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プロローグ 勇者ノ帰還
勇者。それは光の力を身体に纏い、闇を切り裂き、人々を照らす、そんな最も神に迫った人間。最も人々に親しく接し、その応酬として信頼と多大なる応援を貰い受ける人間。
そんな勇者が、9年の旅、魔界での49日の激闘の末魔王を倒して齢17で英雄となり、人々は彼女を讃えた。そして、王国平和記念祭が行われ、人々はその平和を思う存分噛み締めた。
祭りの終わりにさしかかり、王国全体が熱気の止まないまま、彼女はその華奢でありながら大地を踏みしめている足を台に乗せてお城のバルコニーから唸りをあげた。
「私は勇者として、魔界に行ってきた!!! 魔王にも会った!!! ………だけど、だけど誰も殺してはいない!!! あそこには魔物の心がある!! みんなとおんなじ、心がある!!! きっと、きっと仲良くなれる!! だから、私は魔界と友好関係を築きたい!!! みんな、協力してほしい!!! 」
………その日、人々は絶叫し、憤怒し、勇者は偽りと評されたまま、部屋へと幽閉された。