表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トレイン&スポーツラブ~山口で出会った二人のラブストーリー  作者: リンダ
ドタバタラブコメディー開幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/66

吹奏楽部引退・そして受験勉強突入



『音が消えたあとも、君と』

プロローグ


――音楽は、終わっても消えない。


それは、楽器を置いたあとも、

誰かの声や、笑い方や、

ふとした沈黙の中に、残り続けるものだ。


温也はまだ、その意味を知らなかった。


第一章 文化祭前日、最後の音合わせ


体育館の照明が落とされ、

ステージの上だけが白く浮かび上がる。


譜面台が並び、椅子がきしむ。

いつも通りの風景なのに、

「最後」が近づいていることだけが、やけに重く感じられた。


「はい、そこ! トロンボーン、低音もっと前に出して!」


顧問の声が飛ぶ。


温也はスライドを構え、深く息を吸った。


――この音も、もうすぐ終わりや。


そう思った瞬間、

隣から小さな声がした。


「温也、さっきのフレーズ、めっちゃ良かった」


郷子だった。


楽器を抱えたまま、視線だけで笑ってくる。


「ほんま? それ聞けただけで、今日来た甲斐あったわ」


「単純すぎ」


でも、郷子は少し嬉しそうだった。


第二章 本番は、いつも想定外


文化祭当日。

体育館は、人で埋め尽くされていた。


「うわ……思ったより多い」


「大丈夫。音出したら、いつも通りや」


郷子の言葉に、温也は小さくうなずく。


一曲目、ルパン三世。

軽快で、派手で、少しふざけたジャズアレンジ。


――ガンッ。


温也のスライドが、後ろの椅子に当たった。


「……っ!」


客席がざわつく。


誰かが叫んだ。


「ルパンパーンチ!」


一瞬、頭が真っ白になる。


でも、止まらなかった。

止まれなかった。


(今は、音や)


