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夏休み。

 23日は、上山先生の家の用事で、吹奏楽部の練習は15時からになっているので、藍の所属するバレーの試合を観に着たのであるが、藍はもう開会式に臨むため、ユニフォームに着替えて、コートの中にいた。

「藍ちゃーん。今日の試合頑張ってねぇ~」

「藍ちゃんファイト~。絶対勝ってや~」

「郷子、温也君ありがとうねぇ。頑張るからぁ。今日は何時までおれるん?」

「15時から吹奏楽の練習があるから、14時過ぎにはここを出る~」

「わかった~」

 選手宣誓が終わって、開会式は滞りなく終了。山口第一中学は南中との対戦が組まれた。ファーストサーブは山口第一中のA子。相手のコート隅に落とす絶妙なサーブが決まって、幸先よく先生。さらにブロックポイントが決まるなど、3連続ポイントをあげてリード。相手のサーブをうまく拾って、藍がトスを上げて、3年生がバックアタックを見事に決めて、序盤は5-2とリード。時には意表を突く2アタックも決まり、次第に第一セットはリードを広げていく。

「いいぞ~。藍ちゃんナイストス」

「藍ちゃん、なかなか調子いいみたいやね」

 しかし、相手も次第に試合勘を取り戻してきて、サーブで崩すようなシーンもみられるようになり、だんだん追い上げられて、15-13と僅差になった。ここで第一中はタイムアウトを取る。少しあいてに流れが行きかけているので、完全に試合の流れを失わないために、タイムアウトを取って、その間に顧問が相手の誰をマークしなさいとか、フェイント攻撃や移動攻撃も、もう少し活用してもいいのではないかということを話し合って、再びコートに戻った。

「先輩、次のサーブを拾ったら、ブロード攻撃をしてもらえませんか、私がネットの左側にトスを上げますんで、お願いします」

「わかった。藍のトスを信頼してるからね」

「はい」

 相手がサーブを打ってくる。しかし思ったよりサーブが短くて、コートの真ん中より少し後ろのところに落ちそうになったが、それを懸命に拾い上げたのがA子であった。

 そのA子が挙げたボールを藍がネット左に挙げてコート真ん中あたりにいた3年のB美が左に移動して、そこから対角線上の相手コートの右隅にボールをたたき込んで再びリードを広げて、その後も大祭な攻撃を見せて24-18とセットポイントを握る。そしてサーブは藍。藍は相手コートの左隅を狙ってボールを撃ちこんで、サーブで崩して、チャンスボールが第一中コートに帰ってきた。そして、最後もブロード攻撃が決まって、25-18で第一セットを奪取。

「藍ちゃん、すごいねぇ。第一セットとったじゃん」

「藍ちゃん、このまま行ってまえ~」

 そして、ブレイクタイムを挟んで、第2セット。このままフルで出続けると、あとの試合の疲労も増してくるため、第2セットは藍はベンチスタート。A子がセッターに入って、1年生の戦力のアップも兼ねて、1年生が二人コートに入った。1年生も小学生時代に全国に出場した実力者で、出場する機会をうかがっていたのであるが、最初は緊張からか、硬さもみられたが、A子やB実の言葉がけもあって、次第に硬さも取れて、サーブやレシーブも決まるようになっていた。時にはA子が1年生にトスを上げて、アタックを決めさせるシーンもみられた。そして、15-12となったところで、A子がベンチに下がって、再び藍がコートに立つ。南中の選手も、藍のトスのうまさは警戒しているようで、まずは藍にトスをあげさせないようにするため、サーブで藍を狙ってきた。藍がサーブを受け止めて、2年生がトスを上げるのであるが、少しタイミングがずれたり、トスが長すぎたりして、うまくフィットしなくて、15-15の同点に追いつかれた。そこでタイムアウトを取って、顧問が

