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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
中級冒険者の章

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第97話 怖い森


 古代エルフの森と思わしきダンジョンにやってきたボクは、現地で出会ったウサギのウサ吉をお供に深い森の奥へと進んで行った。


 迷子にならないように歩きながら地面に枝で道標を書いていたけど、何故かウサ吉に怒られて捨てられてしまいました。ボクのエクスカリバーが!!


 しょうがないのでウサ吉を抱っこして指示された方向へ進んで行く。すると……。


「キュ!」


 ウサ吉さんが可愛らしく声を上げた先を見ると、刺々しい木の根元に毒々しい紫色をしたキノコが生えていた。椎茸より少し小さいサイズのキノコだけど、食べたら死ぬような気がする……。


「もしかして……このキノコを採れと?」


「キュキュ!」


 ボクの手をペシペシと叩き早くキノコを採れと催促してくるウサ吉さん。でもボクはキノコ名人じゃないのでこのキノコに触りたくなかった。触るだけでも危険なキノコも世の中には存在するらしいですよ? ちなみに、ボクの愛棒さんは安全なキノコだからいっぱいお触りOKです!


 渋るボクに何度も鳴いて催促してくるので、仕方なくティッシュで包んで採取しました。


「ほら、キノコ採ってあげたよ。お食べ~……」


「キューン!!」


「痛っ! なんでぇ……?」


 もしかしたらこのウサギちゃんの大好物なのかと思って口元に近付けたらパチーンと叩かれてしまった。解せぬ……。


「キュキュ! キュキュ!」


「ええぇ、持って行けって事……?」


 ボクの腕から飛び出したウサ吉さんがブルブルスティックの入ったハローバイブの袋をペシペシと叩いている。可愛いくてほっこりしてしまうが、もしかしてこのウサギさんはブルブルスティックとキノコを同じものだと勘違いしたのかもしれない……。


 言われるがままキノコを袋にしまうと、満足そうに頷いてボクの腕に戻って来た。


「まあいっか……」


 所詮は賢さの低いウサギちゃんですよ。きっと賢さは1くらいしかないのだろう……。






 そんな感じでウサ吉さんの指示通りに進んで行くと、耳をピクピクさせて警戒する鳴き声を上げた。


「キュキュ!?」


「むむっ、敵ですか?」


 ウサ吉の耳がビクンビクンと震えて背後を気にし出した。一流冒険者なボクは素早く木に隠れてウサ吉の見つめる先を調べた。


 視線の先には濃い茂みが広がっている。まるで七海さんのダンジョン周辺のフサフサ具合と同じような茂みだ。実は七海さんは濃い目だったのです。内緒だよ? でもボクは姫ちゃんみたいなツルツルもオッケーなので勘違いしないでくださいね。


「……何もないよ?」


「キュー……」


 どうやらウサ吉の勘違いだったらしい。しょんぼりとするウサ吉をナデナデしてあげました。ボクは猫派だったけど、このモフモフで愛らしい生き物にキュンキュンしてしまう。ウサギ可愛い。







 可愛いウサ吉をモフモフしながら歩いていると、耳をピクピクさせて周囲を確認し出した。鼻も動かして情報収集してる。ピンク色の鼻先が可愛いなぁ。


「キュキュキュー!!!」


「むむっ、敵ですか!?」


 今度はさっきと違い鬼気迫る鳴き声を上げた。周囲を見渡したがモンスターの気配は無かった。ウサギさんにしか分からない野生の勘ってやつだろう。


 ボクの腕から飛び出したウサ吉が茂みの中に飛び込んだ。そして顔だけ出してお前も早くこっちに来いと呼んでいるのだ。賢さの低いウサギちゃんだけど、野生の勘はバカに出来ないのでボクも後に続いた。


 茂みの中には丁度ボクが入れるくらいの空洞があり、まさに隠れるためのベストスポットだった。


「ねえウサ吉、もしかしてモンスターが――むぐっ」


「キュ!」


 ウサ吉の可愛いお手手で口を塞がれてしまった。ちょっとひんやりとした肉球がプニプニしています。


 どうやら本気でヤバイ状態らしく、ボクは息を殺してジッと身を潜めた……。





――ガサガサ


 遠くから木の擦れる音が聞こえる。





――ガサガサ


 徐々に何かが近づいて来るのが分かった。今まで感じた事のない恐怖に、思わずウサ吉を強く抱き締めてしまった。





――ガサガサ


 ボクの近くを通っているのだろうか、何か途轍もないパワーを感じるのだ。ボクが百人居ても敵わないであろう何かが近くを通って行く。好奇心に負けたボクは、コッソリと茂みの隙間から外を見る。すると……。




「――っ!?」


 悲鳴を上げなかったボクを褒めて欲しい。アレは人間が倒せるようなモノじゃない。本物のモンスターだ。迷彩色というのだろうか、周囲に溶け込む緑色をしたボディを持つ大きなカマキリ。大きなという表現は間違っているかもしれない、あれはそんな言葉で済まない程に巨大だった。人間くらいの大きさがありそうだ。


 更に恐ろしいのが足音がしない事だ。巨体を支える4本の脚は衝撃を吸収させるように地面に着き、2本の鋭い鎌が獲物を狙っている。あれは容易に人体を切り裂く様が想像出来る。それはまさに暗殺者の動きだった……。


 今までのダンジョンが遊びに思えるその凶悪なモンスターを見て、ボクはウサ吉のモフモフに顔を埋めて恐怖に耐えていた……。






『ぎゃあああぁぁぁぁぁあ!!』





「ひぃっ!?」


 遠くで男の悲鳴が聞こえた。もしかしてボク以外に冒険者が居たのだろうか?


