第53話 売り切れ
「おう、やっと来たか。初級冒険者になったくらいでサボりとは随分と良い身分になったもんだなぁおい。っていうかケガはどうした? もう治ったのか!?」
「えへへ、昨日はちょっと寝れなくて朝まで起きてたらギルドに来れなかったんですー。ケガはその、自然治癒力スキルのお陰ですかね? ご飯いっぱい食べたら治りましたー!」
どうやら今日は普通にギルドに来れたようだ。ギルマスにお小言を言われてしまったが甘んじて受け入れましょう。だってビアンカちゃんと時魔法を使ったエチエチレッスンをしていたなんて言えないからね!
それと上級回復薬を持って帰った事は内緒なのでスキルのお陰にしておきました。 マッチョの鋭い視線が痛いけど気にしません。
「……まあいい。さっさと27階行って中級冒険者カードを拾って来い。早くしないとビアンカに絞られるぞ」
「らじゃー!」
既に絞られたなんて言えませんでした。ふへへ。
昼間は新居の説明を受けたあの後、七海さんがお泊りして童貞卒業かと期待したのですが、シオンちゃんからエステ行って来いと言われた七海さんが渋々帰って行ったのです。帰り際に『明日は楽しみにしててね♡』って言われたので、ついに童貞卒業しちゃうかもしれませんね。頑張ろうぜ、愛棒!
適当にお外でご飯を食べてシャワーを浴びてバタンキューです。新居のベッドはフカフカであっという間に寝落ちしてしまったのでした。
「そう言えばギルマスー、お金っていくらありますか? 欲しいものがあるんですよね~」
「ふむ、残高は14,447Gだな。ガチャでも引くのか?」
「引きたいですけどちょっと検討中です」
「まあお前の運も尽きただろうしな。どうせゴミしか出ないぞ」
ギルマスに馬鹿にされてしまったが3連続で良いものが当たるのはなかなか無いんじゃないかと思う。それにボク、全然スキルとか使いこなせていない気がするのだ。あ、そう言えばお引越ししたからテレポートの登録先を変更しなきゃ。やる事いっぱいあるなぁ。
それと残高が思ったよりも少なかった。ギルドに売ってる幸せの薬は100万Gだ。ポチ袋をたくさん倒したとしてもこの調子だと1年以上掛かる計算かな……。
「そうだギルマス、ちょっと聞きたい事があるんですよねー」
「ほう? 童貞なお前でも初級冒険者になったからな、余程の事じゃない限り答えてやろう」
最初の頃はマッチョだけど優しいギルマスだと思ったのに、いつの間にかボクを見下す下種なゴリラになってしまいました。残虐非道なプレイでビアンカちゃんに弄ばれた事で頭がおかしくなっちゃったんだね。ボクはビアンカちゃんとイチャラブエッチする予定なのでご安心ください。
童貞卒業も時間の問題だし全てが順調だな!
「えっとですね、近いうちに二人プレイをする予定なんですけど、二人だとどんな感じでダンジョンアタックするんですか?」
「二人プレイだとぉ~? どこで聞いたのか知らんが童貞なお前には無理な話だな。そんな夢物語を期待するのは止めてさっさと中級冒険者カードを拾って来い。そうすれば残虐非道なビアンカがお前の童貞を貰ってくれるぞ」
「ぐぬぬぬぬ、夢物語なんかじゃありませんよー! ボクは明日、童貞卒業するんですぅ~」
「ガハハハッ!! 付き合ってまだ三日も経っていないだろうにヘタレなお前が童貞卒業だと? ハハッ、これは傑作だな! なら明日彼女を連れて来たらご祝儀にガチャコインを10枚恵んでやろう。無理だろうけどな、ガハハハッ!!」
お腹を押さえて大笑いするギルマスがウザかった。クソ、こうなったら明日は土下座してでも童貞卒業するしかないな。でも明日はホッシーと飲み会の予定があったような?
