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第二話。六男、トビ編。1:3理想。2:2可能。(1:1可能?) 【名無し君の不始末・君を愛す理由~episode2「僕と同じくらい、君も僕を好きになってよ」~】

名無し君の不始末●クロスオーバー作品2・番外編・acoustic・夢雷鳶詩兎(名無し君本編とは全く違う異次元の物語。本編とは、設定や世界観にずれがあります)作:七菜かずは


【名無し君の不始末・君を愛す理由~episode2「僕と同じくらい、君も僕を好きになってよ」~】






■登場人物(※理想男1:女3 男2女2可能)


黒凪くろなぎ ゆめ (クロム・ロワーツ) 【クロム】 ♀

・メインヒロイン。29歳。姫カット黒髪長髪の女性。母性のある心優しき元姫。ケテラス星中央大陸、アイゼル城966番目の王女であった。

黒凪 夢は、地球名。クロム・ロワーツは、ケテラス星での、本名。

過酷な過去があり、今や姫としての生活は消滅しているが、現在は一般人として幸せに平凡な生活を地球で送っている。歌と絵が得意。メイドカフェで社員として働いている。

今住んでいる地球から水星までは簡単に移動してこれるので、キジやライや瑠璃によく会いに来ている。

インドランス(※機械と人間の死体を融合させて蘇らせた人工人間のこと。成長するアンドロイド)の心療内科医になるのが夢。今も勉強中。

水星に通うことで、水星の先進医療を日々見学し、学んでいる。

現在、水星のインドランス研究心療内科に在籍しているカズマ・瑠璃の、元恋人。十代の頃付き合っていたらしい。


カルク・ライデイン・オメガ 【ライ】 ♂

・キジとトビとシトータの実の兄。兄弟たちのお守役というか見守り役。30歳。おっとりしていて物凄く優しいお兄さん。常識人。シンプルなメガネをかけている。

水星の第一王子だったが、王が亡くなった為、最近王位継承をしたばかり。家族想い。

クロム姫に秘かに恋心を抱いているが、それは兄弟の一部にしかバレていない。

国の将来の為、金星の金獅子姫と婚約している。金獅子のことは好きでも嫌いでもないが、「キレイな人だな」とは思っている。ろくに話したことも無い。

兄弟や国のことを誰よりもよく考えているお兄さん。いつもにこにこ。たまに兄弟に向けて出る毒舌が、本当は腹黒なんじゃないかと思わせる。

左目の下に薄い黒子が四つ並んでいる。


カルク・トビュール・シータ 【トビ】 ♂or(♀可能)

・カルク家六男。17歳。少年。医療に必要不可欠な機械や技巧の研究を地下十階で行っている。

黒紺髪。背は低め。猫背。目の下に大きなクマ。人と目を合わせるのが苦手というか、合わせないようにしている。

作業効率や自身の為、両手のケアだけは物凄く気を遣って毎晩行っている。

暗く。家族や水星の人々からは今や暗黒医師と呼ばれている。

医者になったばかりの頃(12歳~13歳で内科医としてデビュー)、その優秀な機械技術能力と医療技術(当時内科医もしていた)と目鼻立ちが整っている端正な顔つきのせいで、若い看護師や患者に執拗に追い回されたことや過激な贈り物を家族に送られてしまったことがあり。そのことにうんざりして地下に引きこもってしまう。

現在、自分にファンがつかないよう、患者は一人も診ないようにしている。

顔もわざと頬や目の近くに沢山傷を作り。ウンディーネ地下十階の暗闇の中、数体の自分専属のインドランス(※アンドロイドのようなもの)と共に、医療改革の為、家族の為、水星の為に研究を続けている。

絶対に笑わない少年と言われている。無表情。色白。滅多に他人に心を開かない。(昔はよく笑う素直な子だった)

可愛い声だとよく言われからかわれることもある。かわいらしいしぐさをすることがある(そのため、役者は女可能)。

基本的に自分に自信がない。情緒不安定。涙もろい。

クロムのことを昔から自分で調べてよく知っており、誰よりも彼女に憧れを抱いている。

キジの男らしさやコミュニケーション能力の高さに憧れていて、いつかキジのようになりたいと思っている。

コーラが好きで、毎日飲まないと頭痛が起こってしまう。歌が好き。


カルク・シトライタ・カンマ 【シトータ】 ♀

・27歳。自信家? に見える喋り方をしているが、本当は気弱な普通の女の子。

自分に自信をつける為、何度も他兄弟たちに身体の手術をして貰い、自分磨きをしている。

男兄弟たち、特に兄たちの役に立つため。何でも出来る人間を目指して、色々なスポーツに挑戦したり、作法を学んだり、恋をしたり、医療の勉学も追及をやめないでいる。

口ではクロムを跳ねのけているが。本当は、兄たちから全力で愛されるクロムのことが泣くほど羨ましく、誰よりも強く憧れを抱いている。

カルク家の次女だが、美人なオカマの兄のナギと、二十年以上前に長女は死亡している為、患者さんたちからは長女か三女だと思われることがしばしばある。

浪費家。美しさの為、自分磨きの為ならなんにでもチャレンジする。兄弟愛が強い。

何故か兄のキジュリュクに惚れており、彼好みの女になろうとしているらしい。


CAST

・クロム ♀:

・ライ ♂:

・トビ ♂or♀:

・シトータ ♀:






