第58話 トレーニンググッズ
持って帰って来たマジックバッグの検品も無事終了し、ホクホク顔のシオンちゃんが回復薬などの戦利品を持って帰って行きました。
七海さんにアドバイスをもらいながらお部屋のインテリアとか相談していたら、あっという間に時間が過ぎて行きました。このお家はリビング、キッチン、ダイニングの他に2部屋もあったのです。かなり広かったから物置部屋に出来そうな予感。
お昼ご飯はマッキュの残りを温めて食べました。ボクはお外に食べに行こうと提案したのですが、マッキュを食べてみたいというお嬢様のお願いを聞いた感じです。まあ出来立てじゃないし味が落ちるのは我慢してもらいましたよ。ボクはウマウマでしたけどね!
「あ、来たみたい。ちょっと待っててね~」
七海さんが業者さんからの電話を受けてやり取りをしていた。頼れるお姉さんなのは助かるけど、ヒモ生活は情けないから働いて稼ごうと思います。喫茶店のバイトも続けますよ。明日シフトに入れてもらいました。
姫ちゃんのEカップを想像してムフフと微笑んでいたら玄関に行った七海さんが屈強な男たちを連れて戻って来た。むさくるしいマッチョじゃなくてイケメンマッチョが勢揃いです。エリートマッチョかな?
「この青い段ボール箱はこっちの部屋で、赤い方はこっちにお願いします」
『イエス、マッスル!』
「搬入したらおしまいで結構です。処分品は後日まとめて引き取りでお願いしますね」
『イエス、マッスル!』
「では作業開始です」
『イエス、マッスル!』
5名のマッチョがポージングしながら息の合った返事をしていました。ボクはポカーンと見ている事しか出来ず、七海さんはにこやかに対応していました。
マッチョがバケツリレーの要領でテキパキと段ボール箱を移動させていく。よく見たらタンクトップには『むきむきマッチョ引越しセンター』って書いてある。
シュバババっと手際よく搬入を終わらせたマッチョが七海さんにハンコをもらって帰って行った。あれは凄い業者さんだ。
ギルマスとは違うタイプの細マッチョというのだろうか、イケメンで爽やかなマッチョがあんなに居る事にボクは衝撃を受けて放心してしまったのでした。
「どうしたのユウ君、荷物整理しよう?」
「あ、はーい!」
さて、ここから荷物整理です。変なものは無いのでご安心下さい。実はボク、病院でビアンカちゃんに会った時にあるお願いをしたのです。テレポートで回収するタイミングを逃したので、暗殺者の指輪を使ってコッソリとボロアパートに侵入して金の剣とかヤバいアイテムを処分して欲しいとお願いしました。
だからエッチな本とかは全部処分済みです。セーフ!
「あれ、でもどうして二部屋に荷物が別れているんですか?」
ボクが昨日使ったお部屋に青い段ボール箱、そのお隣の部屋に赤い段ボール箱が積まれていた。ボクの部屋は6個に対して、赤い箱は20個以上あるのだ。
「ふふっ、なに可笑しなこと言ってるのかな? こっちがユウ君の部屋でここが私の部屋だからだよ。私も最初は同じ部屋で寝起きしたかったんだけど、お母様から寝室は分けた方が良いって言われたの。いくらラブラブでもプライベートな時間は必要だもんね♪」
「え、ええええ! 七海さんと同棲ですか!? あのあのっ、聞いてないんですけど……」
まさかの同棲でした。昨日は七海さんが泊まらなかったのはお引越しの荷物整理だったのか!?
「別に同棲くらい言うまでも無いかなって思ってたんだけど。ほら、私達って結婚する訳じゃない? 今更かなって。それとも…………ユウ君は同棲、嫌なのかな?」
や、ヤバいぞ! 七海さんの目からハイライトが消えてダークな感じになってしまった!
ヤンデレさんは嫌いじゃないけど、七海さんには笑顔な美女で居て欲しいのです。
「全然嫌じゃないですー! ボク、女の子とお付き合いした事が無かったので驚いちゃいました。えへへ、嬉しいです」
「うんうん、私もユウ君と一緒に暮らせて嬉しい! 一緒に幸せになろうね♪」
満面の笑みを浮かべてギュッとハグされてしまいました。ああ、こんな美女と二人でイチャイチャライフがスタートです。
それに自分のお部屋があるから隠れてエッチなゲームだって出来るし、何も問題ないですね。
「それじゃあユウ君の荷物整理を手伝ってあげるね」
「はい、お願いしますー! 量が少ないからすぐに終わると思いますよ~」
危険なものは処分済みだからね、サクサクっと終わりますよ。
ボクの新しいお部屋はベッドにクローゼット、本棚、テレビとソファーがあります。前のお家が豚小屋のように思える広さです。
カッターナイフで段ボール箱の封を切り、パカっと開けると丁寧に畳まれたボクの洋服が出て来ました。
「じゃあこれを収納して貰っていいですか?」
「うん…………でもそれ、ちょっと痛んでるから新しいの買わない?」
確かに去年買った洋服だけど、シャツもまだ着れそうだ。ジーパンも綺麗だと思う。もしかしてこの猫ちゃんがプリントされたTシャツがダメなのか!?
そこでボクはキュピーンと閃いた。そう言えば七海さんはモデルさんでした。遠回しに『こんなダサイ服着るの? はぁ……離婚しよっか?』と言っているのだ!
