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転移直後にバトルとかなしでしょ!



「は?」


気づいたら、そこにいた。

辺り一面は目算50mは超えているであろう黄色い奇妙な木に囲まれている。そして周りからは、不気味な雄叫びや音が聞こえる。

不意に、後ろから『カサッ』という草を踏みつけるような音がする。

反射的に振り向いた俺は、そこまで身長が高くないであろう人影を目にした。


「あ、こんばんぅあ?!!」


俺は思わず、素っ頓狂な声を上げてしまう。俺が向いた木の裏。そこには身長140cm程であろう『緑の皮膚』の生き物を目にする。

そして直後、慌てて俺は口を両手で抑えた。

ーーーーあいつは、ヤバイ。


そう脳裏で判断し、すぐさま思考する。

多分あの生き物は、俺より断然強い。生物として、存在としての格が違い過ぎる。それにあの生き物の手には包丁の大きさの10倍はあるであろう刃物が握られている。

刃の部分は錆付き欠けているとはいえ、俺の命を刈り取ることなど数秒で出来てしまうだろう。


幸い緑の生物は、まだこちらに気づいていない。

俺はそーーっと足を後ろに下げ…………乾燥しきりよく音がなりそうな枝を踏んでしまった。


(やっ、やらかしたぁぁぁーーーー!!!)


しかしそう思ったときにはもう遅く、緑の生物の顔がグリンとこちらを向く。

顔は目が鋭く鬼のような牙を持っており、耳は長かった。まるでラノベに出てくるゴブリンのようだ。


(いやでも、まだ敵対しているとは限らないはず!もしかしたらエルフの突然変異かもしれないしね!)


「へ、Hey?日本語通じる感じですか?」


「ぐ!グギャギャギャ!グギギャガャギャ!」


「ですよねぇ!知ってたよぅ!ってうおおぉ?!」


慌てて飛びずさる俺の数センチ横を、弾丸レベルの速度で石が飛翔する。

それは間違いなく俺の頭を狙った物であり、その速度は緑の生物の身体能力が圧倒的に高いことが伺えた。


「逃がす気はない……………か。」


どうやら俺は、気づかぬうちに挟まれていたようである。

背後からもう一人?が現れた。


「ふぅーーーーーーーー……………やるか!」


そう決意した俺は、まず目の前のやつを殺すことに決める。

とは言え、このまま無策に突っ込んでもその手に持つ大剣で殴られて終わりだろう。なのでここは…………………



「敢えて突っ込む!!」


そう自分を鼓舞し、これから来るであろう痛みを頭からぶった切る。

すると次の瞬間、緑の生物が口角をあげ、大剣を振り下ろす。

それを俺は肩で受ける。

ガンッ、という打撃音とそれに重なる衝撃、更に肩を打たれた鈍痛が身体を突き抜けるが、俺はそのまま緑の生物にタックルを噛まし、即座にその大剣を奪い取る。


(しっかし肩は痛いなぁ!斬れたりはしないだろうと予測してたんだが、想像以上に堪える!そもそもあの反応速度しかないならワザと油断させなくても……………まぁいいか)

とりあえず俺は、その手に握った大剣を倒れ込んだ緑の生物の首元に差し込む。刃が欠けているため一度では突き立てられず、何度もグリグリと突き立てる。

辺りには緑の血と濃厚な鉄の臭い、緑の生物の絶叫が響き渡るが、気にせずに突き立て続け、遂に糸が切れたように緑の生物は絶命した。

するとそこには、紫色の結晶が落ちていた。

(なんだこれ?)


そう思い考えようとするが、すぐ近くにもう一匹いるのを思い出しとりあえず石をフードに付いたポケットに入れ、仲間がやられ呆然としたもう一匹も刺し殺す。

何故か抵抗が全くなかったもう一匹を殺し終えると、そこには少し小さい物の紫の石が落とされていた。


「それにしても、この石……………よく分からんが持っとくか。っと、これはヤバイかもしれないなぁ!」


血の臭いと叫び声を聞いたのか、仲間であろう緑の生き物が更に10匹程現れた。しかも1匹は、明らかに他の個体より強いだろう。

なんだけどなぁ………………何故だか負ける気がしない。身体を蝕んでいた鈍痛はいつの間にか消えており、むしろいつもより調子がいい。


「さぁて、バトろうじゃないか!」


俺はそう声を上げ、まずは手前の緑の生き物の顎を蹴り飛ばす。グギャ、という声を上げ倒れ込むやつの首を使い慣れてきた剣で突き刺し、抜きとった大剣で迫る2匹を横薙ぎに引き裂く。

更に後ろから来るもう1匹をバク転かかと落としで気絶させ、遠慮なく顔を叩き潰す。


「これで4匹めぇらぁ?!」


嘘だろ?!火の玉を飛ばしてくるとか何それズルくねぇかな!っと、あのローブのやつから殺すか!


