第26話 ギルマスの復讐
あれからボクは喫茶店に常備されている救急セットの中から大きめの絆創膏を取り出してキスマークを隠した。どうやら姫ちゃんはボクがエッチなお店で遊んで来たと誤解しているらしい。ヘタレなボクがそんなエッチなお店に行ける訳ないのにね~。
バイトが終わったボクは着替えを済ませ、姫ちゃんが休憩室に来るのを待った。誤解されたままだと姫ちゃんのEカップが見れないと思ったのだ。
「なんですか先輩、こんな誰もいない休憩室に私を連れ込んで……私は安い女じゃないんで幾らお金を積まれても相手してあげませんからね?」
「ち、違いますー! ボクはエッチなお店なんて言った事もないし、ピチピチの童貞ですよ~! キスだってした事ないんだって~。ううぅ、信じてくださいー」
「別に先輩がどんな遊びをしようと勝手だけど、お店の子に手を出しちゃダメですよ?」
「そんな事しませんっ! これは女性に襲われて付けられたんですよぉ~!」
「あー、はいはい。そうですね~」
ダメだ、姫ちゃんからの信頼がストップ安になってる。自慢のEカップを惜しげもなく披露する姫ちゃんの癖に、もしかして潔癖症なのか!?
どうやって誤解を解こうか悩んでいたら休憩室に誰かが入って来た。
「お疲れ様ユウタ君、姫ちゃん。あらら、もしかしてユウ君ったら姫ちゃんに気持ち良くしてもらうところだった? お邪魔しちゃったかしら」
「はうっ、琴音さん!?」
「琴音さんそんなんじゃありません。っていうか聞いて下さいよー! あのですね――」
姫ちゃんが琴音さんに暴露してしまった。琴音さんにエロネタは禁句という事をすっかり忘れてるな姫ちゃん……。
大好物なエロ話を聞いた琴音さんは嬉しそうにしている。
「なるほど。それでユウタ君、どこのお店行ったの? 駅裏にあるセーラー服専門のところはオススメよ」
「エッチなお店なんて行ってませんー! ボクは童貞だしキスだってまだですー」
「あらら、本当? 姫ちゃんと言ってる事が違うわね。うふふ、じゃあちょっと調べてあげる」
そう言った琴音さんが自分の唇をペロリと舐めて近づいて来た。爆乳メイドさんの琴音さんは童貞のボクには刺激が強かった。
「クンクン、クンクンクンクン…………」
琴音さんの顔がボクの首元をロックオンした。甘い香りがするし凄く恥ずかしいぞこれは。ボクの事を上から順に匂いを嗅ぎだした。姫ちゃんのEカップが普通のサイズに見えるくらいの大迫力が目の前にある。無意識に手が動きそうだったので手を後ろで組んだ。手を出したら店長に殺される!
そしてボクの股間に顔を埋めてクンカクンカする琴音さんはエロかった。スーハーと深呼吸までしていたのだ。恥ずかしい……。っていうか童貞には刺激が強すぎます。愛棒さんが元気になっちゃう。
「うふふ、ユウタ君の硬くなってるわね……うん、分かったわ。姫ちゃん安心して、ユウタ君からは童貞の香りしかしないわ。20年間一度も使われた事のない濃厚なオスの香りがプンプン漂って来る。ああんっ、体が熱いっ、ユウタ君の童貞フェロモンを嗅いだら私、発情して来ちゃったかもぉ~♡」
「ひ、ひぃ!? あのあの、ボクもう帰らないとっ、お疲れ様でしたー!!」
「あっ、ちょっと先輩!? 待って下さい琴音さんどうするんですか? せんぱーい!」
そうしてボクは逃げ出した。あのまま居たら大変な事になるような気がしたのだ。
でも琴音さんがボクの童貞を認めてくれた。きっと姫ちゃんも信じてくれるだろう。
ちなみに、ホッシーとミッチー先輩にはメッセージで誤解だと伝えておきました。信じてもらえなかったけど……。
◇
「おう、来たか」
「ユウタ君ランクアップおめでとう~。昨日はお祝い出来なくてごめんね~」
「こんばんはー! 夏子さんありがとうございますー」
ギルドはいつもと変わらぬ様子だった。ひよっこ冒険者から初級冒険者になった事でギルドの内装とか豪華な感じに変わってるかと思ったけど変化なし。ギルマスが美女になってたら嬉しかったのに……。
ギルマスは昨日の件を引きずっているような感じはなかった。ギルマスも良い大人である、仕事に私情を挟んだりすることはないだろう。でも何やらテカテカしてキモイです。
「ギルマスー、初級冒険者になった特典を説明してくださいー」
「初級冒険者になったお前は新しく3つの特典が得られる。まず一つ目が倉庫だ」
「倉庫ですか。でもボク、クリア出来たの1回だけだからあんまり意味ないような?」
「安心しろ、ダンジョンも一部リニューアルされてアイテムが追加されている。一番の目玉は脱出カードだ。これは名前の通りダンジョン内で使うとアイテムを持ったままギルドに帰ってこれる」
「ほほう」
つまりハロウィンコスプレJDに囲まれて絶体絶命な時や、プリティな魔女っ子に『へんたい!』とか『ロリコン!』って言われながら杖でポコポコ殴られて死にそうな時に使えるミラクルアイテムって訳だ。
死んじゃうとアイテムを持って帰れないしゴールドは半分になってしまう。それが緩和されるだけでも凄く助かる予感。それに斬鉄剣パイセンをゲットして持ち帰れば次の冒険に持って行けるという訳か。イイね!
