も「泉、ありがとね」と優しく答える。
光と瑞穂は穏やかに微笑み、光が「温也、これからもっと学びに励まんといけんのう」と言えば、瑞穂も「郷子さん、二人で仲良う高校生活楽しみやね」と優しく見守る。
望と桜も、嬉しそうに頷く。「温也くん、郷子、これからの高校生活も楽しんでね」と望。桜も「二人とも、自分の夢に向かってしっかり歩んでね」と声をかけた。
小町が足元でにゃーんと鳴き、二人の肩にすり寄る。その姿に、郷子と温也は思わず笑顔になった。これまでの努力が報われた喜びと、これから始まる新しい日々への期待が、二人の胸を満たしていた。
「さあ、これからやな、温也」
「せやな、郷子……二人で頑張ろう!」
三人の笑い声と温かい家族の視線の中で、春風がそっと教室や家々の間を吹き抜け、二人の新しい高校生活の幕開けを告げていた。
郷子はスマホを手に取り、福岡の小倉家のグループチャットを開いた。
「温也も郷子も、無事に合格したばい!」
画面の向こうから、光子と優子の弾ける声が文字と絵文字で飛び出す。
「えー!ほんとに!?おめでとう〜」
「みっちゃん、ゆうちゃん、チュー」
思わず笑い出す郷子と温也。美香も「やめて〜!もう笑いすぎ!」と大爆笑。
その後もグルチャは大盛り上がり。光子と優子の新作ギャグや即興ダンス動画が次々と送られ、郷子は画面を見ながら思わず声を出して笑う。
「小倉家の三姉妹、相変わらず破壊力抜群やな…」と温也。
「ほんまに、見とるだけで元気出るわ」と郷子も頷く。
美香は落ち着いた声で、「でも、私立高校の試験も無事に終わったんやね。おめでとう!」と祝福。
光子と優子も「おめでとう!」と画面越しにチューの仕草を連発し、三人でまた大爆笑。
こうして、福岡と山口を越えて、グルチャでワイワイと盛り上がる時間は、合格の喜びと笑いに包まれ、郷子と温也の心をさらに温かく満たした。
郷子が「福岡の小倉家にも報告せんとね」とスマホを手にすると、光子と優子のドアップが画面に飛び込んできた。
「温也お兄ちゃん、おめでとう〜!」
「郷子お姉ちゃん、すごか〜!」
美香もにこにこ顔で「温也さん、郷子さん、おめでとう!」と加わる。
そこへ、アキラも顔を出した。小学五年生らしいあどけなさを残しつつも、礼儀正しく
「温也さん、郷子さん、合格おめでとうございます!」
としっかり敬語で報告する。
光子と優子はアキラの登場に気づくと、すかさず笑える即興ダンスを披露。郷子は画面を見ながら「見よるだけで、体調の悪さも吹っ飛ぶわ〜」と温也に囁く。
温也も「ほんまや、こりゃ元気出るわ」と笑顔で返した。
こうして福岡の小倉家、山口の温也&郷子、そして東京の美香&アキラも混ざり、合格の喜びと笑いに包まれた時間が続いた。
熱に揺れた受験の日
公立高校の合格が決まった週末、郷子は湯田家に顔を出した。
まだ冬の名残を残す空気の中、居間にはほっとしたような安堵の気配が漂っていた。
郷子は座布団に腰を下ろすなり、苦笑しながら口を開いた。
「まさかさ、温也が入試の日に熱出すとは思わんやったよ」
その言葉に、瑞穂は台所からお茶を運んできながら、大きく頷いた。
「ほんまやで。あれはびっくりしたわ。よりによってやな、人生かかっとる大事な日に熱やなんて、勘弁してほしかったわ」
湯呑を置く音とともに、あの日の慌ただしさがふと蘇る。
布団の中で青い顔をして汗をかく温也。時計は刻一刻と試験の時刻へ迫っていく。
「これ、ほんまに行かれへんのとちゃうか」――そんな不安が胸をかすめた瞬間もあった。
郷子はその時のことを思い出しながら、温也の方へ視線を向ける。
「でもさ、よう行ったよね。あの状態で試験受けるなんて、正気の沙汰やなかったろ」
ソファに腰かけていた温也は、頭をかきながら苦笑した。
「いや、正直言うとな……頭ガンガンで問題文まともに見えへんかってん。字がぐにゃぐにゃ歪んで見えて、“これ終わった”って思たわ」
「ほら見てん、やっぱり」瑞穂は大きくため息をつき、肩をすくめた。
「母親としてはな、合格できるかどうかより、まず最後まで倒れんと座っとれるか、そればっか心配やったんやで」
温也は苦笑を深め、言葉を継いだ。
