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山口に帰る

りんくうタウンにあるホテルの到着して、お風呂に入って疲れを落とした面々。部屋は瑞穂と郷子と泉・光と温也で別れての宿泊となった。

 お風呂に入りながら

「ねぇねぇ、郷子さんは高石は初めて?」

「うん。私は初めて来た。河内長野の方には何回か行ってるんじゃけどね」

「ここは工業地帯で、何も観光名所とかないけど、どうやった?」

「まだ少ししか見れてないけど、衣利子さんの家の周りは静かなところやねぇ」

「うん。私達もね、あのすぐ近くに住んでたんやけどね。もう誰かほかの家族が入ってるみたい。家はそのまま残ってたけどね」

「そうかぁ、じゃあ、泉ちゃんはあの家の近くの小学校に通ってたんかぁ」

「そう。高石市立高日小学校」

「結構生徒の数多かったんじゃない?」

「えぇとね、人学年につき3クラスあって、大体一クラス30人やったから、540人くらいかな?」

「へぇ、結構大きな学校やね」

 そんな話をしながら、お互いに体を洗いあって、郷子が泉の背中を流す。

「泉ちゃんはまた、ここに帰ってきたいって思ったりする?」

「今は山口の方が楽しいから、帰りたいとか、思わへんなぁ。それに郷子さんていう素敵なお姉さんが、すぐ近くにいてくれてるから、山口におりたいっていうか」

「ありがとうね。私も一人っ子じゃったから、泉ちゃんは、本当に妹みたいでかわいいって思ってる」

「じゃあ、今度は泉が背中流すね」

「ありがとう。それにしても広くて気持ちいいねぇ」

 そうして、心行くまで温まって、お風呂から上がった二人であった。


 温也は光と一緒に入浴していた。

「引っ越ししてから8か月が過ぎたけど、まだ俺たちが住んでた頃と、あまり変わってへんな」

「そうやなぁ。でも、2031年になにわ筋線が開通したら、この辺も大きく変わるんちゃうかなぁ」

「まぁな。新大阪から南海電車も直通電車が走るみたいやしな。それに十三から阪急電車も新規路線を建設して、阪急電車も、狭軌の線路を敷設して、南海と沿おう号直通運転するって話やしな」

「で、JR西日本はやっぱり京都方面へはるかを走らせるんやろ?」

「そうなるらしいで。関空快速はどうなるんやろうな」

「楽しみやな」

 そんなこんなで風呂から上がって、瑞穂も入浴が終わって、夕食を食べに行く。5人そろって、近くの居酒屋に向かう。

「いらっしゃいませ~」

 店員の威勢のいい声が聞こえる。まずは光と瑞穂はビールで乾杯。三人はソフトドリンクでの乾杯となった。

「明日は昼まで少し時間があるから、ちょっと高石によって、見て回らない?」

「いいけど、あまり見どころってないじゃん」

「違うって、郷子さんにもね、どんなところかしっかり見てもらった方がいいんじゃないかってね。なんたって、将来、温也のお嫁さんになる人やから」

「ブハッ」

 郷子が思わず吹き出してしまった。顔が真っ赤になっていくのが自分でもわかった。

「まぁ、そうですねぇ…。将来の旦那さんの故郷をしっかりこの眼で見てきますか」

 男性陣は何も言えず、温也や思いっきり照れていて、言葉が浮かんでこなかった。

「いいじゃんおにいちゃん。郷子さんにしっかりと、高石での思い出を話してあげたら?」

 泉がにやりとしながら、温也をからかう。

「そうやな。郷子さんにはこれから温也をしっかり見てもらわんとあかんしな」

 ということで、高石の温也の住んでいたところ周辺を見て回ることになった。


 翌日、朝7時過ぎに起きて、朝食を済ませた後、8時過ぎにホテルを出発して、アテンザに乗って、高石に向かう。高石について、スーパーに買い物によって、温也たち4人はまずは高石駅に向かった。

「ふーん。ここがあっくんたちが乗り降りしてた駅なんじゃね」

「そう。もうすぐしたら、関空行のラピートが通過するはずやから、切符買って、写真写すか」

 やがて列車接近のアナウンスが流れ、ターコイズブルーのラピートがやってきた。温也と郷子はスマホのカメラで写して、次は難波に向かう特急サザンがやってきて、何枚か写真に写して、そのほか、南海電車の写真を写して泉のところに戻った。そこへ車を停め終えた光と合流。光は駅から少し離れたところにある有料駐車場に停めて、この後住吉大社近くにあるお寺に墓参りに行く。やがて入線してきた難波行の普通列車に乗る。

 このあと住吉大社まで20分ほど。浜寺公園をすぎたらいったん高架を折りて、半壊電車の線路をアンダークロスして、諏訪ノ森で再び高架に駆け上がる。南海本線は難波を出ると湊まで、そして、浜寺公園から高石まで、松ノ浜から泉大津まで、そして岸和田周辺、貝塚周辺、泉佐野周辺が高架化されていて、関西地区では高架率の高い路線である。

 堺駅で後続の特急サザンや急行電車の退避を行って、大和川を渡って、住ノ江駅からは複々線となる。住吉大社駅で下車して、歩いて向う。お墓について、社務所でお墓の清掃道具などを受けとって、湯田家の墓に向かう。

「じいちゃん、ばあちゃん、久しぶりに来たよ。今日は郷子も一緒にきてる。これからも見守ってね」

 そう言いながら、皆としっほにはかの掃除を手伝う。冷たい北風が吹き抜けて、手先が冷たくなるが、きれいに掃除をして、皆で手を合わせる。

「あっくんのおじいちゃん・おばあちゃん初めまして。今日はあっくんご家族と一緒にお邪魔させてもらいました。これからよろしくお願いしますね。私達を見守ていてくださいね」

