第89話 大怪盗ユウタ
スペースコロニーで偉い人の大事な物が何者かに盗まれるという前代未聞の大事件が発生した。激おこな偉い人、つまりルナ様はスペースコロニー全土に冒険者虐殺命令を下したのだった。
そして名探偵ユウタの名推理によって犯人が分かりました。犯人はボクです!
「あのあのっ、これはですね、全部ガチャが悪いんです。ボクは普通にガチャを引いたらルナ様のアイテムがいっぱい出て来たんですー」
『そんなの知らないニャ。特にあのプレミアムコスメセットは超激レアアイテムニャン。ミャーはそれを探して来るように言われてオミャーのところに来たのニャン』
「ガーン……」
ルナ様はボクが犯人だと分かっていたのだろう。そしてボクと仲の良いチロルを派遣したって事だ。友情とかじゃなくて単なる偵察だったって事か! せっかくお供が出来たのにスパイだったのはショックです……。
『まあ最初からオミャーが犯人って目星はついてたニャン。そしてルナ様から伝言ニャ。プレミアムコスメセットを返せば許してくれるそうニャ。優しいルナ様に感謝するニャン』
「……うっ」
七海さんが大喜びしているプレゼントを、『やっぱり返してくださいー』なんて言える訳がない。ここは返せないって事にして逃げ切ろう。
チロルを抱っこして説得する事にした。
「え、えっとね、あのアイテムはですねー、そのぉ、現実世界に持って帰っちゃったから返せないんですー。許してニャン!」
ふふふ、このあざとい感じでお願いするとみんな許してくれるのです。特に七海さんには効果抜群ですよ。『ユウ君可愛い食べちゃいたい』って感じでチュッチュしてくるのだ。
『オミャーがニャンって言っても可愛くないニャン! って、それより現実世界にアイテムを持って帰れる訳ないニャ。嘘言ってるとぶっ殺ニャンよ』
「う、嘘じゃないんですよー! その、ボクだけなのか知らないけど、持ち帰り金庫っていうアイテムがあるんです」
『持ち帰り金庫ニャ? そんなアイテム、スペースコロニーのデータベースにも登録されてないニャ。嘘吐いてもバレバレニャン』
「本当なんだって~」
くっ、まさか本当にボクだけの特別なアイテムってやつなのか。スペースコロニーにもギルドにも登録されない謎なアイテム、もう実物を見せるしかないな。
「分かったよ。ボクのスキル、アイテム召喚で金庫出すね」
『ニャニャっ、レアなスキル持ってるのニャ』
頭の中でアイテム召喚スキルを使いたいと願うと、目の前にディスプレイのようなものが浮かび上がった。今までゲットした事のある消耗品アイテムがズラーっとリスト化されており、その中の一番下に持ち帰り金庫があるのです。ポチっとな。
『ニャニャニャ!? 見た事のないアイテムが出て来たニャー!』
「ふふふ、これが持ち帰り金庫ですよ」
チロルがフレーメン反応をした猫ちゃんの顔で驚いていた。可愛い。
ボクには見慣れた金庫だけどチロルにとっては初めて見たアイテムらしく、地面に置かれた金庫をクンクンしたり猫パンチを繰り出したりしています。まさに猫ちゃんですねぇ。
『こ、これが持ち帰り金庫ニャン? こんな狭い入口にアイテムが入る訳ないニャン! こんな狭い……狭いところ……堪らないニャン……ちょっと、ちょっとだけ、先っぽだけなら……』
チロルがブツブツと何か言いながら金庫を検品している。猫ちゃんだから狭いところとか気になるのだろう。そう言えば友達の家にいた猫ちゃんも紙袋に顔を突っ込んでたなぁ……今のチロルと同じような感じです。
ほら、今も狭い金庫に顔を突っ込んで……えええぇぇ!? チロルが金庫に閉じ込められてしまった!!
『うにゃぁぁぁぁあぁああ!?』
「ち、チロルー!!!!」
チロルが顔を突っ込んだところニュルンと金庫に吸い込まれた。そしてパタンと蓋が閉じられ、ディスプレイに『施錠中』という文字が表示されてしまった。まるでドラゴンのボールを集めるアニメで炊飯器に封印される大魔王みたいな感じです。
金庫を開けようとバンバンと叩いたりしたけど反応が無い。マズイぞ……。そもそもこの金庫ってアイテム以外は入らないんじゃなかったっけ? チロルはアンドロイドだから非生物、つまりアイテム扱いですか!?
「…………しょうがない、チロル抜きで冒険を頑張ろう」
司令塔を失ったボクは、あっという間にやられてしまったのでした。
◇
「おかえりユウ君! じゃじゃ~ん、これがゴールデンアルティメットツナマグロのちゅる~んタワーだよ……って、猫ちゃんは?」
ガラス皿に盛られた金色に輝くちゅる~んタワーを持った恵美さんがお出迎えしてくれました。でも残念ながらチロルは金庫の中なのです。今頃はベッドの横にスタンバイしている事でしょう。
「……チロルは帰りました」
心苦しいけどそう言うしかなかった。
「えええええぇぇえええ!? これどうするのよー!」
「えっと、お金は払いますので許して下さいっ。責任もってボクが食べます!」
急いでギルマスに預けたお金を引き出し、仲介手数料を上乗せして返しました。まさかこんな事になるなんて……。
「あっ……これ凄く美味しいですよ。マグロのトロみたいです」
猫が食べるご飯は人間が食べても大丈夫ならしいですよ。だからきっとこれも大丈夫だと信じて食べて見ました。なかなかいけますね。
「え、本当? あたしも食べてみたいな~」
「どうぞどうぞ、あ~ん」
「もぐもぐ…………美味しい!」
さすが5万ゴールドもする高級ご飯ですよ。ガチャ10回分のご飯って聞くと更に美味しく思えてしまう。でもチロルはもう居ないのだ。せっかく助っ人が来たのにまた一人ぼっちになっちゃうのか……。
ちゅる~んを完食したボクは、ササっとステータスを更新して帰りました。ちなみに、レベルアップはありませんでした!
ギルドを出る時、後ろからギルマスが『スペースコロニー』とか『冒険者大虐殺』とか、そんな事を言っていたような気がしたけど、ボクは知らん振りをしておきました。
◇
「あ、ユウ君おはよう。昨日は楽しかったね♪」
「……おはようございます」
目が覚めるとそこは自宅じゃなかった。そう言えば昨夜はクリスマス、つまりSMバーが併設された隠れ家的なホテルに宿泊したのでした。部屋を見渡すと、昨晩ボクが拘束された十字架が目に付いた。あれは危険だった……。なぁ、愛棒?
七海さんが昨夜のソフトSMプレイを思い出して嬉しそうにしているが、それよりも金庫が気になった。余韻が冷めないのか、嬉しそうに抱き着いてくる七海さんを優しく躱して金庫を探した。
「あった……」
視線の先、金庫がテーブルの上で鎮座しているのが見えた。
「あれ、またお土産持って帰って来たんだ。うふふ、何が入ってるんだろ」
「あっ……」
全裸の美女がベッドから抜け出し、テーブルに向かって歩いて行く。背中を覆う綺麗な金髪、そしてプルンとした大きなお尻、そして股から垂れる白い塊……ゴクリ。
そんな七海さんの事をボクは見ている事しか出来なかった。パスワードを知っている彼女はポチポチと金庫を開けてしまったのだ。
そして……。
『うにゃーん!? ここはどこニャー!?』
どうやらボクは、またスペースコロニーからお宝を盗み出してしまったようだ。猫ちゃんだけどね!