「少しトスが乱れてるな。もう少し、周りをよく見て、心持短めにトスを上げるように意識してみて。少しトスが長すぎる」

「わかりました」

「もう少し、手のひら全体でボールをあげるようにしてみたら、いいんじゃないかって思う。あれだけ私と一緒に練習してきたじゃん。もっと自信もっていいよ」

「ありがとう藍」

 そうして、藍を狙ってサーブを打ってきているということで、サーブを藍以外で拾うことにして、藍にトスを上げられるようにする対応をとった結果、再び試合の流れを取り戻して、徐々にリードを広げて、25-21で第2セットも取って、試合終了。このまま次の試合に備えるために、一旦控室に戻って藍たちはクールダウン。その後も勝ち進んで、24日の予選準決勝に勝ち進んだ。


 郷子と温也は藍の活躍を見届けながら、吹奏楽部の練習に向かったのであるが、

「俺たちも藍ちゃんにいい刺激貰ったよな」

「そう。私たちもコンクールの中国ブロック出場目指して頑張らんとね」

「まずは練習あるのみや~」

「あら?あっくんえらいまぁ、やる気なってんじゃん」

「そりゃそうよ。コンクールで中国ブロック出場とか、そうそうチャンスがあるわけやないからなぁ。なんとしても中国ブロック出るぞ」

「そうよね。絶対いけると信じてガンバロー」

 一旦家に帰って、準備を整えてから部室に向かう。そして、学校に向かった二人。校門近くでたかやんやながちゃんたちと一緒になって部室に向かう。

「2人ともどんな?だいぶいい感じになってきてるように思うけど」

「そうですねぇ。私たちは最初はあまり自信なかったですけど、今では暗譜できますよ。ねぇたかやん」

「そう、音符は頭の中にインプットされてまーす」

「そうかぁ、じゃあ、あとは本番でミスらんように気をつけるくらいやな」

「じゃあ、私部室のカギ受け取ってくるから、皆は先に上がっててくれる?」

「ほーい。先行くべェ」

 それからだんだん3年生の佐知子や和美・凛なども集まって、それぞれ楽器を取り出して、まずはマウスピースを唇に当てて音を出し。さらに楽器に装着して息を吹き込んで管を温めて、音を出して調子を確認しながら、ウォームアップが済むと木管楽器と合流して、チューニングを開始。上山先生もやってきて、まずは序章から第一楽章までを通しで演奏。この威風堂々は最初にサビの部分が来るためこの部分を重点的に練習しないと、後々のパートに響いてくるのである。

「凛、一番高い音が時々上がり切らんと気があるから、もう少し思いっきり息を吹き込むようにして吹いてみて」

「はーい」

「じゃあ、もう一回最初から第一楽章の終わりまで行くよ」

 軽快なリズムに載せ乍ら、音を一つ一つ刻んでいく。木管楽器も負けじと精一杯息を吹き込んで音を出す。そして奏でられる美しいハーモニー。上山先生も

「いいよいいよ~。その調子。佐知子、ファーストじゃからちょいしんどいかもしれんけど、もっと音を大きく出せるようにうなったら、もっといいホルンの響きになると思うよ~ガンバレ~」

 などと声をかける。フルート担当の大田道子(おおたみちこ富田海斗(とみたかいと)や、クラリネット担当の戸田小夜子(とださよこ福川巧介ふくがわこうすけ

 新南陽子にいなみようこアルトサックス担当の徳山周子とくやましゅうこテナーサックス担当の櫛田木綿子(くしだゆうこと息の合った演奏を見せて、第一楽章は上々の仕上がりとなっている。続いて入る第二楽章はそれまでのアップテンポな曲調から変わって、滑らかに繊細な演奏が求められる。第二楽章はホルンがほとんど主旋律を務めるので、ホルンの出来が第二楽章全体の出来栄えを握ると言ってもいいくらい、ホルンが重要なパートとなる。凛も佐知子も和美も今まで以上に熱が入っている感じで、美しく、繊細で息の合った演奏を見せる。この3人は小学生の時からのホルン仲間で、かれこれ一緒に演奏しだして6年になる。お互いに声にして出さなくても、お互いにアイコンタクトで分かり合える間柄であった。そうこうしてこの日の練習が終わって、17時過ぎに学校を出た。靴を履き替えていると、トシと藍が一緒に帰っているのを見かけて、声をかける。藍は今日の試合が終わって、一旦学校に集まってから解散となったようである。トシも野球の練習が終わって帰るところであった。

