第54話 実験
「ヤバイ、めっちゃ順調だ。これならクリア出来そうな予感!」
ギルドで夏子さんのおっぱいをマッサージ……じゃなくて時魔法を使ってMPを全部使い果たしたボクは、意気揚々と黒いゲートに飛び込んだ。この夢の世界に来れるようになってからというもの、今までの人生が何だったのかと言わんばかりに女性運が急上昇している気がする。
そして今日のボクはダンジョンの中でも運が良い。1階から素敵なアイテムをいっぱい拾えてサクサクと冒険が進んでいるのです。7階まで来てこんな感じ。
【マジックバッグ】
・ビッグマッキュセット
・チーズマッキュセット
・マサムネ+2(装備中)
・防護盾+3(装備中)
・鍋の蓋
・透視の指輪(装備中)
・大粒ダイヤモンドの指輪
・回復薬
・上級回復薬
・上級回復薬
・解毒薬
・目薬
・解呪カード
・持ち帰り金庫
【初心者ユウタ】
最深階:10
満腹度:55%
剣の強さ:10
盾の強さ:11
ちから:9/9
経験値:273
「レベルも7あるし食糧もある。こりゃ中級冒険者カードゲット出来ちゃうな!」
もうボクはご機嫌だった。なんと持ち帰り金庫まであるのです。そして新しくゲットした装備はなかなかの性能でしたよ。初めて拾ったアイテムだけど、初級冒険者になってバージョンアップされたのかな?
【マサムネ+2】
刀工正宗が鍛え上げた幻の打刀です。無銘だけど偽物じゃないよ?
アホな子がブンブン振り回してるけど、天下五剣と並ぶ傑作ですよー!
【防護盾+3】
機動隊が装備するジュラルミン製の盾です。
残念ながら防弾性能はありません。先行者の矢だって貫通するからね!
【透視の指輪】
罠や隠れた敵を見る事が出来る魔法の指輪。
これがあれば目薬は要りません!
「マサムネカッコイイ!!」
まずはゲームでお馴染みのマサムネです。斬鉄剣パイセンのような神秘的な輝きはないけれど、刃渡り70cmくらいある刀身は妖しい刃文を描いていた。見ているだけで斬られそうな怖さがある刀ですよ。
次に防護盾という名の銀色のタワーシールドみたいなやつ。体をすっぽりと隠せるくらい大きいけどダンジョンの中では重さが無いのです。てっきり透明な盾かと思ったけど違いました。でもバリアシステム先生に近い防御力です。
そして最後が透視の指輪です。これの良いところは罠が見える事です。落とし穴とか地雷といった危険な罠が丸見えなのでした。隠れた敵っていうのは知らないから10階よりも先で出て来るのかもしれない。
「持ち帰り金庫かぁ。ギルマスも知らないアイテムだしボクだけが拾えるのかな? それにしても毎回のように拾ってる気がする……」
黒い金庫が扉を開けた状態で鎮座している。説明書によるとアイテムを1個だけ持って帰れるらしいんだよね。色々と気になる事があるけど掲示板で聞いても無駄だろうし、ボクが実験するしかないのかなぁ。
賢さ6のボクでも実験出来るかな。だってボク、中学生の頃に理科の実験でビーカーを盛大に落として割った功績がありますからね。何の液体か忘れたけど異臭騒ぎになったのです。
【持ち帰り金庫】
これに入れておけば絶対安心!
でも金庫には1個しかアイテム入れられないからご注意を。
取り出したら金庫は消えます♪
「ふむ、アイテムって書いてあるからモンスターは入らないよね。まあモンスターを持って帰っても危険なだけだ」
ハロウィンコスプレJDをお持ち帰りしてワンナイトラブとか一瞬考えたけど、今のボクには七海さんという彼女が居るのだ。エイリアンとか持って帰ったら分裂して地球が侵略されちゃうかもしれないね!
って事はやっぱりアイテムを持って帰るしかないな。今日はクリア出来る予感がするから最後に考えよう。
「…………待てよ?」
持ち帰り金庫をマジックバッグにしまおうとした瞬間、ユウタブレインがキュピーンと閃いた。このマジックバッグを金庫に入れたらどうなるのだろうかと。
安全のため周囲を見渡したが敵は居ない。こりゃ実験するしかないな!
