第22話 帰り道は危険がいっぱい
それからボクは地上へ向かって歩き出した。どうやら初級冒険者カードを持っていると地下へ進む階段から地上へ向かう階段に切り替わるらしい。ファンタジーな仕組みでビックリしました。可能な限り戦闘を回避し、階段を見つけたらフロア探索を終了して駆け込む事にしました。
モンスターを相手にしないように進んでいたある時、ハロウィンコスプレJDに違うパターンのコスプレがある事に気が付いた。ミイラ女だけかと思ったら悪魔っ子のコスプレをした女の子が居たのだ。合コンで会った志保さんのように小柄な女の子です。でもお胸は大きいですよ?
濡れ羽色の髪が背中を覆い、コウモリの羽のようなものまである。良く見たら尻尾まであった。黒いゴスロリドレスを着た可愛い女の子がクスクスと笑いながらボクを挑発していた。あれはハロウィンコスプレJDとは別のモンスターか……?
『あはっ、雑魚のおにーちゃんみーっけた。うふふ、あたしを捕まえたらエッチな事してあげる~』
「むむっ、モンスターが喋った!? ってエッチな事ですか!?」
ダンジョンに出現するモンスターは基本的に喋らない。攻撃する時とダメージを受けた時に喋るくらいである。魔女っ子は色々と組み合わせがありそうだけど、目の前のモンスターは今までと全然違うのだ。だって何もしてないのに勝手に喋るし、何より、ゆっくりとスカートをたくし上げてボクを挑発して来るのである。タイツかと思ったらニーソックスか!? くそっ、早く地上に戻らないといけないのに美少女ちゃんがボクを誘惑して来た。パンツが見えそうで見えない……。
『どうしたのおにーちゃん? ほら、早く早く~』
「くっ、ヤるしかない!」
今までこんな挑発をしてくるモンスターは居なかった。もしかしたらレアモンスターなのかもしれない。冒険者たるものレアという言葉を見逃す訳にはいかないのだった。べ、別に女の子に目が眩んだ訳じゃないんだからねっ!
分からせ……じゃなくて大人であるボクが社会の厳しさを教えてあげようと一歩近づいたところ、ビューンと素早い動きで逃げた。あの素早い動き……アレはワンコと同じ倍速行動だ!
『あははっ、どうしたの~? ほらー、早く捕まえてみなさいよー。ざーこ♡ ざーこ♡』
「なん……だと……?」
もしかしてあのメスガキは攻撃して来ないのか? ボクを挑発して逃げるだけのモンスターって事なのか!? もうプッツンしちゃいましたよ。
マジックバッグから杖を取り出した。
『なっ、それは鈍足の杖!? え、えへへ、おにーちゃん良く見たらカッコイイね? だからそれは止めよう?』
「今更媚び売ってもおそーい! おりゃー」
『や、やめっ、あああんっ』
ふふふ、ボクはワンコと戯れて学んだのだ。あのすばしっこいワンコも鈍足の杖を使えば遅くなるって。後はゆっくりと逃げ道を塞ぐように壁際へ追い詰めればボクの勝ちだ。
『あ、謝るから、その、ね? さっきのは冗談だよおにーちゃん。いや、やめっ、来ないでっ』
「はぁはぁ、もう逃げられないぞ……!」
壁際に追い詰め、部屋の角に誘導して逃げ場を無くしたメスガキちゃんが涙目でボクを見つめている。何だろう、凄く悪いことをしている気分になった。
さっさと倒して地上へ向かおう。斬鉄剣パイセンおなしゃす!
「なんとかなれーっ!」
こんな可愛い女の子を斬るのは心苦しいけど許して欲しい。だって相手はレアモンスターだから……。
『いった~い! 女の子を殴るなんてさいて~。そんなんだからいつまで経っても童貞なんだぞ?』
「ど、どどど、童貞じゃないもんー!」
斬鉄剣パイセンの力を持ってしても一撃で倒せないだと!?