「次の特典は私よ~」
「ふぁっ!? 夏子さんが特典ですかー!?」
これは凄い事になった。夏子さんはボクをダメにするくらい甘やかしてくれるお姉さんである。そんなお姉さんがボクの童貞を奪い、楽しいおねショタプレイを繰り広げるのだ。もうイケメンになるのは諦めてボクのアイデンティティである合法ショタの部分を育てて生きて行こうと思います。あのエプロンを押し上げる大きなお胸は何カップですか?
「うふふ、初級冒険者じゃ私はあげられないわ~。もっとランクを上げてくれないと~」
「しゅん……」
ダメでした。いや、良く考えたらランクを上げれば夏子さんルートもあるって事か。イイね!
「ショップのラインナップに3つの新商品が追加されました~。ちょっと高いけど買ってくれると嬉しいわ~」
「ふむふむ、強化アイテムですね。ってめっちゃ高い!」
【お品書き】
・回復薬 250G
・上級回復薬400G
・解毒薬 150G
・筋肉増強薬500G
・倍速薬 350G
・目薬150G
・毒薬200G
・ラブリーポーション♡ 2000G ←オススメ♡
・混乱薬 150G
・睡眠薬 300G
・ワープ薬100G
・劇薬10000G
・幸せの薬1000000G
・武器強化カード 10000G
・盾強化カード 10000G
・盾コーティングカード20000G
劇薬と同じ値段の強化カードだった。あれ、良く考えたらギルマスから借りた斬鉄剣パイセンに武器強化カードを3回も使っちゃったよ。
「ちょっとギルマスー! ボク借りた斬鉄剣パイセンに武器強化カード使ったんですけど?」
「それがどうした。使ったのはお前だ。今更返せなんて言うなよな」
ギルマスが『それが何か?』という感じでジト目を向けて来た。マッチョなギルマスがやっても全然可愛くない。チェンジで!
「……ぐぬぬ。でもでも、そんな高いアイテムだったら持って帰って夏子さんに売れば一気にレベルアップしたと思いますー」
「残念ながらレベルアップに必要なのはスコアが全てだ。つまりダンジョン内で拾ったゴールドしか反映されない。夏子に売ったところでレベルアップには影響は無いって事だ」
つまりレベルを上げたければダンジョン探索してゴールドを拾いまくれって事か。レベル上げるだけなら死んでも関係ないって事だ。
「なるほどー。じゃあ集めたゴールドの主な使い道は夏子さんから強化カード買って強化しろって事でおっけー?」
「ああ、基本的にはそれで合ってる。だがいくら強化した装備でもダンジョンで死んだら無くなることを忘れるなよ」
そうだ、どんなに装備を強化しても空腹やトラップで簡単に死ぬのがこのダンジョンの恐ろしいところだ。JDとか魔女っ子とか強敵がいっぱいなのである。
「だがゴールドには他の使い道がある。それがガチャだ。これが3つめの特典だな」
「ガチャ!」
ボクも遂にガチャを引く日がやって来た。
ミッチー先輩に見せてもらった動画では『炎の息』というスキルが映っていた。正直なところアレが欲しいかと言われても微妙だけど、ワクワクしてしまう。
「こっちだ、来いっ!」
「……」
ビアンカちゃんのイベントがあってからボクへの当たりが強くなっているのは気のせいだろうか。
ギルマス的には悲しい出来事かもしれないけど、ボクに八つ当たりするのは止めてほしい。
「何をしているひよっこ! 置いて行くぞっ!」
「えっと、ボクはひよっこから初級冒険者になったんですけど?」
「ああそうだったな。でも良いのか? お前はまだひよっこと名乗った方が良いと思うけどなぁ」
ギルマスがニヤニヤと薄汚い笑みをボクに向けて来る。まるで弱い者イジメみたいだったのだ。これ絶対に根に持ってるよねー。
