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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
ひよっこ冒険者の章

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第36話 舞台裏(薫視点):強制転移


 突如現れたビアンカ様から告げられた運命クエスト、どうやら僕は犯人逮捕を迅速に行う手助けをしないといけないらしい。クエスト失敗したらどうなるのか分からないけど、自身の占いには『結果次第ではこの能力も今日が最後の日かもしれません』と書かれていた。やるしかない!


 突然の事で頭が混乱しているが時間は待ってくれない、運命の時間まであと7時間くらいしかないのである。


 急いで玲子さんに電話を掛ける。僕と玲子さんは随分と長い付き合いになる。学生時代は仲の良い同級生で親友でもあり、今では遠い親戚なのだが直属の上司でもある。そしてもう一人の親友である修二(しゅうじ)の妻という複雑な関係の女性に朝早くから電話を掛けるというのも気まずい。けどまあ、そこは僕と玲子さんの仲だから問題ないはず。


『…………なんですの薫さん。また葉月ちゃんを泣かせたのかしら?』


 ほら、12コール目で出たよ。


「ち、違いますよー! それにまたって何ですかまたって! 今はそれどころじゃなくてピンチなんです玲子さん、助けて下さい!」


『浮気の仲裁はしませんわよ』


「僕は浮気なんてした事ないですよー!」


 ダメだ、完全に誤解している。それもこれも先月の修二と行った飲み会が悪いのだ。酔っ払った修二に連れられてキャバクラに行ったのが運の尽き、葉月ちゃんの機嫌を直すのに苦労しました。


 ちなみに、修二というのは大学時代からの親友であり玲子さんの夫である。キャバクラ事件の責任を取らされて海外出張という名の島流しにされた哀れな男だ。


 葉月ちゃんのジト目が辛いので話を進めようと思う。


「実はですね、僕の占いに関係してる件について大至急相談したいことがあります。七海ちゃんも関係しているらしく、紫苑さんのお力も必要そうなんです」


『何でそれを早く言わないんですの!? お母様は実家にいるはずですわ』


 玲子さんの実家は千葉県にある。ちなみに僕の実家は埼玉県だけど仲良しです。ここから玲子さんの家に行って千葉に行くとなるとかなりの時間をロスする事になるな……。


「ねーねー、早くしないとおにーちゃん来ちゃうんだけど~?」


『…………もしかして本当に浮気ですの? 占いと言いながら浮気の仲裁じゃないでしょうね?』


「あーっ、ビアンカ様お待ちください。すぐに行きますので!」


「いひひ、その電話の人がターゲットなんだね? ん~、丁度誰もいないようだし、えーいっ♪」


 魔法少女のような可愛い声を出しながら指パッチンをしたビアンカ様、すると恐ろしい事に目の前に玲子さんが現れた。これはマンガであるような瞬間移動というものだろうか。本当に一瞬だったのだ。


 でもちょっとエッチなネグリジェは予想外だ。もしかして玲子さん、修二がいないのをいいことに浮気か?


「キャーっ!! 何ですの!? 何ですのこれー!?」


 僕はすぐさま後ろを向いた。葉月ちゃんもそうだけど、僕の周囲にいる女性達はみんな若々しくて目のやり場に困るのである。




   ◇




 葉月ちゃんの洋服はサイズが合わないので、葉月ちゃんのお母さんである雪子さんの洋服で身だしなみを整えた玲子さんがプリプリと怒りながら戻って来た。この摩訶不思議な状況を軽く説明したけど上手く伝わっているのか不安だった。


「それで、そこにいる女の子が薫さんの隠し子ですの?」


「ち、違います! 何度も説明しましたよね? ちょっと葉月ちゃんもフォローしてよー!」


「薫さんは玲子お姉様の胸をガン見してたのでダメです。許せません」


「見てないよー」


 うん、全然伝わってなかった。


 ビアンカ様の魔法的なナニカにより玲子さんが転移して来た。寝起きな玲子さんは不運だったかもしれないけど、あの玲子さんの大きな胸が見れてちょっとだけ興奮したのだ。スマン、修二……事故なんだ。