『あはは、残念でした~♪ 童貞のおにーちゃん、またね~♡』
「ふぁっ!? 消えた……?」
ワープ薬を飲んだ時のようにビューンと消えてしまった。
「なんだったんだ、あのモンスターは……」
ポツンと一人部屋に取り残されたボクは啞然としてしまったが、逆に冷静になった。今は賢者モードの時のように頭が冴えている。こんなところで遊んでいる訳にはいかない、帰るまでが冒険なのだ。よし、諦めて階段へ向かおう。
そう思って通路を進み新しい部屋に入ったとき、ボクは見つけてしまった。
『あはっ、おにーちゃんまだ居たの~? それともストーカー? はぁ、これだから童貞は嫌よね~。でもでも~あたしはおにーちゃんの事、好きだよ? だからほら、サービスしてあげる♡ これ見て一人で慰めると良いよ。あはは、童貞のおにーちゃんには刺激が強すぎちゃったかなぁ?』
「な、ななな、なんでー!? それにダメだよ、見えちゃってるよ? くっ、ボクは屈しない、パンチラになんて屈しないんだからっ!」
『うひひ、口では嫌って言いながら体は正直だねおにーちゃん? 指の隙間からガン見してるのバレバレだよ~? あはは』
階段はありました。ボクのすぐ目の前です。でもその少し奥にメスガキちゃんが待ち構えていたのだ。ボクを見つけたメスガキちゃんがニヤニヤと笑みを浮かべ、スカートをヒラヒラさせて挑発してくる。さっきよりも過激になった挑発はチラッとピンク色の布が見えました。
今まで生きて来た中でここまで悔しいと思った事はあっただろうか。いや、無い!
「許さないぞぉぉー!」
『きゃはっ、おにーちゃんの変態~♡』
そうしてボクとメスガキちゃんの追い掛けっこが始まったのだ。正直に言おう、美少女との追い掛けっこは楽しかったです。
◇
「おう、帰ったか。随分とお疲れだな、そんなに大変だったか?」
「…………疲れました」
結果だけ先に言うとボクは無事帰って来れた。初級冒険者カードを持ってギルドに戻れたのだ。でも凄く疲れた。
ボクはあの初めての経験をギルマスに話してみた。
あれから壮絶な追い掛けっこが始まった。逃げる幼女と追い掛けるショタというキャッキャウフフな展開だ。女の子と追いかけっこをしたのなんて小学生の時が最後かもしれない。でも楽しかったのです。
『やーん、おにーちゃんに壁ドンされちゃった~』
『うへへ、もう逃げられませんよ~』
部屋の角に追い詰めた少女がボクを見つめて来る。でも何故かこの女の子も嬉しそうだった。既に2回も斬鉄剣パイセンで攻撃してるのに倒せないこの少女は何者ですか?
『あーあ、おにーちゃんとの鬼ごっこもこれでおしまいか~。楽しかったね?』
『う、うん……』
正直に言ってボクが戸惑っていた。ここまで会話が続くモンスターはいなかったのだ。まさにユニークモンスターと言うのだろうか。それに黒いゴスロリドレスが大変お似合いな美少女も、ボクのターンだし見放題です。くっ、あのニーソの絶対領域は童貞には毒だぞ。
『おにーちゃん攻撃しないの~? じゃあこうしよっか、おにーちゃんが見逃してくれるならサービスしてあげる』
『さ、サービス?』
『うんっ! おにーちゃんのターンが終わるまで……好きにしていいよ?』
『ご、ゴクリ……』
そう言った少女が焦らすようにスカートをたくし上げた。見えそうで見えないチラリズムを狙っているのだろう。童貞なボクには効果は抜群だった。
下から見上げる絶対領域の素晴らしさから始まり、ガニ股になって一瞬見えるパンチラ、壁に手を当ててバックから見せるパンチラ、そしてパンツをずら……おっと、ここからはR18だった。でもツルツルでした。
美少女モンスターがボクに大人の授業をしてくれたのです。詳しく伝えようと思っても言葉に出来ないけど最高だった。特にくぱぁってやつ。
『はぁはぁ、はぁはぁ』
『あははっ、おにーちゃん最高ぉ~♪ じゃあじゃあ、こういうのもどうかな~?』
『っ!?』
前屈みになった彼女が上目遣いでボクを見つめて来る。可愛い彼女の顔も良いけど、その無防備なドレスの胸元からアレが見えちゃっているのだっ!
しゅごい、パンツと同じピンク色のブラと柔らかそうな胸の谷間がボクを誘惑している。こんなのどうしたら良いんだ!?
『触ってみる?』
『いいのっ!?』
彼女が豊満な胸を突き出してボクを誘惑してくる。このダンジョンはR15なはずだけど、おさわりくらいならR18にならないよね?
『いひひ、おにーちゃんの事好きになっちゃったから特別だよ? でもでも、その物騒な獲物はしまってね?』
『う、うん!』
ごめんよ斬鉄剣パイセン、ちょっと休んでいて下さい。それに触るなら素手だよね?
ボクは右手をゆっくりと突き出した。震える指先が彼女のドレスに触れ、そして柔らかい膨らみに包まれた。
『あんっ♡』
これは本物だ。ボクなら分かる。スライムやラブリーポーション夏子さんが偽物であるとボクには分かった。これこそがおっぱいなのだと!!