【開幕!!】


 医療大国水星。医療機関ウンディーネ。 

 沢山のビルが並び、空には幾つもの小型機や巨大魚が飛び交う。

 空と大地と海の境目は無く、辺りはきらきらと白く蒼く輝いている。

 中央に聳え立つは、この星で一番高いビル。皇族たちが働く最高医療施設。

 その最下層。地下十階の一室前。廊下。

 国王ライが、重厚な鉄の扉の前で、誰かを待っていた。ふとした瞬間に時間を確認して。


ライ「そろそろ姫さん、来るかな……」


 その場に突然駆けつけるシトータ!! バタバタうるさい。


シトータ「兄様ぁっ! 一体どういうことですの!?」


ライ「え? ど、どうしたのシトータ。なんでこんな所に?」


 シトータとライはやや歳が離れているが、とても仲がいい。それは、カルク家兄弟たちの特徴の一つ。


シトータ「お兄様こそどうしてこんなカビ臭い地下でウロウロしているんですの!? 王としてもう少し自覚のある行動をしてくださいな!」 ライ「わあああああああ」

シトータ「ふんっ。まあ、いいですわ! 兄様!? 本題ですが、あのクロム・ロワーツがこの病院を最近出入りしているっていう話を耳にしましてよ!」


ライ「あ、ああ。それがどうかした?」


シトータ「どうかしただ!? 患者でも医師でも無い無関係者が、どうしてこの施設を我が物顔で歩いているんですの!?」


 鉄の扉の先の地面。花畑で眠っているトビ。シトータの騒がしい声で、ふと目を覚ます。


トビ「……? シトータ姉さんの声……?」


ライ「シトータ……。ちょっ、耳元で騒がないで……。トビにまで聞こえちゃうよ」


シトータ「~っ!! ライ兄様は、クロム姫の一体どこを慕っているのですか!?」


トビ「えッ!?」

ライ「あー、顔? あははっ。可愛いんだよー。丸っこくって。姫はね、どこに触れても、ぷにぷにふわふわで気持ちいいんだよ♪」


シトータ「に、い、さ、まー!? 真面目にっ!」


ライ「あはは。冗談だよっ。んー。クロムのいいところなんて、ありすぎて一夜二夜じゃ語り尽くせないなぁー」


 クロム、エレベータで、この階にやってくる。すぐに二人に気付いて。


クロム「こんにちはー」


ライ「あれっ。姫さん! 噂をすればっ♪」


シトータ「くっクロム・ロワーツ!?!?」


クロム「はい……?」


シトータ「っ! 兄様、追い出してよっ!」


ライ「無理だよ何言ってんのー。今日は、クロムに頼みがあって。僕が呼んだんだよ。姫さん、よく来てくれたね。こんなジメジメした所で……。ごめんね」


クロム「いえいえ」


シトータ「頼みですって……!? ちょっと、一体どんな」

クロム「あの、貴女もしかして、シトータ、さん?」


シトータ「えっ。ええ、そうよ」


クロム「はじめまして。クロムです」


シトータ「現れたわね。名無しの姫!」


クロム「は、はあ、もう名無しじゃありませんけど……」

ライ「わああちょっとーっ! シトータ、やめてっ。ごめんね。礼儀がない兄弟ばっかりで」


クロム「えっ。いえ! 大丈夫ですよ?」


シトータ「ずっと会いたかったのよ! 我が宿敵、クロム姫!」


クロム「宿敵?」


ライ「姫さん。シカトして」


 どんな時でもにこにこしているライ。


クロム「えっ。でも」


シトータ「ちょっと失礼!」


 シトータ、クロムのワンピースの後ろのファスナーを思い切り下ろし。クロムの服を脱がす!! 小さいピンクのリボンがついている白い下着と、クロムの大きな胸が揺れ現れる。


クロム「えっちょっ!? きゃっ!? あっ、なっなにっ!? あんっ! ふぁっ!?」 トビ「!???」


ライ「ちょ!? シトータ!? 姫君の服を脱がせるなんて一体どういう……!?」 トビ「!?」


 ライ、はだけたその姿をばっちり見てしまう。

 トビ、三人の様子が気になり、鉄の壁に耳を当て、聞き耳を立てている。


シトータ「さあ……! 見なさいッ! 私は先週、手術して貴女と同じ胸の大きさになったのよ!」


 シトータも胸を見せてくる!


クロム「えっえっえっえっえっえっ!?」 ライ&トビ「えっえっえっえっえっえっえっ!?」


クロム&ライ&トビ「ええええっ!?」


シトータ「ふふん。どう? 美乳でしょう!? 兄様ッッッ! ご覧になってっッ!」


ライ「ちょっー! 直視したらジョーカーとキジと瑠璃くんに殺されちゃう!!」


 でも見てる!!


シトータ「身長もよ! 貴女と同じ159センチっ!」 トビ「!?!?」


クロム「えっえっえっえっえっえっえっ!?」 ライ「だから骨砕いてたの!?」


シトータ「体重も!」 ドーナツをたくさん出す!!


クロム&ライ&トビ「!?」


シトータ「髪の長さも!」 定規を出す!!


クロム&ライ&トビ「!?」


シトータ「貴女をコピーする為に情報を集め……どれだけ私が努力したか……!!」


クロム&トビ「どうしてそんなこと……」


シトータ「それは……」


ライ「シトータはキジュリュクが好きなんだよ……」(ウイスパー)


トビ「えっ!?」 クロム「えっ!? でも、兄弟なんじゃ……」


ライ「んー。兄弟と言えば兄弟なんだけど、血的に言うといとこよりも遠いからなぁ、キジュリュクとシトータは……。まあ、なんていうか、その」


シトータ「兄様っ! わたくしはキジュリュク兄様の恋人になりたいのですッ!!」


ライ「うん。知ってるー」 トビ「えーっ!?」


ライ「ん? 今トビの声聞こえなかった?」


シトータ「?」


 ライにとっては、シトータの恋愛話は超どうでもいい話だった。


クロム「つまり……私はシトータさんの恋敵だと……」


シトータ「そうですわっ!」


クロム「キジって、カッコイイですもんね。今日またここに来る途中も、一度でいいからキジとデートしたいって、ナースさんたちが噂していました……」


シトータ「っ!! そうなのよ! わかる!? あの逞しい腕っ! 肩幅っ! 股下っ! 声ッ!!」


ライ&トビ「股下?」


クロム「シトータさん。私、シトータさんの恋を応援したいです!」 キリッ!!


シトータ「えっ……えっ……えっ……!?」 照れ動揺っ!


クロム「キジを愛するその気持ち。私よりもシトータさんのほうが勝っていると思います!」 力説っ!


シトータ「ッ!? ッ――!? そうでしょう!? そうなのよ! わかる!?」


クロム「ええ。だから。なんでも協力させて下さい!」


シトータ「本当に!?」


クロム「はい! ……今まで私のせいで、シトータさんを不安にさせてしまっていましたね……。ごめんなさい……」


 クロム、ソファに座り込んでしまったシトータの両手を、優しくふわりと包み込む。


シトータ「っ!! クロム……お姉様……っ!」


クロム「これからは決してキジと二人きりにならないよう、細心の注意を払います! 護衛もつけます!」


シトータ「まあ!」


クロム「私を信じてください! もうキジとは、私は友達以下の付き合いしかしません!」


シトータ「わかりましたわ!! わたくしは、貴女の代わりとなって。キジュリュク兄さまからの愛を、全て! 一身に受けます!!」


ライ「ちょろいなぁ……うまいなあー」


シトータ「でも……本当にいいんですの? キジュリュク兄様のこと、貴女だって、少しは気があったんじゃ……」


クロム「わっ、私はー、そのー、付き合ってる人が……いますから!! キジよりも、全然……っ! 好きな人が、いるんですっ!!」


ライ&トビ「えっ」

シトータ「え!? そうだったんですの……!?」


クロム「ウンっ!」 凄い変顔。何かを我慢している。


シトータ「なぁーんだ♪ 全てわたくしの可愛い勘違いだったんですのね。キジュリュク兄様も、バカですわねぇ……フフフフッ。そうとも知らずに。……で、そのお付き合いしているという方は一体? どういう方なんですの? 結婚はしませんの?」(ドキドキ)


クロム「えーと……」 汗だく!


ライ「ひっ姫さん!!  今日頼みたいことなんだけどね!」 フォロー!!


クロム「あっああはいはいっ!?」


ライ「この地下の、この重い鉄の扉の向こう側に居る、弟のことなんだ!」


トビ「っ! ……兄さん……」 少し、扉から離れる。


ライ「君にカウンセリングを頼みたい。これ、プロフィールと、トビの作業内容と功績。エレメントファイルからダウンロードして?」


クロム「はいっ。……えーと、カルク・トビュール・シータ……。十七歳!? 随分お若いんですね?」


ライ「うん、まあ……」 トビ「っ……」


シトータ「兄様にいさま、ひょっとして、トビの引きこもりをなんとかしようと思ってます?」


ライ「うん。そうだよ」


シトータ「なんとまあ……無謀な……。こんなぶあっつい鉄の扉も。(鉄の扉をノックして)トビが創ったんですのよ? (鉄の扉を力いっぱい蹴る!!)……ふんっ!!」


トビ「ぴっ!!??」


 ドォォン……と、鉄の扉が、少しだけ震える。


シトータ「ほら。キックボクシング五段のわたくしが全力で蹴っても。うんともすんとも言いませんわ」


クロム「今声が聞こえた気がしますけど……」


ライ「クロム。トビが今何を考えて生活しているのかだけでも、知りたいんだ。会議に出ろとかたまには食堂に来いとか診察も少しは手伝えとかまあ兄弟皆色々思うことはあるけど……。とにかく、トビが心配なんだ……」