『マジックバッグ』という刺繡がされた肩掛け鞄を外して金庫に入れて見た。
「ふふ、いくらアイテム1個って書いてあるからって入る訳ないよねっ……………………ええええぇぇぇえ!! 入っちゃったよ!?」
金庫の開いた扉に鞄を近づけたらキュピーンと金庫が光って吸い込まれてしまった。そしてパタリと扉が閉じてしまったのです。
液晶パネルには『施錠中』という文字が表示されているだけで暗証番号を入力する画面が無いのでした。
ボクは大部屋の中でポツンと金庫を持って立ち尽くし、ポカーンと口を開ける事しか出来なかった。
「あれ、装備品が無い!? なんでー!?」
最悪な事に装備していたはずのマサムネも防護盾も、そして透視の指輪さえも無くなっていた。
落ち着け、まだ慌てる時間じゃない…………深呼吸をしてステータスを確認してみた。
【初心者ユウタ】
最深階:10
満腹度:54%
剣の強さ:0
盾の強さ:0
ちから:9/9
経験値:273
「…………ゼロになってるー」
剣も盾も装備していない事になっていた。そう言えば装備品は手に持っているのにマジックバッグの中身を見た時に表示されていた。つまりマジックバッグを金庫に入れたから装備品も無くなったという事なのだろう。
ボクは金庫を持ってウロウロしてみた。もう前に進むしかないのである。
『ブブブブブブブブ……』
「ひぃ!?」
通路の先から虫の羽音が聞こえて来た。あの大きな音はキラービーという大人サイズの蜂が飛ぶ音なのだ。大人の玩具が震える音だったら良かったのに……。
キラービーは倍速行動をする訳でもなく特殊攻撃もしてこない。でもやたらと攻撃力が高いのである。極太な針で刺されたら穴が空きそうだよねー。
『ブブブブブブブブ……』
逃げようとしたけど反対側の通路からもキラービーが来ていた。これが絶体絶命ってやつである。装備的にクリア出来そうなくらい順調だったのに……。
どうか金庫が無事に届きますように…………そうしてボクの冒険は終わったのだった。
◇
「おう、ダメだったか」
「マサムネと防護盾を拾ったんですけどダメでしたー」
ギルドに戻ってきた。ニヤニヤした顔でボクを見るギルマスがウザかったけど今はそれどころじゃないのだ。急いで所持品を確認した。
持ち帰り金庫は無かったけど、愛用しているマジックバッグは肩掛け状態で装備されていたのだ。中身は空っぽだったけど、どうやらギルドに戻ると新品に交換されるのだろう。
「…………良かった!」
「クリア出来なかったのに喜ぶとはアホな奴だな。ああ、ゴールドがたくさん拾えたのか。お前はレベルが低いからな、低いうちはポンポンとレベル上がって楽しいのは分かるぞ」
「そ、そうですねー!」
そう言えばゴールドはマジックバッグとは別な場所に保管されているのを思い出した。
さてと、リザルトを確認です。
【累計スコア:24,871G】
おめでとうございます。レベルアップしました。
好きなステータスにボーナスポイントを割り振って下さい。
レベル:7(+1)
HP:47(+5)
MP:5(+2)
ちから:16
みのまもり:12
すばやさ:16(+1)
かしこさ:6
きようさ:14
みりょく:52(+1)(+1BP)
うんのよさ:99(+2)
称号:サキュバスクイーン・ビアンカの伴侶
スキル
・自然治癒力強化:中
・テレポート
・時魔法
「身の守りと賢さが上がらない……だと!?」
ボーナスポイントは魅力を上げました。もうボクには魅力を上げるしか道はないのです。運が99になっちゃったけど、100以上行くのかな? あと地味にMPが増えたのが嬉しいですね。
素早さが上がっちゃったから愛棒のスキル『早撃ち』が勝手に発動する確率が高まった。もう時魔法頼りの戦法でしか戦えそうにないな……頼んだぞ、愛棒。




