第79話 お金稼ぎ
警備ロボットの猫ちゃんことチロルと別れたボクは、王都と呼ばれる近未来的な街に侵入する事が出来た。街の入り口にある大きな門の前に居たカッコイイ男に呼び止められたけど、右手の甲を見せたら『クソ雑魚ユウタですね。どうぞお入り下さい』って言われたのだ。チロルっていう可愛い名前を付けてあげたのに、ボクはクソ雑魚ユウタで登録されてしまった。普通にユウタって言ってくれたらいいのに……。
そんな感じでオシャンティーな街を探検です。
「ふーむ、めっちゃ広そう」
まるで異世界の街に初めて来たラノベ主人公な気分だった。まあ異世界でよくある中世ヨーロッパとかそんな奴じゃなくて近未来的な感じだし、住民はみんなアンドロイドなのだ。襲われたりするテンプレ的な展開は無いだろう。無いよね?
門を抜けた先に巨大なディスプレイが表示されている。どうやら王都の地図のようだ。日本語なのは親切設計だけど、アンドロイドなら地図とか脳内にインプットされてるからこんなの必要無いんじゃないかな。
――猫ちゃんと別れる前に話した事を思い出した。
「ねえチロル、ここの人達は人間なの?」
開いた門から見える景色、そこには男性や女性、小さな子供、更には老人までいるようだ。ペットを連れて散歩している人や笑顔で談笑しているカップルがいれば、喧嘩している子供だっているのだ。どうみても人間にしか見えず、洋服だってボク達と変わらないのである。
もしかして宇宙に進出した移民とかそんな感じなのかな。スペースコロニーだし。
『この閉じられた世界に人間は居ないニャン。ここに居るのは人間の真似事をして楽しむアンドロイドが永遠の時を過ごしているだけニャン』
「アンドロイド……」
アンドロイドってアレでしょ、機械人間みたいなやつ。つまりここに居る人達はロボットって事になる。どう見ても人間にしか見えないけどね。
永遠の時を生きる機械か。何か難しい事を言っているけど賢さ6のボクにはチンプンカンプンだった。機械がコスプレして遊ぶ感じかな? そう言えばギャル店長のレモンちゃんからコスプレして遊ぼうってお誘いがあるのだ。どうしよう……。
そんな会話をしたのだった。
この街に生身の人間はボクだけであり、他の住民は全てアンドロイドなのだ。猫ちゃんロボットもいるけど、あれは警備ロボットらしいです。
「いっぱいあるなぁ」
ディスプレイには王都のマップが示されている。一番奥に王城があるけどボクじゃ入れないだろうし、最後に行ってみようかな。まずは近場のモール街にしよう。
マップだと距離がいまいち分からない。歩いて行ったら日が暮れてしまうかもしれない。なんか空飛ぶ車がビュンビュンと飛び交ってるけど、あれってタダで乗れるのかな?
タクシー乗り場っぽいところで暇そうにしているおっちゃんに話し掛けて見た。
「あの、モール街までおいくらですか?」
「ほう、奴隷じゃない冒険者が居るなんて珍しいな。モール街までなら1000クレジットで連れてってやろう」
「クレジットですか……?」
何ですかクレジットって。っていうか奴隷ってのも意味不明なんだけど。
「何だ、この世界に来るのは初めてか。この世界では冒険者の使うゴールドは何の役にも立たん。クレジットという電子マネーがないと何も出来ないぞ」
「そうなんですかぁ……」
せっかく猫ちゃんに住民登録して貰ったのにお金が無かった。こりゃ歩いて行くしかないかーと思ったら、おっちゃんの目が青く光った。まるで猫ちゃんがやったスキャンみたいだ。
「ほぉ、クソ雑魚ユウタって言うのか。せっかく住民になったのだ、ちょっとバイトして金を稼いでみないか?」
どうやら右手の甲をスキャンされたようだ。鑑定スキルみたいなやつだね。まあ知られて困る情報もないしいいんだけどね。でもクソ雑魚ユウタって言われるのは悔しいです。改名出来ませんかね?
「バイトおっけーなんですか? あっ、住民って事は税金とか取られたりしますか?」
「安心しろ、ここは無税だ。働いた金で好きに遊ぶのがここの流儀ってやつだ。働き先だって腐る程あるし、良かったらお前にピッタリなバイト先を紹介してやろう。どうだ、悪い話じゃないだろう?」
おっさんが胡散臭い顔で言ってきた。きっと罠にハメられて変な店に連れて行かれるのだ。もしかしたら地下闘技場に放り込まれてデスゲームとかありえる。ボク知ってるんだから!
「怪しいです……」
ジト目攻撃をしたら狼狽えていた。ふふ、ボクは賢いから簡単に引っ掛かりませんよ!!
