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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
初級冒険者の章

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第57話 一級鑑定士のお仕事(薫視点):出張鑑定しちゃいます


 とある土曜日、僕は朝から絶対に逆らえない相手からの電話を受けてしまった。


 今週はビアンカ様の相手で心底疲れたので、葉月ちゃんとイチャイチャしながらゆっくりと静養しようと思ったのに……。


「……も、もしもし?」


『あら薫さん、随分とやる気のない声ですね』


「そ、そんな事はありません。それでご用件は?」


『何ですかその他人行儀な会話は。私と薫さんの仲じゃない、もっと親しい感じで会話してくれないと寂しいですよ』


「す、すみません。つい……」


 この言い方は絶対に裏がある。いつもの紫苑さんならこんな言い方はしないのである。『明日からアメリカに行くから付いてきなさい』とか一方的に言われるのである。


 もしかしてビアンカ様が絡んでいるのか? 正直なところ、しばらくビアンカ様と関わりたくなかった。


 でもこういう嫌な予感というのは良く当たるんだ。だってボクの今日の運勢に『休日出勤お疲れ様ですー! でも甘いもの食べれるよ? あと浮気はダメです!』って書いてあったのだ。浮気?


『葉月ちゃんが好きそうな美味しいお菓子が手に入ったの。良かったら遊びに来ない?』


「…………わかりました」


『ふふ、夕飯は好きなものを食べさせてあげるわ。待ってるわね』 


 そうしてプツンと電話が切れた。あくまでもお茶会をしようという提案だが、僕に電話を掛けて来たという事は鑑定が目的なのだろう。本当にお茶会をするだけなら葉月ちゃんに電話するはずだ。


「……薫さん、もしかしてお仕事ですか?」


 葉月ちゃんが悲しそうな顔で僕を見つめて来る。今日は久しぶりに映画デートをしようと前々から計画していたのだった。


 でも僕は葉月ちゃんを見て理解してしまった。今日の運勢に『今日はポップコーンから洋菓子食べ放題になりました!』って書いてあるのだ。


「紫苑さんからお茶会のお誘いを受けたんだ。葉月ちゃんも是非来て欲しいって。映画は明日に変更でもいいかな?」


「シオンちゃんですか!? 全然良いですよー! ああ、何着て行こっかな~。そうだ、私もお菓子買って行きましょう♪」


「…………」


 何故だろう、僕との映画デートよりも嬉しそうなのだった。




   ◇




 どうやら紫苑さんは天王寺スカイヒルズに居るらしい。ここに来るのは久しぶりな気がする。ビルの裏に引越し業者の車が数台止まっていたのが少し気になった。


 葉月ちゃんと和菓子や洋菓子をこれでもかと買い込んでお邪魔します。


「いらっしゃい二人とも」


「お邪魔します」


「シオンちゃん来ましたよー! ……って、シオンちゃんが綺麗になってます!」


 葉月ちゃんに言われて紫苑さんをジッと見つめた。肌のシワが無くなり張りがある。目元もシャープになっているのだ。更に髪質まで変わり、若き日の玲子さんを彷彿とさせる美しさだった。


 つい先日会った時と全然違うその姿に、僕は思わず目を見張ってしまったのだ。


「うふふ、こんなところで立ち話もあれですから上がって頂戴」


 若い頃、初めて紫苑さんに会った時のような凄いオーラを感じた。最近は表舞台には玲子さんを出すようにしていたが、もしかしたら復帰するのかもしれない。


 これから仕事が忙しくなる予感に頭を悩ませていると、リビングのソファーには更に僕の頭を悩ませる御方が居た。


「やっほー、葉月ちゃん♪ おじさまも元気ー?」


「キャー! ビアンカちゃんだ~。シオンちゃんのお家にいたんですね」


「…………」


 どうやら僕は来る場所を間違えたようだ。キャッキャウフフと盛り上がる女子会に来てしまった。


 そんな僕を見た紫苑さんが慰めるように肩に手を置いた。


「安心なさい。薫さんには大事なお仕事がありますからね」


「……あ、はい」


 やっぱり僕は鑑定するために呼ばれたのだった。





 それから女子会に混ざって甘いお菓子を頂きながらビアンカ様の話を聞いた。


「見てみて~、昨日恵子(けいこ)ちゃんと一緒にパンケーキ食べて来たんだよ~。ほら、すっごい山盛りの生クリームがいいでしょー! うへへ、これでフォロワーがめっちゃ増えたの~」


