第23話 残虐非道なサキュバスクイーン・ビアンカ
「ちょっとギルマスー、この称号ってどういう事ですか? もしかして初級冒険者になると称号が得られるとか?」
「称号ってのはそんな簡単に得られるものじゃない。一般的には上級ダンジョンをクリアしたり、特殊ダンジョンをクリアするという偉業を成し遂げた者に与えられる栄光だ」
「偉業……?」
さっきまでの鬼ごっこを思い出していた。
悪魔っ子に『おにーちゃん、そんな鼻息荒くしてわたしのこと捕まえてどうするの~?』とか、『あはっ、童貞のおにーちゃんの攻撃当たらないね~? 大丈夫? 挿入するとこわかる?』とか言われたボクはどんどん楽しくなった。もしかしたらそういう性癖に目覚めたのかもしれない。
あれが偉業だったのか。
「それ以外にも特殊な条件で得られる称号もある。今回のお前がそれだ。だがビアンカに目を付けられるとはな……」
マッチョが可哀想な子を見るような目で見つめて来た。その憐れむような目に、ボクはプッツンしちゃいました。
「ちょっとギルマスー! 焦らさないで早く教えて下さいよぉー! さっきから自分だけ知ってるような感じで喋ってるけどボクにはサッパリですよー! はよはよ!!」
「ああスマンスマン。いいか、心を強く持って聞くんだぞ」
「ご、ゴクリ……」
ゴリラが真剣な目でボクを見つめて来た。まるで斬鉄剣パイセンのような鋭い視線に、これはただ事ではないと実感してしまう。
そして遂に、驚愕の内容を話し出した。
「あの赤いゲートの先にサキュバスの館があるって言っただろう。サキュバスの館に入ったら冒険者がどうなるか知っているか?」
「サキュバスの館……。確かノックするとサキュバスが現れて中に入れてもらえるんですよね?」
以前、ホッシーから教えてもらった掲示板で見ました。兄貴と呼ばれる冒険者がサキュバスの館に辿り着いた時の事を。
「そうだ。奥の間に通された男はクイーンに審査される。自分が相手をするに相応しい男なのか調べられるんだ」
「ふむふむ」
確か兄貴と呼ばれる冒険者はそこで審査落ちしたらしい。
「早い話、クイーンの寵愛と言うのは審査を顔パス出来る称号だ。良かったな、お前がもしサキュバスの館に行けたらビアンカが相手をしてくれるぞ」
「な、なんだってー!?」
ボクがサキュバスの館に行ったらビアンカちゃんとあんな事やこんな事をして夜の運動会を二人プレイってことですか!?
でもおかしい、ギルマスはビアンカちゃんのことを残虐非道と言ったのだ。確かにビアンカちゃんはメスガキムーブでボクを揶揄って来たが、あれくらいならむしろ大興奮です。あれを楽しめないギルマスって特殊性癖なのか?
「現在ギルドで確認されているクイーンは5体居るが、寵愛を受けた冒険者はソイツの専属となる。専属ってのは聞こえは良いが、他のクイーンはもちろん、普通のサキュバスにも相手にされなくなる一種の呪いだ」
「つまりボクはビアンカちゃんとしかあんな事やこんな事が出来ないって事? 夏子さんみたいな癒し系美女とか、清楚系のお姉さん、ギャルでビッチなサキュバスもダメ?」
「ああ、ビアンカにしか相手にされない。そしてビアンカは……超ドSなんだ」
「えっ……?」
超ドSってアレですか、舞子さんのようなやつですか? でもおかしい、さっきまで戯れていたビアンカちゃんはそんな感じじゃなかった。きっと間違いだろう。
もうゴリラの話はいいから帰って学校行こうかな!
