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名無し姫シリーズ番外編、2016年最新作!! 一話。4:2理想。瑠璃とキジ出会い編。約60分台本。

名無ななぎみの不始末クロスオーバー作品

・番外編・acoustic・瑠璃夢雉雷時雨凪

(名無し君本編とは全く違う異次元の物語。本編とは、設定や世界観にずれがあります)

作:七菜かずは


【名無しぎみきみを愛す理由】


■登場人物(※理想、男4:女2)

★カズマ・瑠璃 【瑠璃】 ♂

・29歳。黒ぶち眼鏡。黒短髪。身長165センチ。細身。

真面目。幼い頃から、クロムに恋心を抱いている。彼女の前では良く微笑む。

ケテラス星北大陸リゼル城の皇子であったが、そのことを隠して生きてきた。

子供や女性が苦手。中々他人に心を開かない。やわらかい関西弁。


★カルク・キジュリュク・ゼット 【キジ】 ♂ 

・水星にある巨大な病院の偉い医師。水星では、王様の次に偉い、大臣という肩書き。29歳 。幼い頃クロムに一目惚れしてから、ずっと彼女を想い続けている。彼女の前では緊張して、声が少し大きくなったりしてしまう。

正義心が誰よりも強く、熱い。何でも出来て頭もいいが、周りに溶け込むためへらへらしたりしてバカなふりをしている。

今までの人生、周りに気が合う人間が中々おらず。いつも家族や兄弟、側近のインドランスと一緒に居ることが多かった。

髪は金髪。チャラく見える。身長高め。180センチ。

試験官ベイビー。兄弟が二十人以上居る。


黒凪くろなぎ ゆめ (クロム・ロワーツ) 【クロム】 ♀

・メインヒロイン。29歳。姫カット黒髪長髪の女性。母性のある心優しき元姫。

ケテラス星中央大陸、アイゼル城966番目の王女。

過酷な過去があり、今や姫としての生活は消滅しているが、現在は一般人として幸せに平凡な生活を地球で送っている。歌と絵が得意。メイドカフェで働いている。

インドランス(※アンドロイドのようなもの)のカウンセラーになる為、日々勉強を頑張っている。


★カルク・ライデイン・オメガ 【ライ】 ♂

・キジの実の兄。キジのお守役。30歳。おっとりしていて物凄く優しい。常識人。

シンプルなメガネをかけている。水星の第一王子だったが、王位継承をしたばかり。家族想い。

キジよりも少し身長高め175センチ。ふわふわ色素の茶髪。


★しぐれ ♀

・キジを守護する専属インドランス。頭がいい人間に憧れている。特にクロムへの憧れは神級。

年齢不詳。インドランスの女の子。五歳児くらいの外見。和装ナース。色素の薄い髪、ツインテール。

あほな子。元気っ娘。


★カルク・ナギュルルク・レイディー 【ナギ】 ♂

・キジとライの兄弟の一人。次男。オカマ。オネエ。

兄であるライと弟のキジを溺愛している。小児科医長。

紫長髪。ピンクのメッシュが入っている。

身長はライと同じくらい。ひょろい。立派な大人。

よそ者が嫌い。ツンデレ。クロムへの自身の好意に、気が付いていない。


CAST

瑠璃:

キジ:

ライ:

クロム:

しぐれ:

ナギ:






(※「キジ」の発音は、鳥の雉と同じです)


●シーン1 【古聖賢】


 ――開幕。

 医療大国水星。

 沢山のビルが並び、空には幾つもの小型機や巨大魚が飛び交う。

 空と大地と海の境目は無く、辺りはきらきらと白く蒼く輝いている。

 中央に聳え立つは、この星で一番高いビル。皇族たちが働く最高医療施設の最上階の一室。

 そこを訪ねるのは、とあるアンドロイド――インドランスの小柄な少女。しぐれ。

 彼女を待っていたのは、この国の王、カルク・ライデイン・オメガ。


ナギ「ぐー……がー……ぴー」(大好きなソファで気持ちよさそうに寝ている)


しぐれ「失礼致しましっ! (深々と頭を下げて。……上げて。笑顔で)っライしゃま。お呼びでしょうか? しぐれ、参りましたっ」


ライ「ああ……。(椅子から立ち上がって)しぐれ、来たね。まあ座って。お茶、淹れるね?」


しぐれ「いえ! わたくしはここで結構でし。すぐに外科に戻らないと……。それで、殿下。どうなしゃいましたか?」


ライ「えーと、ずばり聞きたいんだけど、しぐれはキジが姫さんのことをどう思っているのか、知ってるよね?」


しぐれ「えっ? はっはっ、はいっ!」


ライ「うんうん」


しぐれ「しゅきでしっ!」


ライ「うん、うん(苦笑)」


しぐれ「だいしゅきでしっ!」


ライ「うん。ねえ、キジュリュクって、クロム姫以外に誰か女の子を好きになれると思う?」


しぐれ「はぁ、それは無理だと思いましよ」


ライ「どうして?」


しぐれ「キジュリュクしゃまの兄様あにさまであるライデイン殿下 (でんか)も知っての通り。一度決めたら何がなんでもやり通すお方でしので」


ライ「まあ、そうだね」


しぐれ「にゃので。キジュリュクしゃまは、例え何番目かの王配になろうとも。クロムしゃまを生涯愛すると思いましっ」


ライ「成程ね。まあ、キジュリュクが小さい頃から一番近くで世話をしてきた君がそう言うのなら、そうなんだろうね」


しぐれ「ライしゃま、一体お話というのは……」

ライ「あぁ、いや。今日からうちの心療内科に一人、凄い奴が入って来るんだって」


しぐれ「え? は、はぁ……」


ライ「名前は瑠璃・カズマ。そろそろ君の脳内データベースにも彼の情報がインストールされるはずだよ?」


しぐれ「えっと……。あっ。知っている人でし」


ライ「え、本当に?」


しぐれ「はひ。会ったことがありまし 。メンテナンスを、丁寧にやっていただいたことがありまして」


ライ「元々、月でインドランスの研究をしていたらしいんだけど」


しぐれ「その前は、地球に居た方でしよね?」


ライ「え。そうなの?」


しぐれ「地球人、では、ないのでしか? あっ……カズマ・瑠璃の情報の受信、完了でしっ。えーと……。あれ? 過去の部分、不明、と書かれている所が多いのでしゅね?」


ライ「うん。あ、でも、姫さんと同じ。ケテラスせいの人間なんだよ?」


しぐれ「へぇ~。そうだったんでしか! 珍しいでしね。地球人じゃないのに、長く地球に滞在していたなんて……?」


ライ「しぐれ。今回君に頼みたいのはね。このカズマ・瑠璃くんと、君の主人であるキジュリュクを、この施設内で接触させないよう監視……又は妨害をして欲しいんだ」


しぐれ「え、どうしてでしかっ!?」


ライ「理由は……その、い、言えない、んだけど……」


しぐれ「お二人が喧嘩するかもと思うのでしか!?」


ライ「えーと……」


しぐれ「心配なのでしね?」


ライ「そう……なんだよねっ。……ははっ」


しぐれ「瑠璃しゃんも、姫さまのことを愛しているようでしたからねぇ……はぅ」


ライ「そうらしいんだよね」 

(クロム姫への淡い恋心を抱いているのは、ライも同じだが、それは周りの誰も気付いていない)


 ライはいつも、誰に対しても同じように接し、同じように微笑む。


しぐれ「ううううーん」


ライ「だからさ。二人が出会ったら。バトルが勃発しちゃいそうじゃない? って。うちの兄弟たちも皆心配しててね」


しぐれ「う、うーん! ~まあ、キジュリュクしゃまは、喧嘩っぱやい所がおありでしゅからねぇ……」


ライ「困るんだよね。この瑠璃くんて子、えーと、ケテラスの、北大陸の王国では名の知れた貴族の末裔らしいんだよ」


しぐれ「ええーっ!? マジでしゅか!?」


ライ「まじまじ。でもオフレコね」


しぐれ「そっそんなのもし万が一に大事おおごとにでもなったらケテラスと水星との連結医療契約ががががががぁ!?」


ライ「そう! それが無くなるのがこわいんだよ! そんなの大損害! うちはただでさえお金がかかる商売をしてるのに、大スポンサーであるケテラスにもし手を打ち切られちゃったら」


しぐれ「こっっわい!!!!」

ライ「こわいでしょ!?」

しぐれ「こわいでし! こまるでし!!」


ライ「だから協力して!」


しぐれ「ははははははい! わかったでし! 絶対にお二人を会わせないよう見張りまし!」(敬礼っ!)


ライ「ありがとう。……はぁ……。まさか、キジュリュクの昇進が決まった直後に、瑠璃くんの異動先が丁度うちになっちゃうなんてなぁ……。ついてないよ」


しぐれ「人事を決めるのは月のお偉いさま方でしもんね……」


ライ「うん。僕たち水星人は、月にも太陽にも頭は上がらないからね……」


しぐれ「わっかりましたっ! 殿下! 早速キジュリュクしゃまの護衛を強化致しますでしっ! しつれいしましー!」 (走り去ろうとする! 一礼し、部屋から出て行く)


ライ「ありがとーっ! 頼んだよ~」(手を振り彼女を見送る)


しぐれ「ッ!? ハワーッ!?!?!?!?」


ライ「へっ!? どどうしたの、しぐれ……? ッ!?」


 しぐれとライの目線の先。廊下の曲がり角で、楽しそうに話をしているキジュリュクと瑠璃の姿があった。

 瑠璃は普段滅多に表情を顔に出さないが、キジの前では少し緩んだ顔を見せていた。


しぐれ「ライしゃま、あああああすこに居るのは……」(汗だく)


ライ「キジュリュクと……」


しぐれ「カズマ・瑠璃しゃま!?」


ライ「あちゃー。一足遅かったか……」


しぐれ「なんか話してましゅ!」

ライ「とにかく行こうっ! 二人を引きはがすんだっ!」

しぐれ「ラジャッ! きーじゅーりゅーくーしゃまーっ!」


 ライとしぐれ、瑠璃とキジに全力で駆け寄る!!


