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本当にそれ、ダンジョンですか?  作者: ポリエステル100%
中級冒険者の章

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第96話 古代エルフの森


 ビアンカちゃんと大人買いした大人の玩具を持ち、意気揚々と赤いゲートの先へ飛び込んだものの、そこはサキュバスの館ではなく森の中だった。視界いっぱいに広がる鬱蒼とした森はどう見てもサキュバスの館ではない。そして敏感なボクだから分かるこの感覚……何か見られてますね。


 ここで慌てふためくのは三流冒険者。ボクは一流冒険者だからね、深呼吸一つで落ち着きました。賢者モードに匹敵する冷静さを備えた今のボクなら、どんなモンスターが相手でも負ける気がしない。


 野生の勘を研ぎ澄まし、バッグから武器を取り出した。もちろん武器はブルブルスティックです。だってサキュバスの館に行けると思ってたからね……。実はコレ、抜け殻になったビアンカちゃんで練習したやつです。凄いブルブルしてたよ!


 取り出した武器を逆手に構え、身を低くして草むらを睨み付けた。イメージは暗殺者な感じです。さぁ来るなら来いっ!!


「キュキュー!!」


「うわぁぁぁ」


 はいダメでしたー。


 何か分からないけど白い物体がボクの胸に飛び込んで来た。受け身を取ることも出来ずに尻餅をつき倒れてしまった。七海さんにマウントポジションを取られるのに慣れ過ぎたのが悪かったのだろうか、モンスターにまでマウントポジションを譲るようになってしまったようだ。


 赤いゲートの先は危険なダンジョン、油断した冒険者が一瞬で食い殺されるデンジャラスゾーン。ここがどこなのか知らないけど、このままモンスターにやられて死亡するのだろう……。弱っちぃボクは抵抗しても無駄、せめて痛くないように即死でお願いします……。


「…………むむっ?」


 目を閉じて身構えていたが一向に痛みがやって来ない。


「キュキュ?」


 目を開けて見ると、ボクのカチカチな腹筋の上で首を傾げる一匹の白いウサギちゃんがいた。真っ白な毛並に金色の目を持つ不思議なウサギ、大きさはチロルより小さくて軽かった。


 起き上がり恐る恐るウサギに手を伸ばすと、ウサギは抵抗する事なくボクに身を委ねた。フワフワで可愛い!!


「もうビックリしたなー。君はどこから来たの?」


「キュンキュンキュキュー!」


「あははっ、くすぐったいよぉ」


 こんなに人懐っこいウサギは初めてだ。嬉しそうな鳴き声を上げながらボクの顔に頬擦りして来た。本当にこのウサギ、モンスターですか?


 ちゅる~んを前にしたチロルのような興奮状態のウサギちゃんを宥めつつ、状況整理する事にした。周囲を木々で囲まれた深い森の中、赤いゲートが怪しく光っている。武器はブルブルスティックをはじめとした大人の玩具が多数、防具はスウェット一式です。マジックバッグを持って来ていないので食糧はありません。ぐぬぬ……。


 赤いゲートの先に繋がるダンジョンは5つある。『吸血姫の城』『戦乙女の戦場』『古代エルフの森』『スペースコロニー』『サキュバスの館』の中で考えると古代エルフの森な気がして来た。


「ねえ、ここってどこかな? もしかして古代エルフの森?」


「キュキュ?」


 このウサギはモンスターじゃなくてイベントキャラクターと考えたボクは質問してみた。でも残念ながら返事は無いのでした。アンドロイドだったら喋るからスペースコロニーじゃないと思う。


「まあいいか、ここに居てもしょうがないし探検してみようかな。じゃあボクは行くよ。またねっ!」


 せっかく来たのだから冒険してみようと思う。目指すはエルフが住む街に行こう。上手くいけば幸せの薬をゲット出来るかもしれないからね。


 ウサギは良く分からないからここに残して行こう。そう思って歩き出したけど……。


「キューンキューン……」


 思わず足を止めて後ろを振り返ればウサギちゃんがボクを追い掛けて来ていた。ちっこい足でピョンピョン跳ねながら必死に走る姿にボクの心はキュンキュンしてしまうのでした。キャワワ。


 もしかしたらボクの仲間になりたいのかもしれない。抱き上げてつぶらな瞳を見つめれば、『仲間になりたそうにこちらを見ている』って感じが伝わって来た。もしかしてボク、テイマーになっちゃったかもしれない。