クロム「わかりました。トビくんと話して、彼の心情を調べてくればいいんですね」


ライ「宜しく頼むよ……。兄弟の誰が行っても、本心を話してはくれないんだ……」


シトータ「クロムお姉様。トビは、わたくしたち兄弟に、負い目があるのですわ……」


クロム「負い目?」


シトータ「ええ。三年ほど前。トビは医者としてデビューしたての頃。ライお兄様と一緒に、内科診療を行っていましたの」


クロム「ライと一緒に働いていたんですか」


ライ「うん。あの頃はね。トビも凄く一生懸命、働いてくれていたんだ。だからすぐにキジと同じようにファンも大勢ついたし。……そのせいで変な患者がたくさん増えちゃってね」


クロム「変な患者?」 トビ「っ……」


 トビ、聞きたくない話なのか、俯いて部屋の奥へ行ってしまう。


シトータ「プレゼントを贈ってきたり。トビに診療されたくて割り込んだり。ストーカーっぽくなっちゃったり。ですわ」


クロム「それは災難でしたね……」


ライ「僕たちも対策や工夫をしたんだけどねぇ……」


シトータ「でもそれが逆効果で」


クロム「逆効果、って……?」


 二人、少し苦い顔をする。


シトータ「ある日、トビの熱狂的なファンから。わたくしたち兄弟全員。一人ずつ宛てに、小包が届きましたの……。“トビを守りたければ、この中の謎を解いてみろ”ってカードが添えられて」


クロム「それっ絶対罠じゃないですか!! 爆弾!?」 トビ「っ……」


 三人の声は、部屋の奥まで届いてしまう。


シトータ「罠だと知っていても。開けるしかなかったんですわ」


クロム「どうして……?」


ライ「トビがその時、行方不明になっちゃって……」


シトータ「誘拐だと思ったわたくしたちは、勿論クドゥルシェに通報して。すぐ警察に来てもらったんですけれど……」


ライ「でも、病院の診察を、患者を、全く出入りさせなくすることは出来ない……。ここには何百もの入院用ベッドがあって。その時も、今も。そのほとんどは埋まってるから……」


シトータ「それに。当時地球とケテラスの各所でドンパチ戦争してたでしょ? 患者を受けないことは出来なかったんです」


クロム「小包の中身は……」


シトータ「クロム姫がさっき言った通り! 爆弾でしたわ! プラス毒薬!!」


クロム「開けたんですか!? 誰が!?」


ライ「僕ー」 へらへらしてる。


クロム「国王の自覚とは!!!!」 

トビ「兄さん……」


シトータ「トビ以外の兄弟、十八個の小包を、ライ兄様、ナギ兄様、キジ兄様の三人が一斉に開けたんです」


クロム「それがクドゥルシェの指示だったんですか!?」


シトータ「仕方なかったんですのよ! 犯人は患者に紛れてすぐ近くに潜伏してた! ……わたくしたちは、トビを助ける為。お父様の指示の元に動いたのです! 兄様たち三人がそういった行動に出れば、必ず犯人をおびき寄せることが出来るだろうと!」


ライ「父さんは策士家だったからねー」


クロム「三年前……。そっか、まだライも王位は……」


ライ「うん、継いではなかった。でも、他の弟妹おとうといもうとたちを危険に晒すくらいなら、僕とナギとキジが怪我したほうが……。(に~っこり笑って……)説得力、あるでしょ?」


クロム「確かに……! でっでも危険でしたよね!?」


ライ「ん、まー。でも犯人は見つかったし。トビもあの時、屋上で牛や馬と遊んでて、居なかっただけだったし。あれ以来、警察もたくさん常駐してくれてるし。変な患者さんもかなり減ったかな」


シトータ「でも、トビは……。一部始終を聞いて。兄様たちが酷い怪我を負った責任を感じてしまっているんですの」


クロム「そのせいで、地下に閉じこもってしまっているんですか?」 トビ「っ……」


シトータ「そういうこと。ですわ」


クロム「成程……」


ライ「トビは繊細なんだよ。僕やキジとは違ってね~」


シトータ「お兄様たちは、頭おかしい患者とか人には慣れていますから。メンタル強いですけれど」


ライ「僕だってたまには傷付くよ?」


クロム「お優しい方なんですね。トビくんは」


トビ「優しい……? ボクが……?」


ライ「まっ。宜しく頼むよ。クロム。もう君しか頼れないんだ」


シトータ「今まで誰が説得しても、ダメだったんですのよ? 兄様……」


ライ「わかってるよ。そんなことよりシトータ、もう休憩時間終わりじゃない?」


シトータ「あっ! ほっほんとですわっ! わたくし、失礼致しますっ!!」


 シトータ、バタバタと上階へのエレベータへ乗り込んで。


クロム「ふふ。可愛らしい方ですね。シトータさん」


ライ「そう? うざったくない?」


クロム「ら、ライッ。そんな王子様にっこりフェイスで妹をディスらないでください怖いですっ!」


ライ「なんで兄弟なんか好きになっちゃうかなぁ~」


クロム「それ程、キジに魅力があるっていうことですよ」


ライ「……姫……」


 クロムの腕を掴むライ。


クロム「ライ? な、なんですか……? どうしました?」


 ここから二人、かなり声を抑えて。


ライ「姫さん。僕と付き合ってることにしちゃえば?」


クロム「え?」


ライ「ねっ」


クロム「え、で、でも」


ライ「シトータに嘘ついたこと、いつかはバレちゃうよ?」


クロム「あー……そうですよねえ」


ライ「だから。僕が彼氏のふりしてあげるよっ」


クロム「ライ、楽しんでるでしょ……」


ライ「ふふふふふふふふっ」


クロム「ライには金獅子姫が居るじゃないですか」


ライ「僕だってケテラスの王族みたいに愛人や王配をたくさんとったっていいじゃない」


クロム「本気で言ってます……?」


ライ「半分本気だよっ」


クロム「はぁ、考えておきます。行ってきます……」


 ライ、すり抜けようとしたクロムの右手の甲に、キスをして引き留める。


ライ「姫。……僕を王配に入れれば。アイゼルの再興は夢じゃない。君だって帰りやすくなって、王座奪還出来るはず」


クロム「……私は国へは還らない……」


ライ「君を愛してる。その気持ちは、覚えておいて欲しい……。(いつものへらっとした雰囲気に戻って。にっこり笑って)いってらっしゃい」


 ライにするりとエスコートされ。鉄の扉の解除キーの前に立たされるクロム。


クロム「……ライは、冗談ばっかりですね……」


 クロム、真剣な顔をして。


クロム「ふうっ……。トビのところに行かなくっちゃ!」


ライ「はい。キーを解除したら五秒以内に入って」


クロム「はいっ」


トビ「ッ!!」 トビ、机の下に隠れる。毛布を被る。


ライ「よしっ! 解除したよっ!」


 鉄の扉の一部分が、少しだけ開く!


クロム「えいっ!」


 クロム、思い切って部屋の中へ!


ライ「あっ。そうだトビに渡すものがあったんだっ! やっぱり僕も一緒に行くっ!」

クロム「えっ!?」


 ライ、クロムにぴったりくっつく!


シトータ「わたくしも行きますわっ!!」


 突然現れたシトータ、ライにしがみつく!