キジ「……あはははっ。お前、オモロイな!」


瑠璃「そっくりそのまま返すわ」


キジ「ぶははっ」


瑠璃「そうだ、名前――」


キジ「ああ、お前まだ名札ないんだっけ? 俺、キジュリュク! カルク・キジュリュク・ゼット。キジって呼ばれてるかな!」


瑠璃「カルク……? カルクって……カルク・スフィアと何か――」

キジ「えっ?」


しぐれ「きーじゅーりゅーくーしゃまーっ!」


キジ「あ? しぐれ?」


しぐれ「きじゅりゅくしゃまっ! 今日は二時から面会がありましゅのでっ! お急ぎくだしあっ! (ライ「そうそう!」) 

その後は内科の手伝い! その後は外科で手術! その後も手術! またその後も手術で!!」


キジ「おいおい、ちょっとは休ませろよ……。おいっ。ちょっ、引っ張んなって! にぃちゃんも何!?」


ライ「いや~。あはは」


 しぐれ、頑張ってキジを引っ張り続けるがあまり効果は無い。


瑠璃「しぐれ?」


しぐれ「ゥ!! あ、あはははっ! ごきげんようでございましっ! 瑠璃しゃま! お久しぶりでしねっ!」


瑠璃「ああ。調子、良さそうだな」


しぐれ「は、はひっ!」


キジ「何お前、診て貰ったことあんのか?」


しぐれ「は、はひ」


キジ「月でか?」


瑠璃「うん」 しぐれ「はひ」


キジ「そっかっ」


瑠璃「あ、俺は……。カズマ」


キジ「カズマ?」


瑠璃「カズマ・瑠璃……」


キジ「担当どこっつったっけ?」


瑠璃「インドランスのCMP」


キジ「インドランスのCMP!? はははっ。地下かよ! やっぱおもしれぇやつっ! 物好き!」


瑠璃「まあよう言われるわ」


キジ「あはははっ! 俺、外科! の、上? になったんだっけ? まあどの科も大体全部見てんだ。でもインドランスのケアは専門にしてなくってさ。色々教えてくれると助かる」


瑠璃「了解や」


キジ「趣味も合いそうだしなっ」


瑠璃「さっきのは驚いたわ」


しぐれ「うがーっ! きじゅりゅくしゃまっ! 行かないとっ! いーかーなーいーとーっ!!」


キジ「うっせえなぁしぐれタコっ!」


しぐれ「たこ!?」


キジ「今話してんだろうがっ!」


しぐれ「ふぇぇ……」


ライ「キジュリュク。外科、今混んでるみたいだよ。助けに行ってあげると嬉しいんだけど?」


キジ「え、あー。そっか。わかった。まぁ、戻ってやるか。……行くぞ、しぐれ!」


しぐれ「はひっ!」


キジ「……あ。(立ち止まり振り返る)……なぁ、えーと、カズマ・瑠璃!」


瑠璃「?」


キジ「さっき言ってた薬の材料。必要なら、俺のアトリエから勝手に取ってけよ! 九階の一番奥の部屋!」


瑠璃「え?」


ライ&しぐれ「「ええっ!?」」


キジ「っと。鍵! ほいっ」(自分のポケットから取り出したアトリエの鍵を瑠璃に投げる)


瑠璃「っ! (鍵を受け取る)ええんか?」


キジ「いーのいーの! 俺は目ぇだけでロック解除出来るし! 好きに使っていーぜ! じゃなっ」


 キジ、エレベーターのボタンを押す。


しぐれ「(青ざめ)……凄く仲良くなっちゃってる……」(ウイスパー)


ライ「(青ざめ)そうだね……」(ウイスパー)


しぐれ「まずいでしよ? ライしゃま!」(ウイスパー)


ライ「非常に、まずいね……」(ウイスパー)


キジ「(エレベーターの中に入って)おいーっ!? しぐれ! 行くぞ!!」

しぐれ「はっはひーっ! でっではっ! 殿下、失礼致しましっ! 瑠璃しゃまっ! 後日改めてご挨拶に伺いましーっ!」


 一瞬静かになる。


ライ「……ふぅ」


瑠璃「ライデイン閣下……」(深々と頭を下げる)


ライ「え、あ、えっと……。カズマ・瑠璃、くん? ああっ。頭上げてっ。あ、はじめまして。ようこそ、ウンディーネへ」(右手を差し出す)


瑠璃「あ……はい」


 優しく握手し合う。


ライ「そう言えば、どうして最上階に?」


瑠璃「あ、キジュリュクに連れてこられて……。昔から俺が探しとった薬草図鑑を、あいつが持ってるって言っとったから……」


 彼の左腕には、大きな図鑑が抱えられていた。


ライ「そうだったんだね」


瑠璃「朝から、この施設内を案内してもろたんです」


ライ「へ、へえ~……そう。もしかして……全館?」


瑠璃「はい」


ライ「あー。だから、色んな話、したんだ?」


瑠璃「? はい。科のことも色々聞きました。これから、お世話になります」(会釈する)


ライ「うん。君のことは月のおじい様たちやインドランスたちから聞いているよ。非常に気さくで優秀な学者だって」


瑠璃「そんな、まだまだ勉強段階で……俺なんて。どうしてこんな凄い医療機関に配属されたのか、正直……」


ライ「ははっ。僕もね、まだまだ自分は学生気分で。王位継承した自分が信じられないんだ。……まあ、たまたま国王と血が繋がっていて、最初に生まれた男が僕だったから」


瑠璃「たまたま……」


ライ「そう。たまたま。機会があった。運があった。それだけ」


瑠璃「俺も……。っ……いや」


ライ「? あ、ごめんね、引き止めちゃって。さっきの、僕の弟なんだ。何か失礼なことしなかったかな?」


瑠璃「いえ。むっちゃ親切にしてもらいました」


ライ「そっか。僕はいつもこの階のそこの部屋か、内科に居ることが多いから。何か困ったことがあったらいつでも訪ねて来て?」


瑠璃「え。王も診察するんですか?」


ライ「うん。人手足りてないからね……」


瑠璃「何か役に立てることがあれば、俺にもいつでも仕事をください」


 ライ、エレベーターのボタンを押してあげる。


ライ「あはは。カタイなー。でもそういう所、いいね。でも歳もほとんど変わらないし。気兼ねなくしてよ。そのほうが僕も楽だし。ね?」


瑠璃「はい」


ライ「じゃあね。また」


瑠璃「失礼します」


 瑠璃、エレベーターで地下に下りていく。

 瑠璃が下りて行ったエレベータじゃないほうのエレベーターから、クロムが出てくる。彼女はすぐにライに気が付き、近付くが、ライは気付かない。


ライ「はぁ……困ったなぁ。ふっ……まあでも、あの二人、そう簡単に自分の好きな相手の話なんてしないかな……?

心配事しなくたっていい……って自分に言い聞かせないと、胃が痛くなりそうだ……。あぁあ~」


 クロム、ライの後ろに立つ。


クロム「ライ? お腹痛いんですか?」


ライ「う? ……体調っていうか心労っていうか」


クロム「心労?」


ライ「えっ――」(振り向く)


クロム「王様って、大変なんですね……」


ライ「ッッッ!? ひっ姫さん!? なんでここに!? どうしたの!? どこか怪我でもしたの!?」


クロム「えっと。い、いえ。キジに呼ばれて来たんです」


ライ「キジュリュクに?」


クロム「はい。ライの即位を祝いに来てほしいって」


ライ「えー!? 今ぁ!?」


クロム「いまっていうか……」


ライ「タイミングう……!」

クロム「悪かったですか? 今夜、三人で一緒に鍋食べようなって言われたんですけど……」


ライ「えー!? 僕そんなの知らないよ!? あいつまた勝手に決めて!」


クロム「ごめんなさい。にぃちゃんには俺から言っとくからってキジに言われていたから、つい連絡をせずに来てしまいました。私……、今日は帰りますね」


ライ「えっ!? い、いや! 折角来てくれたのに! 待って。姫さん。帰らないで」


クロム「でも」


ライ「僕のお祝いで来てくれたんでしょ?」


クロム「は、はい。でもライが忙しいなら……」


ライ「ううん。忙しくないよ! っていうのはちょっと嘘だけど……」


クロム「ふふっ。やっぱり王様って、大変なんでしょうね」


ライ「まあとりあえず部屋入ってよ。お昼も一緒に食べてくれる?」


クロム「はい! 是非! おなかぺこぺこです!」


ライ「じゃあ部屋に持って来させるから。……もし良かったら、その間。いつもみたいにデータの整理、少し手伝ってくれないかな?」


クロム「わかりました!」


 ライ、自分の作業部屋のドアを開け、クロムを誘導する。


ライ「はいどうぞ。お姫様。お入りください?」


クロム「失礼します!」


ライ「何が食べたい?」


クロム「パエリア!」


ライ「えっ? あははははっ!」


クロム「なんですか?」


ライ「そこ普通、なんでもいいですって言うところじゃないかな?」


クロム「ハッ! す、すみません! なんでもいいですよ!」


ライ「ふふ。違うよ。そこは姫さんの魅力」


クロム「え?」


ライ「待っててね。最高のパエリアを注文するから」(笑うのを我慢しながら)