「現実逃避してるところ悪いが嘘じゃない。アイツは男をイジメるのが大好きなんだ。俺が知ってるのは随分と前の話になるが……聞きたいか?」
あの美少女なビアンカちゃんが他の男とアンアンする話なんて聞きたくないが、ギルマスの真剣な眼差しから『絶対に聞いておけ』という強い意志を感じた。きっとこれはボクにとって大事な内容なのだろう。
「サキュバスの館に挑んだ一人の冒険者がいた――」
ギルマスが大きく溜息を吐いてから話し出した。
◇
「やった…………やっと来れた! やったやった、やったぞー!!!」
闇夜に照らされた怪しい洋館、サキュバスの館に来ることが出来た。
俺が中級冒険者になってから1年の月日が流れた。あの日、俺が粋がって選んだ馬鹿な選択でこんな遠回りをしてしまった。
ギルドにある赤いゲート、中級冒険者にならないと入る事が許されず、1週間に1度しか挑戦する事が出来ないという特殊ダンジョン。
通常のダンジョンは『不思議なダンジョン』のルールに支配された空間だが、この特殊ダンジョンはリアルの力で戦う必要がある。ターン制なんていう甘っちょろいルールも無い。
基本的に通常のダンジョンで得たアイテムを鍛え、通常のダンジョンでレベルアップした己のステータスで攻略するエンドコンテンツと呼ばれている。
「あの時、俺が『スペースコロニー』を選ばなければっ……」
中級冒険者になって初めて赤いゲートを使う時、初回特典として1度だけダンジョンを選ぶ事が出来る。
『吸血姫の城』『戦乙女の戦場』『古代エルフの森』『スペースコロニー』『サキュバスの館』という5つのダンジョンが存在するが、入れる確率は『吸血姫の城』が一番高く、『サキュバスの館』は1%未満と言われているのだ。
あの時の俺は己の肉体に酔っていた。レベルアップで極振りした『力』は60を超え、この鍛え抜かれた筋肉なら鋼鉄で覆われた機械をねじ切れるのではとアホな事を考えてしまった。そう、俺は『スペースコロニー』を選んでしまったのだ。ここも確率で言えばかなり低く、挑戦してみたくなったのだ。
結果は惨敗だった。途中までの探索は順調だったのだが、病院と思われる施設でナース服を着た女性アンドロイドにボコボコにされてしまったのだ。ネームプレートに『桜』と書かれていたが、あれは特別なモンスターだったのかもしれない。その日俺は泣いた。こんな事ならサキュバスの館を選んでおけば良かった……と。
「ふははは、だが来れた。俺は遂に来たんだ!!!」
サキュバスの館の確率は1%未満、だがそこに自身の運の値が大きく関わって来るらしい。俺の運は51しか無かった。それでも1年で来れたのはラッキーだったのかもしれない。
はやる気持ちを抑えて館のドアを優しくノックした。ここでは紳士な振る舞いをしないと瞬殺されるのだ。
「は~い、いらっしゃ~い。おおっ? お兄さん良い筋肉してるね~。クイーンが要らないって言ったら私が相手してあげるねっ」
「う、うむ……!」
パッチリとした瞳、プルンとしたピンク色の唇、キラキラと輝く金髪ポニーテール、腰はキュっとくびれているのにブルンブルンと揺れる大きな胸のサキュバスが出迎えてくれた。
艶やかなドレスを纏ったそのサキュバスを見た瞬間、俺のビッグマグナムが暴発しそうになった。これがサキュバスの色香……!
「じゃあクイーンの元へご案内~♪」
「よ、宜しく頼む」
俺は初めて風俗に行った時の事を思い出していた。童貞だった俺が勇気を出して行ったあの時もこんな気分だった。
前を歩くサキュバスの匂いを嗅いでいるだけで興奮する。もうビッグマグナムがズボンを押し上げて痛いくらいに加熱していた。このままではコックオフしてしまうっ!
