第51話 肉食系女子
七海さんの親戚と思われるシオンちゃんから明かされた自白魔法の恐ろしさを身をもって体験した。思っている事をペラペラと喋ってしまうこの魔法は危険である。
もしその気になればボクの性癖から愛棒の弱点まで全て暴露してしまい、夜のエチエチレスリングで七海さんに大きなアドバンテージを与える事になってしまうだろう……。
スキル『早撃ち』を標準装備した愛棒が勝てる未来が無くなってしまう!?
「実はね、ユウタさんがダンジョンから持ち帰ってくれたポーション、あれを使ってみたのよ」
「えっ、あの上級回復薬を飲んだんですか?」
「玲子ちゃんに貰って飲んでみたの。そうしたら肌や髪の艶が良くなって若返ったような感じだったわ」
「ほほう?」
回復薬は傷を治す効果がある。つまり肌や髪のダメージを修復したという事なのだろう。そうなると他のアイテムがどんな効果をもたらすのか気になるね。
「ダンジョンには他にどんなアイテムがあるの? 私に教えてくれないかしら」
どうやらシオンちゃんも同じ事が気になったようだ。良かった、てっきり夏子さんとのエチエチ時魔法レッスンの事やビアンカちゃんとの関係を暴露させられるのかと思った。
ギルマスは興味ないからいいよね。
ダンジョン産のアイテムの事ならやましい事は無いのでボクの口も抵抗なくすんなりと話し出した。
「えっと、ダンジョンで手に入るアイテムは主に武器、盾、飛び道具、指輪、杖、スペルカード、薬、食糧があります。ボクも全部のアイテムを知ってる訳じゃないですけど――」
別に攻略情報って訳でもないので知ってる情報を全て伝えました。
「――っていう感じですね。武器や盾は正直言ってこっちの世界じゃあまり役に立たないと思います。スペルカードや杖は魔法のようなものが使えますけど制限がありますし、何より魔力不足で大した効果が無いって聞きましたー!」
「へぇそうなのね。七海の腕輪もダンジョン産って訳でしょ?」
「な、なぜそれを!?」
シオンちゃんの目がキラリと光り、七海さんの左手首で輝くバリアシステム先生を見つめた。バリアシステム先生の事は誰にも話していないのだ……。
「ふふ、天王寺家の情報収集力は凄いのよ。その腕輪はバリアシステムという名の盾であり、ナイフなどでは到底傷を付ける事は出来ず、ライフル弾で撃たれても少し傷が付く程度にまで保護してくれるスペースコロニーで入手出来る近未来のアイテム…………でしょう?」
「はわわわわ」
このシオンちゃんから底知れぬ恐ろしさを感じてしまった。っていうかどこからその情報を仕入れたのだろうか。バリアシステム先生を装備して包丁でチクチクするだけでも怖かったのに、ライフル弾で実験とか怖すぎる。どうやら目の前の美人さんは只者じゃないと理解できた。それにどうしてスペースコロニーの事を知ってるのだろうか。
今更だけどダンジョンで拾ったものをプレゼントとかちょっと微妙な気がする。だけど七海さんはそんな腕輪をナデナデしていた。まだボクは後ろから抱き絞められた状態だから顔が見えないけど喜んでいるなら何よりです。
「それでね、ユウタさんには『幸せの薬』というアイテムを持ち帰って欲しいの」
「幸せの薬…………? ああ、あのギルドで売ってるボッタクリ価格のやつですか」
夏子さんが効果を教えてくれなかった謎の薬だ。確か100万ゴールドという途方もない価格で売ってる謎のアイテムです。
「あれってどんな効果なんですか?」
「それは言えないわ」
「えっ?」
シオンちゃんが無表情でそう言った。夏子さんも教えてくれなかったし、幸せになれる薬って何なのだろうか。
「ユウタさんは知らない方が良いおクスリって事です」
「ガクガクブルブル……」
幸せになるおクスリって、つまり麻薬的なナニカですか!? 夢の世界にある麻薬を秘密裏にゲットして来いっていう事ですか。
こんな豪華なマンションを経営するオーナーだ。きっと裏で黒い事をやっているに違いない。だってシオンちゃんが黒い笑みを浮かべているのです。