「うわ~、凄い美味しそうです! それにビアンカちゃんも可愛い~」


「あは♡ 今度葉月ちゃんも一緒に行こうね~」


「是非お願いします! そうだ、私もお勧めのお店あるんです。一緒に行きましょう♪」


「…………」


 恵子さんというのは紫苑さんの秘書である。きっとビアンカ様を一人で行動させるのに不安があったのだろう。お目付け役というやつだ。


 生クリームが山盛りのパンケーキ、パンケーキよりも生クリームがメインな感じである。こんな胃もたれしそうなものを見ながらケーキを食べているのだ。やはり女性を理解するにはまだまだレベルが足りないようだ。


 そもそも異世界の住人であるビアンカ様がインスタでフォロワーを増やそうと躍起になるのは大丈夫なのだろうか。例の掲示板でビアンカ様の名前が出ていたし、掲示板の住人が現実世界でビアンカ様を見つけるのは時間の問題のような気がする。


 まあ僕には関係のない事だ。全部紫苑さんが上手くやってくれるだろう。


「何を黄昏ているのです。ほら、まずはこれを鑑定して頂戴」


「……分かりました」


 不貞腐れてもしょうがないのでお仕事をする事にした。葉月ちゃんが楽しいのなら僕はそれで満足なのだ。


 紫苑さんが渡して来たのは妖しい日本刀だった。これは彼が夢の世界から持って帰ったアイテムなのだろうか。刀の事は良く知らないけど妖刀みたいな不気味さがある。



【マサムネ】

あー、なんだろ。これってカタナだっけ?

たぶんすっごく良く斬れると思うよ!

見た目はアレだけど呪われてないからご安心下さい。



「…………はい、これが鑑定結果です」


「はぁ、やっぱり薫さんの鑑定は人物特化なのねぇ」


 僕の鑑定は少し変わっていて、人物の時は色々と教えてくれるのに、物を鑑定すると凄く曖昧なのだ。


 ビアンカ様がチーズケーキを食べながら近づいて来た。


「おにーちゃんったらこんなものまで持って帰って来たんだね。それにしても凄い魔力が込められてるよ。やっぱりあっちの武器には魔力があるんだね~」


 ビアンカ様がファンタジーな話をしていた。確かに妖しい刀だけど、僕は実物の刀を初めて見るから違いが分からなかった。


「この妖しい雰囲気が魔力かしら?」


「そうだよー。金の剣より上物なマサムネだとこんなに魔力が溢れてるんだね。このまま放置しておくと魔力が勝手に変質して魅了の魔法に変わりそうかも。既にちょっと変わってるね~」


「魅了の魔法……それはどういう?」


「そのうちこれで斬りたくなっちゃうかも? ほら、シオンちゃんもこの刀が好きになったでしょ?」


「…………なるほど」


 まさに妖刀っていう訳か。確かにあの紫苑さんが刀にご執心というのは解せなかった。紫苑さんクラスのお金持ちになれば、いくらでもコレクションを集められるだろう。今まで刀なんて見向きもしなかったからね。


「ではこの解呪カードを使えばいいのかしら?」


 紫苑さんがまた別のアイテムを取り出した。名刺サイズのカードの表面には魔法陣がグルグルと描かれていた。



【解呪カード】

こ、これは呪いを解くカード!? 裏に『解呪』って書いてあるからね!

呪いって本当にあるんだよ~。

恨まれてる人って負の思念がどんどんと溜まって呪われちゃうの。

偉い人になれば尚更恨みを買いやすいからご注意下さい。

ちなみに、使い方は知りません!