「キュイキュイ!!」


「えっ、待ってよウサ吉! まだ危ないって~」


 安全な茂みからウサ吉が飛び出してしまった。一瞬、悲鳴が聞こえたところへ救助に向かうのかと思いきや、違う方へ走り出した。


 ウサ吉が止まり、二本足で立ち上がるようにピョンピョンと跳ねてボクに付いてくるようにアピールしている。もしかしたらこの場所は安全じゃ無くなったのかもしれない……。


 助けに行けなくてごめんなさい、どこかの冒険者さん。ボクは心の中で謝り走り出した。




   ◇




「キュキュ!」


「……はぁはぁ、も、もういいの?」


「キュン」


 カマキリに見つからない事を祈って必死に走り続けた。ウサ吉は走るのが遅いから抱えて走り、ウサ吉の指示に従って進んで行った。


 そろそろ体力の限界を迎えそうになった頃、ウサ吉の合図で休憩タイムに突入です。疲れた……。


「ふぅ……ウサ吉のお陰で助かったよ。ありがとね」


「キュキュー」


 スペースコロニーと違ってこの森にはモンスターが至る所に生息していた。しかもどれも巨大なのだ。ギチギチと顎を鳴らす人間サイズの蟻はちびりそうだった。ウサ吉が居なかったらと思うと寒気がする。吞気に散歩気分で歩いていたら、途端にモンスターに襲われて死亡していただろう。デッカイ蜂とか羽音だけでもビビったもん。


 残りの滞在時間を調べたらまだ5時間以上あった。体感ではもっと時間が経っていそうだが、どうやら濃い時間を過ごしたって事なのだろう。


「ねぇウサ吉。エルフって本当に居るのかな? こんな危険な森で生活なんて出来ないと思うんだけど……」


 あんなモンスターが徘徊しているこの森で生活するなんて想像出来なかった。しかも視界を妨げるような深い森なのだ。エクスカリバーを捨てられたので地面にマーキングした赤いゲートへ戻るルートも無い。時間切れまでサバイバルと考えると気が重かった。


「キュ? キュキュキュー!」


「え、あっちに行けって……?」


 ナビゲーターのウサ吉が示すのは暗い森の奥、今いる場所よりも木が密集していて怖い場所だった。クモみたいなモンスターに襲われたりしないよね……? 怖いけどウサ吉が大丈夫だとボクの手をペシペシ叩いているので信じる事にした。


 足元の草が腰にまで届く道なき道を進む。ウサ吉は鼻歌を歌うような感じでキュッキュッって鳴いているので大丈夫なのだろう。フクロウのような鳴き声にビクビクして進んで行くと、木が開けて明るい場所に辿り着いた。


 そこは見渡す限りに綺麗な花が咲き誇る天国のような場所だった。


「うわぁ……凄いっ!」


 色とりどりの花が咲き誇る花畑、綺麗な花を踏まないようにゆっくりと進むと大きな池が現れた。地下から水が湧き出ているのだろうか、小さな川が出来て森に流れていく。


 手を浸して見ると冷たくて気持ちがいい。走って逃げたから喉が渇いていた。


「キュキューン」


 ボクの腕から飛び出したウサ吉が池の水をゴクゴクと飲みだした。天然水のように透き通った水だけど、こういうのって沸騰させないと危ないってどこかで聞いた事があります。ボクはデリケートなので慎重に行動しますよ。


「キュキュ? キュ!」


 ウサ吉が『飲まないのか? 飲め!』と言っているようだ。ジッと見つめるボクに向かって池の水をペチペチと叩いている。この可愛いウサギさんは上から目線で言って来ますね……。まあ、ウサ吉が言うなら大丈夫かな?


「分かったよ。頂きます……」


 怖いけどウサ吉を信じて飲んでみる事にした。手で水を掬いゴクリと一口。


「う、うまー!」


「キュキュキュー」


 家で飲む水道水とは全く違う、臭くない天然水だった。冷たくて美味しくて、これだけで疲労が回復するような気がして来た。


「ちょっとここで休憩しようか」


 深い森の中、ここだけが天国のような空間だった。虫一匹見当たらない静かな空間には、泉から流れ出る小さな水の音だけが聞こえて来る。


 ボクは花を潰さないように芝生へ寝転がり、流れる雲を見つめた……。ウサ吉も疲れたのだろう、ボクのカチカチなお腹の上に乗っかり寝息を立て始めた。


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