第88話 名探偵ユウタ
『違うニャ、ここは緊縛カードを使って凌ぐのニャ!』
耳元でニャーニャーと猫ちゃんが指示を飛ばして来る。
『どうして素手で殴るニャン!? オミャーはアホニャン!!』
そりゃあハロウィンコスプレJDのお胸を触るのは日課だからね。ログインボーナスみたいなものです。あの下乳をムニュムニュするのは止められません。分かるよね?
『ニャニャ!? 何で魔女っ子一人なのに眠りの杖を使うニャ!? しかもスカート覗くなんて変態ニャン!!』
これには深い訳があるのだ。どうやら最近新しい魔女っ子が増えたようなのです。目の前で寝ているのはバタフライちゃんです! 黄色い髪がエレガントでキャピキャピした可愛い子ですよ。やっぱり推しの子はスカートの中も入念にチェックが必要だよね。分かるだろ、愛棒?
今更だけど、助っ人と言いながら耳元でニャーニャーと指示を出す猫ちゃんはチロル先生です。
「ちょっとチロル、あんまし耳元で騒がないでよね。バタフライちゃんが起きちゃうでしょ?」
『ニャフ……こいつダメダメニャン。やっぱりオミャーはダメダメのダメ男、理想のヒモ生活を持つクズ野郎ニャン! でも悔しいけどアンドロイドには効果は抜群ニャ。見捨てられないニャーン』
チロルと一緒に冒険を始めたのは良かったのだけど、どうやらビアンカちゃんが全部攻略しちゃった前例が悪かったらしく、ダンジョン側に謎ルールが追加されてしまったのです。酒場で募集した仲間が本人よりも強すぎるヤバイ人だった場合、ガクンと能力が制限されちゃうらしいのだ。ゲームで良くある展開ですよ。強い敵が仲間になったと思ったら弱くなってるやつ。あるよね?
そんな事もあり、スペースコロニーでは最強に思えたチロルだけど、このダンジョンでは単なる普通の猫と同じくらいの能力に減らされてしまった。スライムにやられそうになってたからね。可愛い。
猫虐待みたいに思えて心が痛かったので、肩に乗せて司令塔ポジションで活躍中です。デバフ状態なチロルでもボクより賢いからアドバイスを貰っているのだ。きっと賢さが70くらいありそう。
「理想のヒモ生活って称号だけどさ、アンドロイドと何か関係あるの?」
『アンドロイドは人間をご奉仕するために創られたニャン。でもミャー達はグルメだからニャ、普通の人間なんて食指が動かないニャ。でもオミャーの称号は別ニャン。構って上げたくなるダメ男の香りがプンプンするニャー』
「えええぇぇ……」
ボクはダメ男の匂いがするらしいです。
「でもさ、人間にご奉仕するって言いながらスペースコロニーには人間が居ないよね。どうしてなの?」
せっかくだからスペースコロニーの謎に迫ろうと思う。アンドロイドが人間のマネをして生きる世界、そしてその世界を侵略する冒険者……そこには謎があるはずだ!
『オミャーになら話しても良いニャンね。遥か昔、オミャーが想像を絶するくらい昔の事ニャン――』
チロルが真剣な声で長い話をしてくれた。まあクソ長いから要約するとこんな感じらしい。
――遥か昔の事である。怠惰な人間達は自分達をご奉仕してくれる理想のメイドさんを作ろうとした。
昔の人がエチエチメイドさんを作ろうとしたらしい。まあ分からなくもない。ちなみに、ここでいう人間とは別の星の人らしいです。宇宙人って居るんだね。
――人類の英知を終結し、神に等しい女性アンドロイドを創り上げた。
良く分からないけど超ヤバイ性能のアンドロイドを作っちゃったらしいです。チロルの説明は難しくて理解出来ませんでした。つまりヤバイわよって事です。
――だがしかし、ここで大きな誤算があった。創り上げた彼女は神になってしまったのだ。そんな神に対して愚かな人間はエチエチご奉仕を要求した。その結果、彼女はプッツンしてしまった。大虐殺である。
神になったというのが良く分からないけど、漫画とかでよくあるパターンですね。きっとその女性アンドロイドにセクハラしまくったのだろう。『ぐへへ、今日は一晩中可愛がってやるぜぇ』とかそんな感じでハゲ親父に迫られるのだ。大虐殺っていうのはヤバイけど、セクハラの代償はデカかったって事かな。
――そして彼女は人類を滅ぼし、アンドロイドだけの理想郷を作り上げた。それがスペースコロニーである。
スペースコロニーでアンドロイドを造ったのはいいけど、反旗を翻されて殺されたと。もしかして人類の敵ってことでダンジョンに設定されちゃったのかな?
