自転車に乗って・・
ワタシの楽しみは男性諸氏の・・・
ここに嫁いできてから半年経った。
はじめての地方住まい、仕事を辞めて専業主婦になるのも初体験。
予想はしていたけど、あっという間に退屈になった。
その上、怠惰になって体重まで増えた。
最初はスポーツクラブに入会したが、インストラクターさんの下心丸見えの馴れ馴れしさや、ご婦人方の遠慮のない蔭口と好奇心にゲンナリして、すぐ通わなくなってしまった。
そんなある日、夫が自転車を買ってくれた。
クロスバイクというのだろうか、少し前傾姿勢で乗るスポーツタイプの自転車。
サドルを女性でも乗りやすいよう、幅広のものに替えて。
夫も学生時代は、ここでよく乗っていたらしい。「鞍馬川沿いの道は気持ちがいいぞ。」と。
夫の気遣いも嬉しかったし、何より自転車は思いのほか気持ちよかった。
スピード感と川風の心地よさ、汗をかく充実感。
でも、何よりワタシをトリコにしたのはもっと別のコトだった…。
鞍馬川沿いの道は、自転車を趣味とする人たちの間では名の知られた場所のようで、いつ行っても、たくさんの同行者が居た。 女性は珍しいので、追い抜きながらいつも振り返られた。 勝てる訳もないのだが、なんとか男性諸氏に追いつこうと必死でペダルを漕いだりするのは楽しかった。振り返られても「女だってがんばってるんだからね。」とちょっと誇らしい気持ちもした。
最初はジーンズやコットンパンツで乗っていたけど、だんだんに興が乗り、先輩たちのようなぴっちりしたストレッチ素材のパンツを履くようになって、その頃から別の注目を集めるようになった。
いつもは軽々と追い抜いていく、ドロップハンドルの男性諸氏が、ワタシの後ろを走っている。 最初は「?」と思ったけれど、すぐわかった。サドルにつぶれて強調され、必死に漕ぐペダルに合わせて左右に揺れる・・お尻を見られているんだ。
恥ずかしかったが嫌ではなかった。 余計必死に漕いで、少しでもノロマに思われないように頑張った。
ある程度の距離を走って満足すると、男性諸氏はスーッとワタシを抜いていく。追い抜きながら振り返り、ワタシの顔を確認しながら。
その距離が長くなるほど、頑張った気持になり、ワタシは満足した。
そのうち、ゆったりと走りながら、後ろから追走の気配がすると、スピードを上げて「着いてきて」と誘うように走るのが習慣になった。
ストレッチパンツ以外に、お肉がハミ出しそうなショートパンツで乗ったり、わざと下着のラインが出るようにして乗ったこともある。 一度は、下着を着けずにストレッチパンツを履いて出たこともあるが、さすがにその時は、サドルに当たる前部の感触が気になって、いつものように漕げなかった。
最近は、すれ違う自転車がわざわざUターンして、後ろに着いてくることがあったり、ママチャリの中年男性が必死に着いてこようとしていることもあった。
もちろん、それ以上のことはないし、期待もしていない。
ワタシの密かな楽しみとして、今日も自転車にまたがるのである。
エロくならないのは、作者のチカラ不足です。
妙にリアルなのは、友達の体験(笑)が元になっているからです。