クロム&ライ「シトータ!?」


ライ「ちょっと! 狭いっ!」


シトータ「わたくしも、やっぱり心配なんですの! トビのこと!」


クロム&ライ&シトータ「っ!!」


 ぐしゃっと、三人重なって部屋の中に倒れる。


クロム「ちょっ、ライ、重たいですっ!」

ライ「わあごめんっ! 姫さん!」

シトータ「お兄様! わたくしの心配もして!」

ライ「一番上に乗っかっておいて何言ってんの!?」


トビ「……兄さん……姉さん……」


 目の前に、細身の少年が、毛布を被って寂しそうに立っていた。


ライ「トビ……!」

シトータ「トビ!」


クロム「貴方が、トビ?」


トビ「……な、何しに、き、来たの……?」


ライ「えへへっ。いいじゃん。トビが最近は何を創ってるのか、観察しに来たんだよっ♪」

シトータ「そうそうっ!」


 ライの誰よりも優しい笑顔は、トビの心の隙間に入り込み。自然と少しあたたかくさせる。


トビ「……そっか……。一応真面目にやってるつもりではいるけど……」


シトータ「トビが毎月何体も創る医療機器には、本当に助かっていますわっ!」


ライ「そうだよー。お疲れ様。はいっ。コーラ♪」


トビ「!! ……うれしい……。ありがとう……」

シトータ「コーラ!?」 クロム「コーラ?」


ライ「ふふっ♪ 入り口に、あと3ケース、持ってきたからね♪」


トビ「!! ……うれしい……これで明日からも生きて行ける……」


シトータ「トビ! 固形物も食べなさい!」


トビ「え……。点滴してるし……。たまに、カロリービスケットも食べてるよ……?」


シトータ「っそんなんじゃ駄目ですわっ!」


トビ「どうして? 理論的にはこのままの食生活でも、あと40年は普通に生きられるよ。それに、豆類はよく獲ってるし……」


シトータ「っ! たまにはお肉や果物も食べなさあーいっ!」


ライ「まあまあまあまあ。……ねえトビ。たまには食堂にも来たら? で、こっちのこれは、何?」


トビ「それは……脳をスキャンすると身体のどこをどのようにして治すべきか解る機械……」


ライ「ええーっ!」

クロム&シトータ「凄いっ!」

ライ「じゃあ、っ……これは!?」


トビ「これは体調が悪い時に、こう、指にはめて……」


ライ&シトータ&クロム「うんうん……」


トビ「最小限、なんの薬を飲めばいいのかと、どれくらいの頻度でどのくらいの水分を取れば健康状態になるのかが解る機械……」


ライ「すごっ!!」 クロム「へえ~っ!」

シトータ「天才ね……」


トビ「これをあちこちに設置出来れば、医者がもっと、難病人に対して時間を作ってあげられるでしょ……」


ライ「僕たちの為に……?」


トビ「そう。……医者は、今も昔も、 少ないからね……。医者が不要で薬だけが必要な患者かどうかがわかるのって、大きいでしょ?」


シトータ「トビ……」


ライ「凄いなあ。トビは。まだまだ若いのに、相変わらず天才だね」


トビ「ボクを手伝ってくれてるインドランスたちが、優秀だからだよ……。一人じゃ、材料も集められないし」


ライ「へー。いい子たち見付けてきたね」


トビ「え……? ライ兄さんが手配してくれたんじゃないの……?」


ライ「んー? ううん。違うよ? この間の子も、その前の子も、確かナギが連れてきたんじゃなかったっけかな?」


トビ「ナギ兄さんが……? ……そうだったんだ……。お礼、言っておいて貰えるかな……」


ライ「ふふ。自分で言ったら? トビ」


シトータ「そうよそうよ!」


トビ「……ナギ兄さんは、ここには滅多に来ないから……」


ライ「自分から出ておいでよ。ね?」


シトータ「そうよそうよ!


トビ「……考えておく……」


ライ「……万年部屋に篭ってばかりじゃ、身体に悪いよ?」


トビ「運動はしてるよ。色々、……マシンを自分で創ったから……」


ライ「トビ。僕はそういうのを心配してるんじゃないんだよ」


トビ「いつも会議に出ないから、それ、怒ってる……?」


ライ「ううん。……自分には関係ないって、思ってるんでしょ?」


トビ「そこまでは思ってないけど……。つい作業に夢中になっちゃって。気付くといつも、日付が変わってるんだ……」


ライ「そっかそっか。……ふはっ。瑠璃くんもこの間そんなこと言ってたなぁ」


トビ「ルリ……? 新しい弟?」


ライ「ああ、違うよ。カルク家の兄弟じゃない。この間言った、新しい医師の男の子。インドランスの心理士の」


トビ「あ……。キジ兄さんと仲がいいっていう……?」


ライ「そうそう!」


トビ「ボクと同じように集中しちゃうのかな……」


ライ「そうかもね。ふふ……」


トビ「……あ、兄さん……姉さん。ね、これ。明日から使ってみて欲しいな」


 孫の手、のようなものを持ってきて、ライに手渡すトビ。


ライ「これ、何? 棒?」 


シトータ「わかりましたわっ! 遠くのものをキャッチする棒では!?」


トビ「迷惑な患者が来たら、ここのボタンを押して……。その人にこの杖をポンッて当てると……筋肉が収縮して、喉がかわいて、尿意がして、目が回って、全身から汗が大量に吹き出て……」


ライ「トビ、またこんなもの創って……!」


トビ「便利だと思う……」


シトータ「こ、こんなので叩かれたら、恥さらしですわ……。最悪、死ぬんじゃ……」


ライ「没収!」


トビ「な、なんで……?」


 溜息を吐く、ライ。


ライ「トビ。まだあの時のこと、気にしてるの?」


トビ「っ……兄さん、これも見て。これは、こうして、こうすると……健康な人がこっちに入って来れなくなる仕掛けで」


ライ「トビ……! なんでそんなもの創ってるの!」


トビ「だ、だって……」


ライ「約束したよね? 誰かを傷付けるような発明はしないって!」


トビ「でも、ボクは……」


ライ「これも没収!」


トビ「わ、わかったよ……」


ライ「はぁ……。……トビ……」


シトータ「トビ? 健康な人と患者を差別する必要はないんですのよ」


トビ「でも、もしまた兄さんたちが危険な目に遭ったら……」


シトータ「トビ! わたくしたちを信じなさい! 約束したでしょう!? どんな時でも、わたくしたちが貴方を守るって!」


トビ「ボクは傷付いたっていい! 今度はボクが皆を守ってみせるよ!」


シトータ「トビ……!? まだ幼い貴方がそんなことを口に出すものではありません! 現実を見なさい! 兄様に謝りなさい! 貴方がそんなんだから、兄様たちは貴方のことが心配でたまらないのです!」


ライ「シトータ。どうどう。……トビ、今度、瑠璃くんを、ここに呼んでもいいかな……?」


トビ「え……。う、うん……?」


 ライ、トビのことを優しく撫でて。


ライ「きっと仲良くなれるよ。それまでには、もう少し太れるといいね。僕らが願うのは、トビの幸せだよ?」


トビ「……兄さんから見て、ボクってガリガリで気持ち悪い……?」


ライ「んー。でも、筋肉はまあまああるんだよね……」


トビ「最近キジ兄さんが、夜中にお弁当とか持ってきてくれるんだよ」


ライ「キジが?」


シトータ「そうなの!?」


トビ「うん。昨日はね、カルビ弁当だった……」


ライ「全部食べれた?」


トビ「……半分、食べて貰った……」


ライ「そっかそっか」


 トビを再びなでなでするライ。


トビ「お肉とかお米より、パンのほうが好きだな……」


ライ「今度みんなでご飯食べよう」


トビ「うん……」


ライ「じゃ、僕とシトータはもう行くね」


トビ「う、うん……? ごめんね、休憩時間、ボクなんかの為に……」


ライ「なんかなんて言わないでよ」 シトータ「そうそう!」


トビ「ボクはカルク家のお荷物だよ……わかってる……」


シトータ「トビ!!」


ライ「トビ……。そんな風に言わないで。トビが色んな便利な発明をしてくれるから。僕たちは働きやすくなってるんだよ?」


トビ「本当にそう思ってるのかな、みんな……」


ライ「自信を持って。……また来るから」


トビ「うん。兄さん。ありがとう……」


ライ「……クロム。後は頼むよ。ごめん。紹介遅れたけど……」


クロム「はっはいっ」


トビ「……」


ライ「弟のトビ。……トビ、この方は地球でインドランスの心理カウンセラーをしている、クロム」


トビ「クロム姫……?」


クロム「っ。トビ」


トビ「っ」


クロム「はじめまして。ずっと前から、会ってみたかったんです。私……カルク家の兄弟の人たちって……みんな明るくて、優しくて、完璧で……。でも、そんな中に、闇しか抱えてない子が居るって聞いて……。ふふ。私も、心配、してたんですよ? 貴方に会ったことなかったけど」


