第27話 初体験
「自然治癒力強化っていうスキルが当たりましたよギルマスー」
「お、おう……。ま、まあビギナーズラックってやつだな。それに自然治癒力強化はありふれたスキルだ。俺の筋肉増強と比べても大した事ない地味なやつだ」
どうやらギルマスはスキルまで脳筋なようだ。名前からしてマッチョになるスキルなのだろう。ボクのやつはケガしたり病気になったら治るのが早くなるかな。
「このスキルってありふれてるんですか?」
「まあ銀カプセルから出るスキルだからな。多いって訳じゃないが、そこそこ有用なスキルとして有名だ。それはパッシブスキル、つまりスキルを所持しているだけで自動的に効果を発揮するスキルでな、歩いている時の回復量が増え、更に歩いていない時でも回復する優れものだ。まあ止まっている時はかなり時間が掛かるけどな」
「はえー、すっごい」
これはとても良いスキルではないだろうか。あのターン制に支配されたダンジョンにおいて止まっているだけで回復するというのは大きなアドバンテージになる。回復薬が無くてもジッとしてれば回復するのだ。無敵か!?
「アホなお前の事だ、ジッとしていれば自然回復で無敵だとか思ったのだろう。だが残念だったな、そのスキルで回復する分は満腹度が消費されるから気を付けろ」
「ええええ!? そうなんですか」
「まあ微増だ。ただし、ダンジョン内でジッとしているのはなかなかストレスだぞ。先輩がそれやって気が狂いそうになったらしい」
「なるほどー」
無敵作戦は無理そうだけど、満腹の指輪とセットなら良さそう。けどあの何もない空間でジッとしてるのは辛いな。いや、魔女っ子を見てればいいのか?
夢の中ではちょっと微妙かもしれないけど、現実ではかなり優秀なスキルかもしれない。冬場とか良く口を切るから治るの早くなったらいいな。いや、もしかして愛棒さんの回復速度もアップしちゃう!? ボクの愛棒は恥ずかしがり屋でちょっと敏感なので回数でカバーしないといけないのです。スキル『早撃ち』がなかなか制御出来なくて困ってるんだよねー。
「ほれ、さっさとガチャ引いて探索行って来い。どうせ次はハズレだ」
ギルマスが下品な顔でボクを見つめる。でもバイト先で鬼畜メガネに睨まれ続けたボクには効きません。それにギルマスはビアンカちゃんに人生を滅茶苦茶にされた被害者なのだ。ちょーおもろい。
さてと、コインを入れてガチャレバーを引こうかな。
「ぐぬぬ、スキルこーい!」
ギルマスをギャフンと言わせるスキルを求めてレバーを右に捻ったその瞬間、プツンという音と共にギルドの照明が消えて真っ暗になった。もしかしてボク、やっちゃいました?
「な、なんですかこれー!? 真っ暗で何も見えませんよー! ギルマスぅ~!」
「な、ななな、なぜこれがっ!? こんな事が起こって良いのか!?」
驚いて後ろに下がろうとしたが右手がガチャレバーにペタっとくっついたかのように動かない。もしかしてこれ、ガチャの演出ってやつですか?
「あらあらまあまあ、これが伝説のブラックアウト演出ってやつなのね~。初めて見たわ~」
「ブラックアウト演出?」
遠くから夏子さんの声が聞こえた。ガチャにも演出があるんだね。って言う事はさっきカプセルを開けた時のペカった光も演出なのかな。GOGOランプって何ですか? 謎だ。
「あ、ありえん……こんな童貞野郎が……まさか……プレミアム演出…………だと?」
良く分からないけどギルマスの声が聞こえた。プレミアム演出って凄そう。
演出が終わるまで待った方が良いのかな?
