第41話 ボスの恐ろしさを知る
「あ、あれっ? ギルド……?」
「は~い、患者さんは動いちゃダメですよ~。ジッとしてて下さいね~」
「夏子さん!? ってあれ、寝たまま移動してるの!?」
ストレッチャーというのだろうか、救急車とかで救護人を運ぶガラガラと移動するヤツにボクは乗せられていた。
エチエチなナース服を着た夏子さんが移動させてくれるのは助かるけど……そうか、病院で寝た状態でここに来たって事か。夢の中はケガとか治ると思ってたけど違うんだね。
「好きな女を守るなんてやるじゃねぇか! よくやったなユウタ!!」
「頑張りましたー」
「ユウタ君カッコ良かったわ~」
何故かボクがケガをした理由をご存知な二人でした。ギルマスからの呼び名もひよっこからユウタにランクアップですよー!
こんなボクにも初めて彼女が出来たのです。ふと、七海さんとのキスを思い出してしまった。魅力48の怯えたショタっ子にキュンキュンしてしまった七海さんが甘やかしチュッチュをしてくれたのです。最高でした。
「ありがとうございます。実はボク、恋人が出来たんですー!」
「あらあらいいわね~。きっとユウタ君みたいな可愛い男の子が大好きな彼女さんよね? いっぱい愛してる貰えるわよ~。いいなぁ、私もユウタ君みたいな可愛い子をドロドロに溶かしてあげたいわ~」
「…………ドロドロ?」
「ビアンカと気が合いそうな女だったな。超ドMなお前にお似合いだ、良かったな! ガハハハッ」
「…………超ドM? 二人とも何を言ってるんですか?」
あの優しくて清楚な感じの綺麗なお姉さんである七海さんを勝手に変な性癖で盛るのは止めて頂きたいですね。プンスコですよ。
「だって、ユウタ君みたいな可愛い子が好きな人って言ったら男の子をエッチな感じにイジメて喜ぶ性癖しかありえないわ~」
「夏子が言うんだから間違いないな。お前はそういう性癖の女に好かれる運命なんだろ。ビアンカに狙われているのが良い証拠だし、他にも心当たりあるだろ」
「ちょっ、二人とも人の彼女を変な風に言うのは止めてくださいっ! って、痛っ!!」
「ああん、ダメよユウタ君。傷が開いちゃうわ、ジッとしてて~」
くっ、夢の中だと言うのに傷が痛む。っていうかどうして二人はボクの彼女をそんな風に言うのだろうか。男をイジメて喜ぶ性癖な訳ないのにね。ビアンカちゃんはギルマスをイジメた前科があるとはいえ、あれは金髪ポニテなサキュバスを揶揄うためだったはず。それに七海さんは完全にノーマルだ。だってあんなに綺麗で清楚なお姉さんだし間違いない!
ボクはノーマルなので七海さんと普通の恋愛をして普通のエッチをしたいと思います。舞子さんみたいな特殊性癖の人はNGです。七海さんは正常、いいですね?
「酷いことを言う二人は知りません。ボクはダンジョン行ってきますけど、この傷のままで大丈夫なんですか?」
「ダンジョンに入れば普通に動けるから気にするな。『中級冒険者カード』は27階にあるからそれを拾って来い」
「27階って遠いですよー。はぁ……ボク、ちょっと冒険するの疲れちゃいました」
中級冒険者カードがあると何か良い事あるんだっけ? そうだ、サキュバスの館に行けるんだった。でもボクは七海さんという彼女が出来たから急ぐ必要もないのかな?
彼女が出来たんだからそもそも冒険する必要ないんじゃないかな。元々は七海さんにフられて魅力を上げたいと思ったのが発端であり、彼女が出来たらもう頑張る必要ないんじゃ……。
そんな事を考えていたところ赤いゲートがキラキラと光り出した。
「やっほ~♪ 愛しのビアンカちゃんが来たよ~」
「び、ビアンカちゃん!?」
あれ、ギルマスが受付の奥に逃げ込んだ。しかも夏子さんも奥に引っ込んで隠れてしまったのだ。もしかしてみんなビアンカちゃんを避けているのか!?
