虹が月にかかる夜の街
一夜、
うすい雲が流れるのが
ちいさな天窓からみえる
下を向いて
街をゆく人々をみて
痛むこころを
ずっと最高の夜の世界に酔わせている
それは
けっして
聖い夜ではない
無言の
だがやさしい誓いのともしびは
街に流れる始まりの歌を歌う歌い手を
まるで夢を照らすように
しっとりと照らしてくれる
守る、
止められない時の滝に
流されるだけの
沈みがちなプライド
岸辺から掛けられるあたたかい声援が
初めての甘美な勇気を
濡れる唇でくちづけてくれるように
蕩ける気持ちを、守る
刹那に燃えた
えいえんの恋情から
脱走してしまった罪びとのように
逃げつづけるしかないとしても
だれも知らない霧の街にさまよい
それでも
まえへまえへ新しい大切なものを感じ
目指し、
幻聴ではない応援の涙声さえ
聴こえてくる夜なら
世界の
端から端まで
愛することができた気がした
それはとても
しあわせなことだと
思った
一夜、
しろい雲が流れるのが
おおきな窓からみえる
雲はどこまでも流れてゆくだろう
満月にかかる虹をみて
すこし波の音が聴こえた気がしたのは
きっとそんなくだらないことを
考えてしまったからだろう