クロム「ぱっパエリアじゃなくってもいいですよ~!」


ライ「もしもし? すんご~い美味しいパエリアをお願い。クロム姫が来てるんだ。うん、……うん。そうだね。他にも何かあると嬉しいかな」(ビル内にあるレストランに通信をして)


クロム「ちょっとー! ライが食べたいものはないんですか!?」


ライ「あは。僕が食べたいものは、姫さんが食べたいものだよ。いつだってね」


クロム「え……え?」


ライ「ふふ」


クロム「あっ、わ、私お茶淹れます!」(奥にあるキッチンの戸棚を開けて)


ライ「ありがと」


クロム「あっ。フレーバー増えてるっ。どれにします!?」


ライ「姫さんと同じの!」


クロム「えーっ!?」


ライ「同じのがいいんだよっ」


クロム「もーっ。じゃあ、じゃあ……。アップルジンジャーかなぁ……」


ライ「いいねっ」






●シーン2(キジ&ライ&しぐれ&ナギ)【不確定】


 その夜。最上階の一室。

 晩御飯の後片付けをしているナギ。絨毯の上で寝っ転がり、雑誌を読んでいるキジ。


キジ「っはぁ~!? 俺も異動ッ!? なんで!?」


ナギ「なんでじゃないわよ。いいでしょ。しかも異動じゃないわ。掛け持ち、って言ったの」


キジ「掛け持ちだぁ~!?」


ナギ「そうよ。好きでしょ。人の顔面いじくるの」


キジ「ええ~っ! せめて形成がいいよー!」


ナギ「ダーメっ! あんたが整形に居ると女子の受診が増えるんだし。いいでしょ」


キジ「よくねーっ! にぃちゃ~んっ! たすけてー! ナギがいじめるーっ!」


ライ「むにゃむにゃ……」 しぐれ「すかぴー……」


 ソファで眠ってしまっているライ。と、しぐれ。


ナギ「あら」 キジ「にぃちゃん寝てるっ!? しぐれまで!」


ナギ「にぃさま。風邪ひくわよ」


 ライとしぐれにタオルを掛けてあげるナギ。


ライ「ひめさん……ふぁぁ……」 しぐれ「おなかいっぱいにならないでしゅ……むにゃ」


ナギ「そう言えばクロム姫、さっきまで来てたんですって?」


キジ「あ、うん。俺が呼んだ。にぃちゃん喜ぶかなって」


ナギ「泊まらして行けばよかったのに」


キジ「あいつ明日仕事らしくってさ」


ナギ「忙しいのに来てくれたの? あの子、相変わらずね」


キジ「うん。それになんか……にぃちゃんとしぐれ、様子が変でさ」


ナギ「あんたがカズマ・瑠璃なんてここに呼ぶからでしょ」


キジ「えっ? 駄目なの!?」


ナギ「駄目っていうか、ここ最上階はあたしたちカルク家のプライベートな空間が多いんだから。あんまり階級の低い学者や医師を簡単に呼ばないでよ」


キジ「いいじゃん! 俺のダチなんだよ!」


ナギ「ダチ……? あんた本気?」


キジ「え、なんで?」


ナギ「なんでって……敵じゃ……」(口を押える)


キジ「ナギ、瑠璃のこと、なんか知ってんの?」


ナギ「知らない!」


キジ「じゃあなんで毛嫌いすんだよ!?」


ナギ「別に! 理由は無いって!」


キジ「んっだよ意味わかんねぇ!」


ナギ「うるっさいわね! あんた、今まで歳が同じの医者なんて会ったことなかったから、だからってあんな奴気にしてんの!?」


キジ「はぁ!? そうじゃねーよ!」


ナギ「単細胞!」


キジ「どっちが!」


 二人、喧嘩を続ける。


ライ「う、う……ん? なーにー? うるさいなぁ……」


キジ「にぃちゃんッ!! ナギなんとかしてくれよ!」 ライ「ふぁっ?」


ナギ「にぃさま! もうっ! このバカ、ちゃんと言ってよ! もうカズマに会うなって!」 ライ「え……」


キジ「だからなんでなんだよ!!」


ライ「あー、ナギ……もう……あの」


ナギ「っあんたがクロムを好きだからよ!!」


キジ「はぁ……ッ!?」(照れる!) 

