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第七話 『宝具とブラッドレイ』

「旗の数を数えてみなさい」


 俺は視力が両目0.1という絶望的な悪さなので、ハッキリと旗の模様までは確認できないが枚数は数えられた。

 テーブルを挟み左右に九枚、自分とブラッドレイの頭上に一枚ずつ垂れさがっている。


「計二十枚、これこそ宝具を残してくれた英雄に敬意を表す旗。ここにその者達が居たということを示す、唯一無二の印なのだ!」

「つまり、その二十人の英雄が宝具を作ったということですね?」

「少し違う。二十人は宝具を集めたんだよ、君の持っている宝具庫のような物にね」


 ブラッドレイは俺の頭上にある旗を指さす


「それが私の生きた証だよ」


 思わず頭上の旗を見上げる。

 ブラッドレイの生きた証、つまりはブラッドレイも偉大なる英雄の一人だったということだろうか? だとすれば俺の目の前にいるのはとんでもない人物だぞ。


「私が君にブラッドレイと呼ばないように言ったのは、私が二十人の一人だと聞かれたらマズいからだよ。その力を狙う者や恐れる者、そんな人間たちが屋敷に乗りこんで来たら使用人たちまで危険に晒す羽目になる、そうだろう?」


 確かに伝説の英雄がいると聞いて「会いたい」と言う人だけではないだろう、中にはその英雄を打ち取って名誉を得ようとする者や力を欲す者、欲望にまみれた人間たちは危険極まりない。

 ブラッドレイの言うことももっともだった。


「ちなみに、その英雄たちは一体何をしたんですか? まさか宝具を集めた、というだけで偉人扱いはされないでしょう?」

「ふふ、中々に鋭いね。私を含めたこの二十人はある者と戦ったんだよ、宝具を使って……まあお蔭で願いが叶うかどうか、検証は出来なかったけどね」


「……これ以上は長くなるのでまた今度にしようか」


 先ほどの表情とは一転、へらっと笑うとブラッドレイは食事へと手を伸ばした。


「さあ食べよう、冷めないうちにね」


 ブラッドレイの話に何か燻りを感じながらも、今度話すと言ってくれているので追及はせず食事へと手を伸ばす。


「あ、そうそう。これからは君もブラッドレイと呼んでくれて構わないよ、人前以外ならね」


 そう言うとブラッドレイはニコりと微笑んだので、俺も馴れない笑顔で微笑み返した。



 ◆ ◆ ◆



 時刻は体内時計にして午後、太陽も丁度頭の上に来ている頃合いだった。

 俺はブラッドレイから手紙を預かり、シャルと共にとある建物の前まで来ていた。


「冒険者登録所?」

「はい。ミライ様は宝具をお集めになられると伺っております、なのでまずは冒険者として登録して頂く必要があります」

「自由に冒険しちゃダメなの?」

「昔は良かったそうですが、今は冒険者協会という団体が取り締まっています。勿論、冒険者でもないのに冒険をしている者がいれば、関所で追い返されます」


 何とも面白味の無い世界だ。

 冒険と言うのは自由があってこその冒険ではないのだろうか、決められた範囲での冒険などただのツアーに過ぎない。


「とりあえず、手続きをしてもらえるように取り合ってきますので、少々ここでお待ちください」


 そう言うとシャルは建物の中へと入っていった。



 ―さてシャルが居なくなってから十分ほど経った今、俺は何をしていたかと言うと。

 街はずれの丘、天辺にそびえ立っているブラッドレイ邸を眺めていた。

 勿論、街の中はRPGやファンタジー世界そのもので、屋台のような店もあればトカゲ車? のようなもので歩き売りしている店もある。

 屋敷からこの建物に来るまでに二、三回声を掛けられ押し売りされるところだった。恐らく、シャルが居なければ俺は無一文なのに買わされていただろう。


「お待たせしました、ミライ様。登録の準備が出来たそうです」


 俺はシャルに続いて建物へと足を踏み込んだ。

 建物の中は想像以上に広く、まるで集会所だった。

 掲示板のような看板に貼られた紙を睨みつけている鎧を着た男達、近くのテーブルで武器の見せ合いや酒を飲みかわす男女。

 まるでオンラインゲームの世界だ。


「いらっしゃ……いっ!」


 突然、俺の首裏へと何者かが腕をまわす。

 そのまま肩を組むような態勢となり、何者かは俺の耳へと息を吹きかけた。


「へぇ、随分と若いじゃないか。案外アタシの好みの顔だねぇ」


 横を見ると、腕の主がギリギリまで顔を近づけてニヤついていた。


「ちょ、ちょっと放してください!」

「ええー、いいじゃないか! 冒険の気つけってことでさ!」

「ん? 冒険?」

「そ、アタシがこの役所を取り締まっているテラってんだ、よ・ろ・し・く」


 俺は腕を振り払い、ダッシュでカウンターの前へと駆けこんだ


「は、早く登録しちゃいましょう!」

「釣れないねえ」


 テラは渋々、カウンターの中へと入って紙を取り出した。


「さあ聞かせてもらおうか、アンタの目的を!」

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