「今日の担当はビアンカ様だからお兄さん選ばれないと思うよ。いひひ、ここだけの話なんだけどビアンカ様ってショタっ子が大好物なんだよね。でもこんなダンジョンに来る冒険者にショタっ子なんて居ないじゃない? だからビアンカ様って誰も相手にした事ないんだって~。あっ、これオフレコね!」
「……」
楽しそうにサキュバスが話しているが全く耳に入って来ない。暴発しないよう尻に力を入れて我慢する事しか出来ないのだった。
そして謁見の間と言われる場所へ連れて行かれた俺は、本物のサキュバスに出会った。あれがクイーン……!
「ビアンカ様~? ご飯が来ましたよ~。でも筋肉質でビアンカ様の好みじゃないですよね? って事で私が食べちゃってもいいですか~?」
天蓋付きのベッドの上にクイーンが居た。黒いベビードールを纏った少し幼く見える少女だった。その少女が俺を見た瞬間、背筋がゾワゾワと震えた。食われると本気で思った。
「うーん、ゴリゴリマッチョかぁ。うーん」
ベッドに寝そべった少女が俺を吟味している。光を吸い込んでしまうような漆黒を思わせる黒髪が白いベッドシーツに広がっている。小さな体なのに胸は大きく、シミ一つない白い生足が美しかった。
俺は決してロリコンじゃない。だけどこのサキュバスならと思ってしまう自分がいた。
「ビアンカ様~早くしてくださいよぉ~。どうせ好みじゃないんですからいいでしょ~? もう私ってば一週間もお預けされて我慢の限界なんですぅ~。はよはよー!」
隣に居るアホっぽい金髪ポニテサキュバスがビアンカを煽った。それを見たビアンカがクスリと笑ったのだ。その笑みは獲物を狩る上位者のものであり、視線の先には俺が居た。背筋がゾクゾクと震え喉がカラカラになった。
「へぇ~、あんたそんなにお腹減ってるんだ~。あははっ、お兄さんこっちにいらっしゃい。このクイーンであるビアンカちゃんが特別に相手をしてあげるねっ」
「そ、そんなー!? ビアンカ様酷いですー!! ショタコンの癖にー!! 鬼ー! 悪魔ー!! 童貞フェチー!! 独占はんたーい!」
「あはっ、何の事~? あんたは特別に近くで見せてあげるからそこで大人しくしてなさい」
「ぎゃー!! 生殺しですかー!?」
どうやら俺は生贄になってしまったようだ……。
裸になってクイーンが寝ていたベッドの上に仰向けに寝たところ、未知の魔法が発動した。
「なっ!? これは何だっ、くぅ、う、動けんっ! ぐおおぉぉぉ!!」
ベッドフレームから銀色に輝く鎖が伸びたと思った瞬間、俺は四肢を拘束されてしまった。俺の筋肉をもってしてもピクリとも動かないこれは一体!?
罠に嵌った自分を呪いたくなった。クイーンが寝ていたベッドから甘い香りがしたため油断し過ぎたようだ。
「はぁ……全然ダメ~、なーにそのセリフ~。もっとビアンカちゃんをキュンとさせるセリフは言えないわけぇ?」
「な、何を言っているんだ?」
拘束された俺を見たビアンカが大きく溜息を吐いた。言っている事がサッパリ分からなかったのだ。
だけど俺の体はこの状況でも反応していた。ビッグマグナムが天に銃口を向けている。既に撃鉄を起こされてしまっており、情けない事に発射寸前だったのだ。
「ビアンカさまぁ~、今からでも私と交代してくださいよぉ~」
「あはっ、そうだったそうだった。あんたに見せつけると思えばこれも楽しいゲームだった~。いひひ、あんたは大人しくそこで見てなさい~♪」
「ひーん」
そう言ったビアンカの尻尾が俺のビッグマグナムの根元に巻き付いた。引き金を引けないように硬く締め付けられてしまったのだ。
これはヤバイ、男として絶対にヤバイやつだと本能が警鐘を鳴らしていた。
「ぐおおおおっ!? くそっ、何をするー!」
「あはははは、どう? 苦しいでしょう? あははははは」
苦しむ俺を見たビアンカが嬉しそうに笑い、封印されたビッグマグナムの銃身にオイルを垂らした。
「可愛い子ならビアンカちゃんのスベスベなお手々で気持ち良くしてあげるんだけど~、筋肉質なのは触りたくないから手袋するね。あはっ、でも安心して。この手袋は極上のシルク素材だから全然痛くないからね~。ほら、すっごく滑らかでしょ~? いっぱい気持ち良くしてあげるね♡」
「や、やめっ、それはダメだっ、ぐおおぉぉぉ!!」
俺の銃身が磨かれて行く。オイルをたっぷりと染み込ませたシルクの手袋で丁寧に磨き上げるようにお手入れをされてしまったのだ。
想像して欲しい、この地獄を……。男なら分かるだろう?