ライ「ナギ!!」


しぐれ「(起きる)ハッ! ……ん? はれ? 姫さまは?」


ナギ「だから! 争われると困るの!」

キジ「はー!? だからなんだよ! もうホンットに意味わかんねえって!! なんで俺が! た、確かにクロムのことはその、俺は、俺は……っ!」


ナギ「それだけじゃないのよ!!」

ライ「ちょっ! ナギ! 待って!」


ナギ「クロムには、瑠璃を恨む理由があるのよ!」


キジ「恨む……?」


ナギ「理由は言えないけど!」


キジ「なんっでだよ! 言えよ! 納得出来ねーだろ!!」


ナギ「やだ。もう帰るわ。寝るっ」


キジ「おい! ナギ!」


ナギ「じゃあねっ。にぃさまっ! ご面倒お掛けしてすいませんねっ!」

ライ「ほんとにね」 しぐれ「はわわ……」

ナギ「でも、いつかバレるんなら今も後も一緒でしょ! おやすみなさい!」


ライ「ははは……。ナギ。その口今度僕がじっくりと縫合してあげるね……」


ナギ「余所者は嫌いよ。だからカズマ・瑠璃も嫌い。 水星の先進医学を、別の星の奴に安売りしたくなんかないわ」


 ナギ、部屋を出て行く。


しぐれ「ナギしゃま……」


キジ「腹立つ……ッ!」


ライ「キジュリュク、ナギは……」


キジ「わかってるよ! なんか理由、あんだろ」


ライ「あんまり怒らないであげて」


キジ「わかってるよ。全部自分で確かめる。俺行くわ。じゃーな、兄貴」


 キジ、走って出て行く。


ライ「あっ。ちょ、キジュリュク! 待って! ……あーあ」


しぐれ「……ライしゃま」


ライ「しぐれ……」


しぐれ&ライ「「作戦失敗……」」






●シーン3(キジ&瑠璃&クロム)【不一致】


 九階。キジのアトリエ。

 キジ、自分の瞳で扉のロックを解除する。中へゆっくりと進む……。

 中は薄暗く、大図書館並みの広さと、大量の本。地面には、色んな国の珍しい薬草や花が咲き乱れ。一番奥 には研究用の様々な機材が置かれている。

 歩き進めると、花畑の所にある螺旋階段に腰掛け、真剣に本を読んでいる瑠璃の姿があった。


瑠璃「……ふぅ……」


キジ「っ。瑠璃」


瑠璃「っ? ……キジュリュク?」


キジ「ふっ。なんだよ。この俺のアトリエ、気に入ったのか?」


瑠璃「あ……。鍵、返すの忘れとったと思て……。ごめん」


キジ「いいよ。そのまま持ってろって。今後も好きに使えよ。……さーて……。俺も、そろそろにぃちゃん見習って、ここの整理すっかなぁ~」


瑠璃「なぁ。その花と、この薬草、見たことないわ」


キジ「あー。俺が作った新種だよ。新薬開発の為にな」


瑠璃「ほんまか。凄いな。んな才能まであるんか」


キジ「え!? あっ、えっ!? あっ。ええっ!?」


瑠璃「? なんや?」


キジ「い、いや。俺、男に褒められることってねーから……」


瑠璃「なんや。照れたんか。色んな才能があるんに、勿体ないな」


キジ「才能……? んだよ、昨日今日会ったばっかで、俺、なんかしたっけ?」


瑠璃「この部屋の沢山の植物が、こんなに奇麗に咲いとるんは、お前が丁寧に世話して愛したからやろ。

それに、ここにある本、どれも汚くならんように、糊のあとがつかんように、弱い付箋で全部チェックしてあるし……」


キジ「う、うん、まー……。俺変なとここだわっちまうっつーか」


瑠璃「朝から一緒に地下から順に回らしてもろて。どこ行っても、キジに会うとみんなが笑って出迎えて……。その人望の熱さに、憧れた……」


キジ「~ッ!? なっなんだよっ!?」


瑠璃「わるい。きもいか? 正直な気持ちなんやけどな……」


キジ「きっきもくない! なんでも言えよ! 好きに喋れよ!!」


瑠璃「プッ……」


キジ「!? な、なんだよ!?」


瑠璃「図鑑も、辞書も、どんな本にも、全て。変な落書きと個人的な感想、突っ込みが書いてあっておもろいわ」


キジ「え!? あーっ! パラパラ漫画書いたことある!」


瑠璃「パラパラ漫画? それはまだ見つけてへんわ。探さんと……」


キジ「いや! 探さなくてええやろ!」


瑠璃「訛りうつってんで」


キジ「おいっ! 勝手に俺の落書きで楽しむなぁっ!」


瑠璃「お前が勝手に入って荒らしてええ言うたんや」


キジ「荒らしてええとは言ってねえ!」


瑠璃「……勉強になる。キジュリュクの本。天才の努力の爪跡が、血と汗が、滲んどる。……医療への執着心。お前みたいな奴が、人類を救って行くんやな……」


キジ「っ!」


瑠璃「この部屋は、宝の山やなぁ」


キジ「っ……瑠璃」


瑠璃「うん?」


キジ「俺の兄弟に、お前と関わるなって、言われたんだ……」


瑠璃「……」


キジ「どうしてなのか、話してくれないか……」


瑠璃「キジ……」


キジ「今日クロムを部屋で見た時、お前すっげえ驚いた顔してたな」


瑠璃「ああ……。知り合いやったから。まさかここで会うとは思わんで」


キジ「でも、クロムはお前に会えて滅茶苦茶嬉しそうだった」


瑠璃「……十代の頃、付き合うてたんや」


キジ「えっ」


瑠璃「お互い仕事が忙しくなって、全然会えんくなって……別れたんや。俺も月での研究に没頭しとったし、担当したインドランスが病気持ちばっかで、介護の手が離せなくて。

彼女も地球でのカウンセラーと喫茶店の仕事が多忙過ぎて……」


キジ「嫌いあって別れた訳じゃ、ねえのか」


瑠璃「うん」


キジ「そっか……。でも、その時のことで、“恨まれてる”……のか?」


瑠璃「恨む? ……俺を、夢が?」


キジ「夢?」


瑠璃「ああ……。彼女の」

キジ「地球名ちきゅうなか」


瑠璃「……夢が俺を恨んでる。兄弟にそう言われたんか?」


キジ「うん……。俺は、お前のこと……結構気に入ってたんだけど……。でも、その……。お、俺も、クロムのことが……」

瑠璃「好きなんやろ」

キジ「うっうんっ! えっ!?」


瑠璃「ふ。今日見とってわかったわ。夢を見る目……俺もお前も、あいつ以外は無理なんやろ……」


キジ「……瑠璃……」


瑠璃「夢が俺を恨む理由はな、まあ、腐るほどあるわ」


キジ「えっ」


瑠璃「……」


キジ「ッる、る、瑠璃!」


瑠璃「?」


キジ「お前は、地球人じゃねえのか?」


瑠璃「……俺は……」


キジ「……っ 」


瑠璃「ケテラスの、リゼル出身や」


キジ「リゼル?」


瑠璃「夢の……クロム姫の国、アイゼルとずっと敵対しとった国や」


キジ「えっ。お、同じ星の中で、国と国が対立……? なんだそれ。仲良くしろよ! 同じ星の、仲間だろ!?」


瑠璃「仲間か……。いや。ケテラスは、水星みたいに、ちっこくて、一つに統一しやすい環境やないんや。……色んな国が、戦争をし合って、殺し合ってた時代がずっと続いてた……」


キジ「なんでだよ! 大陸は分かれてても、祖先はひとつ! 同じ星の人間は、家族だろ! 同じ血が流れて。同じ空を見上げて! 争う理由なんか……っ!」

瑠璃「平和主義の水星人にはわからんかも知れんけど!」

キジ「平和主義の何が悪い!!」

瑠璃「悪くない!! 正しいんよ! でも……でも俺の親も夢の親も、戦争をすることで国の政治に蓋をして、金を回して人を売って武器を開発して……!」


キジ「っざっけんな!! お前らみてぇな腐ったタマの一族がバカみてえに居るから! 俺ら水星の仕事が減らねえんだ!! 菌ばっか無駄に宇宙にバラ撒いて。

どんどん複雑で意味不明な新病を増やしてんのはお前らなんだな! よくわかったよ!!」


瑠璃「……キジ……」


キジ「同じ歳のやつで、俺と同じように……思ってると思ったのに……。お前、クロムを傷付けてたのか……ずっと……」


瑠璃「否定はできひん……」


キジ「俺は……っ! ちいっちぇ頃にアイゼルの救護遠征に行ったことがあって……。そこで、はじめてクロムに会って。

いつも、幼いながらにして強ぇ魔法が使えるあいつは戦士として戦に出てた……。毎日、酷ぇ怪我で帰って来るのに……。

それでも笑顔で他の兵士を一生懸命励まして……。自分が、国の全ての痛みを背負ってるのに……ッ! 無理して、無理して」


瑠璃「っ……」


キジ「俺が、もっとよく効く薬を創らなきゃ。こいつは死んじまうと思った。俺が守ってやんねえとって……思ったんだよ! だから好きになったんだ!」


 二人の脳裏には、幼い頃出会った時のクロムの笑顔や泣き顔が、フラッシュバックされていた。

 昔から。彼女の見せる様々な表情や行動に、何度惹かれたか。


瑠璃「俺も、同じや……」


キジ「ッ!! どこが同じだ!! ッ!!!!」


 キジ、瑠璃を殴る!!


瑠璃「っ――」


キジ「同じじゃ、ねぇだろ……っ! お前のせいで、あいつの身体は……っ! 何個、切り傷、火傷……っ。あると思ってる! 俺が奇麗に治してやるって言ってんのに! 

あいつは、いいって言って……ッ! 俺に気ぃ遣って! 女なのに! お前、あいつの腕と、腹と、膝に! ! どんだけ酷ぇ跡があるか見たことあんのか!!」


 言いながら。再び、何度も彼を殴る。


瑠璃「……っ……」


キジ「出て行け……。もうお前とは会わない……。地下から一階への往復以外は許さねぇ!! 

二度と面見せんな!! クロムにも近付くな!! てめぇはインドランスの介護と監視だけやってろ!!」


瑠璃「ッ……わかった……っ」


 瑠璃、その場を後にする。

 ――入れ違いで、クロム。部屋をノックして。


クロム「(ノックする)……あの、キジ?」


キジ「ッ!? ……っ」


 キジ、ドアを開ける。


キジ「クロム!? なんで」


クロム「あの、私、どうしても借りたい本があったのを思い出して、戻って来て……。そしたら、キジの声がして……」


キジ「っ! クロム!」


 クロムを抱き止める。


クロム「っ。き、キジ?」


キジ「もう二度と……こんな風にお前を抱き締めることも、触れることもさせないから」


クロム「え……?」


キジ「どうしてお前は、瑠璃が敵国出身だって知ってて、あいつと一度付き合ったりしたんだ……」


クロム「っ」(突然の話に驚き、固まる。俯き)


キジ「クロム……?」


クロム「私、は……」


キジ「俺、瑠璃に、もうお前に近付くなって言ったから!」


クロム「えっ……? なんでそんなこと……」


キジ「お前の為だろ!」


クロム「わ、私そんなこと頼んでない! 瑠璃に謝ってください!」

キジ「えっ」

クロム「さっきの音、っもしかしてキジ、瑠璃をたたいたんですか!?」(彼から離れる)


キジ「なっ……。お、俺は……お前が――」


クロム「私がどうして戦争の時の身体中の傷跡を消さないか、……キジにはわかりませんよね……」

キジ「っそれは……だって、何度理由を聞いてもお前は答えてくれな――」

クロム「瑠璃の家族や国は、大量の麻薬接種のせいで頭のネジが飛び、戦争や殺し合いをパーティのように楽しむ人たちばかりでした。

そんな周りの存在に脅かされ。自分だけがまともでいるのがどんなに苦痛だったか……。

大切な人たちが豹変して行くのを、ずっと間近で見て。全ての痛みに耐えて。耐えて。……いっそ、自分も頭がおかしければ、楽になれたのに……!」


キジ「クロム……」


 クロム、ストールを取って。


クロム「見て下さい……。この、私の鎖骨の刺し傷の痕。これは、十九年前。貴方が熱心に癒してくれた、忘れられない傷」


キジ「ああ……。覚えてる。結構深くて。血が止まらなくて」


クロム「これは、瑠璃が私を刺した傷なんです」


キジ「ッ!? ……だからお前はあいつを恨んで……」


クロム「違います!! ……私の心臓を狙えたのに。わざとずらして。瑠璃は……敵である私に懇願しました。

はやく死にたいって。自分を殺して欲しいって。もう……大切なものを愛せなくなるのは辛すぎるって……っ。

自分も、他人も、武器も、国も、未来、全て。信じることが出来なくて。そんなの……っ希望が一欠けらも無いって!」


キジ「……っ」


クロム「私も瑠璃も十歳でした。幼くて、弱かった……。でも彼が一番の犠牲者なんです。……私たちの親たちのせいで、身も心も戦争の道具にされたんです。

だから、っ……私はあの戦争の傷跡を残すんです!! 瑠璃の痛みを忘れたくないから!! あの人は今も自分を責めるけど……。私だけは味方でいたいの。

私ばかり守られて。味方や仲間がたくさん居て……。でも瑠璃は一人きり。リゼルはほぼ全滅だったのに、アイゼルの被害はリゼルと比べたら……っ。まだ……。

……キジ……。誰も、どんな人間も、瑠璃を責めることなんて出来ないはずです! 彼の真の痛みを、他の人間が理解することなんて出来ないのだから……!!」


キジ「……俺……」


クロム「あんなに優しい人はいないの……。唯一、私の痛みをわかってくれる人なんですっ……!」


キジ「っ――! ぁ……謝らないと……」


クロム「キジ……」


キジ「……ッ!! ちょっと行ってくる! クロム、ごめん!!」


 キジ、彼のもとへ全速力で走る!!


