表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/119

第4話 親切設計でご都合主義なダンジョン

 スライムという尊い犠牲によりボクの冒険がスタートした。まるでゲームのようなアッサリとした戦闘に気を良くしたボクは探索を開始する事にしたのだった。


 ゴワゴワとした岩肌が剝き出しなダンジョンなのに明るい親切設計、至れり尽くせりでヌルゲーだと感じ取ったボクは鼻歌を歌いながらスライムをペチンと倒して進むのでした。ふふ、スライムの悲鳴が心地良いですね。


 そして通路を進み次の大部屋に出た。部屋に入った瞬間にマップ情報が更新されて赤い点が3つ、青い点が2つ表示された。そして青くて四角いマークが奥の方にある。


「スライムと……コウモリ?」


 ボクの近くにスライムが1匹ポヨンポヨンと揺れている。まるで昼間会った清楚系色白ビッチギャルの大きなお胸を思わせるプルンプルン具合だった。ボクをこっぴどく振った名も知らぬ彼女もスライムのようにプルンプルンなのか気になったが、確認する事は不可能だろう……。


 そしてスライムの少し奥にパタパタと飛翔しているコウモリが居る。灰色のフワフワな体毛と鋭い牙がチャームポイントな可愛いコウモリだ。


 マップから自分の位置とモンスターの位置を計算して作戦を考える。ターン制なので考える時間は無限にあるのだ。……今更だけど冒険の途中で夢から覚めるとかあるのかな? いや、さっさと敵を倒そう。


 まずはスライムに一歩近寄り距離を詰める。遠距離攻撃の無いボクは脳筋アタッカーの如く近づいて殴るしか出来ないのである。


「むむっ、コウモリが変だ」


 スライムがボクに接近して来たのに対して、コウモリは真横に移動した。ボクに視線を向けている事から敵だと認識されているはずなのにどういう事だ? 良く分からないけどサクっとスライムを倒しちゃおう。ふふ、もうスライムなんて雑魚ですよ。


『ピギィ……』


 非力なボクでも夢の中なら強いのかもしれない。スライムをパンチ2発で倒した次はコウモリに狙いを定めた。コウモリはスライムと戦っている間もウロウロするだけで襲ってくる気配が無かった。


 やる気の無いコウモリちゃんを相手にするか迷ったけど、後ろを向いた瞬間に襲われる可能性を考えて倒す事にした。フワフワと飛行するコウモリにパンチが当たるか疑問だったけど、都合の良いゲームだから大丈夫だろう。


 横を向いているコウモリに接近したところ急にコウモリが襲い掛かって来た!


『キュキュー!』


「うわあぁ!」


 ボクの顔面目掛けて飛んできたコウモリの攻撃を受けてしまった。ダメージは3だったのでスライムよりも強い設定なのだろう。


『キュゥ……』


 少し背の低いボクのパンチが当たるか不安だったけど、HPに余裕あるしお試しで攻撃をしてみたら2発で倒せた。やはり1階は雑魚しかいないようだ。


 だがしかし、コウモリを倒した瞬間にボクの体から緑色のオーラが噴き出した。体の奥深くから力が(みなぎ)り、やる気満々な気分になってくる。アダルティな動画を見た時のボクの愛棒のような逞しさと言えば良いのだろうか、全能感に溢れて負ける気がしないのだ。ちなみに、愛棒は一度も負けた事がありません。何故なら対戦相手が居ないからです。ぐすん……。


「HPが3上がってるー!」


 視界に映る表示を見ればレベルが2になりHPが18になっていた。コウモリにやられたダメージも瞬時に回復する親切設計、さすがヌルゲーです。


 部屋の奥にいるスライムは寝ているのかこっちに向かってくる様子がなかった。とりあえずマップの青い点を確認しよう。


 そう思ってマップを確認すると青い点が3個になっていた。さっきまで2個だったのにどういう事だと確認すると、コウモリがドロップアイテムを落としていたようです。レベルアップに気を取られて見逃していたようだ。てへぺろ。


「これは剣かな……? うわっ、消えた!」


 デフォルメされた剣のオブジェクトを手に取った瞬間にキュピーンと光って消えてしまった。もしかしてドロップアイテムを拾うとマジックバッグの中に強制転移ですか?



