第102話 想定外
ギルとウサ吉に別れを告げたボクは、この街のトップであるシンシア様との面談の場へと足を運んだ。この古代エルフの街の仕来たりのため、新参者のボクは挨拶をしないとダメらしいのです。ギルのお陰で次回もこの街からスタート出来るし、街のトップと顔見知りになっておくのは悪い事じゃないだろう。
立派なドアを入ると、そこには偉そうなちっこい褐色ロリエルフがボクを待ち構えていた。ギルの話だと床に臥せているって話だけど違ったのだろうか。
でもまあ、そんな事よりも気になる事があるんだけどね。
「えっと、突然の事で混乱してるんですけど……ビアンカちゃんがどうしてここに居るんですか?」
「きゃはっ、ビアンカちゃん捕まっちゃったの。おにーちゃん助けてー」
捕まったのに危機感が無いビアンカちゃんは全然困っているように見えなかった。むしろ楽しんでいるような……?
ビアンカちゃんをよく見ると、いつものゴスロリドレスの上から樹木が絡みついて拘束されている。おっぱいがムギュっとなってエッチです。フローリングからニョキニョキと生える樹木、あれはシンシア様の魔法だろうか。
「にょほほほ、誰か知らぬが良いところに来たの。ちょうどこれからビアンカに罰を与えるところなのじゃ。お主も見て行くと良いぞ」
「罰ですか? ビアンカちゃんはちょっとワガママなところがありますけど悪い子じゃないんです。そんな拘束するなんて可哀想です。一体どんな悪い事をしたんですか?」
ビアンカちゃんはサキュバスクイーンという生まれながらにして上位種族であり絶対強者である。欲しいモノは必ず手に入れるポリシーは譲れないと言っていたのを思い出した。一緒にお買い物に行った時も金に糸目を付けぬ豪胆なお買い物でしたよ。片っ端から買って行く感じです。
でも根は優しい女の子なのだ。きっとシンシア様のお気に入りのプリンを食べちゃったとかそんな感じだろう。
「此奴はな、妾が初めて作った幸せの薬を盗んだのじゃ! 嫌がる妾を強引に押し倒し、縛り付け、見せつけるように奪って行きおった!」
「…………なるほど、これが自業自得ってやつですね!」
「ちょっ、おにーちゃん納得しちゃダメだよー! 盗んだんじゃなくてちょっと借りただけだし、冤罪だよぉ。愛しのビアンカちゃんをたーすーけーてー」
ギルの言っていた犯人がボクの知人でした。というか身内です。まさかビアンカちゃんが盗みを働くなんて……。
冤罪だと言いながらジタバタと暴れるビアンカちゃんにジロリと視線を向けるが、当の本人は反省した感じが見られなかった。
「てへっ。ギルドにいる夏子ちゃんと取引して幸せの薬が必要になったから借りちゃったの。盗んだんじゃなくて借りただけだよ? それにおにーちゃんはビアンカちゃんの事を責められないでしょ。だってルナのところからいっぱい盗んだじゃん? ほら、おにーちゃんの方が悪い事してるよね~」
「えぇぇぇ、ボクのは不可抗力だから違うんです。一緒にしないで下さい」
こんなところで夏子さんの名前が出るなんて思ってもみなかった。そう言えば時魔法という名のおっぱいマッサージをしなくなってしばらくした日、夏子さんがピチピチのJKに若返っていたのを思い出した。若返りにあれだけ情熱を注いでいたのにどうしたのだろうと思っていたが、ビアンカちゃんが盗んだ幸せの薬で若返ったのか!
つまり幸せの薬とは若返り薬って事か。シオンちゃんも若返りを狙っているのか……?
ソファーから立ち上がったシンシア様がビアンカちゃんに近づいた。
「どうじゃビアンカ、罪を認めて反省する気になったかの?」
「はぁ~? このビアンカちゃんが反省なんてする訳ないでしょ。それよりもシンシア、私の事はビアンカ様でしょ? 先代ならまだしも、下の毛も生えてないようなお子ちゃまに呼び捨てにされる覚えはないわよ」
「ぐぬぬ……口が減らない女なのじゃ。それに妾はお子ちゃまなのではない、パイ〇ンなのじゃ!!」
この褐色ロリっ子エルフはツルツルですか!?