「待って下さい紫苑さん。鑑定の結果こんな事が」


 メモ用紙に鑑定結果を書いてテーブルに広げた。実際にカードを持って裏面を見れば、鑑定結果と同じように解呪という文字が書かれていた。


 呪いというのがどういったものなのか分からないけど、紫苑さんは色々と恨みを買ってそうだ。僕の鑑定を使ってヤンチャしてたもんなぁ。


「ビアンカさん、このカードの使い方はご存知かしら?」


「そりゃサキュバスクイーンのビアンカちゃんは博識だからね。でも、分かるでしょ~?」


 ビアンカ様がニヤリと笑った。きっと何か取引を持ち掛けているのだろう。パンケーキの次は何だろう。


「もちろんよ。何が良いかしら?」


 紫苑さんが笑っているけど目が笑っていない。これが百戦錬磨な女帝の凄さだ。


「うひひ、シオンちゃんには良くして貰ってるからね。今回はサービスしてあげる。まずこのマサムネの魔力を私が貰ってあげるね」


 そう言うとビアンカ様が刀を手に取った。しばらくした後、刀が一瞬だけ青白く光ったような気がした。


「はい、これでただの刀になったから安心だよー。もしおにーちゃんがあっちの世界の武器を持って帰ったらすぐに教えてね。それとおにーちゃんに斬鉄剣だけは持って帰るなって言っておいて。死人が出るから」


「……分かりました」


 こんな真剣な表情のビアンカ様は初めて見た。そして斬鉄剣という危険なワードが怖かったのだ。きっとこの刀以上に危険な代物なのだろう。


「あ~こんなに濃厚な魔力が貰えるなんて思ってもみなかった。ヤバい、凄くエッチしたい気分♡」


「……っ!?」


 ビアンカ様からピンク色のオーラが湧き出したような気がした。甘い強烈な香りが僕を包む。


 何故だろう、股間がテントを張っていたのだ。


「痛っ! は、葉月ちゃん?」


「浮気はダメです」


「そ、そんな事しないよ」


「許せません」


「ほんとだって! 僕は葉月ちゃん一筋だからっ」


 葉月ちゃんに抓られて正気を取り戻した。ビアンカ様の色気は危険だけど、今は葉月ちゃんのご機嫌を戻す方が大変だ。だって股間のテントを見られちゃったからね。


 僕が必死に葉月ちゃんを宥める傍らで紫苑さんとビアンカ様が何か儀式をしていた。


「シオンちゃんはちょっとだけ呪われてるかな? 肩の辺りに黒いモヤモヤが見えるんだよね~。まあシオンちゃんは強いから問題ないけど解呪してあげる。聖域カードがあったら最高なんだけど、それは今度ねー」


 ビアンカ様が持つカードが青白く光り出した。そしてその光が紫苑さんを包み込んだ。


 カードがサラサラと霧のように溶ける瞬間、いくつもの青白い小さな光が窓を抜けて飛び出していったように見えた。その光の玉が飛んで行く先には、僕と葉月ちゃんも含まれていた。


 光が当たった瞬間、何かホカホカと暖かくなったような気がしたのだ。


「はい、これでオッケーだよ。予想以上に魔力貰っちゃったからサービスしといた。シオンちゃんが大事に思ってる人にもお裾分けだよ♪」


「ありがとう」


 きっと今の光がそうなのだろう。つまり僕達は紫苑さんに大事に思われているのか。葉月ちゃんにポカポカと優しく叩かれながらそんな事を思ってしまった。


 そうして出張鑑定に来た僕だけど、物の鑑定は全く役に立たない事が良く分かった。ほとんどビアンカ様が教えてくれました。まあでも、せっかくだからメモだけは残しておこうと思う。




【回復薬】

うーん、赤いトマトジュースみたいだね?

飲むと元気になるっぽいよ!


※ビアンカ様の証言を追記※

ちょっとした回復魔法と同じくらいの効果があるよ。

飲む量にも依るけど骨折くらいまでは一瞬で治るかも。




【上級回復薬】

うーん、緑色でメロンソーダみたいだね?

飲むと凄く元気になるっぽいよ!


※ビアンカ様の証言を追記※

上級の回復魔法と同じくらいの効果があるね。

飲む量にも依るけど死に掛けた人間も一瞬で治るかも。

部位損失も治るよ。ニョキニョキ生えてくるの楽しいよ? 




【解毒薬】

うーん、紫色だけどライムソーダ味っぽいよ?

飲むと病気が治るっぽい!


※ビアンカ様の証言を追記※

普通の風邪なら1滴でも舐めればすぐに治るかも。

飲む量にも依るけど、現代医療で治せない難病もコレで全部いけるんじゃないかな。しらんけど。




【目薬】

これはクールタイプです!

すんごく冷たい感じになるよ。


※ビアンカ様の証言を追記※

1滴垂らせば視力が2.0にまで回復するよ!

あと、盲目の状態異常も回復するから失明した人にも効果があるかも?




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