ストレッチャーに寝ている事しか出来ないボクに逃げ場は無かったのである。
「あはっ、おにーちゃんカッコ良かったね~。もうビアンカちゃんキュンキュンしちゃった♡ ご褒美にキスしてあげるねっ」
「んんっ……!?」
ビアンカちゃんの艶やかな唇がボクの唇に合わさった。プルンと柔らかくていい香りがする。ここに来る前にあれだけ七海さんとキスをしたが、まだ童貞なボクには刺激が強すぎです。
でもビアンカちゃんのキスはここからが本番だった。
「あれあれ、おにーちゃん緊張してるの~? んふふ、ビアンカちゃんのご褒美キスはこんなもんじゃないよ~。はむっ」
「ん゛ん゛っ!?」
ビアンカちゃんの柔らかい手がボクの顔を優しく包み、逃げられないボクをついばむようなキスが始まった。そして妖しく蠢く舌先でボクの唇をこじ開けようとツンツンしてきたのだ。
こんなにエッチなキスは初めてで、ボクは唇が震えてしまい、徐々にビアンカちゃんの侵入を許してしまう。
「んっん゛ー!?」
口内に侵入を許した途端、ニュルニュルと蠢くエッチなモンスターがボクの舌に絡みつき、吸い上げ、そして甘い蜜を流し込まれた。逃げることも出来ないボクは、シーツを掴んで快楽に耐える事しか出来なかったのである。
「んっ…………ぷぁ。あれあれ~、おにーちゃんったらこれくらいのキスで蕩けちゃったの~? 敏感なんだねっ」
「あ、あぅ……しゅごかったです」
七海さんとの甘酸っぱい青春キスが上書きされてしまった……エッチなサキュバスに上書きされてしまったのだ。恋人との初キッスの思い出が…………ごめんよ、七海さん。
もしかしてボクはとんでもない人と契約を結んでしまったのかもしれない。
「この体は幻影だからね、サキュバスの館でする本番はもっと凄いんだよ~♡ だからおにーちゃん、ななみんとい~っぱいエッチを練習してね♪ このままじゃすぐにピュッピュってなっちゃうぞっ」
「ご、ゴクリ……」
ボクは理解した……赤いゲートの先に待ち受けるボスの恐怖を!
っていうかどれくらい強くなればビアンカちゃんに勝てるのだろうか。レベルアップするとボクの愛棒も強くなりますか? 恥ずかしがり屋な愛棒さんはパッシブスキル『早撃ち』があるんです。
でもビアンカちゃんの真の恐怖は別のところにあった。
「ななみんと最高の初体験をしてエッチに溺れるおにーちゃん……でもおにーちゃんは知らなかったのだ。サキュバスクイーンとする本当のセックスというものを…………ってやつを味合わせてあげるね♡」
頬を赤く染めながら耳元で囁くビアンカちゃんはエロかった。
まずい、まずいぞ。さっきのビアンカちゃんとのキスを思い出した。恋人との初キスで浮かれていたボクはあっという間に上書きされてしまったのだ。これはまずいぞ……!
「ぼ、ボクは七海さんを愛しています! ビアンカちゃんも好きだけど七海さんを愛しているんですっ!! だから負けません……ビアンカちゃんに負けない強い男になってみせますっ!!」
「うんうん、いいねいいね~。ななみんとい~っぱいレベル上げてしてかかって来るといいよ。頑張ってね、おにーちゃん♡」
満足そうに笑ったビアンカちゃんが赤いゲートに戻って行った。
嵐が過ぎ去り、平和になったギルドに隠れていた二人が出て来た。
「彼女が出来たその日に浮気とは見下げた奴だな」
「うーん、今のは良くないと思うわ~。これじゃ彼女が可哀想じゃない~」
「す、すみませんっ!! でもですね、ボクにはどうしようも――ってあれ?」
言い訳をボクの視界が移動していく。良く見たらストレッチャーが移動しているのである。ガラガラと移動した先には黒いゲートが……。
「クズ野郎はさっさと消えろっ!!」
「彼女を大切にする良い子になって戻って来るのよ~」
「うわああぁぁぁぁあ」
そうしてボクはゴミムシのような視線を向けられ、焼却炉にゴミを捨てるようにゲートへ捨てられてしまったのだった。
誤解なんです、ボクは七海さんを全力で愛します、信じて下さい!! その言葉を伝える事は出来なかったのである。