クロム「……瑠璃……」







●シーン4(キジ&瑠璃&ライ&しぐれ&ナギ&クロム)【共有】


 地下一階。インドランス寮。


ナギ「ちょっとしぐれ!!」


しぐれ「はひーっ!?」


ナギ「アンタさっき持ってきた薬、配合間違ってたわよ! (しぐれ「ゥェッ!?」) 

いつものやつって言ったでしょ! 間違えないでよねぇっ!」(しぐれの両ほっぺたをつねりまくる)


しぐれ「ふはひーっ! ふゅみまふぇんーっ!」(騒ぎ続ける)


ライ「ちょっとナギ……。神聖なインドランス寮で大声出すのやめてよねー」


ナギ「なによぉ。いいでしょ。このビルも病棟も、あたしたちん家みたいなもんなんだから」


しぐれ「ナギしゃま。ここの施設 はケテラス星と冥王星の寄付金や医療税で維持されておりましゅので……」

ナギ「うっさいっ!」


 瑠璃、落ち込んだ様子で地下に戻ってくる。


瑠璃「……」(溜め息を吐く)


ライ「あれっ? 瑠璃くん!」


瑠璃「っ……!」


ライ「やあ。さっきは一緒に夕ご飯食べてくれてありが……」

瑠璃「っ。すいません。インドランスたちのメンテナンスがあるので、失礼します」


 瑠璃、逃げるように奥へ去って行ってしまう。


ライ「あれ?」

しぐれ「いっちゃいましたでしね……」


 そこへキジが駆けつける。


キジ「瑠璃ッ!!」

ライ「あれ?」

しぐれ「キジュリュクしゃま?」

キジ「瑠璃、待って!! おい待てよ!!」

瑠璃「っ……!」


 キジ、瑠璃に駆け寄る。

 彼は、振り返らない……。


キジ「あ、あの」

瑠璃「なんや。(目を合わせないよう、振り返り。鍵を渡そうとする)……お前のアトリエの鍵、持ってきてもうたわ。返すな」


キジ「っ持ってろよ!!」(鍵を突っ返す!)


瑠璃「え?」

しぐれ&ライ&ナギ「えっ!?」


キジ「(頭を深く下げて!)さっきはごめん!! よく知りもしねえで、殴ったりして……俺勝手で。本当にごめん 。……何も、知らなかったんだ……」


瑠璃「……」


キジ「瑠璃……」


瑠璃「……割と、すっきりした」


キジ「え?」


瑠璃「誰も責めてくれへんから。ずっと、苛立ってたんや」


キジ「何言ってんだよ……。お、俺、今クロムに全部聞いて……」


瑠璃「行き場の無い雑念が、消えんくて……どうしようもなかった……」


キジ「……瑠璃……」


瑠璃「ありがとうな」


キジ「なんで……」


瑠璃「夢は俺をたたいてはくれへんから……。本当は彼女だって誰かに当たりたいはずなのに。もう、敵軍の生き残りは、俺しか居らんのに」


キジ「瑠璃……。お、俺。お前のことちゃんと聞きてぇんだ! お前の口から!」


瑠璃 「なんで……」


キジ「えっ。なんで……かな」


瑠璃「さっき、もう会わん、言うとったやろ?」


キジ「それは誤解したからで……!」


瑠璃「誤解ちゃうわ」


キジ「いや、誤解した!!」


瑠璃「してへん」


キジ「俺が悪かった!!」


瑠璃「悪ぅないて」


キジ「頑固者!!」


瑠璃「お前こそ!」


キジ「なんだよっ!!」 瑠璃「なんやっ!!」

ライ「瑠璃くんっ!」 ナギ「キジュリュク!」


 喧嘩を続ける二人を引き剥がしにかかる、クロムとしぐれとライとナギ。


クロム「はいっー! 終了っ!」 しぐれ「やめてぇーっ!」 

ライ「落ち着いてっ!」 ナギ「やめなさーいっ!」


瑠璃&キジ「ッ! !?!」


キジ「く、クロム……!?」

瑠璃「夢……」


クロム「二人とも。もうやめて下さい」

ライ「そうだよ、大人気ない」

ナギ「病院なんだから静かにしなさいよね?」

ライ「ナギが言う……?」

ナギ「うっさい」

しぐれ「って言うか、ここはインドランスたちのベッドがたくしゃんありましゅから! ほんとに静かにしないとだめでしっ!」


キジ「ご、ごめん……」 

瑠璃「すんません……」


 クロム、瑠璃に近付いて。彼の頬に触れて。


クロム「瑠璃? 口元……。やっぱり怪我してる……」

瑠璃「っ! へ、平気や!」

クロム「待って! ちゃんと見せて!」

瑠璃「大丈夫やって」

クロム「駄目です!」

キジ「おっ俺が治療する!」

瑠璃「はぁ!? いらんわ!」

クロム「ちょっと! 瑠璃っ!」

キジ「瑠璃!」


 クロムとキジ、瑠璃の腕を引っ張る。


瑠璃「ちょっと……うざいわ……お前ら……」


クロム「ふぇ!?」

キジ「ッ!」


瑠璃「……キジュリュク、俺は……」


ナギ「ねえ。クロム。あんた今日帰らなくていいの?」

ライ「明日仕事なんだよね?」

クロム「あ……。明日は本当は会議があったんですけど……。さっき連絡が来て。会議が来週になったので。明日はお休みになりました」

しぐれ「そうなんでしか!?」

キジ「っじゃあ泊まって行けよ!」 ライ「じゃあ泊まって行きなよ!」 

しぐれ「泊まって行ってくだしゃいましっ!」 ナギ「泊まって行けば?」


クロム「へ」


キジ「いいだろ!? 俺の部屋で寝ていいから!」

ナギ「いやそれはダメでしょ!」 ライ「それはだめだね」

しぐれ「クロムしゃま! わたくしの部屋を使ってくださいましっ!」

瑠璃「……っ」(奥の部屋へ逃げようとする)

クロム「っ。瑠璃! 私、今日は瑠璃の部屋に泊まります!」(瑠璃の服を両手で引っ張って)

瑠璃&ライ&キジ&しぐれ&ナギ「はあ~っ!?」


瑠璃「な、なんでやっ」

クロム「キジに殴られた所、心配だからっ! 夜中に痛み出すかも知れないしっ!」

瑠璃「や。だいじょう……」

ライ「姫さん。瑠璃くんは引っ越して来たばっかりで部屋まだ片付いてないんじゃないかな?」

クロム「っじゃあ丁度いいです! 片付けも手伝いますっ!」

ナギ「ちょっと我が愚弟!」(キジの尻を蹴る )

キジ「フガッ! な、何!?」

ナギ「あんたも瑠璃ん所泊まりなさいよ」

キジ&瑠璃「はあ!?」

ナギ「だってあんたが殴ったんでしょ」

ライ「そうだよ。責任取って荷物の整理手伝いなよ」

キジ「んならしぐれも手伝えよ!!」

しぐれ「嫌でし」

キジ「なんだとーっ!?」

しぐれ「しぐれは22時からあんまさんが部屋に来ちゃうのでし」(※マッサージ屋さんのこと)

キジ「お前ババアかよ!」

瑠璃「俺の意思は……」


クロム「さあ! 瑠璃の部屋に行きましょうっ!」

瑠璃「あああ……」

ライ「瑠璃くん。ドンマイ」

ナギ「面白そうだから部屋に監視カメラ仕掛けていい?」

瑠璃「いい訳ないやろ」

ナギ「だって問題が起こるかも知れないじゃない」


瑠璃「あの、夢……。悪いんやけど、泊まるんは、物理的に無理や」


クロム「え?」


瑠璃「俺、まだ部屋無いねん」


クロム「え?」


ライ「部屋、ないの?」


瑠璃「はい」


ナギ「えっ? どっかマンション契約しておかなかったの!?」


瑠璃「異動の話が急やったんで……」


ナギ「いやいや。それでもだったらホテルくらい……」


キジ「俺の部屋使えよ!」


瑠璃「え?」


キジ「ベッド余ってるし! 部屋、広いし!」


ライ「確かに」

ナギ「いいわねそれ」


瑠璃「ちょっと待って……」


クロム「瑠璃の荷物は?」


瑠璃「研究室の前の通路に、一時的に置かせてもろてるけど……」


クロム「っ運びましょうっ!」


ライ&ナギ&キジ「おーっ!」


瑠璃「ちょっ……」


クロム「キジの寝室がある階って、アトリエがある階と同じですよね?」


キジ「おうっ。九階!」


ナギ「あったあった……。荷物、これね?」


クロム「しぐれっ。エレベータのスイッチ押して下さいっ!」

しぐれ「はいっ!」


クロム「大きいものから運び出してくださいっ!」


ライ&ナギ&キジ&しぐれ「了解っ!」


ライ&ナギ&キジ&しぐれ「どっこらしょ、どっこいしょ、どっこらしょ、どっこいしょ……」


瑠璃「あー……」


クロム「瑠璃が、自分の生活に無頓着だから。こうなっちゃったんですよっ?」


瑠璃「……否定は出来んけど」


クロム「でもよかった。キジの部屋なら。別にいいですよね?」


瑠璃「いや、俺は……」

クロム「私も一緒に泊まっても」

瑠璃「えっ!?」


ナギ「オホンッ……。クロム姫、ちょっと来なさい」


クロム「はいっ? なんですか? ナギ」


ナギ「(白衣のポケットから取り出したメモに殴り書きしたものを、クロムに手渡して)