「死ねやゴラァ!」


そう叫びながら、落ちていた短剣を2本同時に投げつける。

2本とも顔と首に突き刺さり、血しぶきを上げながら火の玉を飛ばしてきたやつは絶命した。

「それにしても、あれは手品か何かか?地球にはあんな技術まだなかった筈だが……………まぁなんとなく予測はつくけど」


そう俺が独り言を言っていると、2匹が俺に向かって突っ込んできた。


「動きが同じなんだよ!」


俺はそう言って、剣をまた横薙ぎに払う。するとその後ろから更に2匹が飛びかかってきた。

「嘘だろ?!」


マジかよ!こいつら平気で仲間を囮にしやがった!

しかしその効果は確かにあり、俺の肩に棍棒が直撃する。

俺はその痛みを必死で堪え、斬り返して2匹を討ち取る。

後は……………


「お前だけ、だな。痛かったんだぞ、肩。とりあえずその醜い顔ぶっ潰してやるよ!」


「グギャ!グギャギャギャギャグ!ギィギィギャギャギャグギャ!」


俺はそう宣言し、大剣を振りかぶる。緑のラスボスは何故か手を後ろに下げたので遠慮なく縦に振り下ろす!


「って嘘ん?!」


マジかよ!マジかマジかマジか!こいつ素手で大剣ぶっ壊しやがった!

俺はそのまま突き出てくる拳に突き当たり、数十m程吹き飛ばされる。


「うぐふぇ?!」


つくづく運が悪いな俺!まさかの頭を直撃!正直意識が朦朧としている。

そうしているうちに緑のラスボスがこちらに寄ってくる。その顔には笑みが浮かんでおり、勝利を確信しているようだ。


(でも甘いんだよなぁ…………)


この程度では、俺を殺すなんて100年掛かっても無理。不可能。勝ち目なんて欠片もない。俺を殺したいなら、遠慮なく追撃してくるくらいじゃないと駄目なのだ。

俺は自分の意識を、感情を、思考を、すべてを感覚で呑み尽くす。


「あぁ……………久しぶりだ!殺し合おう遣り会おうじゃないか!どちらかが生きどちらかが死ぬ生存競争!存分に楽しませてもらうぜ!」


「グギャ!ギャギャグギャグギャ!!」


お互いの宣言と共に、両者が同時に詰め寄る。

初手はお互い、待ち。

先に仕掛けて来たのは緑のラスボス。俺の体が左に傾いた瞬間、その左手で殴り掛かる。それに対し、俺は半歩ズレ右足で緑のラスボスの顔面を蹴り飛ばす。

倒れはしなかったものの数m飛ばされたやつを俺は追いかけ、更に左足で蹴り上げる。

「グギャア"ア"ァ!!」


何も出来ずに蹴りつけられたのが癪に触ったのか、やつは雄叫びをあげる。やつ、いや、彼と言うべきか。

その姿はまるで長年のライバルと死闘を繰り拡げる様子である。

俺は思わず口角を上げ、彼の腹にストレートのパンチを決める。

しかし彼はその場に留まり、逆に反動をつけ俺を殴り飛ばす。

バキ、そんな音と共に右肩に鋭い痛みが走るが、俺は声を揚げ意思を叩き潰す。

感覚だけで彼の右肩を左足で蹴り飛ばし、意趣返しのように近くに落ちた大剣で彼の肩を叩き斬る。

「グオオァァア!!」

右腕を斬り落とされたからか動きが鈍くなった彼の左足も突き刺し、動きを封じる。そして片足を失った彼は倒れ込み…………


「楽しかったぜ。」


俺は彼の首を大剣で切り落とした。


「ふぅーーーーーーーー、疲れたーー!」


俺は汚れを気にせず地面に転がり込む。全身は緑の奴らの返り血に塗れ、体の所々に痛みが走るが徐々に体が治っていく。

(あれ?俺の体、こんなにスペック高かったか?)

ふと、疑問に思う。

しかし直後、頭に無数のノイズが反響し、俺の意識は刈り取られた。



未だぼくは眠い

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