「ユウタ君~、真っ暗で見えないから早くレバーを回しちゃってくれないかしら~」
「あ、はーい! よいしょー」
どうやらこのまま待っていても進まないらしい。レバーを捻るとガコガコと心地良い音が続き、カプセルが出て来た。カプセルが出るのと同時にギルドの照明も戻りました。
むむっ、金色カプセルだった。こんな特殊演出だったら虹色カプセルかと思ったけど無いのかな~。
「き、ききき、金だと!? ありえん、そんな馬鹿なっ! こんな童貞野郎に俺は負けるのか!?」
「何が出るかな~」
ギルマスは使い物にならないから放置です。何か貶されているような気がするけど気にしたら負けです。ふふ、このゴリラはビアンカちゃんに寸止め地獄をされた挙句、最後はポイっと捨てられた哀れな男だ。メシウマ。
カプセルをパカンと開けるとレインボーな光が溢れ出たような気がした。
『テレポート』
「…………テレポート?」
テレポートってアレでしょ、瞬間移動するやつ。額に指を当ててムンムンと考えてビュビューンって移動するアレ。ボクはドラゴンなボールのZなアニメで勉強したので知ってます。
確かスキルって現実でも使えるんだよね。ヤバイわよー。
「な、何だと!? 貴様、もしかしてテレポートを入手したのか!? ありえん、そんな馬鹿な……」
「知っているのかギルマス……!?」
「ああ、まさかこの目で実際にみようとは……!!」
マッチョが目を見開いてボクを見つめて来た。でもその状態で固まったまま何も教えてくれません。
役に立たないギルマスだなーって思ってたら夏子さんが来てくれました。
「そのスキルは凄いのよ~。例えばテレポートしたい場所にマーカーを設置すると、どんなに離れていてもビュビューンって瞬間移動出来ちゃうの~。それと――」
夏子さんが教えてくれた。マーカーを設置したい場所で念じると勝手に記憶されるらしい。賢さ6のボクで使えるのか不安になって来た。
テレポートを使う場合はマーカーリストが表示され、そこを選択すると飛べるとか言われた。ブクマ登録ってやつですね。
「はえー、すっごい」
これがあれば遠く離れた場所に簡単に移動出来ちゃう訳ですね。日本全国どこでも簡単に旅行行けちゃう予感。マーカー設置が何個出来るのか知らないけど、マーカーを継ぎ足ししていけばお金もあんまり掛からずに旅行出来るな。宿は自宅に戻ってくればオッケーっしょ!
でも少し不安だ。昔見たアニメでテレポートした女の子がデロデロに溶けた演出を見たから怖いんですけど……あれは過去に戻るんだっけ?
他にも怖い事がある。
「でもでも、マーカーを設置した場所が取り壊しされたらヤバイんじゃないですか?」
地上3階のトイレにマーカーをセットしたとして、その建物が無くなってたら3階から自然落下とかは嫌です。ヒモ無しバンジージャンプとか死んじゃう。それに誰か入ってたら合体ですか!?
「そういうのは大丈夫らしいわ。例えば人通りの多い駅前広場とかにマーカーを設置してテレポートした場合、急に目の前に人が現れて大変な騒ぎになるわよね。でもそういう騒ぎになりそうな場所では警告が出るし、余程変なところにマーカーを設置しない限りテレポートして壁の中に埋まったりしないらしいわ~」
「えー、本当ですか~? 何事も『絶対』なんてないですし、万が一にもミスって死にたくないですよー」
最近の車はセーフティー機能が充実している。だけどそんな車でさえ事故は起きるのだ。ボクのテレポートは未知の技であり安全は誰も保証出来ないのである。ボクが実験台とか怖いよー。
「ユウタ君ったら心配性ね。でもこのスキルに関して心配要らないわ。だって『賢さが6の人でも使えるようにナビゲーターが案内してくれる』って偉い人が言ってたもの~」
「偉い人が言うなら大丈夫ですね。安心しましたー」
まさにボクのために作られたような設定だった。っていうか賢さが6って夏子さん知ってたっけ? ボクの事じゃないよね? 偉い人が誰なのか知らないけど考えるだけ無駄だろう。このスキルは安全、いいですね?
「でもボク、MPが2しかないんですけど使えますかね?」
「魔法じゃなくてスキルだからMP消費は関係ないのよ。良かったわね」
「しゅごい」
「ダンジョン内で使う場合はクールタイム、再使用時間があるから気を付けてね。モンスターに見られてても使えるけどマーカーの設置は出来ないし見える範囲にしかテレポート出来ないわ」
「はーい」
いっぱい言われて頭が熱くなってきた。テレポートとか憧れるスキルだけどちょっと困るかもしれない。試しに実家にテレポートしたとして、遠く離れて暮らす息子が急に部屋から出てきたら腰を抜かしそうだ。
それにこの情報化社会においてホイホイとテレポートして監視カメラやドライブレコーダーに捕捉されない方が難しそう。小心者なボクには難しそうなスキルだった。もし警察に捕まったら解剖されちゃう!?