……ん~、とっ。よし。ハイ。これを、カズマ瑠璃の耳元で囁けば。イチコロよ! 全ては貴女の思いのまま!」


クロム「? これってどういう意味ですか?」


ナギ「彼には伝わるからいいの! さあGO!」


クロム「……了解です」


 瑠璃、諦めてみんなと一緒に荷物の運び出しを行う。


クロム「瑠璃、瑠璃」


 おいでおいでと手くばせする。


瑠璃「な、なんや?」


 クロム、彼にうんと近付き。耳元で囁く。


クロム「“キジが眠ったら、……AとBしようね”?」

瑠璃「ッ!!?!」


 瑠璃、高熱を出しそのまま荷物の下敷きになる。


クロム「ッきゃあ!? 瑠璃!?」


キジ「ワッ!? 瑠璃どうした!?」


しぐれ「瑠璃しゃん!?」


ナギ「アララー」


ライ「瑠璃くん!?」


 皆で力を合わせ。瑠璃と、瑠璃の荷物をキジの寝室に運ぶ。






●シーン5(フルメンバー)【心底】


 真夜中。キジの部屋。大きなベッドの真ん中で、瑠璃が眠っている。


瑠璃「……(すやすや眠ってる)……」


クロム「ありがとう……。キジ。丁寧に手当てしてくれて」


キジ「何言ってんだよ。俺がつけちまった傷だからな。当然だろ」


クロム「でもこの薬、凄いですね。もうよくなってる。この軟膏、なんて言うんですか? 私買おうかな」


キジ「……クロムジーナっていうんだ」


クロム「へー……聞いたことないな」


キジ「そりゃ、そうだろうな。……数日使えば、大抵の怪我はキレイに治るよ。ほら。やる」(軟膏を彼女に手渡す)


クロム「古い傷でも? ありがとう」


キジ「(ソファに腰掛けて)いや。古い傷は無理だな。でも、古い傷も、最近は簡単な手術で……」

瑠璃「ん……んっ」


 瑠璃、寝返りを打つ。


クロム「瑠璃? 起きたんですか?」


瑠璃「(寝息を立てる)……」


キジ「寝てるな」

クロム「寝てますね」


キジ「あー……。俺、出てこうか?」

クロム「えっ?」

キジ「二人でいたいんじゃねーかなぁと、思って……」

クロム「はい?」

キジ「(立ち上がり)だ、だからさ! 俺、今日は兄ちゃんの所で寝るわ! じゃあなっ!」(部屋を出て行こうとする)

クロム「ちょっと待ってッ!」(キジの首ねっこを引っ張る!!)

キジ「グエッ!?」

クロム「どうして出て行くんですか!」

キジ「だっだから、お前らの邪魔するのも気が引けるって言うか……」

クロム「ここはキジの部屋ですよ」

キジ「うんまあそうなんだけど……」

クロム「何気を遣っているんですか。そんなチャラチャラした顔と髪して」

キジ「んんんんっ!?」

クロム「イメージとキャラが合ってないですよ」

キジ「なんかすっげーディスられてる気がする……」

クロム「さ。部屋も少し片付いたし。もう日付も変わりそうですし。お腹も空いたし。私……夜食でも買いに行ってきますねっ」

キジ「元気だなぁ」

クロム「何か食べたいものありますか?」

キジ「瑠璃は何が好きなんだ?」

クロム「キジに聞いてるんですけど」

キジ「俺はいーよ」

クロム「飲み物とかもいらないんですか?」

キジ「そこの冷蔵庫、なんか入ってねーかな」

クロム「冷蔵庫? 開けますね?」

キジ「うん」


 クロム、大きな冷蔵庫の上段を開けてみる。


クロム「んっ。……あっ。プリン!」

キジ「しぐれかな」

クロム「あっ。コーラとビール!」

キジ「あっ、飲む!」

クロム「あっ。枝豆!」

キジ「食べよう!」

クロム「あっ、……これは……?」

キジ「何?」

クロム「なんかプニプニしてる丸いものが入っていそうです……」

キジ「?」

クロム「めちゃうすビックボーイ0.02ミリと書いてあり……」 キジ「ッきゃあああああああああああ!!?!」


 クロムがまじまじと見ていた小さくて四角い包みを全力高速で奪うキジ。


クロム「なんですか!? うるさいです! シーッ!」

瑠璃「う~ん……(寝てる)」 

キジ「ごめえん!」

クロム「それなんなんですか?」

キジ「いやお前使ったことあるだろ!」

クロム「ないですよ!」

キジ「えっ……!? ……えっ……?」


 瑠璃を真顔で見つめるキジ。


キジ「あの……。君たちは何年付き合ってたの?」


クロム「三日です」


キジ「ええーっ!? なに!? その、女子高生が、

同じクラスの男子に突然ノリで付き合おうって言われてそれがなんとなく嬉しくて付き合ってみたけどやっぱりなんか違ってヤッパ無理ィ~って言っちゃったみたいな期間!?」


クロム「あはは」


キジ「いやあははって!」


クロム「冗談ですよ。さ。枝豆食べてビールを飲んだら寝ましょう」


キジ「どこからどこまでが冗談だったんだろうか……」


クロム「はいっ。キジの分! どうぞ」(缶ビールを手渡す)


キジ「ああ……ありが、と」(釈然としない)


クロム「(ソファに座って)で。女子高生ってなんですか?」


キジ「(彼女の隣に座って)そこ突っ込む? そこから突っ込む?」


クロム「学生?」


キジ「君は通信だったから知らないのかな……」


瑠璃「んー……。……? あれ……」


クロム「あっ。瑠璃?」


 瑠璃、起き上がる。


瑠璃「夢……」


クロム「怪我、もう痛くありませんよね?」


瑠璃「えっ……。あ、ああ……」


クロム「よかった」


キジ「瑠璃……」


瑠璃「キジュリュク……」


キジ「悪かったな。嫌だろうけど、俺の部屋使ってくれよ。部屋探す間くらいはさ」


瑠璃「ええんか……?」


キジ「うん」


瑠璃「申し訳ないな……」


キジ「さっきの話だけどさ……。俺、もう誤解してねえから……」


瑠璃「……うん。……でも、どう思ってても、ええよ」


キジ「なんで……」


瑠璃「俺の国が、俺が、夢を傷付けたんは、事実やから。……だから」


クロム「瑠璃!」(瑠璃のほっぺたをつねる)


瑠璃「ふがっ」


クロム「もう、その話は私の前でしないでって……前に言いましたよね?」


瑠璃「ふぉふぇん(ごめん)……」


クロム「私は……少し後悔しているんですよ?」


瑠璃「……何を……?」


クロム「貴方が、もっと孤独になりたいと言った時。簡単に手を放してしまったこと」


瑠璃「……」


 ベッドに座っている瑠璃の後ろにまわり、彼をそっと抱き締める。


クロム「ごめんなさい……。でも、もう過去のことで傷付かないで……」


瑠璃「夢……」


クロム「私も、もう、名無しであることから……国のことから、みんなのことから、逃げないから……」


瑠璃「……うん……」


クロム「(彼の肩をぽんと叩いて)さっ! じゃあ、私。しぐれの部屋に行きますね!」


 クロム、身支度をする。


キジ&瑠璃「えっ!?」

キジ「お、おい……!?」


クロム「瑠璃。このキジの部屋、こんなに広くてゴージャスなんですから。住まないのは勿体ないと思いますよ?」


瑠璃「えっえっえっ」


クロム「はじめ、水星に異動になったって聞いた時は凄く驚きましたけど。でも、カルク家の方たちはみんないい人ばっかりです! お仕事、頑張って下さいね。

私も、いつか医療の役に立てるように……。カウンセラーの勉強、もっと頑張ります。今は……瑠璃もキジも、私の未来の先で、走っていてください!」


キジ「クロム……」 瑠璃「夢……」


 扉を開けるクロム。


クロム「では。失礼しますね。お邪魔しました。おやすみなさいっ」


キジ「ちょっ……! クロ……っ!」


 扉が閉まり。クロム、あっけなく出て行ってしまう。


キジ&瑠璃「……」


 クロム、扉に寄りかかり。一息吐く。


クロム「……ふぅ。……上手く行くといいんですけれど……」


しぐれ「姫しゃま」


クロム「あら、しぐれ。と……ライと、ナギ?」


ライ「姫さん、帰るの?」


クロム「はい。私が居たらあの二人の距離、縮まらないでしょうし」


ナギ「そうかしら? クロムだってずっとここに居てもいいのよ?」


クロム「あはは。それは無理ですよ。今の仕事と家もありますし。私、今地球の教会で、障害を持ったインドランスの子供たちの世話もしているんです」


ライ「えーそうなんだぁ」


ナギ「ご立派ね。流石聖女」


しぐれ「クロム様に診て貰ってるインドランスがいるんでしゅか……」


クロム「そうですよ」


しぐれ「いいなぁ……」


ライ「気を付けて帰ってね」


クロム「はいっ。……ライ。改めて、即位おめでとうございます」


ライ「ふふ。ありがとう」


クロム「私何も贈り物を用意出来なくて……。昨日、キジにお鍋の誘いの通信を受けてそのまますぐに転移装置に乗り込んでここへ来たので……。ごめんなさい」


ライ「何言ってるの! 何もいらないよ!」

ナギ「そうよ~」


クロム「何か、欲しいものはないんですか?」


ライ「ええええっ!?」(クロムの笑顔と発言についときめいてしまう!! 君が欲しいと言えない)


クロム「え?」


ライ「あー……。ははっ。そう、だなあ……?」


ナギ「みんな、あんたが欲しいのよ!!」(ドドン!)


