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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
ひよっこ冒険者の章

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第28話 特別編:七海、結婚するのか、俺以外のヤツと……


「なあおいマネちゃん、七海とドラマ共演の話どうしちゃったわけ?」


「ひぃ!? そ、それはですねキムタコさん、あのっ――」


 バラエティ番組収録前の楽屋での打ち合わせ、前々から使えないこのマネージャーに確認をした。


 ジョニーズ事務所の稼ぎ頭である俺の言う事を全然理解出来ない50代のやつれた男だ。広くなったデコから汗を流して必死に謝るその姿が美しくない。


 俺は美しいものが好きだ。自分はもちろん、洋服から靴から鞄から、全て美しいものが俺に相応しい。


 俺に相応しい女は何人か居た。だが付き合ってみるとすぐに化けの皮が剝がれる。あれらは表面だけで中身が汚かった。だから俺には相応しくない。


「おいおいおいおいマネちゃんさー、俺言ったよね? 『花よりイケメン』のキャストに七海を持って来いってさー。どうなってんの?」


 来月から始まる予定の新作ドラマの撮影、そのキャストが未だに発表されないのである。原作は大ヒットした少女漫画であり、既にネットでは話題沸騰なのだ。


 ストーリーは裕福な生徒の多い学園に入学した貧乏少女の奮闘の物語で、大金持ちのイケメンにイジメられたりしながらも健気に頑張る少女の物語である。そして俺と結ばれる。


「あ、あああ、その、あの、はいっ……」


「ハイじゃわかんねーんだよクズがっ!!! ハッキリ言えよこの豚が!!!」


「ひぃっ、す、すみません!! 実は天王寺七海様は今月で芸能界を引退すると発表がありましたっ!!! ジョニーズ事務所の方にも天王寺グループから七海様への接触を硬く禁ずるように指示が出ていますっ!! その、社長からも強く厳命されていますーっ!!」


「…………はあっ?」


 コイツは今、何て言った? 七海が芸能界を引退? アイツは俺のものだ。俺の許可無く俺の前から居なくなるなんて許せない。


 七海は美しい。穢れを知らぬ白い肌、高貴な身分の者にだけ許された黄金の髪、そして俺だけに許された聖母の微笑み……。それらは全部俺のために存在しなければならない。


 そうだ、アイツは俺に相応しい……。


「何で急に引退なんだ?」


「そ、それはですね、詳しい事はわかりませんが、その、あの……」


 どいつもこいつも俺をイラつかせる。この男はわざと俺を怒らせようとしているのだろう。


 俺は使えないゴミの胸元を勢い良く掴んだ。


「マネちゃんさー、そろそろ学習しようぜー。どうして俺の欲しい答えを直ぐに言えないんだー?」


「がっ、ぐうっ、す、ずみまぜんっ、ゆ゛るじてぐだざいっ……かはっ、はぁ、はぁ」


「おら、早く話せ」


 こいつは本当にトロい。何故俺の言う事を直ぐに聞けないのか。これなら前のクズの方が幾分マシだったな。


「はぁ、はぁ、その、噂です。これはあくまでも噂ですが、結婚するんじゃないかという情報が流れています」


「はぁ? 七海が結婚? 俺はまだプロポーズされてないが、おかしいよなー?」


「へ、へへっ、そうですね。ははっ、おかしいですね……ぐはっ!」


「何が可笑しい」


「す、すびばぜんっ」


 俺の美しい右手が汚れてしまった。それにしても不愉快だ。七海が結婚? 俺以外のヤツと……?


 そう思ったら吐き気がして来た。アレは俺の女だ。俺の女なんだ。きっと間違いに違いない。そうだ、俺へのプロポーズをサプライズでやるつもりなのだ。そうだ、そうに違いない。良し、業腹だが俺が会いに行ってやろう。


「おいゴミクズ、七海の撮影場所はどこだ?」


 俺がこの目で確かめてやる。




   ◇




 俺はゴミクズに入手させた七海の撮影現場に張り込んだ。何故俺がこんな事をしないといけないのかと思ったが、花嫁が俺にプロポーズをするサプライズを用意してやったと思うとそんな事はどうでも良くなった。


 夜のニュース番組で放送される天気予報のスペシャルゲストで笑顔を振りまく七海。あの笑顔が俺以外に向いていると思うとはらわたが煮えくり返る思いになる。だけどそれもあと少しだ。


 そして撮影が終わり、七海がマネージャーから離れて一人になるチャンスが訪れた。


「やぁ七海。いい夜だな」


「ひぃ!? き、キムタコさんっ?」


 どうしてこの女はそんな顔をする? このイケメン俳優のキムタコが目の前にいるんだぞ? 何故そんな怯えた顔をする? さっきの放送と違うだろう?


「ごめんなさいっ、私撮影ありますのでっ!」


 夜の繫華街を俺の女神が逃げていく。あれだけ俺に良い顔をしたあの女が心底嫌そうな顔をして逃げていくのだ。


 これは何かの間違い、そうに違いない。だが本当にそうなのか? ジワリと俺の胸の奥に懐疑心が芽生えた。


「七海っ、待ってくれ! 頼む、話を聞いてくれっ」


「あの、ごめんなさい。私そういうの困るんです……」


 どうして俺を拒む? どうして俺の話を聞かない? どうして俺の手を掴まない?


 わからないわからないわからないわからないわからないわからない。この女が分からない。


「ちょ、待てよー!!! おい、七海ぃぃぃいい!!」


 俺の手を振り切ってタクシーに乗り込んだ七海。ああ理解した。あの女は汚いのだ。胸の奥深くに芽生えた懐疑心がどんどんと膨れ上がって行くのが分かった。


 アレは醜い。俺を拒む汚いモノ。そうだ、このままじゃ俺の経歴が汚れてしまう。ダメなのだ、俺が振らないとダメなのだ。俺が告白されてもいな(・・・・・・・・・・)いのに振られる(・・・・・・・)なんて許されないのだっ!!!


 そして俺の胸の奥深くで芽生えた懐疑心はやがて憎悪の炎となり、その炎が俺に語りかけて来た。七海に罰を与えようと……。


「あー、マネちゃん? いつもありがとな。うん、助かってるよ? そんでさ、ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」


 スマホを取り出し、ゴミクズに七海の休みを探るように伝えた。心がおかしくなったせいでついつい優しくしてしまった。


 憎悪の炎が早くアイツに罰を与えろと囁いて来る。焦るなよ、チャンスは直ぐ出来るさ。それまで、その時が来るまでジッと我慢して楽しもうぜ相棒。


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