郷子がちらっとこっちを見て、

ほんの一瞬だけ口角を上げる。


その表情に、救われた。


第三章 静かな曲ほど、心は騒ぐ


「糸」。


会場が一気に静まる。


柔らかい旋律が、体育館を満たしていく。


温也は思った。


――音楽って、こんなにも正直なんやな。


うまくいっても、

うまくいかなくても、

全部、そのまま出てしまう。


演奏が終わると、

割れるような拍手が起きた。


郷子は深く息を吐き、楽器を下ろす。


「……終わったね」


「うん。ええステージやった」


二人の視線が、ほんの一瞬、重なった。


第四章 引退、それは区切り


音楽室。

片付けが終わり、静けさが戻る。


顧問が言った。


「今日で、三年生は引退です」


その言葉が、はっきり胸に落ちる。


温也は前に出て、後輩たちを見た。


「俺、二年からこの学校来てな。正直、最初は不安しかなかった」


少し間を置く。


「でも、ここにおって良かったって、今はほんまに思う」


後輩たちが、うなずく。


郷子は、その背中を見ながら、

胸の奥がぎゅっとなった。


第五章 校門前、夕焼けの下で


秋の風が冷たい。


「なぁ、郷子」


温也が立ち止まる。


「ありがとうな」


「……急に何」


「全部や」


少し照れた笑顔。


郷子は、しばらく黙ってから言った。


「こちらこそ。温也がおらんかったら、ここまで楽しくなかった」


沈黙。

でも、不思議と心地いい。


「高校でもさ」


「うん」


「また、一緒に吹こう」


「……約束」


夕焼けの中、

二人の影が並んで伸びていた。


第六章 福岡・博多南からのビデオ通話


夜。

温也のスマホが震える。


画面がついた瞬間――


「みてー! ひかり、らっぱー!」


「ゆーこも! ぷーっ!」


画面いっぱいに映る、4歳の双子。


福岡・博多南の小倉家。


「ちょ、近い近い!」


画面の向こうで、美香の声がする。


「こら二人とも、落ち着きなさい!」


温也と郷子は、思わず笑った。


「せんぱい、がんばった?」


光子が聞く。


「うん。がんばったよ」


「えらーい!」


その一言で、

胸の奥がふっと軽くなる。


郷子は思った。


――遠くにいても、ちゃんとつながってる。


第七章 音楽のない午後、勉強の時間


11月。

郷子の部屋。


「温也、この化学の問題……」


「お、これはな」


机を並べ、ノートを広げる。


しばらくして、郷子がぽつりと聞いた。


「ねぇ」


「ん?」


「湯田温也×私って、何になると思う?」


温也は、迷わなかった。


「将来の夫婦やろ」


一瞬、空気が止まる。


「……っ!?!?」


郷子の顔が真っ赤になる。


「冗談……半分」


「半分て何!?」


二人は笑った。


でも、その笑いの中に、

確かな気持ちが混じっていた。


エピローグ(予告)