「ボクはエルフに会いに行くんだけど、君も一緒に来る?」


「キュキューン!!」


「うわっ、くすぐったい、あははやめてよぉ」


 ボクの手から抜け出して顔に飛び込んできたウサギちゃん。モフモフが気持ちいいけど、愛情表現が強いですねぇ。


 一人旅も寂しいし、この小さな子を連れて行く事にしよう。


「よし、今から君の名前はウサ吉だよ」


「ぎゅ……」


「何その不満そうな顔は。もしかしてゲレゲレの方が良かった?」


「キューン!? キュキュキュー」


 ウサギの言葉は分かりませんが、こちらの言葉は何となくだけど伝わっているようです。ウサ吉って名前はダメダメですかね? 可愛いと思ったんだけどなぁ。


 そうしてボクは、この広い森でエルフの街を目指してウサ吉と歩き出したのだった。




   ◇




 以前ギルマスが話していたように、この古代エルフの森というのは迷宮のように入り組んでいて、気を抜くと来た方向すら分からなくなってしまう。GPSとかそういう便利な機能もないし、特徴的な木があるわけでもない。さらに空を覆うように木が密集しているので星を見て方向を確認する事も出来ない……。


 なのでボクは木の棒を拾って地面に線を引きながら歩く事にしました。天才でしょ!


「キュキュン!」


「どうしたのウサ吉……えっ、あっち?」


「キュキュ」


 歩いていると巨大な木が立ちはだかった。左に行くか右に行くか悩んでいたところウサ吉が右に行くように指示を出して来た。


「ボクは左の方がいいと思うけど、ウサ吉はここの住民だもんね。よし、ウサ吉を信じるよー」


「キューン!」


 ウサ吉がボクの腕の中で嬉しそうに鳴いた。可愛いから連れて帰りたいけど、チロルと違って生き物だから金庫には入れられないよね……。それにチロルはウサギ肉を食べたいと言っていた。もし連れて帰ったら食べられちゃうかもしれないな。


 ウサ吉と一緒に歩き出してからしばらく経つが、まだモンスターに遭遇していないのである。もしかしたらこのダンジョンは比較的安全なところなのかもしれない。この小さな子が生き残れるくらいに安全な森って事だろう。


 指示に従って歩いて行くと甘い桃のような香りが漂って来た。見上げて見ればマンゴーのような果物がたくさん生っていた。これは異世界の果物ってやつですね。食べれるのかな……?


「ウサ吉はアレ知ってるの?」


「キュキューン」


 そう言うとボクの腕の中から飛び出して木をスイスイと登って行った。ウサギって木登り出来るんだね。あっという間に実のところに到着したウサ吉がカリカリと枝を噛むと、ボトリと実が落下して来た。


 運動神経抜群なボクはナイスキャッチしました。受け取った果実は手のひらに乗る大きさで、黄色くて甘い香りがします。


「キューン」


 見上げると次の果物を落とそうと枝をカリカリしていた。どうやらボクは下で受け取る係になったようだ。バッチコイ!!





 大量に収穫した謎の果実を前にしてボクは躊躇っていた。さっきからウサ吉が果物を食べるようにグイグイと押し付けてくるのだ。


「キュ! キュ!」


「ええぇ、本当に食べて大丈夫? こんなフルーツ見た事ないし……」


 古代エルフの森にこんな果物があるなんてギルマスは教えてくれなかった。そもそもエルフの街で物々交換が出来るという内容しか教えてくれないのである。ネタバレ禁止なのか知らないけど、もう少し攻略情報を教えてくれてもいいと思います。


「キュキューン!!」


「わ、分かったよ。食べる、食べますよー」


 このウサギちゃんはボクにこれを食べさせてどうしたいのだろうか。もしかしてこの果物がこのエルフの森にある名産品なのかもしれない。生まれ故郷を観光案内して名産品を食べて貰いたいという気持ちは分からないでもない。実はボクの地元はお茶が有名なのです。狭山茶って知ってる?


 これを食べて腹痛で死んでもギルドに戻るだけだろうし、意を決して食べてみる事にした。ガブリ……。


「んほー!! なにこれ美味しいの~!」


「キュキュ! キュキュ!」


 謎の果物をガブリと頬張ると、ジュワ~っと果汁が口いっぱいに広がった。食感は桃のような感じなのに味はエナジードリンクみたいでした。果肉が柔らかくて食べる手が止まらない。これはアカンやつや!!


 ガツガツと勢い良く食べてしまい、残ったのは丸いクルミのような種だけになった。食べるのが止まらなくなってしまい、3個も食べちゃいました。うまうま。


「ごちそうさまでした。凄く美味しかったよー!」


「キューン!」


 ウサ吉が満足そうに頷くと、残ったクルミのような種をカリカリと食べだした。もしかしてウサ吉は種が目当てだったのだろうか?


 とりあえず残った果実をハローバイブの袋に詰め込み、先を急ぐことにした。


「よーし、目指すはエルフの街だよー! いくよウサ吉」


「キュ! キュ!」


「え、そっちなの? この森って迷子になっちゃうねー」


 歩き出したらウサ吉にダメ出しをされてしまった。どうやら反対方向だったらしい。


 もしかしたらウサ吉が居なかったら迷子になって死んでたかもしれない……。


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