「せやけどな、なんか変に意地なってん。“ここまで頑張ってきたんやから、この日に寝とったら一生後悔するやろ”って思たんや。結果がどうであれ、会場には立たなあかんて」
郷子はしみじみと頷き、笑みを浮かべた。
「その気持ちはわかるよ。だからこそ合格が決まった時はほんと嬉しかったんよ。あんな状態で受けて結果残すなんて、ちょっと伝説やん」
瑞穂もおかしそうに笑いながらも、母親らしい現実的な言葉を添えた。
「まぁ結果オーライやけどな。もし落ちとったら、“熱のせい”って一生言い訳せなあかんかったで」
温也は「それな」と言って肩を竦め、少し照れくさそうに笑う。
「ほんまにな。あとで考えたら、“これで落ちとったら完全に笑えんやつやったな”って思たわ」
その言葉に郷子と瑞穂は同時に吹き出した。
あの時の焦りも不安も、今となっては笑い話だ。
合格通知の一枚の紙が、あの日を“悲劇”ではなく“武勇伝”に変えてくれたのである。
窓から差し込む春の光が、三人を包み込んだ。
その柔らかな光の中で、湯呑の温かさを感じながら、未来への希望を静かに分かち合っていた。
春の再会、未来への一歩
湯田家の居間に、次々と懐かしい顔が集まってきた。
「久しぶり~!」
玄関から元気よく入ってきたのは津留美と藍、そして歳也だった。
「やっと入試が終わったねぇ」
津留美が笑いながら声を弾ませる。その頬には、合格を勝ち取った誇らしさが滲んでいた。
郷子は立ち上がり、思わず駆け寄った。
「おぉ!ほんと久しぶりやん。みんな受験おつかれ!」
津留美は胸を張るように言った。
「うちね、柳井商工高校に受かったんよ。本山先輩とバドのペア組むって決めてたけん、絶対そこ行きたかったんよね」
その言葉に、郷子の顔がぱっと輝く。
「すごいやん!夢、ちゃんと叶ったっちゃね。ほんとおめでとう!」
藍も続けて笑みを見せた。
「うちは西山高校に決まったよ。バレーもっと頑張って、将来は実業団入って活躍するつもりやけん」
「藍もやるねぇ!」郷子がぱちぱちと手を叩く。
「もうすぐ“全国で名前聞く選手”になるかもしれんねぇ。負けとられんばい」
そして最後に、歳也が少し照れながら口を開いた。
「おれは大道駅の近くの私立、高田高校。スポーツ推薦で入れてもろた。甲子園目指して、ガチで野球頑張るつもりや」
その言葉に、温也が大阪弁で笑いながらツッコミを入れる。
「おお、甲子園か!ええやん。ほなウチら応援団長するわ。ほんまに行ったら大騒ぎやで」
瑞穂もにこやかにうなずいた。
「ほんま、こうしてみんな自分の道決まってるんやなぁ。親の立場からしたら、めっちゃ誇らしいわ」
自然と笑い声が広がる。
お菓子やジュースを並べて、受験の苦労話や合格発表の日のエピソードを語り合う。
「掲示板見た瞬間、心臓飛び出すかと思った!」
「番号探すのに緊張しすぎて、手が震えとったわ!」
誰かが話すたびに、みんなが大声で笑い、また別の思い出を引っ張り出す。
外はまだ春浅い風が吹いていたが、居間の中は熱気に包まれていた。
それぞれの夢を胸に抱え、同じ時代をともに駆け抜ける仲間たち。
未来はまだ形を持たないけれど、こうして顔を合わせた時の温かさが、彼らの背中をそっと押していた。
熱と笑顔の春休み
湯田家の居間は、久しぶりに賑やかな笑い声であふれていた。
玄関のドアが開くと、津留美、藍、歳也が元気いっぱいに顔を出す。
「久しぶり~!」
「やっと入試終わったねぇ」
津留美がにこにこしながら声を弾ませる。
「おぉ、ほんま久しぶりじゃん!みんな受験おつかれぇ!」
郷子が駆け寄ると、津留美は胸を張った。
「うちね、柳井商工高校、受かったんよ。本山先輩とペア組むっち決めとったけん、絶対ここ行きたかったんよね」
「わぁ、すごいじゃん!夢、ちゃんと叶ったじゃん!」
郷子の目はキラキラしている。
藍もにっこり笑って言った。
「うちは西山高校決まったよ。バレーもっと頑張って、将来は実業団入りたいっちゃ」
「藍もやるやん!全国で名前聞く選手になるかもしれんじゃん」
郷子が手を叩くと、瑞穂が大阪弁で笑った。
「そやけど、ほんまみんなよう頑張ったわ。感心するで」
歳也も少し照れながら口を開いた。
「おれは大道駅の近くの私立、高田高校や。スポーツ推薦で入れてもろた。甲子園目指して野球頑張るけん」