クロム「はい?」 ライ「わーっ!! ナギ!? 殺す!!」


ナギ「生まれてはじめて超温厚な兄に殺すとか言われた!」


しぐれ「しぐれもクロムさまと一緒に暮らしたいでしっ!」


クロム「あらあら。嬉しいですね」


ナギ「クロム姫。テレポータまで送るわよ」


クロム「あ、いえ。大丈夫です」


ナギ「だーめ。しぐれ、行くわよ」


しぐれ「あいあいさっ!」


ライ「姫さんといつも一緒なんて。心臓が持たないよ……」


クロム「ライ、なんですか?」


ライ「いやっ! 何も!」


ナギ「そうだ。クロム姫。一つ聞きたいことがあるんだけど~」


ライ「ナギ! 余計なことばっかり姫さんに言わないでっ」


ナギ「なによ。素朴な疑問よ! 素朴なギ・モ・ン!」


クロム「なんでしょう?」


ナギ「あんたって……。結局、誰が好きなのよ」






●ラストシーン(フルメンバー)【進歩】


 そして再びキジの部屋。

 大きなキングサイズのベッド二つが並ぶ寝室。

 そこに横になっているキジュリュクと瑠璃。

 二人、枕を反対にして横になり、天窓から見える満月を見ている。

 瑠璃はドアがある方角。

 キジは窓がある方角を頭にしている。

 二人とも仰向け。


瑠璃「……」


キジ「……」


キジ「寝た?」


瑠璃「……いや」


キジ「結構ぐっすり寝てたもんなー」


瑠璃「このベッド、いくらするん? めっちゃ寝心地いーわ……。包まれるここちよさ……」(ゴロゴロする)


キジ「こないだのボーナスで勢いで買ったんだよ。ブチギレて」


瑠璃「ボーナス……?」


キジ「700万くらいかな」


瑠璃「ブブフっ!! えっ!? そっちも!?」


キジ「こっちのは10万くらいの安っちーやつ……。兄貴が初任給で買ってくれたやつ……」 瑠璃「アホかっ!! 俺がそっちで寝るわ!」(飛び起きる!)


キジ「いや。俺そっち使ってねーし……。なんっか硬さがビミョーでなー。こっち気に入ってんだ」


 ライのことを一番信じ、信頼しているキジ。ライから貰ったものを大切にしている。


瑠璃「勢いで買ったって……?」


キジ「あー。患者に腹立って?」


瑠璃「それ……どんな……」


キジ「んー。まあ色々? 下らねぇことの積み重ね。注射が痛ぇとか薬がすぐに効かねぇとかナースがブスで通院する気にならねぇとか診察時間が短か過ぎるとか? かな」


瑠璃「あー」


キジ「一番むかつくのはファンのやつらかなぁ……」


瑠璃「ファン?」


キジ「うん。兄ちゃんとかナギとかってさ、特に。顔とか外面いーだろ? モテるんだよ。女から。だからわざと怪我してくる奴とか結構居て」


瑠璃「あぁ……だからむっちゃ混むんか。来た時、外まで患者が並んどったの見て。ここは異常やなぁって思ったけど……」


キジ「ああ。しつこ過ぎる奴とかは出禁にして。他の病院紹介したりしてっけど。でもそれでも諦めず来る奴はいるんだよな」


瑠璃「水星は水星で、そういう問題も抱えとるんか……」


キジ「六男の弟がさ、そういうのもあって。自分で目のまわりとか頬に傷入れて。今は地下十階に引きこもって医療機器の研究だけやってる。会議とか家族の前にすら出てこねぇ」


瑠璃「そんな人もおるんか……」


キジ「まー兄弟の俺らから見てもちょっと不気味なやつだからなー。瑠璃も最下層にはあんま近付くなよ。あそこに出入りしてんのは、あいつ専属のインドランス数体だけだし」


瑠璃「っ……。わかっ……た……!」


キジ「え? 何? 行きたいの!?」


瑠璃「どんだけ変わっとる奴かって興味はあんなぁ」


キジ「ええ~っ!? やめとけって! あいつ話もろくに出来ね~し!」


瑠璃「でも、ライやキジュリュクの兄弟なんやろ?」


キジ「う、ん……まあ、な」


瑠璃「兄弟が多い言うとったけど……。正確には何人居るん?」


キ ジ「……さあ……?」


瑠璃「えっ?」


キジ「俺が知ってるだけでも、20人以上は居るかな」


瑠璃「そんなにか!?」


 キジ、枕元の側にあるお菓子BOXからポッキーを取り出し、食べる。


キジ「うん。全員、女の腹で育ってねえけどな。父親の精子は一緒。先月死んだこの星の元国王」


瑠璃「兄弟全員、この病院で働いとるん?」


キジ「うん、まあほとんどは。親父の血のせいか、医療に貪欲、ってのが兄弟共通の……。……あっ」


瑠璃「? なんや?」


キジ「そういやぁ、なんで姉貴の名前知ってたんだ?」


瑠璃「姉貴?」


キジ「カルク・スフィア」


瑠璃「ああ。俺が小さい頃……ケテラスせいで、リゼルとアイゼルを行き来する医者をやっとったから……」


キジ「えっ!? マジかよ!?」


瑠璃「うん。おっきなリュック担いで、一人でよく働いとった。鮮明に覚えとる。俺も怪我をよく診てもろたことがあんねん。それに、あの時彼女、アイゼルの騎士と、婚約したばっかでなぁ……」


キジ「そっかぁ! ずっと行方不明で。心配してたんだよ!」


瑠璃「そう、やったんか……。あの人水星人やったんか」


キジ「でも! 元気ならよかった! 俺の母親みてーなもんだったからさっ! そっかー。結婚してんのかっ! よかったーっ! 子供は居んのかなっ?」

瑠璃「えっ……」

キジ「ライにいちゃんよりも、全然年上だし! 頼りになる姉でさ。それに親父の第一子だったから……すんげー溺愛されてたはずなんだけどなぁ……。

一回くらい、帰ってくりゃあいいのにな……。会いてぇな……。スフィア姉……」


 瑠璃、黙って起き上がって。重い口をゆっくりと開く。


瑠璃「……もう、生きてへんよ」


キジ「えっ?」


瑠璃「十九年前、クロムを地球に逃がす為に……戦乱の中、死んだんや。リゼルの兵に銃で撃たれて。……即死やった」


キジ「……っ」


 キジ、起き上がり。ベッドの端に座る。


瑠璃「……ごめん……」


キジ「お前のせいじゃない……」


瑠璃「キジュリュク……。やっぱり俺……ここに居るべきじゃ……」


キジ「なんでだよ」


瑠璃「俺もお前も、知りたくもないもの知って、無駄に傷付いて。俺が話さなければ……」


キジ「っ知るべきことだ! お前 、俺に気ィ遣うな! 俺は姉を誇りに思ってる!」


瑠璃「そっか……」


キジ「兄貴たちには言わないでくれ……。俺よりも、沢山思い出があって、沢山愛情があるんだ……」


瑠璃「――わかった……」


キジ「姉ちゃん、クロムとも面識があるのか……」


瑠璃「亡くなる半年くらい前から。クロムの側近として働いてたらしいで」


キジ「そうか……」


瑠璃「……ショックやったよな」


キジ「まあ、な。でも、お前が来てくれてよかった。一生捜索するとこだった」


瑠璃「……キジュリュク……」


キジ「瑠璃、(ばふっ、とベッドに身を預けて)俺さ……。……もっとお前と、話してぇな」


 二人、また横になる。今度は、頭を同じ方向にして。


瑠璃「……俺も」


キジ「……お互い、今まで色んなことがあってさ。それで、同じ奴を……」


 好きになって――。と、言えなくて。

 クロムの笑顔を、思い出して。

 眠気が深くなって。


瑠璃「……」 キジ「……」


瑠璃&キジ「おやすみ……」


 二人、同じタイミングで眠りに落ちる。






 数週間後。病院の食堂。医師たちや職員や患者たちで賑わっている。


ナギ「あ~。お腹空いたっ。やあっとご飯にありつけるわ~」


しぐれ「あっナギしゃま~。こにちは~」


ライ「はろー。今日食堂混んでるね?」


しぐれ「そうでしゅねえ。ライしゃまご機嫌うるわしゅう」


ナギ「ちょっとお兄様、見てよあれ!」


ライ「んー?」(周りに居るきゃぴきゃぴナースたちに手を振られているので、微笑んで手を振り返してる)


 ナギが指差した方向には、瑠璃とキジがいて。二人仲良く昼食を取っているようだった。


ライ「キジと瑠璃くん? また一緒に居るね」


しぐれ「朝昼晩、瑠璃しゃんと一緒にご飯食べるの、当たり前になったんでし」


ナギ「え~? やっぱそうなの? 気が合うのねえ」


ライ「あははっ。前僕に買ってくれたベッド、役に立ってよかったよね」


ナギ「お兄様がジベタリアンのお陰でございましょ~?」


ライ「ふふっ。僕、やっぱり畳が好きなんだよねえ……」


ナギ「キジュリュクが言ってたけど、瑠璃って前地球で着付けとか美容師とかやってたこともあるみたいよ!」


ライ「へえ~っ! 意外! 瑠璃くんって、何でも出来るんだねえ……」


ナギ「あたしの髪もセットして貰おうかしら……」


ライ「ナギ、瑠璃くんに何回か意地悪したから、嫌われてるんじゃないっ?」(キラッキラした笑顔で)


ナギ「そんな超爽やかに言わないでっ! ま、まあキジュリュクがそんなに仲良くやりたいってんなら……アタシも仲良くしてやってもいいかなって思ってやってもいいかなっていうかそのー」


ライ「何々? 超めんどくさいっ」(キラッキラした笑顔で)


ナギ「ちょっと兄さま!? やめてそんな素敵な笑顔で兄弟見下すのっ!」


ライ「さってと。今日は何食べようかな~?」


しぐれ「しぐれは今日はカツ丼でしっ!」


ライ「おっ。いいね~。じゃあ僕も……。カツ丼一つ下さいっ!」

ナギ「あっあたしはきつねうどんっ! くださいなっ!」


 カツカレーを食べているキジ。


キジ「兄ちゃんたち、うるっせーな……」


 エビピラフと水餃子を食べている瑠璃。


瑠璃「(もぐもぐ……)」


ライ「そう言えば、明日また姫さん来るんでしょ?」


しぐれ「はひ。健康診断でし」


ライ「それ僕が全部担当してもいいのかなぁ~♪」


ナギ「駄目に決まってんでしょっ!」


ライ「ええ~っ!? なんでえ~」


しぐれ「明日はライしゃまはケテラスで一日会議が入ってましたよね?」


ライ「知らないなぁー」


しぐれ「サボっちやダメでしよっ」


ライ「はいはいはい」


ナギ「ぐぬぬ……。これ以上嫌われない為に、瑠璃にいいところ見せないとっ! 