トビ「……っ」


ライ「誰に聞いたの? そんなの」


クロム「ナギです」


ライ「うん。後でおしりぺんぺんだね」


シトータ「あのオカマ兄お喋りですから」


ライ「姫は僕らにとっても特別だからね」


シトータ「ふん……」


クロム「……トビのこと……知りに来ました」


トビ「ボクの、こと……?」


クロム「うん……。だって、まだ若いのに。家族と同じ建物に住んでるのに、誰にも会おうとしないなんて……。でも、会えてわかりました。トビの顔を見て、気付きました。……貴方は逃げる為にここに居るんじゃない。……優し過ぎて傷付きやすくて、そして、兄弟を愛してるから。ここに居るんですね……?」


トビ「っ……」


ライ「クロム……」


トビ「に、に、……兄さん。クロム姫は……こ、こんなにきれいな人だなんて……き、聞いてなかった……」


ライ「ふふ。クロム、褒められてるよ」


クロム「ありがとうございます」


トビ「い、いいつも兄たちが、お世話になってます……。あの、これ……つまらないものですが……」


 他人恐怖症と共に。他人と目を合わせるのが辛いトビ。


クロム「? なんですか? この棒」


トビ「これは……。ち、痴漢撃退棒ですっ……!」


クロム「はらー!」 シトータ「!?」

ライ「ちょっとちょっとっ! もう一本変なのあったの!? 没収っ!」


トビ「クロム姫は可愛いから……。痴漢とかストーカーに遭うこともあるよね……?」


クロム「えっと……」


ライ「トビ! 目上の女性をほぼ初対面で! 馴れ馴れしいよっ!?」 シトータ「そうですわ!」


トビ「ご、ごめんなさい……」

クロム「あっ。い、いいんですよ? ライ」

ライ「いや、でもね」


トビ「兄たちがいつも貴女の話ばかりするので。初対面な気がしなくて……」


クロム「私の話?」


トビ「うん……」


クロム「ふふっ。どんな話かな」


 クロムの笑顔に一瞬心奪われるが、すぐにトビは我に返って。


トビ「ッ……で、出て行って……」


クロム「えっ?」


トビ「ここに居たらクロム姫も怪我をするかも……。危険な目に遭う前に帰って……!」


クロム「ちょっ、ちょっと、まっ……!」


トビ「っ!」


 掃除機のような巨大な扇風機? を装備するトビ!


ライ「な、何ソレ、掃除機!?」


シトータ「っちょっトビまさか……っ!? きゃああああああっ!?」

クロム「きゃっ!?」 ライ「わあっ!?」


 トビ、鉄の扉を全て開放し。クロムとライとシトータを追い出す。

 トビは掃除機のようなもので三人を強風で煽り、押し出す!


シトータ「いたたた……」


ライ「あー……。追い出されちゃったね」


クロム「凄い風でしたね……」


ライ「なんでも作れるんだなあ……。あっ、姫さん、スカートめくれてるよ……」 クロム「ひええっ」


シトータ「ヘアースタイルがぐちゃぐちゃですわっ! あんっもうっ!」


クロム「どうして、他人から離れようとするんですか?」


ライ「それは……」


クロム「トビの顔の傷……。あれ、酷いですよ。あれってもしかして、ここの患者さんにつけられたんですか?」


ライ「違うよ。あれは、トビ本人がつけた傷なんだ」


クロム「本人が……? どうして……。あんな生々しい傷……」


ライ「愛されない為につけたんだよ」


クロム「どういうこと……? わざとあんな傷つくって……!? キジやライの技術なら、綺麗に治せますよね!?」


ライ「……クロム。君も、昔。同じようなことを、どっかの騎士に懇願したことがあったよね」


クロム「え……」


ライ「“私を恨むことやめないで”……って」


クロム「……っ」


ライ「トビも同じなんだ。自分を恨んで。他人からも恨まれたい。……そうすることで僕たちを守ろうとしているんだ」


クロム「トビの顔……。キジの幼い頃によく似ていましたね」


ライ「美少年でしょ? トビが医師免許を取った時よく言われたよ。また天才的美少年が現れた。って。キジと、父親にそっくり。さぞや優秀な外科医になるだろうって」


シトータ「水星ではニュースにもなったんですのよ!」


クロム「へ、へえ……。でも、蓋を開けたら……?」


ライ「トビは血がほんっとに苦手でねー。結構苦労したんだぁ」


クロム「血が……?」


ライ「そう。血も、怪我も、苦手だし。まじまじと見ると貧血で倒れるほど。グロいものはダメな子だった」


クロム「それでよくもあんなに若くして医師免許なんて……」


ライ「キジと同じで。どんな本も解析も手術も、一瞬見ただけで。一瞬説明されただけで。理解して自分のものにするのがはやい子だったからね」


クロム「才能、ですね」


ライ「キジみたいに負けん気が強いんだろうなあと思ってたんだけど……。でも、トビはね、優し過ぎる所。それが一番の障害になっていたんだ」


クロム「ま、待ってください。……血も怪我も嫌いなのに。どうして、自分であんな怪我を顔につけたんですか……!?」


シトータ「それは……」


ライ「……クロム姫。もう一回、この鉄の扉、開こう……」


クロム「えっ」


 ライ、言葉の通りにする。


シトータ「に、兄様の指紋に反応して開くんですの!?」


ライ「うん。よく来るからね。……はい、姫さん。もう一回。いってらっしゃい」


 ライ、クロムの背を押し、彼女をトビのところへ歩かせる。


クロム「っ! だ、大丈夫、でしょうか……!?」


トビ「ッ!?」


ライ「自分で聞いてみてごらん。きっと応えてくれるさ。……トビ。クロムとよく話してみてごらん。……ずっと話したかったんでしょ? じゃ、僕とシトータは午後の診察があるから。戻るね」