美術の授業で2を取った事があるくらいダメダメなボクは大人しく七海さんに従う事にした。もちろん5段階評価ですよ?
「実は新しいの欲しいと思ってたんですよー! これは部屋着にするので、良かったら七海さんが選んでくれませんか?」
「うんっ、後で一緒にお買い物行こうね♪」
ふふ、どうやら正しい選択肢を選べたようだ。エッチなゲームで恋愛のイロハを勉強した成果が出ました。
それからノートパソコンや授業で使う道具などを収納した。あとは最後に残った箱をやっつけておしまいです。
鼻歌を歌いながらガムテープをサクッと切り裂き、宝箱を開ける感じでパカっと開けると、そこにはお宝がいっぱい詰まっていたのでした。
「…………ぇ?」
それはボクが夜中にトレーニングするグッズが勢揃いでした。愛棒をテカテカにコーティングしてカッコ良くするヌルヌルな液体が入ったボトル、愛棒を扱いて鍛え上げるための小さな穴が空いたシリコンで出来たトレーニンググッズ、そしてエッチが上手になるように勉強するための教科書がギッシリと詰められていたのだった。
ボクは急いで段ボール箱を封印した。ふぅ、どうやら七海さんは気付いていないようだ。
それにしてもおかしい、ボクはビアンカちゃんに『金の剣とかエッチな本とか、危険なやつの処分をお願いします』ってしっかりと伝えたのだ。
ビアンカちゃんも『おっけおっけ♪ ビアンカちゃんがしっかりと責任もって処分しておいてあげる~』って言っていたのだ。どうしてこうなった!?
「あれ、その箱の中身はしまわないの?」
「え、えっとぉ、これはこのまま収納しておくので大丈夫ですー!」
ボクは段ボール箱を持ち上げてクローゼットの奥に移動させようとした。でも七海さんの前を通過しようとした途端、おっぱいがボクの前に立ちはだかった。
「あのあのっ、ちょっと横にずれて欲しいかなーって、思いますー!」
「…………」
何故だろうか、七海さんが嬉しそうにボクを見ている。ボクは無言の圧力に屈してキョロキョロとしてしまう。
オロオロするボクを楽しんだ後、無言で段ボール箱の蓋をペロリと開けてしまったのだ。
「あれあれ~、ユウ君ったら私という彼女がいるのにこんなエッチなグッズを隠そうとしたのかな~?」
愛棒のトレーニンググッズ『ぷに穴ミラクルDX』を手に取りムニュムニュと揉みながらそう言って来た。あのトレーニンググッズは上級者向けらしく、愛棒さんはあっという間に負けてしまうのでした。
って、今はそれどころじゃない。ここで変に誤魔化しても悪い事になる未来しか見えないぞ。
ボクはエッチなゲームで学んだはずだ。こういう時どうすれば良いか……。
「え、えっとぉ、そのぉ、これはですね~」
「うんうん、これは~?」
ダメだ。全然良い案が浮かんでこない。握力トレーニングのようにぷに穴をムギュっと握ると、中の空気がポコっと出て変な音が部屋に響いている。実はあれ、非貫通式なのです。
現実逃避していたボクの頭に声が響いた。その言葉は賢さが6しかない脳にスーッと染み渡り、これが最適解とばかりに口から出て来た。
「実は……この箱にボクの性癖が詰まっているんです。その、七海さんにボクの性癖を知って貰えたら嬉しいですー!」
そう言って段ボール箱を七海さんにプレゼントしました。きっと七海さんは引かずに受け入れてくれるはずだ!
「うん、任せて。ユウ君の大好きなミニスカニーソなセーラー服も、バニーガールも、メイド服だって着てあげる」
「はいっ!!」
うへへ、スタイル抜群な七海さんのコスプレとか最高じゃないか!!
どうしてボクの好みを知っているのか分からないけど、そんな事はどうでも良いのです。
七海さんがゴソゴソと嬉しそうに箱の中身を物色していた。そして何やらボクの知らないものを取り出した。
「うふふ、ユウ君ってこういうのが好きなんだ~」
鎖の付いた手錠に首輪だった。そんなアイテムは見た事が無い。ボクはノーマルなエッチが好きなのだ。そりゃあちょっと七海さんをソフトに縛ってアンアンさせたいという気持ちはあるけど、あんな鎖や首輪はダメだと思います。
「あらあら、これがユウ君の性癖かぁ。なになに、『月刊めちゃシコ特別号 エッチなお姉さんに拘束されてドロドロに溶かされちゃう』に『れっつ早漏トレーニング♪ 年上のお姉さんに扱いてもらって鍛えちゃおう!』ね。分かった、これ見ていっぱい勉強しておくから楽しみにしててね♪」
「な、ななな、なんですかそれ……? ボク知らないですー」
「大丈夫だよ。私、ユウ君のためならどんなプレイも頑張るから! じゃあこれは預かっておくね~」
「あああ……」
七海さんが嬉しそうにお宝を抱えて出て行ってしまった。なんであんな本やグッズがあるんだ。もしかしてビアンカちゃんが入れたのか!?
『おにーちゃんのコレクションが微妙だからビアンカちゃんセレクションを詰めておいたよ♪』
どこからか、そんな声が聞こえたような気がした。




