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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
ひよっこ冒険者の章

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第17話 本当にそれ、鑑定ですか?


 22年生きて来た私の人生を振り返った時、一番古い記憶は何時だろうかとベッドの上で考えてみた。今日のようになかなか寝付けない日は、どうでも良い事を考える事にしていた。


 一度大きく深呼吸して目を瞑り過去を振り返ったみれば、やはりそこには私の憧れたあの舞台が出て来た。


『凄い、みんな綺麗……』


 色鮮やかな衣装を身に纏った女性達が輝くステージの上を歩いて行く。ドレスはキラキラと光り輝き、当時の私には本物のお姫様のように見えた。


 あれが何だったのか正確に思い出せないが、たぶん母親に連れられて行ったファッションショーなのだろう。


 自慢する気はないが、天王寺グループという巨大な会社を指揮する母の子である私は、裕福な家庭で何不自由なく幸せに暮らしていた。


『将来の夢……』


 小学生の時、そんな事を考える授業があった。授業の時間で書ききれない人はお家に帰ってから両親と相談するように言われた。


 私はその日、家で母に相談した。


『七海ちゃんは何かやってみたい事とかないのかしら?』


『……やってみたい事。でも……』


 私には兄と姉がいる。将来会社を継ぐと張り切る兄と、海外を旅してみたいと憧れを抱く姉の背を見ていたからだろうか、私には二人が眩し過ぎる存在に見えた。


 父と母は俗に言うエリートだった。頭も良ければ容姿も良い。そんな二人の良いところを全部注ぎ込まれた存在としか思えない兄と姉、私とは違い勉強も出来るしお稽古だって何でも出来る。


『七海ちゃんの未来は無限に広がっているの。だから今決めた事をやらないとダメな訳じゃ無いわ。そうね、憧れでも良いのよ』


『憧れ……』


 最初は本当に軽い気持ちだった。綺麗なお洋服が着てみたい。輝く舞台を歩いてみたい。そんな子供ながらに思った憧れだった。


 あの日見たファッションショーに出たらどんな気持ちになるのだろうかという好奇心が重い足を動かした。


『私、ファッションショーに出て見たい……』


『素敵ですわ。じゃあモデルになるためのお勉強しましょう』


 そうして私はファッションモデルになるという夢を叶えるため、最初の一歩を踏み出した。





 母の後押しを受けて始めたバレエは姿勢を良くする効果が期待出来るらしい。自分の中で目標が出来たからだろうか、辛いけど他のお稽古よりも遣り甲斐を感じていた。


 夢に向かって進むのが楽しかった。きっと兄や姉もこんな気持ちだったのだろう。


 食事や睡眠にも気を遣い、モデルになる夢を追い掛けた。


 そして高校を卒業し大学へ進む傍ら、モデルの仕事を勝ち取った。もちろん天王寺家という七光りが無かった訳ではないが、それに負けないくらいに努力して来たつもりだ。


 順風満帆に進んでいたはずの仕事だが、厄介な男に付き纏われてしまった。今若手の中で最も勢いがある男性アイドルのキムタコである。


「はぁ……お母様に相談しよう。まだ起きてるかな?」


 最初の出会いは雑誌の撮影だった。キムタコという男性はスタイル抜群で甘いマスクのある色男と評判である。でも何故だろう、私には合わなかったのだ。


 やたらグイグイと迫って来る押しの強い彼は、どうやら私の事を好きになったらしい。一度告白されたけど断った。でもそれが彼のプライドを傷付けてしまったようだ。それ以降、執拗に迫って来るようになってしまった。


 現場に先回りしている事もあれば、何故か私の連絡先を入手して連絡をしてくる。日に日に頻度が増していき、徐々に恐怖を感じるようになって来た。


 マネージャーに相談したけど良くある事だと言われてしまった私は、スマホを取り出し頼りになる母へ電話を掛けた。




   ◇




 大学から少しだけ離れた喫茶店である男性と会う事になった。


 珈琲の香りが心地良い店内に入ると既にその男性は席にいた。母と同い年という彼だが少し童顔なため、まだまだ若々しかった。


 この人と会うのは久しぶりだけど、話していると心が落ち着くカウンセラーのような男性だ。


「おはよう七海ちゃん。玲子さんに似て綺麗になったね。いや、玲子さん以上かも?」


「おはようございます、薫さん。お忙しいところすみません」


「いやいや、七海ちゃんのためだったらお安い御用だよ。それに僕、玲子さんには逆らえないんだ。直属の上司だからね」


「ふふ、いつも母がすみません」


 電話をした翌日、母の親友であり、少し遠い親戚である黒川薫(くろかわかおる)さんと会う事になった。別に母が忙しく会えないとかそういう事ではなく、母にはしっかりとストーカー被害の事は伝えてある。