右手から幸せが伝わって来る。ああ、そうか。ボクは彼女と逢うためにダンジョンに導かれたのか。今日までのダンジョン生活の意味をようやく理解した。
『や、やだっ、おにーちゃん強すぎっ、そんなんじゃ女の子に嫌われちゃうぞ~?』
『ご、ごめんっ!!』
思わず右手を離してしまった。でも右手には感触が残っている気がするのだ。ああ、もう死んでも良いかも。
ボクのターンが終了した。次は彼女のターンだ。またワープするのかと思ったけど、どうやら様子が変だった。
『あちゃー、素手でもダメージ判定あるんだね。やられちゃった♡ うふふ、すっごく楽しかったねおにーちゃん』
『あ、あああ、ごめんっ、そんなつもりじゃっ!』
彼女の体が霧のように溶けていく。
『そんな顔しないでおにーちゃん。うふふ、おにーちゃんの事好きになっちゃったからコレあげるねっ!』
『なっ、なんだっ!?』
霧になって消える彼女の一部がボクの体に吸い込まれた。
『あはっ、これでおにーちゃんはビアンカちゃんのモノだよ。また会えるのを楽しみにしてるね! あ、それとおにーちゃん。童貞だからしょうがないかもしれないけど、あんまりがっつき過ぎると女の子に嫌われちゃうぞ☆ じゃあね~』
今までこんな消え方をするモンスターは居なかった。というかあそこまで会話が出来るモンスターがレアな気がする。霧のように消えてしまった彼女、でもボクの右手には彼女の温もりが残されているのだった。
そんな不思議な体験をした事をギルマスに話してみた。
「マジか……。この黒いゲートでサキュバスに遭遇するだけでも奇跡なのに、よりにもよって残虐非道なサキュバスクイーン・ビアンカの寵愛を貰ったのか? お前は運が良いんだか悪いんだか分からねーな」
「えっと、ギルマスさん? ボクにも分かるように言って下さいよー!」
何ですか残虐非道なサキュバスクイーンって。あのビアンカっていうモンスターはサキュバスだったってこと?
「ああ、ちゃんと説明してやる。だがその前にスコア更新が先だ。あと貸した装備は返せな」
「えー、返さないとダメなの~? ケチー!」
「うるせー! 早くよこせっ」
強面なギルマスに勝てる訳もなく、マジックバッグから借りた装備を取り出した。ああ、ボクの斬鉄剣パイセンがー!
「おい、バリアシステムはどうした?」
「え、えへへ、無くしちゃいましたー。てへぺろー!」
「ちょっおまっ、あれはスペースコロニーで宝箱から持ち帰ったレアものだぞっ!? それを無くしたっておいっ!!!」
「そんなに凄いものだったんですか!? うう……ごめんなさいぃ」
ボクは誤魔化した。魅力を最大限に使ったウルウルした瞳で謝りました。男にこれをするのは嫌だったがこうするしかなかったのだ。
それにしてもあの装備はスペースコロニーから持ち帰ったのか。やるなギルマス!
「はぁ…………しょうがない。ほら、さっさとスコア更新しろ。あと持って帰って来たカードを出せ」
「はーい!」
ふぅ、何とか誤魔化せた。さて、スコア更新とかやっちゃおう。
【ハイスコア】
1:6842G 冒険者のダンジョン地下10階から、初級冒険者カードを持ち帰る。
2:3418G 冒険者のダンジョン地下9階で、魔女っ子に倒される。
3:428G 冒険者のダンジョン地下5階で、ハロウィンコスプレJDに倒される。
4:200G 冒険者のダンジョン地下3階で、フェンリルベビーに倒される。
5:0G 冒険者のダンジョン地下1階で、天王寺七海の悲痛な胸の内に触れる。
6:0G 冒険者のダンジョン地下1階で、夏子さんに倒される。
7:
8:
9:
10:
【累計スコア:10888G】
おめでとうございます。レベルアップしました。
好きなステータスにボーナスポイントを割り振って下さい。
レベル:5
HP:36(+8)
MP:2
ちから:16(+2)
みのまもり:11(+1)
すばやさ:15
かしこさ:6
きようさ:14(+1)
みりょく:48(+1)(BP+1)
うんのよさ:96
称号:サキュバスクイーン・ビアンカの寵愛
「称号が増えてる!? っていうかボクの賢さがいつの間にか6になってたー!」
あれか、合コンでオートプレイしていた時にレベル上がっていたのか。
という事は今まで賢さが5だと思っていたけど実は6だったのか……? どうやらボクがアホなのは賢さが5だろうが6だろうが変わらないようだ。
それにしても称号って何ですか?