【マジックバッグ】

・ビッグマッキュセット

・金の剣



 どうやら拾った剣は『金の剣』という名称らしい。取り出して右手に装備をしてみた。


「しゅごい……かっこいいー!」


 拾った時のデフォルメされた剣のオブジェクトとは違い、装備した剣は全長80cmくらいある黄金に輝く剣だった。これは凄い性能に違いない。


 試しに剣の事を知りたいと願って見たら、ホワワワンと内容が浮かんできた。



【金の剣+2】

剣先から持ち手まで純金で出来たショートソード。

刃先を潰してあるので万が一の時にも安全です。



「プラス2って事は強化されたお得品ってことだろうけど……刃先を潰してあるの?」


 ステータスを確認してみると『剣の強さ:4』となっていた。強化分を差し引くと剣の強さは2という事か。まあ素手より強いだろうし気にしたら負けだ。


 寝てるスライムちゃんが起きない事を願いながら他の2つのアイテムを拾ってみた。



【マジックバッグ】

・ビッグマッキュ

・金の剣+2(装備中)

・斬鉄剣

・鍋の蓋



 ふふ、笑いがこみ上げて来るのを必死で抑え込んだ。斬鉄剣ってヤバいでしょ。鍋の蓋はゴミだろうけど素手よりマシだろう。とりあえず装備してみよう。


 金の剣をマジックバッグに突っ込んで斬鉄剣を取り出して装備してみたところ、『デロデロリン♪』という不吉な音楽が聞こえた。まるで呪われたような……。



【斬鉄剣-1】

鉄をも真っ二つにしてしまう程の凄まじい斬れ味を誇る刀。

その恐ろしいまでの切れ味から、興味本位で何でも良いから切ってみたくなるやつ。

決めセリフは『またつまらぬものを斬ってしまった』でお願いします。

※呪われているため解呪するまで外せません。



「落ち着こう、次は鍋の蓋を装備だ」



【鍋の蓋-1】

テファール社が誇るインジニオ・ネオバタフライガラスの鍋の蓋です。

つまみが平らになるから、かさばらず、重ねてすっきり収納できます。あと、食洗機対応です。

※呪われているため解呪するまで外せません。



「斬鉄剣はカッコイイけど呪われ過ぎじゃないかな? しかもこの鍋の蓋の取っ手が持ちにくいよ?」


 上下ライトグレーのスウェットに肩掛け鞄を装備した素足の男が日本刀とガラスで出来た鍋の蓋を持っている。これが夢の中じゃなかったら一発で通報案件です。


 斬鉄剣は持ち手の部分が木で出来ていて、刀身は鏡のように研ぎ澄まされていた。日本刀とか初めて触ったけど怖いです。夢なのに凄いリアリティだ……。


 両手が塞がった状態でしかも呪われて外せないとなると詰んだ状態かと思ったが、試しにマジックバッグにあるマッキュを取り出そうと剣のまま突っ込んでみたら普通に取り出せました。マッキュをしまうと右手に斬鉄剣が装備されている親切設計だ。


 左手に装備した頼りない鍋の蓋は透明なガラスで視界が塞がれないというのは有難いけど防御力に不安があった。でも、もしかしたら凄い強い装備なのかもしれない。何せテファール社といえば主婦が憧れるメーカーだからね。ボクは少し期待しながらステータスを確認してみた。



【ひよっこユウタ】

最深階:1

満腹度:90%

剣の強さ:9

盾の強さ:0

ちから:8/8

経験値:10



「盾を装備しているのに強さ0って……装備してないのと同じってこと?」


 武器は凄い。呪われているのが問題にならないくらいの強さだ。盾の事は忘れて寝ているスライムで試し斬りをしてみようと思う。


 試しに寝ているスライムの少し離れた場所をグルグル回ってみたけど起きる気配が無かった。スライムは丸い体をペッタンコにして寝ている。『Zzzz』という吹き出しが出ているから分かりやすいのである。


 そしてスライムの真横に立った瞬間、寝ていたスライムが起きた。こやつ寝たフリだったのか!?


「ごめんよスライムちゃん、今宵の斬鉄剣は血に飢えているのだ……」


 スライムちゃんがプルンプルンと震えてボクに命乞いをしていたように見えた。清楚系色白ビッチギャルのおっぱいのようにプルンプルンさせているのです。想像だけど。


 ボクは心を鬼にして斬鉄剣で切りつけた。日本刀の扱い方とかサッパリなボクですが、夢の中だからかゲーム感覚で攻撃したらいけました。ご都合主義最高ですね!


『ピギィ……』


 ついにスライムを一撃で倒す事が出来るようになりました。もしかしたら金の剣でも一撃だったかもしれないけど装備を交換出来ないので確認のしようがない。


 さて、ゲームの進め方が分かったしどんどん先に進もうと思います。あ、でもそうだ。


「またつまらぬものを斬ってしまった……」


 ボクはスライムの居た場所にそう言い残し、地下へ続く階段を下りて行ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