シトータ「クロムお姉様、頑張ってッッ!」


クロム「あっ、ら、ライ……っ!」


 鉄の扉が、再び閉まる……。


クロム「と、扉……。閉まっちゃった……」


トビ「……あの……」


クロム「っ!? は、はいっ!」


トビ「クロム姫……なんだよね?。本物の……」


クロム「えっと……。っ。そうですよ」


トビ「……あの、僕が生まれた時に、会っているみたいなんです……」


クロム「私と?」


トビ「そう! 覚えてる……?」


クロム「えっと……。今、何歳でしたっけ?」


トビ「十七です」


クロム「十七……。私が地球に行ったのが十九年前で、えーと……」


トビ「……ごめんなさい……。やっぱり気のせいかな……」


クロム「えっ」


トビ「……外に、出たいですよね? ちょっと待ってくださいね……。この鉄の扉、何回も開け閉めしてると、数分か数時間、機能がフリーズしちゃうことがよくあって……」


クロム「あのっ、トビは、他人がこわいんですか?」


トビ「っ……どうして……?」


クロム「あなたの様子。対人恐怖症とは違う感じがして……」


トビ「ボク、対人恐怖症じゃないよ……?」


クロム「えっ、あっ、そうなんですか……」


トビ「人間は……あんまり好きじゃないけどね」


クロム「じゃあどうして他人から距離を置いて生活しているんですか?」


トビ「ねえどうして年下にまで敬語を使うの?」


クロム「っ敬意を払うべきかそうでないかをまだ判断していない内は、敬語を使うんです!」


トビ「へっ」


クロム「!?」


トビ「あはは……変なの」


クロム「わ、笑った!」


トビ「人間だもの」


クロム「絶対に笑わないからって、言われて……」


トビ「誰に?」


クロム「その、ナースさんとか……他のカルク家のご兄弟たちに……」


トビ「そうなんだ……」


クロム「気にならないんですか? こんな所に引きこもってて……」


トビ「他人の目?」


クロム「うん……」


トビ「気になるよ。少しは……。でも、それでもやり通さなきゃいけないことがあるから……」


クロム「それって何ですか?」


トビ「……。クロム姫はさ、どうして十九年前。自殺の偽装なんてしたの?」


クロム「そ、れは……」


トビ「仲間の為」


クロム「……そう……」


トビ「家族の為」


クロム「……うん……」


トビ「だから自分のことなんて、どうでもよかったのかな」


クロム「それが、王女としての務めだと思ったから……」


トビ「ボクも同じ……」


クロム「……トビ」


トビ「ボクの秘密、知りたい?」


クロム「ッ知りたいっ!」


トビ「どうして? 心理学の勉強の為?」


クロム「私は……。トビのことが心配で……」


トビ「どうして?」


クロム「理由は……」


トビ「キジュリュク兄さんを、愛してるから……?」


クロム「えっ? キジ、ですか?」


トビ「あは。違う? 弟のボクが、こんな引きこもりじゃ、……かっこつかないよね」


クロム「トビ……。キジは、貴方のことを誇りに思っていますよ……」


トビ「……そんなの嘘だ」


クロム「本当です」


トビ「今はもう……傷なんて残ってないかも知れないけど……。兄さんたちはボクのことを煙たがってるに決まってる……」


クロム「トビ……?」


トビ「……どうしてかな」


クロム「?」


トビ「クロム姫には、何でも話しちゃうや。やっぱり、僕たちはクロム姫のこと……好きになっちゃうんだ……」

クロム「っ……! 嬉しいです」


トビ「……ふふ。ね、奥に来て……。お茶、淹れるから ……」


クロム「トビ……!」


トビ「特別だよ。他の誰にも、言わないでね」


クロム「うんっ」


 トビの研究所の奥は、大分ゴミゴミしており、ガラクタであふれかえっていた。

 トビが愛用しているふかふかのソファに、二人、並んで座る。


クロム「トビ、今日は何を創っていたんですか?」


トビ「んー、今日は……」


クロム「何だろう、これ……? 種?」


トビ「あっ、そ、それ、は……」


クロム「?」


トビ「手で、こうして包んであたためてみて……」


クロム「? はい……」


トビ「一緒に数えて。呪文だよ。ひのひの、みーの、やよこいでー♪」


クロム「ひのひのみーよ、やよこいで?」


トビ「すきすき、いちにい、さんまん、ごちょう、おくまん、きーすでとーろけるー」

クロム「すきすき、いちに、さんまん、ごちょ、おくまん、きすで、とろける……?」


トビ「さきさき!」

クロム「さきさき?」


トビ「まーしょっ!」

クロム「まーしょっ?」


トビ「手を、ひらいて……」


クロム「っ!」


 二人重ねた手の中から、綺麗な花束が出現する!


クロム「おっお花が咲きました! ぶあって! ぶあって!」


トビ「人の熱と汗に反応して。一気に成長する花の種を創ったんだ」


クロム「凄い! 本当にトビは天才ですね! これ、プレゼントされたらすっごい喜んじゃいますよ!」


トビ「ぁ……」


 彼の表情が、何故か少し暗くなる。膝を抱えて。


クロム「どうかした?」


トビ「天才って言われるの、嫌なんだ……」


クロム「えっ……」


トビ「どんなに頑張って何か創っても。必死になって閃いても。誰かに感謝されたって。ボクのせいで兄さんたちが傷付いた過去は、変わらない……っ、から……!」


クロム「トビ……」


トビ「僕が怪我すればよかったのに……どうして……」


クロム「そんなこと言わないで……」


トビ「兄さんたちに会わせる顔なんてないんだ……。ボクが居るだけで迷惑なのに、なのにみんな、変わらずボクを想ってくれる……。血の繋がりのせいで」


クロム「……トビ。それがわかっているのなら。変わらなくちゃ!」


トビ「え……」


クロム「貴方はこんなに凄いものが創れるんですよ? カルク家の人たちは、水星の未来を背負っています。……だからね。逆、なんですよ? トビ」


トビ「逆?」


クロム「そう。貴方が、ファンの人に迷惑をかけられたの。そう思うことは出来ませんか?」


トビ「でも、ボクのことを好きだって言ってくれてる人たちが……。兄さんたちを……みんなを……傷付けるなんて……ボクは……」


クロム「トビは、好きな人居る?」


トビ「えっ! え、えっと……」


 ずっと。想っていた。

 恋い焦がれていた。

 新聞に書かれた、名無しの姫君のこと。

 兄たちが話す、信念を持った一人の女性のこと。

 ずっと。


クロム「トビの好きな人がもし、トビと同じ体験をして。こうして地下に閉じこもって。誰にも会わないようにしていたら……? 貴方だったら、恋人をどう励まします?」


トビ「えっ、えっ、えっ、えっっと……」


クロム「私だったら……」


トビ「クロムだったら……?」


クロム「ここに泊まりますっ!」


トビ「えっ!?」


クロム「そしてこうして手を繋いで……」


トビ「っ!!」


クロム「寄り添って。貴方の愚痴でも、なんでも。たくさん、たくさん。聞いちゃいます」


トビ「ひ、姫……」 耳まで真っ赤になる。


クロム「ふぁぁ……。このソファ気持ちいいですねー。毛布も触り心地よくて……。おやすみなさい ……」


トビ「ちょっ、ちょっとっ! クロム姫!」


 クロム、毛布から顔上半分少し出して。


クロム「……トビ、ちょっと寒いのですが……」


トビ「っ! エアコン、つける!?」


クロム「ココアが飲みたいです」


トビ「わっわかったっ! ココア作るねっ!」


クロム「メーカーどこですか? その粉」


トビ「ビンホーテン!」


クロム「嫌いです……」


トビ「えっ!! キジ兄さんが買ってきてくれたやつ……」


クロム「私、サンバックスのエレキーソンココアオレンジフレーバーミックスじゃないと……美味しく感じないんですよねえ……」


トビ「サンバックス!?」


クロム「そう。三階の購買の横にあるカフェ。あそこなら売ってるんだけど、私……今月はもうお小遣いも無いし困ったなぁ~。どうしても飲みたいのに……」


トビ「いくらするの!?」


クロム「39ベニィかな」


トビ「安い!」


クロム「はぁ~。今月はあと1000ベニィで暮らさないといけないから。ココアなんて高価なもの、買えないなぁ……飲みたいなぁ~……」


トビ「買ってきてあげるっ! 待っててっ!」


 自分のお財布を握り締め。鉄の扉を開け。飛び出して行くトビ。


クロム「いってらっしゃ~い……」


 クロム。こそこそと自分たちの様子を陰から見ていた二人組に一喝!