頑張るっ! るるるるr瑠璃っ! あの。隣座ってもいいかしらっ!? アタシも一緒にご飯食べたいワッ!」 ライ「おー」


 五人、同じテーブルに座る。


瑠璃「食べ終わっちゃった……」

ナギ「ギャワン!!」


キジ「瑠璃、俺ももう行かねーとっ。じゃなー」


瑠璃「うん。また夜な」


ナギ「なによあんた達ッ付き合ってんのー!?」


キジ「はあ? 何言ってんだよっ!」

キジ「同じ部屋なだけっ!」 瑠璃「ルームメイトやで」


ナギ「結局キジュリュクの部屋にずっと居るのっ!?」


瑠璃「あー」


キジ「いいんだよっ! 部屋代ももったいねーし! 料理うめーし! 掃除もマメにしてくれっし! 博識だしっ!」

しぐれ「(上記キジの台詞半分以降からちょっと喰って)今まで会ったどんな研究員の方よりも、インドランスのメンテナンスが精巧で正確で丁寧で気持ちいーのでしっ! 

前に会った時よりも、格段に腕が上がっているのでしっ!」


瑠璃「ふぁ……」(自分の話だと思ってない。眠そう)


ナギ「あんたたち仲良過ぎてキモーイ!」


瑠璃「んあ、普通やで」

キジ「せやで! 普通やで!」


しぐれ「で。結局お二人は、姫様を取り合って毎晩バトルしているのでしか?」


瑠璃&キジ「しねーよ」


ライ「よくテレビゲームしてるよね~。いただきま~す」


しぐれ「ほうほう」


ナギ「仲良過ぎよ!! いただきますっ!」


ライ「でも喧嘩もよくしてるよ? 昨日なんて、刺身で一番うまいのはどこだ! ここだ! みたいなので……」

ナギ「ああそうですかっ! もうっ! もういいですっ!」


キジ「兄ちゃん。行ってくるなっ!」

瑠璃「行ってきます」

ライ「はいは~い。いってらっしゃ い。診察と研究、頑張ってねー」


 瑠璃とキジ、自分の働くべき階へ向かう。

 二人とも最近、互いを刺激し合い、いい影響になっているよう。 


ライ「あの二人、いい顔つきになってきたね」


しぐれ「なんででしょうか?」


ライ「それはやっぱり、同じ女の子を、求めているからじゃない? ……ねっ」


しぐれ「……っそれって、凄い相乗効果でしっ! ふふっ。ではライしゃまっ。しぐれも、いってきましゅっ!」


ライ「はい。いってらっしゃい」


ナギ「で。結局はぐらかされちゃったけど。ライ兄様、……聞いたの?」


ライ「姫さんのこと?」(ナギと目は合わさない)


ナギ「そうよう。一体誰が好きなのか!」


ライ「やっぱりそれは普通に考えて瑠璃くんじゃないかな」


ナギ「えーっ!? そんなのつまんないじゃない!」


ライ「そう?」


ナギ「兄様も!」


ライ「なに?」


ナギ「自分に素直になったらどーお?」


ライ「ナギもね」


ナギ「アタシ?」


ライ「僕気付いてるよ」


ナギ「兄様……?」


ライ「ナギ自身、まだ自覚はないかもだけどね」


ナギ「……アタシ、好きな人なんて居ないわよ?」


ライ「そ?」


ナギ「そうよーう。アタシが好きなのは兄様よ」


ライ「それは光栄だね」


ナギ「クロム姫の一族って、代々、何十人も王配を迎えるのが慣わしなんでしょ?」


ライ「そうらしいね。沢山の男を同じように全力で愛する……。地球じゃ何故かNGらしいけど、ケテラスやクレラス、うちの星も冥王星も。一妻多夫って全然常識的な話だよねぇ」


ナギ「まあよく聞くわよね。でも、兄様がそうなる訳にはいかないものねぇ……」


ライ「いやー。もしそうなったら、ナギに国は任せるよ♪」


ナギ「やだ! 何よ!? 冗談やめてよ!」


ライ「……ねえ。本当の話、していい?」


ナギ「こっここで!? い、いいけど……いいのかな」


ライ「僕さ」


ナギ「う、うん」


 そのにっこり維持。癒し系王子様フェイスに、ナギは少し恐怖を覚える。


ライ「姫さんと結婚出来るんなら、何番目かの王配に入ってもいいかなって、本気で思うよ。例え水星の医療国家が……崩れたとしてもね」


 その目は嘘をついていなかった。

 言葉を失うナギ。


ナギ「……兄様……」


ライ「ご馳走様」


 ライ、食器を片付ける為立ち上がる。


ナギ「兄様! (ライにしか聞こえないように呟く)水星のことを一番に考えているんだと思ってた……」


ライ「ナギ。僕の守護星座、忘れたの?」


 その微笑みが、崩れることはない。


ナギ「……ピラニアだっけ?(笑)」


ライ「おしい。……貪欲な龍と、虎だよ」


ナギ「……あ、ははっ」


ライ「じゃあね。また後でっ」


 ライ、仕事場へ戻っていく。


ナギ「……あたしが、……っ」


ナギ「王には勝てない……訳よね」


クロム「……ナギ?」


 ナギの後ろに立つ、クロム。


ナギ「あらっ。クロム!? 二週間ぶりっ! どうしたの? 明日健康診断で来るとは聞いてたけど」


 二人とも再会を喜ぶ。クロム、麦わら帽子を取り、真っ白で可愛らしいワンピースのスカートを揺らし。ナギの前に座る。

 クロムとナギ、食堂の中で一際目立ち、周りから黄色い視線を送られる。


クロム「今日限定の食堂のメニューがどうしても食べたくって……」


ナギ「あら。そうだったの? やだっ。連絡くれれば、それ確保しておいたのにっ」


クロム「いえいえ。私も、仕事がいつ抜けられるかわからなかったので……。それに、たくさんアイスが乗ってるスペシャルデザートらしいから……」


ナギ「えっ。あ、あれ?」(食堂の端に貼ってあるポスターを指差して)


クロム「あっ。あれです!」


ナギ「あんなの食べるの!? 食べきれるのっ!?」


クロム「大丈夫ですっ! 晩御飯も朝御飯も抜いてきましたからっ!」


ナギ「やる気満々じゃない……!」


クロム「よしっ。行ってきますっ!」


ナギ「うんっ! いってらっしゃいっ!」


クロム「(売店に駆け寄って)……あのっ! 本日限定特別スイーツくださいっ! ……えっ? アイスの味選べるんですかっ!? 

えっと、……じゃあー……かぼちゃと、抹茶と、バニラと、あと……杏仁と、チョコと、バナナと、イチゴとシナモンと、キャラメルでっ……! 

えっ!? ソースも選べる!? ああ、どうしようっ! 迷うなぁ……」


ナギ「楽しそうねぇ……」


 クロムが店員さんと楽しそうにしている横顔を見て、胸がぎゅっと痛くなるナギ。


ナギ「痛っ!! ……? な、……なに……? なんなの、この胸の痛みは……」


クロム「ありがとうございますっ! ……なーぎーっ! みてくださーいっ!」


ナギ「わあっ! 危ない危ない危ない危ないっ! クロム姫、走らないでっ!」


クロム「へへー。一緒に食べましょうっ! あーんしてくださーい。はーい」


 胸の痛みに死にかけるナギ! 全身が熱くほてる。吐きそうになる!


ナギ「あっあっあっあっあの!! ウププッ! いいいいいいいらないっ!!」


クロム「ふぇ? どうしてですか? 甘いもの好きですよね? いや~これが半額なんですよっ? 今日だけ! 

んっ。んー! あまーいっ。ほらほら。ナギ。一口でも二口でも、ど・う・ぞっ?」


ナギ「はああっ! しぬーっ!! 誰か助けてーっ!? しぬーっ!!」(クロムに近付かれドキドキし過ぎて訳がわからなくなって泣きじゃくる)


クロム「ナギっ!? どっどうしたのーっ!?」


 激しい音楽と共に、幕が下りる。

 しぐれが下手から出てきて、一礼。顔を上げ、話す。


しぐれ「……かくして。これがはじまりの物語。クロム姫とそのまわり。我があるじたちの恋と人生の急行列車は、発車したのでしたっ。

これから、瑠璃しゃん、クロムしゃま、カルク家の人々とは、どうなっていくのでしょおかっ!? 彼女を愛す理由……。

はてさていやしかし今日のところはこの辺でっ。さよおならー! 次回、またどこかでお会いしましょおーっ!」





おしまい





2016年10月9日夜執筆開始。2016年10月19日18時38分執筆完了。




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