まあ明日の事は明日考えよう。今はシオンちゃんのクエスト達成に向けて情報収集だ。
「もういいです。ガチャコインの件、忘れないで下さいよ! じゃあ次の質問ですけど、幸せの薬ってどこでゲットできるんですか?」
今までのダンジョン攻略で拾った事の無い怪しいおクスリです。きっとレアなのだろう。
「幸せの薬か……確かにあれは誰もが欲しいと思うだろう。俺だって手に入るなら死に物狂いで狙うからな。先週奇跡的に入荷した奴も一瞬で売り切れてたしな」
「えっ、売り切れですか!? 夏子さーん!!」
ボクは急いで夏子さんが居るショップに向かった。エプロン姿の夏子さんは今日も綺麗です。
「酷いじゃないユウタ君! 昨日はどうして会いに来てくれなかったの~? アレは毎日欠かさずやらないとダメなのよー」
夏子さんがプリプリと怒っていらっしゃる。若さを求める女性には大事なのだろう。ユウタ反省。
「ごめんなさいー! 後でしっかりとケアしますので許して下さい。って、そうじゃなくて幸せの薬って売り切れなんですか?」
「そうなのよね。いつの間にか売り切れちゃってたわ。ショップの在庫は全ギルド共通だから欲しいものがあったら迷わず買うといいわよ~」
「な、何てことだ……」
まさか売り切れがあるなんて思ってもみなかった。今更ながらゲームと違うんだと理解した。ヤバいぞ、これじゃシオンちゃんのクエストが達成できない!
ガッカリと項垂れているボクにギルマスが声を掛けて来た。
「お前も幸せの薬が欲しいのか。幸せの薬はな、赤いゲートの先にある古代エルフの森で入手するしかないんだ。ダンジョンのレベルとしてはそう難しいダンジョンじゃない。そこまで強いモンスターは出ないからな。だが広大な森は方向感覚を容易に狂わせ冒険者を迷わせる。森の奥深くにある古代エルフが住む街まで行って帰って来るのは至難の業だ」
「もしかして古代エルフと取引ですか?」
「ああ、辿り着いた先では古代エルフと物々交換が出来る。エルフの街でしか入手出来ない一級品が山ほどある。だがエルフの気に入るアイテムを持って行く必要があってな、それがなかなか難しいんだ。俺もプロテインを渡したんだが断られた。ココア味だったのがまずかったのかと反省している。次行けたらはチョコ味だな」
「……あ、はい」
ゴリゴリマッチョなギルマスは頭の中まで筋肉で出来ているのだろう。エルフがプロテインなんて欲しがる訳ないよね!
てっきり古代エルフが人間を敵対して攻撃してくるのかと思っていたけどちょっと違っていたらしい。人間がエチエチなエルフちゃんを攫ってアンアンするとか良くあるもんね!
「でもどうやってプロテインなんて持ち込むんですか? 夏子さんのお店には売ってないじゃないですか」
「そりゃ寝る時にプロテインの袋を握り締めるんだ。そういえばお前には言ってなかったな。赤いゲートの先はアイテムの持ち込みが自由だ。制限がないからな」
「な、なんだってー!?」
つまりエッチな玩具を持ってサキュバスの館に行けるって事だよね。ビアンカちゃんを倒すにはエチエチな武器が必要だと思っていたのです。良い情報をゲットしたぞ。
でもエルフの森は難易度が高そうだ。迷わず街まで辿り着いても交渉しないとダメなのです。ボクに出来るか不安だ……。
そんな落ち込んでいるボクの背後から夏子さんが抱き着いて来た。慰めてくれるのだろうか?
「じゃあユウタ君、早速だけどアレやりましょう? 空っぽになるまで搾り取ってあげる♡」
ギルマスが誤解するような言い方は止めて頂きたいです。これは時魔法を使うだけですからねー!
そうしてボクはシオンちゃんから受けたクエストが高難易度であることを理解したのでした。
古代エルフが欲しがるアイテムって何だろね……。




