第4話 ピート
〜〜〜〜翌朝〜〜〜〜
「このパン美味しい!」(ゲームの中でもこんなにリアルに味を感じれるなんてすごいなぁ…)
遥は頬いっぱいにパンを頬ばり、満面の笑みを浮かべた。
「美味しそうに食べるなぁ、良かった、たまたま市場で焼き立てが売ってたから」
「焼き立てが売ってるなんて珍しいのぉ」
「お爺ちゃん、おれはいつも買い出しに行ってるから、大体どこの店で、いつ新鮮なものが売られてるかっていうのは把握してるんだ」
「すごい!さすが宿長!」
と遥が言うとピートは
「宿長…はは、まぁ実質そんな感じか」
「ところで、ピートさんは…」
「ピートでいいよ」
「ピートは、何でまたそんなに若いのに宿屋の仕事を?お爺ちゃんと2人?」
ピートは食べていた手を止めると、だまったまま、窓から見える木の枝をぼーっと見つめた。
「あ、何か変なこと聞いた?」
「…いや、ちょっと考え事」
「ピートはな…」
「お爺ちゃん!」と睨むと
「…もう腹一杯だ、ドラゴンの様子見てくる」
とそそくさと2階へ行ってしまった。
お爺さんは葉巻に火をつけると、ゆっくり話し始めた。
「ピートは、幼い頃に両親を亡くして、それから祖父である私が預かっておるんじゃ」
「私が足を悪くしてからは、この宿の仕事もよくやってくれて大分助かっている。あの子には感謝してもしきれんよ。」
「なるほど、そうだったんですね」
遥は少しバツが悪そうに席を立とうとした。
「それから、ずっと待ってるんじゃよ、あの子は」
「待ってる?」「待ってるって何をですか?」
「伝説のドラゴンマスターがこの地を訪れるのをじゃ…」
「伝説のドラゴンマスター?そんな人がいるんですか?」
「ワシにも分からんよ。ただ、昔から言い伝えがある、『伝説のドラゴンマスターは稀代のドラゴンと現れ、地は割れ、空を裂き、一閃の光で悪を断つ』」
「そんないつ来るかも分からんものを待っているのじゃよ、両親のために…」
「おっと、また話過ぎるとあの子に怒られるわい」
お爺さんは人差し指を口元にやると、ウィンクしました。
暫くするとピートはドラゴンを連れて、2階から下りて来ました。
ピートが連れているドラゴンは、青い鱗で覆われ、まだあどけなさが残っているが、どこか凛とした感じがするドラゴンだった。
「わぁ、すごい!それがあなたの相棒ね」
「そうさ、おれが大事に育てて来たドラゴン」
「まだ成竜にはなってないけど、色んなことができるんだ」
「お爺ちゃん、少しこいつと散歩に出てくるよ」
といってピートがドアを開けると
「待って、私も行く!」
といって遥はピートに付いていった。