「そ、そんな顔をするな。これは親切心で言ってるんだぞ? お前はこの街の事なんて何も知らないのだろう、バイト先に当てはあるのか? 俺の知り合いがモール街で店をやってるから紹介してやれる。…………まあ下心が無い訳じゃない。俺はバイト先にお前を紹介して小遣いが貰えるだ。お前はモール街までタダで行けてバイト先も見つかる。ほら、これならお互い損はないだろ?」
「なるほどー!」
疑ってごめんなさい、良いおっさんでした。見た目に騙されちゃダメですね。ボクはオッサンと握手を交わし、空飛ぶ車に乗り込んだ。
「おおお、凄いですねコレ。どうやって飛んでるんですか?」
普通の車と同じようにタイヤのあるタクシーに乗り込んだ。そしてシートベルトを装着したらフワ~っと浮き上がりました。揺れも感じないしスーっと軽やかに移動する車、こんなものが地球にあったら凄い事になりそうだ。っていうか他の車とぶつからないのかな?
「クソ雑魚ユウタ、お前は地球の冒険者だろう? そうだな、地球の車はどうやって動いているか説明出来るか」
「え、えっとぉ、ガソリンか電気で走ってますー!」
「ふふ、その程度しか分からない奴に言ったところで理解出来まい。大人しく空の旅を楽しんでいろ」
「ぐぬぬ……!」
もしかしてこの世界の住人は冒険者を馬鹿にしているのだろうか。猫ちゃんもボクの事を馬鹿にしていたもんね。
仕方ないので窓から景色を楽しむ事にした。
建物はどれも地球にあるビルとは構造が違って面白い。全面がガラスのようになって丸見えな建物まであるのだ。良く見ると中では野菜が栽培されていました。スペースコロニーだから地震とか関係ないのから自由に設計出来るのかもしれない。
「何か凄い人が集まってる場所がありますね。あれって何ですか?」
「ああ、あれが王都のダンジョンテーマパークだ。入場料さえ払えば一日遊べるぞ。中で色んなダンジョンを体験してポイントを稼ぐとオリジナルグッズと交換出来るんだ。あれは王都の住民専用だが、この世界には各地にダンジョンがある。そこは冒険者専用という決まりなんだ。普通の冒険者はそこで働き、報酬を得ている」
「はえー、すっごい」
つまりボクは特別で、王都の住民だからダンジョンテーマパークに行けるって事だね。バイトしてお金が貯まったらダンジョンテーマパークに行ってみようかな。
もしかして赤いゲートの先って色んな場所に通じているのかな。そうじゃないとこの世界に来たらみんな王都に行くもんね。
「もう着くぞ」
「おお、ここがモール街ですか。おっきいですねー」
銀座を更にオシャレにしたような建物がいっぱいある。銀座なんて行ったことないからイメージですよ? つまり煌びやかなお店がいっぱいあるの。ぐぬぬ、賢さが足りない。
スイスイスイーっと地上に向かって降りて行くと、一際大きな建物に横付けされた。ラスベガスのカジノみたいなゴージャス感ですよ。行ったことないから想像ですよ?
中から太っちょなマダムが出て来た。色んなアンドロイドが居て面白いね!
「久しぶりだな、マダム。新しいバイトを連れて来てやったぜ。驚け、奴隷じゃなく正式に住民として登録された冒険者だぞ。クソ雑魚ユウタ、降りて挨拶しろ」
これがお客に対する態度なのかと思ってしまうが、これも王都で遊ぶためなのだ。ここで逆らったところで勝てる訳ないし従いますよ。だってボク、ダンゴムシより弱いからね!
「えっと、ユウタですー! アルバイトしたいですー」
「ほお、こりゃたまげた。こんなアホっぽい冒険者は初めて見たね。これなら客もとれるだろう。ほれ、これが報酬だ」
「おう、サンキュー。じゃあクソ雑魚ユウタ、奴隷のようにいっぱいご奉仕するんだぞ」
「ど、奴隷……? ご奉仕……? あのあの、ここって何のお店なんですかー!?」
煌びやかなお店に入って行くお客を見ると、綺麗で若い女性が多かった。長い金髪が素敵なお姉さん、ちょっと気の強そうなお姉さん、そしてツンツンおっぱいのロリータまでいるのだった。
もしかしてここって……?
「なんだいなんだい、何も知らないで来たのかい? ここは女性を持て成す場所、いわゆる大人の社交場ってやつさね。報酬は時給プラス歩合制、客を取れなきゃ報酬は少ないから頑張るんだよ」
「な、なんだってー!? でもでも、ボクこういうのはちょっと……」
いわゆるホストクラブってやつですか? 女性を接待するやつでしょ? 面白い話をしたり、ウェーイって叫んだり、一気飲みさせられたり……。
しかも相手はアンドロイドです。ボクには無理です。良し、違うお店にしよう。
「おいおいおいおい、そりゃあ無いぜクソ雑魚ユウタ。もう俺は報酬を受け取っちまったからなぁ。もしここで働くのが嫌だって言うんなら運賃1000クレジット払いな。それが出来ないなら無賃乗車で奴隷落ちだぜ。どうするよ?」
「ぐぬぬ…………!!!」
タクシーのオッサンが下品な笑みを浮かべて言って来た。そうか、最初からこうなるようにハメられていたのかっ!!!
「わ、分かりました……」
そうしてボクはいかがわしいお店でバイトをする事になったのでした。