ボクがキョトンと可愛らしく首を傾げたところ、ギルマスが鬼の首を取ったかのようにボクに言って来た。
「だってお前、童貞だろう? ははっ、童貞野郎はひよっこで十分だ。そうだろ童貞くん?」
「な、ななな、何でそんな事言うんですかー! 酷い、気にしてるのにー! うわーん、夏子さん聞いてください、ギルマスがボクの事を童貞って言うんですー」
「あらあらまあまあ、怖かったのね~」
ボクはチャンスだと思い夏子さんに抱き着いた。エプロンの上からでも分かるこの胸の膨らみ……これはFくらいありそうだ。
コッソリとクンカクンカして良い香りを楽しんでいた。幸せ~♪
「でも、ユウタ君が童貞なのは本当なんだから受け入れないとダメよ~?」
「あ、はい……」
ギルマスがボクを見てニヤニヤしてる。
可愛い彼女を作ってラブラブイチャイチャしてギルマスに見せつけてやろうと心に誓った。
「これがガチャマシーンだ」
「おっきぃ」
ギルドの片隅に見上げる程に巨大なガチャマシーンがある。透明な球体の中にはガチャの景品であるカプセルがギッシリと詰まっていた。
白や緑、青とかカラフルなカプセルがいっぱいでどれが当たりか分からないけど、金とか銀のやつが当たりなような気がする。でも見た感じ金色なのは1個しか見えないぞ。こりゃ絶望的な確率な予感。
「ここにガチャコインを入れて回せばガチャが引ける。コインは1枚5000ゴールドで販売中だ」
「えええ? ちょっと高い。けどまあ、記念に1回分くださいな」
確かギルマスに預けている残高が6000Gくらいあった気がする。
掲示板情報だとガチャからはスキルの他にダンジョンで拾うアイテムが出たりするらしい。斬鉄剣パイセン欲しいなー。
「まあ待てひよっこユウタ。俺はいま大変に気分が良い。ひよっこのお前じゃ一生お目に掛かれないような美女と朝までイチャラブを繰り広げた今の俺は大賢者のような心の広さを持っている。まあ童貞……おっと失礼、ひよっこのお前には理解出来ない境地に居るって訳だぁ」
「…………あ、はい」
どうやらギルマス、昨晩ボクが帰った後に大人のお店に行ったらしい。相当悔しかったのだろう。ちょっとイラっとしたけどボクは大人だからね、大人の対応をしておきました。
「ひよっこのお前にはこれをやろう。まあ童貞……おっと失礼、ひよっこのお前じゃ大したモノは当たらないだろうけどなっ! ガハハハハハ」
「あざーっす」
ギルマスからガチャコイン1枚を頂きました。右手がプルプルするけど筋肉の塊を殴っても痛いだけだと我慢した。
自分で買った分と無料コインの合計2枚だ。渡されたコインにはゴリゴリマッチョな男がサイドチェストのポーズを決めているデザインだった。何故ギルマスなんだ。夏子さんの方がいいのに……。
さっさとガチャを引いちゃおう。
「何かスキルとか出ろー」
コインを入れてレバーを回転させるとガチャガチャと心地良い響きが広がった。ドキドキ……。
ガコッと音が鳴って出て来たカプセルは……銀色!
「ほう、銀色か。いいかひよっこ、ガチャの確率はかなり渋い。大抵のものはゴミアイテムだ。スキルは1000回に1回くらいしか当たらない。だからハズレても気を落とすなよ。まあ俺は1個持ってるけどな! ガハハハハ」
「へぇ~、そうなんですね。ワクワクドキドキ」
つまり『炎の息』ですら貴重なスキルだって事だ。
五月蠅いギルマスを適当にあしらってカプセルを開いた。すると『GOGO』と描かれたランプのようなものがペカーっと光ったように見えた。何だろ今のは。
そしてボクの頭の中に文字が浮かんできた。
『自然治癒力強化:中』
もしかしてこれ、スキルですか?




