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漂流7日目……?

「おは、よう。えーりーん。ばなな、です」

「おはよう、タイキィ。バナナありがとうね。〓〓〓〓!」

「みず、です」

「ありがとう、〓〓〓〓〓!」



昨日はずっと雨だった。

そのおかげでそれなりに勉強ができたので、単語を覚えることができた。

まだ本当に片言しか話せないし、聞き取れない言葉だらけだけど、ジェスチャーのみの対話に比べたらマシだった。


そして1つ気づいたことがある。

えーりーんに対しては、何故か苦手意識が湧いてこない。

この子が裏表のなさそうなタイプだからだろうか。

それとも裏表を感じるだけの語彙ごいが自分に無いだけだろうか。

まぁ、どっちでも良いけどな。

会話が成り立つならそれだけで十分だ。




ーー数日後




「タイキィ、ご飯にしましょう? カブトムシやバッタを捕まえたから、〓〓〓〓?」

「すまん、えーりーん。オレ、うれしい」

「構わないわ、タイキィには家の〓〓を頼んだから。〓〓〓〓〓よね」

「オレ、くう。えーりーん、いっしょ。くう」

「そうね、食べましょう。あたたかいうちにね」

「このムシ、くさい。バッタ、すき」

「そうね、でも〓〓なんて言ってはダメね」



オレの語学力は日々進歩していった。

語学留学ならぬ、語学遭難だな。

なんせネイティブな英語を毎日24時間聴けるのだ。

人間は死ぬ気になれば、多少の言語くらい覚えられるらしい。

聞いたところ、えーりーんはイギリス人との事。

かっこええ。


ちなみに食卓にはバナナの他に昆虫が乗るようになっている。

日本ではイナゴくらいしか食わないが、余所の国では普通に虫を食うらしい。

お互いに調理法なんて知らなかったから、海水をかけてから炒ってみた。

試食後の感想は『食えなくもないよね』って感じだった。

バッタの方が多少マシだと思う。

カブトムシはなんか臭いが強烈でな。


まぁ、安全に食えるだけありがたいか。

森のあちこちに生えてる『ドゥワッ』としたキノコを食うより遥かにマシだ。


こうしてオレたちの暮らしは、徐々に豊かになっていった。




ーー数週間後




「もうマジでさぁ、あの会社やべえんだって! まともなヤツ一人もいねぇよ。精神病んでるのしか残ってなかったんだぞ」

「そうなんだ、タイキも苦労してるのね。そんな職場辞めて正解じゃない」

「そう言ってくれるか。てっきり『辞めるなんて根性ナシめ!』なんて罵られるかと思ったぞ」

「そんな事言わないってば。日本人は精神論に走りすぎなのよ。嫌なら辞職、それの何が悪いの?」

「あぁ……ありがてぇ。あったけぇよその言葉。日本の頭固い連中に聴かせてやりてぇわ」



ペラペラ喋れるようになってた。

比較対象がないからわからんが、これって結構すごいんじゃないか?

一ヶ月かそこらでこの進歩だぞ。



「それにしても凄いわよねぇ、随分話せるようになったじゃない。これなら一人で英語圏に旅行できるわよ」

「いや、オレなんかよりエイリーンの方が優秀だって。なんせベッドやら作ってくれたじゃん」

「ありがとう、趣味を活かした結果ね。でもパパに比べたらまだルーキーなんだから」



お世辞抜きでこのネーチャンは出来るヤツだと思う。

その辺の木の枝やら草やらで二人分のベッドを作ってしまったのだ。

斧や鉈どころか釘一本無い中で、である。

しかもそこそこ快適な使い心地だったから驚きだった。


他にも蒸留装置なんかも作ってくれた。

スーパーのビニール袋と木の板でさ、サクサクッとやってのけてしまった。

この子は天才なんじゃないだろうか。

おかげで水問題は大幅に改善されたのだ。


食料問題も今のところ不安はない。

虫の味にはあまり慣れないけど、しっかりタンパク質が摂れる。

バナナやココナッツも収穫できて、二人分なら余裕で賄える量が手元にある。


身一つで流され続けてたこのオレが、なんとも快適に暮らしてるもんだ。

不幸中の幸い、地獄に仏、無人島にエイリーン。


ちょっとハードなバカンスの気分で、漂流生活を楽しむのだった。


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