「おじいちゃん・おばあちゃん久しぶり。泉は元気やから、心配せんでね」

「親父・お袋、みんな元気にしてるさかい、安心してな。山口に引っ越しして、なかなか帰ってくる時間なかったけど、また来るからな」

「お義父さん・お義母さんお久しぶりです。みんな元気にしてますよ。今日は郷子さんも一緒にきてくれて。なかなかいい子ですよ。見守ってあげてくださいね」

 それぞれに願いをこめて、墓参りが終わって、住吉大社駅に戻って、南海電車に乗って、高石駅に戻る。

 高石駅に戻って、駅前スーパーのフードコートで昼食を摂って、そのあとアテンザを停めた駐車場まで歩いて行って、高石を離れる時間になって、衣利子の家に電話をかける。

「はいもしもし羽田です」

「湯田です。これから高石を離れますわ。昨日はお邪魔しました」

「いいえ。道中長いですから、気をつけて帰ってくださいねぇ。皆さんにもよろしゅうお伝えください」

「はい、ありがとうございます」

 そう言って、エンジンをかけて駐車場を出て、阪神高速に乗り、一路山口へ帰る。高速に乗ると、温也も郷子も泉も疲れたのか、寝息を立てて気持ちよさそうに寝ていた。阪神高速を60キロ前後で走って、13時ごろ大阪府を抜けて」、兵庫県内に入る。西宮名塩サービスエリアで最初の休憩。

「ちょっとトイレ休憩しようか」

「はーい」

 駐車区画に停めて、トイレに向かう。日曜日の昼下がりということもあって、結構込み合っている。15分ほど休憩して、神戸北ジャンクションからは山陽道に入る。山陽道は四国に向かうルートとも重なっていて、交通量が多く、中国道に比べると、やはり込み合うことが多い。そんな山陽道を走って、次に休憩をとったのが姫路にある白鳥サービスエリア。あちこちで休憩を取りながら帰って、山口に着いたのが20時ごろ。長旅であったが元気に帰宅して、荷物を降ろす。

「郷子さんお疲れやったね」

「いいえ。お父さんお母さんの方こそ、車の運転で疲れたんじゃないですか?」

「私たちは車の運転が好きやから大丈夫よ~」

「それではおやすみなさい」

「はーい。おやすみなさい」

 そうして、郷子は家に戻っていった。

「ただいまぁ。帰ったよ~」

「郷子おかえり。どうやった?温也君の故郷を見た感じは」

「あっくんの言う通り、工業地帯で、観光するところってなかったけど、静かなところで、衣利子さんのお父さんもお母さんも、すごくいい人やったよ」

「で、これが大阪のお土産。あっくんのお父さんとお母さんが買ってくれたの」

「おやまぁ、これは雷おこしやん」

「それと、551の豚まん買ってきたよ」

「ありがとうねぇ。明日の晩御飯にでも食べようか」

「うん」

「温也君のところに電話かけとこう」

 そう言って、望が温也の家に電話をかける。

「こんばんは。郷子がお世話になりました。それにお土産を買っていただいたって。ありがとうございます」

「いいえ~。郷子さんも喜んでましたよ」

 そうして電話を切って、郷子は入浴を済ませてベッドに入る。

「衣利子さん。無事に帰ってきたよ。またいつかお邪魔させてもらってもいいかな」

 そんな独り言をつぶやきながら、ベッドに横になっていると、やはり疲れていたのか、すぐに眠りに入った郷子であった。

 温也は家に入ると、小町を迎えに、預かってもらっていた近所の家に向かう。

「こんばんは。すいません。小町を預かっていただいて。これお土産です」

 そう言って、小町を預かってもらったお礼に、お土産を渡して、小町を迎えた。

「小町、帰ってきたぞ~。おぉかわいいかわいい」

 そう言って、小町の頭を撫でてやって、家の中に入る。玄関を開けると、小町は勢い良く家の中に入って、

「にゃーにゃー」

 と、しきりに鳴き声を出す。小町から見れば

「全くどこに行ってたのよ~。心配したんやからねぇ」

 なんて言ってるのかもしれない。荷物を自室に持って上がって、再び一階に降りると、小町とじゃれあった。猫のおもちゃを取り出して、小町と遊んでいると、泉がやってきた。

「こまちゃーん、ただいまぁ。会いたかったよ~。寂しくなかった~?」

 小町は甘えたように

「にゃーん」

 となく。そして、風呂に入って、疲れを落とすために早めに就寝した二人であった。

 その夜、温也は郷子と二人で高石に行っている夢を見た。結婚式を挙げるにあたって、挨拶をしに、衣利子の家にっている夢であった。

「僕たち、結婚します。それで、これは結婚式の招待状なんですけど、えりちゃんのお父さんと、お母さんに参加していただきたくて」

「まぁ、おめでとうございます。初めて郷子さんがここにきてから、何年かな?7年たつんかぁ。衣利子も喜んでると思うわ~」

「衣利子さんにも参加していただきたくて、衣利子さんのお席も用意しておりますので、皆さんの参加を心よりお持ちしております」

「ありがとうございます。衣利子も、二人の門出を楽しみにしてるんじゃないかな」

「本当におめでとうございます。私達にとっても、温也君は自分の息子のような気もしてたからね。もうみんな結婚する歳になってきたんやねぇ」

「もう俺たちは21歳やからねぇ。俺たちの同級生の中でも、結婚したのが何人かいますからね」

「5月5日やね。参加させていただきますからね」

「ありがとうございます」

 そんなことを話している夢であった。そうして、夜は更けて行って、いつもの生活が戻ってきた。


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