クロム「ちょっと二人ともっ。診察があるって言ってたのは?」


 鉄の扉の向こうから、ライとシトータがひょこりと顔を出す。


ライ「っ!?」 シトータ「っ!!」


クロム「まったくもうっ」


ライ「あははははは……診察、妹に代わってもらっちゃったー」


シトータ「わたくしも!」


クロム「何してるんですか……もう。私に任せて欲しいのに」


ライ「いや、姫さんのカウンセリングの実力は、銀河一だって僕は知ってるよ!? でも面白いもの見たさにね!」


クロム「そこまで口に出さなくていいです」


シトータ「いや~……。お見事でしたわね……」


クロム「トビの私を見る目……。凄くキラキラしていましたからね……」


シトータ「あいつもいっちょ前に一応男なんですのねえ」


ライ「姫さんの美貌の勝ちってこと?」


クロム「ふふ。冗談でも光栄です。憧れの誰かに似てるのかな……」


ライ「いや冗談じゃないんだけど……」


クロム「トビだってきっと変われます。だって……銀河中の痛みを抱える人間を癒す、貴方たちの弟なんですから」


ライ「……」 シトータ「……」


シトータ「貴女が女神と呼ばれる理由、少しは解った気がしますわ……」


クロム「?」


ライ「姫さん。トビが戻って来ちゃうよ」


クロム「戻って来れますかね……?」


シトータ「た、確かに」


ライ「約三年ぶりの上階だからねえ……」


シトータ「っ兄様隠れてっ! 足音が聞こえましたわっ!」


ライ「姫さんっ! ガンバレッ!」


クロム「もー……」


トビ「くろむひめっ!!」


 息が荒いトビ。


クロム「トビ! お帰りなさいっ!」


トビ「こっこっ……こっここあ……! 買ってき……っ! ごほっ! ごほごほっ!」


クロム「わあっ! 大丈夫ですか!?」


トビ「だいじょう……っぶっ……!? うあっ!? ぶっ!」


クロム「トビ!?」


 トビ、床に垂れていた油に足を取られ、転んでしまう。


トビ「いったたたた……」


クロム「あらら……。豪快に転んじゃいましたね……」


トビ「っ! ひ、姫さん……こ、ここあが……ココアがー」 号泣!


クロム「わあっ! 泣かないでくださいっ! トビは怪我はありませんでしたか!?」


トビ「ボクなんていいから……。もう一回買いに行かなくっちゃ……」 泣き続ける。


クロム「いいんですよっ。ほら、膝すりむいてる! 救急箱、どこですか?」


トビ「暖炉の隣の戸棚の一番下……」


クロム「あったあったっ。よいっしょ……」


トビ「姫さんっ! おっ女の子がスプーンより重いもの持っちゃだめっ!」


クロム「へっ?」


トビ「ボク、自分で出来るからっ! 頂戴っ!」


クロム「嫌です。ほら。座って」


トビ「姫の手が汚れちゃうよ……」


クロム「……トビ、血が苦手なんじゃ、ないんですか?」


トビ「えっ?」


クロム「だって。少しづつ血が滲んでますよ」


トビ「……平気だよ。男の子、だもん……」


クロム「そっか。いい子ですね。よしよし 」


トビ「っ! ボクもう子供じゃないよっ」 照れてる!


クロム「うん。トビは、立派な王子様ですね。キジと同じ」


トビ「キジ兄さんと、同じ……?」


クロム「そう!」


トビ「……ボクが……ボクは……」


クロム「トビ。もしかしてその顔の傷……。血を見慣れる為につけたんですか?」


トビ「……兄さんたちが、そう言ってたの?」


クロム「いいえ。私が今そう思ったの」


トビ「どうしても、外科医になりたかったんだ。父さんや、キジュリュク兄さんと同じように。沢山の人の命を、この手の持てる技術、それだけで救ってしまう。そんな人間になりたかった」


クロム「でも貴方は血が苦手だったから……」


トビ「医者として……そんなの、ただの言い訳だよ……だから――」


クロム「私はそうは思いません! はぁ……っ。貴方とキジの差が何か、教えてあげます!! それは、キジはいつだって。怖いもの怖いって言えるの! 

やりたくないことはやらねえって堂々と言っちゃうの! でも貴方は、怖いもの怖いって言うのは、それは悪だと思って蓋をして。自分だけを繰り返し傷付けてる!

貴方が自傷して同じ場所をぐるぐる回っている時にだって。キジは、なりたい自分に向かってただひたすら走り続けているんです! 傷や病気に苦しんでいる人たちを助ける為に!

気付いて下さい。あの人は外科医として天才かも知れない。でも、その弟だからって……。ッ違う……っ。貴方に外科は、向いてないっ……!!!!」


 一瞬、無音。


トビ「……ふ……」


クロム「ふ?」


シトータ「あっちゃー」 ライ 「つよっ……!」


トビ「ふえええええええええええええええええええええええん……!」


 トビ、大号泣!


クロム「ハッ……!」


トビ「わああああああ……!!」 泣きじゃくる。


クロム「とっトビ……! あの、ごめんなさい、言い過ぎました……っ!」


トビ「うふえええええええええん……!!」


クロム「トビ-!」


トビ「やっぱりボクなんて死んじゃえばいいんだ……! みんなを怒らせて! こんな自分嫌いだ!」


クロム「とっ……!」


トビ「生きていたって仕方ないんだ……!! 兄さんたちの、お荷物で!! ボクなんていらないんだ……! クロム姫……ボクは……家族を守りたいだけなのに……っ! 何も、うまく、いかないよ……っ」


挿絵(By みてみん)


ライ「トビ……!」 シトータ「トビ……っ!」


クロム「っ!! トビ!! しっかりしなさいっ!!」


 クロム、トビの右頬を叩く!!


トビ&ライ &シトータ「!!!!!!!!」


クロム「いい加減にしなさい……っ! いつまで、愛を浴びてのうのうと生きてるの! もう子供じゃないんですよ。お給料貰って! 国家資格取って! 立派な大人でしょ!? 

かっこいい男になりたくないの!? キジとライがかっこいいのは、女子供の前で、涙なんか見せないからです!! 

前を見て。今まで家族から貰った何億もの愛を……今度は貴方が、与える番なんですよ! 自分の両手を、見てください! 貴方の手にリストカットの痕がないのは、医者になりたい自分が居るからでしょう!?