温也が大阪弁で笑いながら口を挟む。
「おお、甲子園か!ええやん、ほんま行ったら大騒ぎやで」
瑞穂もにこやかにうなずく。
「そやねん、みんな自分の道決まったんやなぁ。親としては誇らしいわ」
郷子は少し照れたように温也の方を見た。
「でね、温也と私も山口農林高校受けたじゃん?二人とも無事合格したんよ。でもさ……温也、試験当日めっちゃ熱出してね。頭ふらふらで受けたんよ」
津留美は目を丸くして驚いた。
「えぇ!?まじで!?それで合格できたん?」
藍も手を口に当て、信じられん様子。
「ほんまに?熱出とったん?ふらふらやのに?うそじゃん」
歳也も立ち上がって、手を叩いた。
「お前、あの日ちゃんと座って問題解いとったんか!?それで受かるとか信じられんわ」
郷子も驚きを隠せず、思わず笑いながら言った。
「ほんなこつ、私も“絶対落ちたわ”って思たもん。温也、よー頑張ったよねぇ」
温也は苦笑しながら肩をすくめる。
「いや、ほんまやで。頭ん中ガンガンして、文字がぐにゃぐにゃして見えて、何回も“もうあかん”って思たわ」
瑞穂も呆れたように笑う。
「でも結果オーライやん。二人とも合格やし、温也、強運の持ち主やで」
津留美がからかうように言った。
「ほんなこつ、二人とも変わっとるわ。熱出しても受かるとか、普通じゃないじゃん」
藍も加勢する。
「うちやったら絶対途中で倒れとったわ。温也、さすがやな」
歳也は肩を叩きながら言った。
「ほんなら次は高校生活やな。体調管理ちゃんとせぇよ、熱で受けるとか二度とあかんで」
郷子はからかい気味に温也を見て、にやりと笑った。
「ほんなこつ、よう合格できたねぇって、みんなびっくりしとるじゃん。次からはもっと元気で登校せんといけんよ」
温也は照れ笑いしながら頭をかく。
「せやな……でもあの日のこと考えたら、もう笑い話やわ。みんな応援してくれたおかげやと思う」
居間は笑い声と話題でいっぱいになった。
受験の苦労話、合格発表のドキドキ、未来への希望。
それぞれの夢を胸に抱いた仲間たちが集う、この瞬間の温かさが、春の光とともに居間を包んでいた。
熱と笑顔の春休み
居間で笑い声が絶えない中、郷子のスマホがピコンと鳴った。
郷子が画面を覗くと、「小倉家」からのビデオ通話が入っていた。
画面に現れたのは美香と、3歳の光子と優子だった。
「こんにちは~!」
「やっほー!」
光子と優子が元気いっぱいに手を振る。
津留美は眉をひそめ、首をかしげる。
「え、あれ?この子たち誰じゃろ……?」
藍も同じく戸惑いながら画面を見つめる。
「うちも初めて見る……えっと、友達?」
郷子は笑いながら説明した。
「うちの知り合いよ。みっちゃんと優ちゃんは3歳の双子で、めっちゃ元気なんよ」
すると光子が画面越しに首をかしげて、目をぱちくりさせながら聞いた。
「ねぇ、このおにーちゃんとおねーちゃん、だーれ?」
優子も真似して、手を伸ばしながら叫ぶ。
「うちも知りたいー!」
津留美、藍、歳也は顔を見合わせ、完全に戸惑った様子。
「え……なんじゃ……」藍が小声でつぶやく。
「お、お兄ちゃんとお姉ちゃん……?」津留美も目を丸くする。
美香は画面越しに苦笑しながら説明した。
「えっとね、こっちは津留美ちゃんと藍ちゃんと歳也くん。うちの友達なんよ」
郷子もにっこり笑って画面に向かって言った。
「ほら、みっちゃん、優ちゃん。こっちが今日集まったみんなやけん。ちゃんと見とかんと」
光子は小首をかしげ、ぽんぽん手を叩きながら言った。
「ふーん……おもしろそー!」
優子も負けじと叫ぶ。
「うん、笑えるやつー!」
二人は突然、ギャグタイムに突入した。奇声を上げたり、変なポーズを取ったり、画面越しにジャンプしたりする。
津留美、藍、歳也は最初は固まったまま目を見開き、呆然とする。
「ちょ、ちょっと……なにこれ……!」
歳也は椅子からずり落ちそうになり、声を押し殺して笑った。
「うそ……破壊力やばすぎる……」
美香は画面越しに笑顔でフォローする。
「ほらね、最初はびっくりするけど、一回笑ったら止まらんでしょ?」
郷子は温也に耳打ちする。
「ほら、言ったじゃん。みんな初めてやけど、最後には笑い転げるんよ」
温也は苦笑いしながら頭をかき、呟いた。
