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第三話 『ブラッドレイ邸』

 ガタン!

 その大きな揺れで目が覚める。

 外を見ればすっかり空は赤く染まり、俺のズボンも(よだれ)で染まっていた。


「あれ? ウィルスさん?」


 ふと見れば、眠る前まで向かいに座っていたウィルスの姿は無く、気になる部分といえばボロボロに裂けたカーテンくらいだった。

 馬車? も既に動いてはいない。


「まさか、狐にでも化かされたんじゃ……」


 急いで車内から飛び出す。

 そこにはしっかりとルーダもいたし、屋敷もあった。


「ん? 屋敷?」


 目の前に広がる巨大な壁と格子状の門、その脇にはそれこそ人間サイズといった扉が用意されていた。

 扉へと近づき、ノックしようとしたところで躊躇する。

 果たしてノックという行為は正しいのだろうか、もし作法が違うとかで殺されたら洒落にならない。

 それにこんなに巨大な豪邸だ、ノックしようとした瞬間に拳を貫通するほどの鋭い針が飛び出す罠があったって不思議じゃない。

 俺は扉から距離をとり、近くにあった石ころを手に取った。


「これなら……」


 扉へと全神経を集中させ、石ころを投げた。

 無論、石ころは扉に当たって地面へと落ちただけだった。


「……」


 途端に恥ずかしくなった俺はすぐに扉の前に戻り、数回ノックした。

 するとどうだろう、ゆっくりと扉は開き中からは最高に可愛らしいメイドさんが出てきたではないか。


「ミライ様ですね、ブラッドレイ様からお話しは伺っております」

「これはご丁寧にどう―」

「中へどうぞ」


 まるで会話のキャッチボールをする気が無い、それどころかこのまま突っ立っていたら中に入ったことにされて外に放置されそうな勢いである。

 俺は腑に落ちないまま扉をくぐり、屋敷の敷地内へと踏み込んだ。

 そこに広がっていたのは綺麗に刈られた芝、均等な頭揃えの生け垣。ちょっとした茶会でも開くのか、昔のプライベートガーデンさながら小さな(ほこら)のようなものまで建てられている。

 その光景に圧巻、開く口を閉じることが出来なかった。


「こちらです」


 余韻に浸っていると、メイドの声によって引き戻される。

 無感情そうなメイドに言われるままついていき、とうとう屋敷の中へと足を入れてしまった。


「すげぇ……」


 その光景は思わず声に出してしまうほどだった。

 ネットでしか見たことの無いような内装、階段やシャンデリア。そこらじゅうについている扉の多さには目が回りそうだ。


「ミライ様のお部屋は二階へと上がり、向かって側の廊下を進んだ先にあります。一目でお分かりになられると思いますので、私はここで失礼させていただきます」


 そう言うとメイドは近くの扉へと向かった。

 なんとも不愛想、というよりも俺は歓迎すらされていないのではないだろうか? 客観視してみればいきなり拾われて、いきなり居候することになったただのホームレス。

 歓迎されなくて当然である。


「まあ、しゃあないか」


 俺は踏み外しでもしたら転げ落ちて即死するのではないか、と思ってしまうような階段を上り、言われた通りに右の廊下へと進む。

 まるで学校の廊下を数倍以上に長くしたような廊下だったが、不思議と遠距離には感じなかった。

 気が付けば既に廊下の突き辺りで、まだ一分も歩いていないというのに広間が見えなくなっていた。


「次元の歪みでも起きてるんじゃないのか? この屋敷」


 とにかく、見れば一目で分かると言っていたので自分の部屋を再度探す。

 突き辺りまで来ている時点で一目ではないと思うのだが、そこは置いておくとしよう。



 ◆ ◆ ◆



 ―かれこれ一時間は歩いた。

 既に外も暗くなり、月明かりだけで廊下が照らされている様な状態である。

 しんと静まった屋敷に何か心霊的な恐怖を覚えつつも、自分の部屋を探し続ける。


「くそ、見つからないぞ」


 廊下の端から入り口までを行ったり来たりしていると、メイドが歩いてきてこちらに気が付く。

 俺はすぐさまメイドへと間合いを詰め、顔を近づけて言った


「一目で分からないじゃないですか!」


 するとメイドはすぐ傍にあった扉へと近づき、ここだと指をさした。

 俺は近づいて扉をよく見てみるが何の変哲もない、他の部屋とまったくもって同じ扉だった。


「……こんなのにも気が付かないとは、何故ブラッドレイ様はこのような方を」


 メイドは手の甲でノックするように扉の脇、壁の部分を軽く叩いて見せた。

 俺はメイドの叩いた場所をよく見た、するとある目印のようなものに気が付く。


「線?」

「はい、これです」


 そこには横にナイフか何かで刻まれたような傷跡が何本も残されており、一番上の傷は丁度俺の胸か首の付け根辺りだった。


「へぇ~、なんか成長記録みたいだな! 一番高い傷で俺の胸当たりだから、彼女だったら丁度良いじゃないか!」

「そうですか、おやふみなさいませ」

「今噛まなかった?」

「噛んでおりません」


 そう言ってそっぽを向く。

 しかし、顔が見えなくとも月明かりによって照らされている耳が真っ赤なので、恥ずかしがっているのがよくわかる。俺にもわかる


 そこで俺は良いことを思いついた。


(……ちょっと悪戯してやるか)

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