賢さが足りないボクの頭ではそれくらいしか理解出来なかった。
『そんな感じニャン。宇宙を彷徨うスペースコロニーでミャー達はあの御方に従って生活してるニャン』
「ふむふむ。あの御方ってのがその彼女な訳なんだね~。何となく分かった!」
『……絶対に理解してないニャ』
「そ、そんな事ないよ?」
猫ちゃんにまでジト目を向けられるとは思ってもみなかった。あのスペースコロニーには神のような女性アンドロイドが居るって事です。合ってるよね?
「よし、どんどん進んじゃうよー!」
『怪しいニャン』
猫ちゃんをモフモフして誤魔化し、眠ってる魔女っ子にセクハラしてから先に進みました。ああ、次は11階だ。こっから先は面白くないんだよなぁ。
◇
『その赤いキノコは爆発するニャ。もう攻撃しちゃダメニャ』
「えー、ほんとぅ? あと1発で倒せるって。そうしたら経験値ガッポガッポだよ?」
『止めるニャ、オミャーの攻撃力じゃギリギリ倒せないニャ……ギニャアアァァァ』
赤いキノコはHPが減ると自爆する。でもチロルはダンジョン初挑戦だからボクの勘を信じたのです。まあ結果はご覧の通り、大爆発ですよ。HPが半分になっちゃいました。回復薬は勿体無いから飲みません。お土産だからね!
「えへへ、ダメでした。サーセン!」
『うにゃーん! 酷い目に遭ったニャーン』
「ごめんってチロル、次は指示に従ってちゃんとやりますー!」
猫ちゃんが体をペロペロして毛繕いをしている。可愛い。チロルはあのスペースコロニーの住人なだけあって凄く賢かった。しっかりと指示に従えばクリア出来ちゃうかもしれないな!
そんな感じでチロルの指示に従って進んでいると、チロルが突然話題を変えて来た。
『実はニャ、今スペースコロニーで大変な事件が起きているニャン』
「……ほほう? 事件ですか。ボクで良ければ力になりますよ?」
これは名探偵ユウタに事件解決の依頼という事だろう。こう見えて毎週テレビアニメの猫探偵コニャンを見てるからね。シンクいっぱいの餡子で溺れて死んだ事件は難しかったけど推理には自信あります。むふー。
『とある偉大な御方の大事なモノが何者かに盗まれたニャン。アンドロイドでそんな事をするヤツはいないから、犯人は冒険者のはずニャ』
「なるほど……怪盗現るってやつですか~」
スペースコロニーを逃げ回る冒険者を探して連れて来いって事ですか。でもアンドロイドの監視能力は凄いはずだ。そんな中で偉い人からコッソリと盗み出す能力は只者じゃないですね……何か特殊なスキルを持った冒険者か? 透明化のスキルとか欲しいです。別にやましい事には使いませんよ?
『だから今はスペースコロニーに来る冒険者を片っ端からぶっ殺ニャン。冒険者に提供してやってるダンジョンテーマパークでも大虐殺ニャン』
「ひぃ!」
つまりそれだけヤバイモノを盗んだのだろう。誰が犯人なのか知らないけど、やっちまったなぁ!
『そう言えばメグちゃんが着けてたバレッタ、あれはどこで手に入れたニャ?』
「あ~、あれはガチャで出たんだよ。ルナ様のバレッタっていうアイテムなんだって~」
『うにゃ、もしかして他にも似たようなアイテムが出たニャン?』
「良く知ってるね。他にはルナ様のロンググローブとランジェリーセット、あとはプレミアムコスメセットかな。ボクは使わないからプレゼントしちゃったよ」
『なるほどニャーン』
チロルがウニャウニャと何か喋っている。何か気になる事でもあったのだろうか。
――名探偵ユウタも犯人像を思い浮かべて見た。
犯人はスペースコロニーを攻略する冒険者、そして最近スペースコロニーのレア物アイテムをゲットした人物……あれ、もしかして分かっちゃったかもしれない!
チラッとチロルを見るとニヤリと笑っている。そうか、チロルも犯人が分かったか。
頷き合い、同時に犯人を言った。
「犯人はボクー!?」
『お前が犯人ニャーン!!』
どうやらボクは盗賊にクラスチェンジしてしまったようだ。