「……まったく……光子と優子にしてこの破壊力か……」
居間には再び笑い声が充満し、受験の緊張も、春休みの疲れも、一気に吹き飛んだようだった。
津留美が画面越しににっこり笑って言った。
「私はね、バドミントンするよ。柳井商工高校で本山先輩とペア組むことにしたんよ」
藍も元気に答える。
「私はバレーボールするよ。地元の西山高校で、将来は実業団に入りたいんよ」
歳也は胸を張って腕組みしながら言った。
「俺は野球するよ。高田高校で甲子園目指すけん」
光子と優子は真剣な表情で画面を見つめ、次の瞬間、同時にギャグタイムに突入した。
光子は大きくジャンプしながら、
「バドミントンおばけやぁー!」
優子も負けじと、両手を広げてぐるぐる回りながら、
「バレーボールゴリラだぁー!」
津留美、藍、歳也は思わず吹き出す。
「ちょ、ちょっと待って……なにこれ……!」津留美が手を押さえて笑う。
藍は涙を浮かべながら、
「お腹痛い……3歳でなんでこんなにプロの芸人並みなん……」
歳也も椅子に座ったままお腹を抱えて笑った。
「マジで……もう芸人やん……」
光子と優子は止まることを知らず、今度は画面越しに変顔を連発。
光子が顔をぐちゃぐちゃにして、
「うわぁ、幽霊おにーちゃんやー!」
優子は手で頭をつかみ、
「ぎゃー、幽霊おねーちゃんがこっちくるー!」
美香は苦笑しながらも、姉らしくフォローする。
「ほら、みっちゃん、優ちゃん、やりすぎやろ……でも、笑えるけんいいけどね」
郷子は温也に耳打ちする。
「ほら、言ったやろ。みんな初めてでも、最後には笑い転げるんよ」
温也は苦笑いしながら頭をかき、呟いた。
「……まったく……光子と優子にしてこの破壊力か……」
居間には再び笑い声が充満し、津留美・藍・歳也の疲れも一気に飛んでいった。3歳の双子の即興ギャグに、全員が翻弄されつつも心の底から楽しんでいるのがわかった。
光子と優子の即興ギャグは止まることを知らなかった。
光子が突然、片足でくるくる回りながら叫ぶ。
「バドミントンおばけ、空飛ぶー!」
優子は両手で顔を覆い、声を張り上げる。
「バレーボールゴリラ、地面にダイブー!」
津留美は思わず椅子から転げ落ちそうになりながら、手を叩き笑う。
「う、うそ……やばい……もうお腹痛いって!」
藍も涙目で声を震わせる。
「くっ……もう、耐えられん……3歳でプロの芸人か……!」
歳也は画面を見ながら肩を震わせ、必死で笑いをこらえる。
「やばい……なんでこんなに無限ループで来るんや……」
光子は次に両手を頭の上で円を描き、ぐるぐる回りながら、
「幽霊おにーちゃん、キャッチー!」
優子は光子の動きに合わせて、床にうつ伏せになり、
「幽霊おねーちゃん、ダイブーー!」
美香は思わず苦笑いしながらフォローする。
「やりすぎやろ、みっちゃん、優ちゃん……でも、笑えるけん許す」
津留美は涙を拭きながらも画面に手を振る。
「もう、ほんと、芸人の卵すぎる……!」
藍も頷きながら笑う。
「3歳でこんなに笑わせるとか……未来が怖いくらい面白いわ」
歳也は画面に向かって頭を振りながら笑う。
「マジで……破壊力強すぎる……もう戦慄するレベルやん……」
光子と優子はさらにスピードを上げ、二人同時に声を張り、動きも速くなる。画面いっぱいに大きな手を振り、変顔を連発し、床に転がりながら、奇声をあげる。
津留美、藍、歳也はもはや椅子に座ったまま耐えきれず、床に倒れ込み、手を押さえて笑い転げる。
「うわーー、もう、耐えられん!」
「やばい……腹筋崩壊するーー!」
「まじでプロやん……3歳で……」
美香はにこやかに言った。
「ほらね、笑いが止まらんやろ。さすが双子やわ」
郷子は温也に耳打ちする。
「ほら、言ったやろ。最後にはみんな、笑いすぎてクタクタになるんよ」
温也は苦笑いしながら、頭をかく。
「……光子と優子のギャグ、無限攻撃か……これは手強い……」
居間には再び笑い声が充満した。3歳の双子が巻き起こす波状攻撃に、津留美・藍・歳也は完全に翻弄され、全員が心の底から笑い転げていた。
こうして、ギャグの波状攻撃にさらされた3人は笑いすぎて疲れたわ~。と言いながら、画面の向こうの美香と光子と優子に、バイバイと手を振りながら帰っていった。