「幸せの薬を持ち帰ってくれたのなら、このマンションのオーナー権を譲りましょう。マンション経営なんて管理会社に丸投げしておけばいいし、七海と遊んで暮らせるわよ」
「ユウ君とずっと遊んで暮らせるんだって。頑張ろう?」
「ご、ゴクリ……」
このマンションのオーナー権っておいくら万円ですか? それをボクにくれるというシオンちゃんにビビッてしまう。
でもそれだけじゃなかった。
「もちろん上級回復薬や解毒薬といったアイテム、特別な指輪なども買い取りましょう。これはユウタさんにしか出来ない仕事ですからね、高く買い取りますよ」
今日まではレベルアップして魅力を上げてモテモテになろうと頑張って来たけど、これからはダンジョン攻略でお宝をゲットするトレジャーハンターユウタにクラスチェンジですね。シオンちゃんからクエストを受領したような感じって訳だ。
最終目標は幸せの薬だけどアレは非常に難易度が高いです。ゴールドを集めるだけでも大変だけど、その後が難しい。幸せの薬を持った状態でダンジョンに挑み、持ち帰り金庫を拾わないとこっちに持って帰れないのだ。
持ち帰り金庫をギルドに持って帰った事がないから分からないけど、たぶんギルドには持ち帰れないアイテムな気がする。空のまま持ち帰ったら現実世界に空っぽな金庫が置かれる予感。
「分かりました。頑張ってダンジョン攻略してきますねー!」
「ふふ……七海は良い男の子を捕まえましたね。逃げられないようにしっかりと調教するのですよ」
「お任せ下さい、紫苑様」
「あのあのっ、ボクは逃げませんからね!? ボクは七海さん一筋です」
ふぅ、最初はどうなる事かと思ったけど上手く乗り切りました。まだ付き合い出したばかりだと言うのに母親や親戚と仲良くなっちゃいました。七海さんとは末永く良い関係になれればと思うけど、ちょっと急過ぎる気がしたのだ。
ホッとしたのも束の間、最後にシオンちゃんが爆弾を落として行きました。
「あ、そうそう。最後に言い忘れていました。七海、良く聞くのですよ。夢の世界を攻略できる人、ここでは冒険者と言いましょうか。冒険者と夜を共にすると一緒にダンジョンへ行けるそうなのです」
「そ、それってつまり私もユウ君と一緒にダンジョンへ行けるって事ですか!?」
「えっ、あれっ?」
何やら雲行きが怪しくなってきた。それにしてもミッチー先輩が独自入手した極秘情報を知ってるシオンちゃんの情報収集能力が恐ろしい。
「生々しい話になってしまいますが、夜に性器が繋がった状態で寝る必要があるそうです。なので七海、貴方もユウタさんを手助けしなさい」
「もちろんです。紫苑様」
「あ、あのっ?」
ボクの目の前で何か話が進んで行く。確かに七海さんと一緒に冒険出来れば攻略はスムーズに進むだろう。でもそれはまずい、夏子さんとの関係やビアンカちゃんの事がバレてしまうのだ。
ここは心を鬼にして反対するしかない。たとえ童貞卒業が遅れたとしても!
「ま、待ってください! あのあのっ、そういう大事な事はしっかりと――」
「ふふ……彼はあんな事を言っているけど大丈夫なの七海?」
「ユウ君は私とエッチしたくないの?」
「ううぅ……したいですぅ」
女性ってこんなに肉食系なんですか? 普通、エッチな事には慎重だと思っていました。嬉しいけど困るぞ!
こうなったら最後の手段を使うしかない。
「でもでも、その、ゴムは必要だと思いますー!」
そうです、避妊は大事ですよ。ボク達はまだ学生だからね、明るい家族計画のためにはゴムは必須なのです。
でもそんなボクの小さな抵抗は見事に叩き落とされた。
「七海にはこれを渡しておきます。足りなくなったら言うのですよ」
「ありがとうございます。良かったねユウ君」
「な、なんですかそれ?」
シオンちゃんが錠剤を七海さんに手渡した。そしてその錠剤をボクに向けてニッコリと笑う七海さん。
「避妊薬だよ。ユウ君の子供は欲しいけど、一年くらいは恋人気分を楽しみたいからね。これで生エッチ出来るね♡」
まるでサキュバスのような艶やかな笑みにボクはゾクゾクとしてしまったのだった。