「どう? これがいいんでしょ~? あはっ、ダンジョンキノコをイジメる時と同じ反応で楽しいね~♪ 昨日なんて封印した状態で地震が起こるまでず~っと遊んであげたんだよ~。あはは、思い出したら楽しくなって来ちゃった♡」
「頼むっ、撃たせてくれっ、頼むっ!」
まるで封印の杖で封じられたキノコのような状態になってしまった。こんなの耐えられない……。助けを求めるように金髪ポニテサキュバスを見ればひとりでお楽しみ中だった。彼女の香しい匂いがここまで伝わって来る。それがまた辛かった。
でも地獄は始まったばかりだった。
「ほらほら、腰をちょっと上げたら入るかもよ~? ほらっ、がんばれっ、あとちょっとっ」
「ふんぬー! ふんぬー! くそっ、この鎖さえ無ければっ、くそっー!!」
俺の神聖なビッグマグナムの上でヤンキー座りしたビアンカに頑張って腰を突き出すが届かない。攻撃が届かないのだ!!
「えへへ、ちょっとだけサービスしちゃおうかな? ほら~、どうかな~? あっ、今ちょっと当たった? プニっとしたかな? お兄さん誇っていいよ。ビアンカちゃんのあそこに触れたのお兄さんが初めてだからね。ほらもうちょっと、がんばれ♡ がんばれ♡」
「ぐうっ、くそっくそっくそっ! 何故動かんっ!! くそーっ!!!」
自分の力を全て出し切ってもビアンカには届かなかった……。
そしてそんな生殺し状態が続いた。もうどれくらいの時間経ったのか分からないくらい長い時間が……。もう俺のビッグマグナムはオイルまみれになっており、お手入れというには長すぎる時間を磨き続けられた。
「た、たのむっ、もうむりだっ、おねがいします、なんでもしますからっ、たのむっ!!!」
「はぁ…………やっぱりダメだねー。こんなに遊んであげたのにそんなつまんないセリフしか言えないんじゃ、ビアンカちゃんの大事な膜に響かないよ~? あーあ、どこかにあたしのお腹をキュンキュンさせる可愛い男の子いないかな~」
「ビアンカ様、ポイですか!? その男ポイですよね!? 私が頂いても良いですよねー!?」
だんだん意識が朦朧としてきた。
「ダ~メ♡ こんな男でもちょっとは栄養になるからね~。はい、エナジードレイン♪」
「あーっ! ズルいですビアンカ様、そんなー!?」
体から力が抜けていく。これがサキュバスの館? 俺が望んでいたサキュバスがこれなのか? 他の冒険者からは夢のような体験が出来たと聞いた。それがこれなのか?
最後に見た景色は、悪魔のような笑みを浮かべたサキュバスだった。
◇
「これがギルドに残されている唯一の記録であり、残虐非道なサキュバスクイーン・ビアンカと戦った勇者の記録…………俺の体験談だ」
「ギルマスかよー!!!!!」
そりゃ生々しい話な訳だ。