「よぉ。藍ちゃん今日はお疲れ。試合観に行ったけど、めっちゃ活躍してたやん」

「温也君ありがとうね。郷子も今日観に来てくれてありがとう。明日の準決勝に進んだよ。あと二つ勝てば予選突破。頑張るからねぇ」

「俺も藍の試合観に行きたかったなぁ。俺は野球の練習があったからなぁ」

「トシ君は将来甲子園に行くんじゃろ?私の試合見に来る暇があるんじゃったら、練習しないと高校に入ってレギュラー取れんよ」

「ほーい。まぁ、明日も練習頑張るとするかぁ」

「そうそう。藍ちゃんを甲子園に連れて行くんじゃろ?今から頑張っとかないと、勝てんよ」

「明日も強豪校と対戦するんじゃろ?藍ちゃんガンバレ~」

「うん。ありがとうね。じゃあ、こまちゃんの顔見たら帰るね」

「俺もこまちゃんの顔見ていこうっと」

 そうして、4人で湯田家にやってきて、玄関を開けると、小町が

「にゃ~ん」

 と甘えた声を出しながらとことことかけてきた。郷子が

「こまちゃんただいまぁ。いい子にしてた?」

「にゃお~ん」

「おうそうかそうか。いい子にしてたかぁ」

 藍やトシにもすり寄ってきて、皆から

「かわいい~」

 と言ってもらえて、小町もご機嫌であった。

「あ、そうだ。こまちゃんにいいものあげる」

 と言ってトシが取り出したのはネコジャラシ。トシがふらりふらりとネコジャラシを揺らすと、小町は何とか捕まえようと必死にジャンプを繰り出す。トシが

「ほらほら~。ここだぞ~」

 そう言うとトシの制服を駆け上って、腕を伝ってネコジャラシを捕まえて、ジャンプして降りて思うままに遊んでいた。

「やっぱり運動神経いいねぇ」

 そう言いながら、4人で遊んで、藍とトシは帰っていった。そして郷子も家に帰って夕食。大阪の伯父にラインで

「今度の8月4日に吹奏楽コンクールが周南市であるんじゃけど、伯父さんと伯母さんはこれんかなぁ。私たちが演奏してる姿、伯父さんたちにもみてほしいなって思うんじゃけど。それに私が今お付き合いさせてもらってる、温也君も紹介したいって思ってるし」

 と送ってみた。しばらくして

「郷子かぁ。元気かぁ?4日かぁ。ちょっと聞いてみるわ」

 という返信が来た。郷子も自分の頑張ってる姿を伯父や伯母にもみてほしいと思ったのである。それからまあたしばらくたってからラインが入った

「じゃあ、3日からそっちに泊めさせてもらうわ。郷子のハンサムな彼氏さんの顔も見てみたいしなぁ」

 そう書いてあった。郷子はちょっと恥ずかしさも感じながら

「ありがとう。会えるのを待っちょるからねぇ」

 それから望と桜に3日から大阪の草夫おじさんと美紀子おばちゃんが来ることになったということを伝えて、郷子はGW以来の再会を待ちわびているのであった。


 一方の温也も邦夫じいちゃんと梓ばあちゃんに4日のコンクールのことを伝えた。二人と周南だと近いので、ぜひ見に行くということで、当日は二人で電車に乗っていくということであった。こうして、郷子の伯父と伯母・温也の祖父母もコンクールを見に来るということが決まったのである。

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