「あはっ、そうだったの? 見た目もちっこいし、てっきりお子ちゃまなのかと思った~。でもまあ処女なんだしお子ちゃまなのは変わらないよね。あははっ」
「それを言うならビアンカなんて妾が生まれるずっと前から処女であろう。既に膜が硬くなり過ぎて貫通出来ぬかもしれんな! にょほほほ」
どうやらシンシア様とビアンカちゃんは旧知の仲のようだ。ロリっ子同士が仲良くキャッキャウフフと戯れている姿はホッコリしますね。ここにルナ様が居たらロリっ子三人組のアイドルユニットが組めそうだ。U149っていうアイドルグループ結成しましょうか。身長149cm以下のロリロリアイドルです。
そんなアホな事を考えていたら何故かこっちに火種が飛んできた。
「残念でした~! ビアンカちゃんの処女はそこにいるおにーちゃんに美味しく食べられちゃいました♡」
「な、なんじゃと……!? 永遠の処女と言われたビアンカが……? しかもこんなアホっぽい男にだと……?」
シンシア様がボクの顔を見て『ば、バカな……!?』っていう感じで驚いていた。ちょっと驚き過ぎな気がする。そりゃあちょっとだけ背が低いかもしれないけど、女性をアンアンさせる立派な愛棒さんを標準装備してますからね。男の魅力は身長だけじゃないのです。
「えー、おにーちゃんはアホじゃなくて可愛い男の子だよ。それにカッコイイところだってあるんだからね。このサキュバスクイーンのビアンカちゃんが認めた唯一の男の子、それがこのおにーちゃんだよっ!」
「えへへ、照れちゃいますね。ビアンカちゃん大好きですよ」
「きゃはっ、相思相愛だねっ!」
こんな状況じゃなければイチャラブエッチを開始したいところです。こんな事ならギルに大人の玩具をあげなければ良かったな。
「お主らは状況を理解していないようじゃの……。さて、反省する気の無いビアンカには罰を受けてもらうのじゃ。試しにオークの巣にでも放り込んで楽しい悲鳴でも聞いてみるかの? それとも愛しい男の前で嬲り殺されるのがいいか。にょほほほ、どうじゃ怖かろう!」
「あははっ、シンシア如きがこのビアンカちゃんを罰するっていうの~? 笑っちゃうねっ」
真剣な顔をしたシンシア様の言葉を受けても平然とするビアンカちゃん。そういえば以前ビアンカちゃんが言っていたな。本体はサキュバスの館に居て、遊びに行くのは魔力で作ったお人形だって。ここでビアンカちゃんが何かされても痛くも痒くもないという事だろうか。
――シンシア様の言うような酷い事をされるビアンカちゃんを想像してしまった。
いくら魔力で作ったお人形とはいえ、愛する女性が目の前で痛めつけられる姿は見たくなかった。ましてやオークの巣に連れて行かれたビアンカちゃんが本場の種付けプレスをされてしまう姿など絶対にダメだ。ボクがやっても体重が足りないから威力が弱いけど、オークパイセンの一撃を味わったらボクのアイデンティティが無くなっちゃうからね!
ヘタレなボクだけど、こんな時くらいはカッコ良く漢を見せる時だ!
「待ってください、ビアンカちゃんの罪はボクが償います! ボクが出来る事なら何だってしますので、ビアンカちゃんを許してくださいーっ!」
ボクはビアンカちゃんの前に飛び出し、シンシア様の顔を見つめながらビシィっと言った。シーンと静まり返るお部屋には、壁掛け時計のカチコチという時を刻む音だけが響いていた。二人とも思わぬ状況に固まってしまったようだ。ふふ、決まったな。愛する女性を守るイケメンにビアンカちゃんはキュンキュンし、シンシア様もボクの漢気にキュンキュンしている事だろう。
つまりボクのイケメンさに免じて許してもらうハッピーエンドな流れです。めでたしめでたし。
「にょほほ、そこまで言うのなら仕方がないのぅ。お主が身代わりになる事でビアンカの件は水に流すとするのじゃ」
「…………あれぇ?」
思っていたのと全然違った。ボクに免じて許してやるっていう流れだと思ったのだ。『こんな女のために身を投げ出すなんて心までイケメンか!? ……ビアンカよ、これからは心を入れ替えて生きるのじゃぞ』って言って一件落着じゃないの?
放心するボクに手を向けるシンシア様が何か呪文を唱えた次の瞬間、床からウニョウニョと蔦が生えて来た。そしてボクはビアンカちゃんと同じように立った状態で拘束されてしまったのでした。
「いい格好だのぉ。これからお主を徹底的にイジメてやるのじゃ。ビアンカは大人しくそこでみておるがいい。最愛の男が喘ぐ姿をな! にょほほほほ」
「くっ、シンシアの癖に生意気よ! ……けどね、おにーちゃんをそこら辺の男と一緒にしないでよね。おにーちゃんはね、どんな責めにも屈しないんだからっ!!」
「えええぇぇぇぇ……?」
どうやら墓穴を掘ってしまったらしい。っていうかボク、何しにここへ来たんだっけ?