 葉月ちゃんの嫉妬が可愛くてニヤニヤしちゃいそうだけどさっさと行動しなければ。ちなみに、当の本人であるビアンカ様はフォローしてくれずにテレビを見て楽しんでいた。


「それで玲子さん、紫苑さんの力を借りたいんだけどいいかな?」


「当然ですわ。ちょっとお母様に電話してみますわね」


 玲子さんがスマホを取り出して紫苑さんに電話を始めた。紫苑さんならきっと助けてくれるだろう。後は玲子さんを連れて紫苑さんのところへ行けばいいのかな。ここから千葉まで2時間もあれば行けるだろう。


 頭の中で作戦を考えていたところ、テレビに夢中だったはずのJKコスな美少女がボクに近付いて来た。嫌な予感がする……だってめっちゃ笑顔なんです。


「ねーねー、おじさま~♪ あの金髪ドリルなおねーちゃんが電話してる相手が必要なの~?」


「そうですけど、これから車で案内しますのでビアンカ様のお力を借りる必要は……」


「あはっ、おじさまったらのんびり屋さんなんだね~。ビアンカちゃんの可愛い可愛いおにーちゃんが来る前に全部用意してあげないとダメなんだよ~。知ってる? 良い(パートナー)って言うのは手厚いサポートを陰ながらコッソリとやるのがいいの。わかる~?」


「は、はいっ! ですが――」


「いひひ、強制転移~♪」


 ビアンカ様の小さな手で指パッチンした音が響き渡った。そして次の瞬間……。


「…………薫さんこれはどういう事かしら? 私にも分かるようにしっかりと説明して下さいね」


 怖い怖いお姉さんが召喚されてしまった。玲子さんのお母さんである紫苑さんです。還暦を過ぎたというのに若々しく見えるのはアンチエイジングに莫大な費用を費やしているとの噂である。うん、本当に還暦を超えているのか分からないけど綺麗ですよ?


 玲子さんと同じ金髪が似合う美魔女です。ちなみにスーツ姿でした。もしかしたらお出掛けする予定だったのかもしれない。


「いま還暦過ぎたBBAとか思いましたね? 許しませんよ」


「そんな事思ってないですよー!!」


 ボクは天王寺家の女性には絶対に勝てない星の元に生まれたのだろう。




   ◇




 ビアンカ様のお陰で何度も同じ説明をしないで済んだというのはあるが、こんな突拍子もない事を伝えるのはこれが最後にして欲しい。今日だけで僕の寿命が数年分は縮んだ気がする。


 玲子さんも紫苑さんも強制転移という摩訶不思議な体験をしたからだろうか、ビアンカ様がボクの隠し子と疑われる以外はすんなりと理解してくれた。僕も被害者なんだけどな…………。


「という事で、七海ちゃんは無事らしいんですけど犯人逮捕とか色々とご協力をして頂けないでしょうか」


「そーそー、おにーちゃんがピンチになるかもしれないんだよねー。だからおねがい」


「…………」


 僕とビアンカ様の言葉を受けて紫苑さんが考え込んでいる。


 紫苑さんは天王寺グループの総裁だ。遠い親戚で親しい関係ではあるけど、平社員の僕からしたら雲の上の存在である。新入社員がグループ会社の会長にお願いするようなものである。


 でも孫の七海ちゃんが関係しているのだ、きっと玲子さんのように了承してくれるはず。


 紫苑さんなら警察とかにも影響力があるから手配してくれるだろう。そうすればビアンカ様の頼みもクリア出来てボクもクエスト完了だ。


「ダメね。その程度の事で私を動かそうなんて百年早いわっ!!」


 ボクの淡い期待はあっさりと裏切られてしまったのだった。


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