「あ、そうだわ。見える範囲でなら手で持っている物を移動させる事が出来るの。持てる重さだけっていう制限はあるけどね~」
「それはそれで怖いですね……」
ゴリゴリマッチョなギルマスの近くに斬鉄剣パイセンをテレポートさせたとする。不器用なボクじゃギルマスの体から斬鉄剣パイセンがコンニチハすると思う。怖いよ~。
そもそもスキル所持者であるボクが全く使い方のイメージが出来ないのである。こういうのってスキル取得した瞬間にキュピーンって使い方とか理解するんじゃないのかな。夏子さんが居なかったらやばかった。ギルマスは置物だし。
「そんな恐ろしいスキルじゃないから安心して。そうだわ、ちょっと試してみましょう。待ってて」
「はーい」
夏子さんが駆け足でショップの奥へ行ってしまった。ふむ、一人ぽっちだ。ギルマスは下を向いてブツブツと何かを呟いている。ビアンカちゃんと会ってからトラウマか何かを思い起こしたのだろうか。
そうだ、試しにこのギルドにマーカーを立ててみよう。ボクの大好きなサイヤ人は人差し指と中指の二本を額に当てて唸っていたな。やってみよう。ここにマーカーを立ててくださーい!
『この地点は次元が違うためマーカーを設置する事が出来ません。残りマーカー設置可能数は6です』
「うふふ、何それユウタ君。何かのおまじない?」
「えっあっ、何でもないですぅー」
急に脳に浮かんだ文字に気を取られて夏子さんが来たのが分からなかった。恥ずかしいところを見られてしまった。これがナビゲーターという事なのだろう。ユウタ理解した。
実験はある意味成功でした。ダンジョンにマーカーを設置出来ないって言ってたからここは設置出来ないのは予想通りだけど、マーカーが6個もあるのはうれしいな。
「じゃあユウタ君、これを持ってテレポートを使って見ましょう」
「こ、これはラブリーポーション!」
「そうよ~。それをテレポートで私のココへ飛ばしてみて頂戴」
「ご、ゴクリ……」
夏子さんが前屈みになってセーターの首元を指で引っ張り、たわわに実った胸の谷間を見せてくれました。セクシーな黒いハーフカップブラでいつもより強調されたお胸、童貞なボクには刺激が強かった。
手渡されたラブリーポーションをテレポートを使って胸の谷間のホールインワンしろって事ですか!?
「でもでも、ボクはスキル使うの初めてだし~、万が一にも夏子さんにナニカあったら大変だし~、怖いですー」
「さっきも言ったけど安全なスキルだから大丈夫よ~。ほら、この隙間にチュポンってユウタ君のソレを入れて欲しいの~。お願いユウタ君の初めて、私に入れて欲しいな♡」
「っ!?」
夏子さんの言い方がエッチな感じに聞こえるけど、つまりはボクが持つラブリーポーションをボクが使う初めてのスキルで飛ばして欲しいって事だ。
ボクも男だ。夏子さんにここまで言われたらやるしかない!
「分かりました。がんばります!」
「うふふ、痛くしちゃ嫌よ?」
そう言った夏子さんが遠くへ移動してしまった。10メートルくらい離れてそうな予感。こんな距離であの胸の谷間を狙えるのか?
しかもここからじゃ胸の谷間が見えないのだ。確か見える範囲じゃないとダメって言ってなかったっけ?
「あのあの、ここからじゃ夏子さんのおっぱいが見えないですよー?」
「おっぱい見えなくても私が見えているなら大丈夫よ~。後はスキルがやってくれるから頑張って~」
ふむ、つまりボクのイメージで補完しろって事か。そう言えばラノベとかの主人公が魔法を使う時はイメージが大事って言ってた気がする。ボクは夏子さんを見ながら胸の谷間にこのラブリーポーションを挿入したいと念じてみた。
『NPC夏子の胸の谷間にラブリーポーションを転移します。宜しいですか?』
「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」
ボクは祈る様に伝えた。気分は毎年夏の時期にテレビでやってるアニメ映画で、主人公の男の子がEnterキーを押すような感じでやってみた。あの映画好きです。そして右手に持ったポーションの感触が無くなった。
「あああぁぁぁあんっ!! ユウタ君の、んっ、ユウタ君の太いのが……あんっ、入っちゃったっ、んんっ」
その日ボクは、初体験をしたのだった。っていうか手に持ったアイテムをテレポートさせる時は見られてても大丈夫なのかな? ナビゲーターさんから警告が無かったという事は知らないルールがあるのだろう。良く分からないけどバレたら手品って事にしておこうと思います。ふへへ、これがあればコッソリと姫ちゃんに悪戯が出来るぞ!