吹奏楽部は終わった。

でも、二人の物語は終わらない。


福岡で成長していく双子。

遠くから見守る美香。

高校という新しい舞台。


音が消えたあとも、

君となら、歩いていける。



【郷子の部屋・受験勉強中/爆笑度マシマシ版】


参考書、ノート、シャーペン、消しゴム。

机の上は受験生の戦場みたいに散らかっている。


郷子は化学の問題集をにらみつけて、うーんとうなった。


「……この化学式、ほんま意味わからん……」


温也は余裕ぶった顔で、ペンをくるっと回す。


「ほら、郷子。これはな、原子価がポイントや。こうやって合わせて――」


「うん、うん……」


温也が説明しながら、郷子のノートに手を伸ばす。

その距離が、じわじわ近い。


「ちょ、温也、近いって!」


「近ない近ない。ほら、ここ見てみ?」


「見える見える!息が当たる!」


「それは郷子が可愛い顔しとるけぇやろ」


ピタッ。


郷子のペンが止まった。


「……今、何言うた?」


温也は“やっちゃった”顔を一瞬だけしたが、すぐニヤッとする。


「いや、受験勉強って集中力いるやん? だから、可愛いなぁ思て――」


郷子、机をバン!と叩く。


「エロ温!!!」


「いやいやいや!どこがエロなん!?」


「勉強中に“可愛い”とか言うんがもうエロいんよ!」


「理不尽すぎるやろ!!」


郷子は赤くなりながらも、ノートで温也の肩をぺしぺし叩く。


「ほら、ちゃんと教えんさい!受験生の自覚持て!」


「自覚ある!俺いま世界一真面目に――」


「真面目な人は“可愛い”とか言わん!」


「言う人もおるわ!!」


二人の言い合いが最高潮に達した、その瞬間――


――ガチャ。


ドアが開いた。


「お兄ちゃん、これ学校のプリント……」


そこに立っていたのは、温也の妹・泉。

片手にプリント、もう片方に飲み物のコップ。


泉は一瞬、空気を読むどころか、空気を食べた。


「……え?」


郷子、凍る。

温也、凍る。

机の上のシャーペンだけが、コロコロ転がっていく。


泉の目が、ゆっくり温也に移動する。


「お兄ちゃん……今……」


郷子が焦って手を振る。


「ち、違うんよ泉ちゃん!これは、その、温也が勉強中に――」


温也も慌てて割り込む。


「いや、俺は別に――」


泉、じわじわ笑いをこらえながら、口を開く。


「……郷子さんが、今……」


一拍置いて、ドン。


「エロ温って言うたよね?」


沈黙。


郷子、耳まで真っ赤。


「そ、それはツッコミで……!」


温也、顔を覆う。


「ちょ、泉、聞き間違い――」


泉、にやぁっと笑う。


「聞き間違いなわけないやん。

だって、今この部屋、めちゃくちゃハッキリ響いたもん。

“エロ温!!!”って」


「うわぁぁぁぁ!!」温也、絶叫。


郷子は両手で顔を覆って、机に突っ伏す。


「もう無理……死ぬ……」


泉はプリントを机に置きながら、妙に落ち着いた声で言う。


「へぇ〜。受験勉強ってそういう“高度なプレイ”があるんや」


「ない!!!」


温也と郷子、声が完全にハモる。


泉はくすくす笑いながら、コップを置く。


「冗談冗談。

でも、名前は覚えた。エロ温ね」


「覚えんでええ!!!」温也。


郷子が顔を上げて、必死で説明する。


「泉ちゃん、ほんと違うんよ!温也が、距離近くて、変なこと言うけぇ……」


泉は“なるほど”って顔で頷く。


「つまり、お兄ちゃんが悪いんやね」


温也「えっ」


泉「勉強中にちょっかい出す=悪い

以上」


温也「判決早すぎん!?」


泉はプリントを指でトントン叩く。


「じゃあ、再発防止策ね。

お兄ちゃんは今日から、勉強中は郷子さんに“可愛い”禁止。

言うたら罰則」


温也「罰則て何!?」


泉、ニヤ。


「“エロ温”って、家族LINEに流す」


温也「やめろォォォ!!!!!」


郷子「それは私も困る!!!!!」


泉は二人の反応を見て満足げにうなずく。


「ほら、効くやん」


温也は机に突っ伏して呻く。


「もう俺の人生終わった……」


泉は肩をすくめる。


「終わってない終わってない。

受験終わったら、また続きすればいいじゃん」


「続きとかない!!!」郷子、即ツッコミ。


泉はドアの前まで歩いて、振り返る。


「じゃ、二人とも頑張ってね。

あ、ちなみに今日の晩ごはん、カレー。

エロ温のために、辛口にしとくね」


「辛口にすな!!」温也。


泉はドアを閉める直前、最後に一言。


「……でも郷子さん」


郷子「は、はい……?」


泉「エロ温って言えるの、もうだいぶ仲良しやん。

お兄ちゃん、ちょっと嬉しそうやったよ?」


温也「泉ーー!!余計なこと言うなーー!!」


バタン。


ドアが閉まる。


静寂。


しばらくして、郷子が小さくつぶやく。


「……ねぇ」


温也「……ん」


郷子「今日から“可愛い禁止”やけ、助かったね」


温也は顔を上げて、にやり。


「いや、禁止されるほど言いたくなるやろ」


郷子、即座にノートを掲げる。


「エロ温!!」


温也「まだ言うんかい!!」


二人は結局、笑いが止まらなくなって、

受験勉強はまた数分だけ中断された。


――でも、その笑い声は、

冬の部屋を少しだけあたたかくした。




登校途中。

郷子はマフラーを口元まで引き上げ、目を伏せて歩いていた。


(……昨日の私……何を叫んだん……)


脳内で、はっきり再生される。


「エロ温!!!」


しかも、

泉に聞かれた。

温也の妹に。


(人生で一番あかん聞かれ方……)


「おーい、郷子!」


後ろから温也の声。


「……っ!」


郷子は反射で歩く速度を上げる。


「なんで逃げるん!?」


「逃げてない!」


「声裏返っとる!」


「うるさい!」


追いついた温也が、いつも通りの距離で並ぶ。


郷子は顔を見ずに、前だけを見る。


「なぁ……」


温也が、わざと軽い声で言う。


「昨日の“エロ温”さ――」


郷子、即座に反応。


「言うなぁぁぁぁ!!!!!」


通学路の空気が一瞬止まる。


「……え?」


「いま、エロ……?」


「誰の話?」


郷子、魂が抜ける。


(ちょっと待って……朝から何を……!!)


温也は慌てて両手を振る。


「違う違う!!

今のは郷子の独り言やから!!」


「独り言の内容じゃないやろ!!」


郷子は温也の腕を引っ張り、

全力で角を曲がった。


【学校・廊下】


郷子、顔真っ赤で怒鳴る。


「あんた!!