 それでも私を心配した母が急遽この薫さんと会うようにセッティングして来たのだ。夜中に電話して翌朝というのは申し訳なかったけど、母曰く、日付変更して直ぐにでも会わせたかったらしい。信じられないけどこの薫という男性、特殊能力が使えるらしい。


 これは本当にごく一部の人しか知らない情報であり、もちろん私の兄や姉も知らない秘密。私だって昨日母から突然言われて戸惑っているくらいである。何せ特殊能力というのが、漫画やアニメで出て来るような【鑑定スキル】だというのだ。


 鑑定スキルといえば物の価値が分かったりする便利なモノだけど、この現代において薫さんが使う鑑定スキルは少し違うらしい。何やら今日の運勢やちょっとしたアドバイスが貰えるそうなのだ。


「まずは珈琲でも頼もうか。僕はここのプリンが食べてみたかったんだよね。七海ちゃんもどうかな?」


「では紅茶とプリンをお願いします」


 『珈琲とプリン』という名の喫茶店で紅茶を頼むのは気が引けたが、メイド服を着こなした可愛い女の子が満面の笑みで注文を受けてくれた。


 でもこのメイド服はかなり際どい。今の店員さんは少しだけ葉月おばさまに似ていたかもしれない。主に胸が……。


「薫さん、今の顔は良くないと思います。あのメイドさんの胸を見過ぎでしたよ? あまり酷いようでしたら葉月おばさまに報告しないといけません」


 薫さんがメイドの胸をガン見していたのだ。あんなに可愛い奥さんがいるのに浮気しようとするなんて薫さんったら……。


「ちょっ、それはマズイ。葉月ちゃんを怒らせたらなかなか機嫌を直してくれないんだ」


「ふふ、冗談ですよ」


 薫さんのホッとする顔が面白くて、私もついつい笑顔になってしまった。





「じゃあ鑑定……っていうか、占いを始めるよ。悪いけど手、いいかな?」


「占いですか……?」


 紅茶とプリンを頂いてしばらく雑談を楽しんだ後、ついに薫さんが核心に入った。


 薫さん曰く、手を握ると色々な情報が得られるらしい。薫さんに見つめられると何か心の奥底まで見られているような気分になってしまう。


 少しドキドキして手を差し出した。


「うん、分かった。とりあえず紙に書くね」


「あ、はい……」


 手を握ったのも一瞬で、占いというには短すぎる時間で終わってしまった。


 そして何故か私の顔の横に視線を向け、まるでそこに表示されるナニカを書き写すようにしている。


「はい、どうぞ。きっとこれでボクの能力を信用してくれると思う」


「……っ!?」


 薫さんから受け取ったメモ用紙には驚愕の事が書かれていた。それは私にしか知らない事であり、ましてや薫さんが知り得るはずのない秘密。



天王寺七海(てんのうじななみ)

 今話題の美人モデルさん!

 母親譲りの見事なプロポーションは完璧で、世の男性を虜にするだろう。

 だがしかし、彼女には試練が待ち構えていた。キムタコのストーキングである!

 でも安心して欲しい、全部彼が上手いことやってくれます。全部終わったら沢山愛してあげて下さい。

 ちなみに、愛読書は『あべこべ世界に迷い込んだショタが、年上のお姉さんに甘やかされてドロドロに溶かされるまで(新装版)』です。

 実はこれ、親戚の中野楓(なかのかえで)がコッソリと布教活動で忍ばせたって知ってた?



※今日の運勢※

 運命の出会いがあるでしょう。

 キュンキュンしちゃう超好みの可愛い男の子を紹介されるけど、今は断って下さい。心苦しいかもしれないけどガツンと断って下さい。完膚なきまでに徹底的に!

 絶対ですよ?



「な、ななな、なんですかコレ!? えっ、嘘っ、なんでー?」


「落ち着いて七海ちゃん。これは占いの神様が教えてくれた事だから誰も知らないんだ。安心して?」


「で、でもでも、あれー!?」


 もしかしたら人生で一番驚いた日なのかもしれない。


薫くんの物語は別作品になります。

もしご興味がございましたら読んでくださいー!


『本当にそれ、鑑定ですか?』

https://ncode.syosetu.com/n3673hv/

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