両手が無ければ誰も救えないとわかっているんじゃないですか……! 貴方の夢も、現実も、いつだって。一歩目の前にあるんですよ……! トビ!」


トビ「――……」


ライ「……姫さん……」


クロム「ライ……。ご、ごめんなさい、つい手が出てしまいました……。キジだって、トビにはうんと優しくするのに……」


ライ「ううん。今まで僕らが過保護にし過ぎたんだなって、わかったよ……」


シトータ「そうですわね……。目が覚めましたわ」


トビ「……兄さんたち、まだ居たの?」


ライ「あ、う、うん……」


トビ「出てって。クロム姫と、二人にしてっ……!」


ライ「えっ!? あっ、う、うーん。わかったよー……」


シトータ「ちょっ、トビっ、押さなっ押さないでっ」


 再び鉄の扉の向こうに、二人を追い出すトビ。


クロム「と、トビ……?」


トビ「……ねえ、クロム姫。ケテラス星の人って、みんな、姫みたいに過激で眩しいの……?」


クロム「えっ!? わ、私、か、過激……か。そ、そっか。そう、です、かね……。いやー。ケテラス星の人は、大体はみんな、のほほんとしている人が多いですけど……」


トビ「じゃあ、地球の風習?」


クロム「えっ? いや、風習……? 地球人は、コミカルな人や、温厚な人、……様々ですけど。でも、みんな優しいですよ……?」


トビ「そっか。じゃあやっぱり。姫が特別なんだ……」


クロム「??」


トビ「ね。今日。泊まっていってくれるんでしょ? ここに」


クロム「えっ!?」


トビ「いいでしょ?」


クロム「で、でも何も用意してないし……」


トビ「僕の専属インドランスたちに、色々用意させるよ」


クロム「あ、あの、トビ。私……」


トビ「ボクも。もっと知りたいんだ。クロム姫のこと」


クロム「ど、どうして……?」


トビ「……ボクも。姫のようになりたい。誰かの心を変えてみたい……」


クロム「トビ……」


トビ「変わっちゃったんだ。さっき。ボク」


クロム「心が?」


トビ「そう! なんだろう、この胸の高鳴り。希望に満ちた発想。

……今まではね、この、物で溢れかえった部屋が好きだった。暗闇が好きだった。……誰かを診察する必要なんて、ボクにはもうないと思ってた」


クロム「……変わったの?」


トビ「うん……。また一から患者さんと向き合ってみたい。話がしたい。ボクが開発した医療機器を、直接使って貰って。直接、感想を聞いてみたくなっちゃった」


クロム「それは素晴らしいですね」


トビ「姫。ねえ、君と一緒に出掛けてみたい! 日の光を浴びて。外に出たい……」


クロム「っ……」


トビ「この部屋。余りにも汚いよね。……ねえ。掃除、手伝ってくれないかな……」


クロム「いいですよ! でも……。私たちだけでは……一生かかりそうな……深い山ですね……」


 トビの部屋は、かなりかなり広い。そして腐敗の森と化している。


トビ「兄さんたち……に、お願いしてみようかな……」


クロム「っ! そうしましょうっ!」


トビ「っ!」


クロム「カルク家兄弟、全員集合ですねっ!」


 トビとクロム、鉄の扉を解放し。二人で上階へのエレベータに乗り込む! 二人。笑顔で。

 トビ、各階ずつ。兄、姉、妹、弟たちの所へ。謝罪と……掃除の手伝いを願い申しながら、まわってゆく。

 全員、トビの頼みを快く引き受けてくれる。

 その夜。久々に家族全員で集まった兄弟たちは、トビのために一生懸命掃除をした。






ライ「シトーター! ゴミはこれで全部かなっ」


シトータ「わあっ。兄様っ。シーッ!」


ライ「何?」


シトータ「クロム姉様とトビ。ソファで寝ちゃったんですのよ」


ライ「あらら。すっごく仲良くなっちゃったみたいだね」


シトータ「わたくしたちも撤収しましょう」


ライ「今度クロムにお礼しないとなー」


シトータ「肩凝りの手術、やってあげればいいんでなくって?」


ライ「えっ。肩凝り酷いのかな?」


シトータ「まあこんだけ胸がでかければねえ……」


ライ「ねえ。この偽胸って。姫さんのと弾力も同じなの?」


シトータ「おいエロ兄っ! 何掴んでますのっ!」


ライ「シトータの胸カタイっ! 何!? 男!?」


シトータ「女っ!」


ライ「ほんとかなぁ……」


シトータ「ほらほら。帰りますわよ~」


ライ「じゃーねーみんな。うんうん! ありがとー! じゃねー」


 他兄弟たち。薄汚れてる。みんなやりきった顔をして徐々に解散してゆく。


シトータ「はぁぁ……。これ、明日絶対に筋肉痛ですわ……はああ」


ライ「もう歳なんだから明後日くらいに痛み出すんじゃないっ?」にこにこ!


シトータ「コロス!」


ライ「わひゃーっ」


 心地よさそうにすやすやと眠っているトビとクロム。


ライ「トビ……。よかったね……」


 兄弟たち。安堵した表情で、全員部屋を出て行く。


シトータ「……鉄の扉。撤去して欲しいって……。頭下げてくるとは思いませんでしたわ」


 シトータとライ、他兄弟たちでエレベータは混んでる為。二人は螺旋階段を昇ってゆく。


ライ「ま、男が上がったんじゃないっ? にししっ」


シトータ「随分嬉しそうですこと」


ライ「嬉しいですよー? そりゃ嬉しいですよ。弟の呪縛が解けてっ」


シトータ「……普通、あんなこと。言えませんわよ……。あんなカウンセリング。破天荒ですわ」


ライ「シトータ。クロム姫に弟子入りしたら?」


シトータ「出来るものならしたいですわよっ」


ライ「キジもああやってよくクロムに怒られてるよっ」


シトータ「ははあ。だからか……」


ライ「僕も姫さんに怒られたいなあ……」


シトータ「えええ?」


ライ「だってさ。ああやって……自分のことだけを考えて。自分のためだけに怒ってくれる人ってさ。中々居ないよ? 失敗したら姫さん、嫌われちゃうだけだし」


シトータ「そうですわよね……」


ライ「あれは才能だよ。シトータ。……いつか彼女と一緒にここで働く日が必ず来る。それまでに……」


シトータ「それまでに……?」


ライ「女磨いておけよっ★ 絶対人気取られるよっ★」


シトータ「ハラタツ!! 兄様っ! ケツ蹴ります!! ちょっとそこに立って!」


ライ「やーだよーっ!」


シトータ「こら逃げるなーっ!」


ライ「鈍足シトーター。やーいやーい」


シトータ「きいいい! もっと国王らしくしてー! ちょっ! キジュリュク兄様っ!? ああっナギ兄様っ! ライ兄様捕まえてーっ!」






 その夜。朝と夜の狭間。ふとトビが目を覚まし、隣で静かに寝息を立てて眠るクロムを見て……。


トビ「姫、さん……?」


クロム「……」


トビ「……みんな帰っちゃったのか……」


 ソファから起き上がり。クロムと自分にかけられていた毛布を、クロムに優しくかけ直してあげる。

 彼女の頬に、そっと口付けて。


トビ「ちゅっ……」


 彼女の髪をほんの少し撫でて。


トビ「……」


 地上から地下十階まで繋がっている天窓。キジが綺麗に拭き上げてくれたお陰で、月の光がきらきらと、そこには届いていた。その光を見詰めるトビ。

 ライが持ってきてくれたコーラの段ボールを開けて、一本取り出し、飲む。


トビ「んくっ……っはぁ……」


 再び彼女の隣に座って。寄り添って。

 ゆっくりと。オルゴールのように奏でる。


トビ「♪They can't stop my heart.Now get a party started alright.気まぐれに任せて。It's like wonderland.踏みだしたらalright.Then I feel like I'm dreaming……♪」


クロム「……」


トビ「姫……。ありがとう……」


 月明りの光が、二人を包んでいた。

 明日からはじまる喧噪の世界とは全く違う世界のように。きらきら、きらきら。ふんわりと輝いて。


おしまい














あとがき

お疲れ様でしたっ!! ななな かずはです。

劇中歌でトビが歌っているのは、BENNIE Kさんの、 Dreamlandです。大分前にコカコーラのCMで使われていた曲です。

キャラクタ説明。トビは十行以上あるのに、クロムとライとシトータは一行しか書けなくて。シンプルにこのままで行こうかな! とも思ったのですが、なんだか依怙贔屓感ハンパなかったので、ちゃんと書きました少しはなんとか(笑)

トビにきゅんきゅんしながら書いた第二話、お楽しみいただけたでしょうか。

一話であまり印象がよくなかったナギの話を書こうと思って挑んだ二話でしたが、蓋を開けたら可愛らしい弟君のことばかり考えていました。ごめんナギ。


久々に自由に脚本を書く喜びを胸に抱いています。

ご意見ご感想、お待ちしてますっ。

ではでは~お次は三話でお会いしましょうっ!

今回ははじめて、挿絵機能を使用してみました。色々とリクエストくださると嬉しいです。

色々とおまけも置いておきますね。ありがとうございました~!

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)


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