なんでその単語を口に出すん!!」


温也、肩をすくめる。


「いや、郷子が言うたんやん」


「私は昨日の自分に言うとるん!!」


「ややこしい!」


郷子は頭を抱える。


「……もう無理……

泉ちゃんにどう思われたか思い出しただけで死ねる……」


温也は少しだけ真面目な顔になる。


「泉な」


「……」


「めっちゃ笑っとった」


「最悪!!」


「でもな」


温也は続ける。


「“仲良しやん”って」


郷子、動きが止まる。


「……仲良し……?」


温也、にやり。


「“エロ温”って言えるくらい仲良し、やって」


郷子、耳まで真っ赤。


「だから言うな!!

その単語を学校で!!」


温也「はいはい」


でも、顔が楽しそう。


【放課後・湯田家/リビング】


温也が帰宅すると、

ソファに泉が座っていた。


「おかえり〜」


その声、やけに軽い。


「……なぁ泉」


温也が警戒しながら聞く。


「昨日のこと、学校で誰かに言うてないよな?」


泉、きょとん。


「言ってないよ?」


温也、ほっと息をつく。


「……よかった……」


泉、ニヤッ。


「まだ」


「……は?」


泉はスマホを手に、くるっと回す。


「“エロ温”って呼び名が定着するかどうかは、

 お兄ちゃん次第やけどね」


「定着させんでええ!!」


泉は楽しそうに笑う。


「だってさ〜

勉強中にちょっかい出して、

女の子に真っ赤になってツッコまれる兄とか、

正直めっちゃ面白いもん」


「妹としての情は!?」


「あるある。

だから言ってない」


泉は急に真面目になる。


「でもさ」


「……何」


「受験終わるまでは、

ちゃんと我慢しぃよ」


温也「……はい」


【同日夜・郷子の部屋】


布団に潜り込んだ郷子は、

天井を見つめて悶えていた。


(エロ温……

なんであんな単語が口から……)


枕を抱えて、転がる。


(しかも泉ちゃんに……

どう思われたんやろ……)


スマホが震える。


【温也:】

今日は……その……

ほんまごめん。


郷子、しばらく既読を付けられない。


(謝られると余計恥ずかしいんやけど……)


深呼吸して、返信。


【郷子:】

……次からは、

勉強中にちょっかい禁止。


【温也:】

了解です。


数秒後。


【温也:】

でも一つだけ言わせて。


郷子、嫌な予感。


【郷子:】

なに。


【温也:】

“エロ温”って呼ばれたの、

ちょっとショックやったけど……


郷子、布団の中で身構える。


【温也:】

でも、

嫌いじゃなかった。


郷子「――――!!!!!」


スマホを放り投げ、

布団の中で転げ回る。


「もうやだぁぁぁぁ!!

恥ずかしすぎる!!!」


でも、

顔はにやけている。


(……ほんまに……

この人……)



【湯田家・夜/泉視点「兄がアホで面白い」】


リビングのソファ。

泉はひざにクッションを抱えて、テレビを見ているフリをしていた。


――ほんとは、違う。


(お兄ちゃん、今日帰ってきた瞬間から挙動不審やし)


玄関の音。

「ただいまー」の声が、やけに小さい。


泉はチラ見だけして、何も言わない。

泳いでる。目が。


(うわ、今日も引きずっとる)


温也が靴を脱ぎ、リビングに入ってくる。

そして、泉を見た瞬間だけピタッと止まる。


泉はわざと、普通の声。


「おかえり〜」


「……お、おう」


(はい、出た。“お、おう”)

泉は笑いを飲み込むのに必死だった。


温也は水を飲みに行くフリをして、

キッチンでゴソゴソ。

冷蔵庫を開けては閉め、開けては閉め。


(冷蔵庫と会話しよるん?)


泉はテレビの音量を少し上げるフリをしながら、

さりげなく言った。


「今日、学校どうやった?」


「ふつう」


即答。短い。

(ふつうの人は冷蔵庫3回開けん)


泉はゆっくり、仕留めにいく。


「ふつうってさ、郷子さんと一緒に帰ったん?」


温也、コップを落としそうになる。


「っ!? ち、違うし!」


(違うの即答早すぎやろ)


泉はにこにこ。


「へぇ〜。じゃあ、昨日の“エロ温”の件は、もう解決?」


――ビクゥッ!


温也の肩が大げさに跳ねた。


「泉、その単語、家で言うな!」


「なんで?家族でしょ?」


「家族でも言うな!!」


泉はクッションに顔をうずめて笑いそうになるのを耐える。


(やばい、最高。兄、ほんま最高)


温也は顔を真っ赤にして、ソファの反対側に座った。

距離をとる兄。


泉はその距離を見て、さらに楽しくなる。


「お兄ちゃんさ」


「……なんや」


泉は“純粋な妹”みたいな声を出す。


「勉強中にちょっかい出すの、ほんまにやめた方がいいよ」


温也「……はい」


(素直!!急に素直!!)


泉は追い打ち。


「だって郷子さん、受験生でしょ?

お兄ちゃんのちょっかいってさ、たぶん“害”だよ?」


温也「ぐっ……」


(ぐって言うた!)


泉はさらに畳みかける。


「しかもさぁ、郷子さんに“エロ温”って言われた時、

お兄ちゃん、ちょっと嬉しそうやったよね?」


温也「うるさい!!」


泉「嬉しそうやった」


温也「嬉しそうちゃう!」


泉「目、笑ってた」


温也「見てないやろ!!」


泉は“はぁ…”とため息をついて、

名探偵みたいに言った。


「これはもう、重症です」


温也「何のや!!」


泉は指を一本立てる。


「では、ここで泉ちゃんルール発表」


温也「やめろ、嫌な予感しかしない」


泉「受験終わるまで――

お兄ちゃんが郷子さんに“可愛い”とか言ったら」


温也「言わん言わん」


泉「言ったら」


温也「言わんって!」


泉はスマホを持ち上げ、ニヤァ。


「“エロ温発動”ってメモして、

お兄ちゃんの部屋のドアに貼る」


温也「最悪の掲示物やめろ!!」


泉「しかも太いマジックで」


温也「やめろォォォ!!」


泉は腹の底から笑った。

クッションに顔を埋めて、肩が震える。


(兄、ほんとあほで面白い。

そして私は、その兄を転がせて面白い)


温也は頭を抱えて呻く。


「俺、妹に人生握られとる……」


泉はケロッとした顔で言う。


「安心して。握るの得意」


温也「安心できる要素ゼロや!!」


泉はさらに優しい声で追い打ちする。


「でもね、お兄ちゃん」


「……なんや」


泉はわざと、しみじみ言った。


「ちょっかい出したくなるくらい、

郷子さんのこと好きなんでしょ?」


温也「……っ」


そこで一瞬、温也の勢いが止まった。


泉は勝ちを確信する。


(はい、図星。かわいい)


温也は小声でぼそっと言う。


「……うるさい」


泉は満面の笑み。


「うん。うるさい妹でごめんね」


温也「謝る顔じゃない」


泉は立ち上がって、冷蔵庫からプリンを取り出した。


「はい、エロ温」


温也「プリンと一緒に言うな!!」


泉「エロ温にはプリン。決まり」


温也「決まってない!!」


泉はプリンのフタをぺりっと開けながら、

今日一番の“いいこと”みたいに言う。


「でもさ、私思うんよね」


「……何を」


「お兄ちゃん、受験終わったら

ちゃんと告白しぃよ」


温也は一瞬だけ固まり、

次の瞬間、わざとらしく咳払いした。


「……その話は、やめよう」


泉はプリンを一口食べて、幸せそうに笑う。


(兄、ほんま単純。

照れたら咳払い。昭和か)


泉は心の中でガッツポーズした。


(よし。今日も兄を転がした。

明日も転がす。

お兄ちゃんはあほで面白い。

そして私は、それを見てるだけで楽しい)


テレビの音が流れる中、

泉はプリンを食べながら、

兄の赤い耳を横目で見てニヤニヤしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