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議題二『この学校の良いところを教えてください』

前回とは違うキャラも含めてグループディスカッションします。

皆さんも自分の高校や大学で考えてみてください。

 都内にあるけど決して賑やかではない場所にある私立高校。偏差値も平均より少し高いくらいのこの学校に、他の学校にはない特殊な部活が存在していた。

 その名はGDグループディスカッション部。その部室の扉を開けて意気揚々とホワイトボードに何かを書き込む女子生徒がいた。彼女はボードの一番上を埋めると満足げに席に着く。


 数分後、部室には男子三、女子二人の五人が集まった。

「あれ? 綾ちゃんは?」

「今日は風邪でお休みですよ」

 部長から一番席の遠い男子生徒が答える。それに部長から一番近い席の男子生徒である衣笠が驚く。

「あれ、数原と灰咲って同じクラスだっけ?」

「そうですよ」

「てっきり数原と発目が同じクラスだと思ってた」

 数原の向かいに座る女子生徒が衣笠の発言を元気よく否定する。

「違うよ、私は長谷川君と同じ四組。数原君たちは五組でしょ」

「その通りです」

 終始にこやかな笑顔を見せる数原が発目美優の発言に肯定する。

「そしたら早めに切り上げてお見舞いにでも行こうかな」

 部長の発言に全員が賛成した。

「そんじゃ、今日のお題はこれよ!」

 バンと後ろのホワイトボードを叩く。その一番上には『この学校の良いところを教えてください』と書かれていた。

「それじゃ三分間シンキングタイムね」

 そう告げると部長は自分の席に座って用意していた紙を配る。部活のあった日に何をしたかの記録を残すためにみんなにも自分の意見をそこに書くように指示する。そして三分間思い思いにその紙を使って意見を考える。


「よし、三分経ったわね。それじゃ誰から言う?」

「はい!」

 部長からの声に一番最初に反応したのは美優だった。彼女は部長に指名されると席を立って大きな声ではっきりと答えた。

「この学校の良いところは面白い友人がいる所です!」

 美優の意見に部長以外の全員が頷く。面白い友人筆頭の部長は誰のことかしらと首を傾げていた。

「クラスにも面白い子はいるけど、やっぱり一番は部長ですね! なんてったってこんな部活を作っちゃうんですから!」

 部長はまさか自分とは思わず驚く。そんな部長のリアクションを知ってか知らずかそのまま続ける。

「この部活は正直変な部活ですけど、授業では教わらないけど将来のためになる経験が出来る良い部活だと思います! だから私はこの学校の良いところとして面白い友人がいることを主張します!」

 美優が満足そうにお辞儀をしてから席に着く。面白い友人と言われた部長が最初に質問する。

「……面白い部活じゃなくて、面白い友人なの?」

「はい! 他にもクラスに芸人を目指すって言って漫才を本気で取り組んでいる子がいるのでそっちの方が良いかなって」

「へぇー、そういう子もいるんだ」

 ちょっと会ってみたいかもと小声で感想を漏らす。次いで衣笠がツッコミを入れる。

「それは人によりけりじゃね? 来年の新入生は至って普通の子しかいないかもしれないだろ?」

「でも、もしも今年のパンフレットに書くとしたら、まだ部長はいるわけだし嘘にはならないでしょ?」

 発目の意外な着目点に衣笠が驚く。彼女は今言ったように、今の中学三年生にこの学校に行きたいなと思えるようなコピーを考えていたのだ。良さを伝えるターゲットまで細かく設定していたのである。

「中々良い発想ね、美優ちゃん」

 部長からの賛辞にありがとうございますと笑顔と大声で返す。

「さて、次は誰かしら?」

 発目の意見が中々良かったので次に意見を出しづらい雰囲気だったが、長谷川が静かに右手を上げる。発目の後の発表なのでいつもよりも立つ動作などがさらに静かに感じられる。

「俺の意見は教師がしっかりしている点です。有名な大学の卒業生の方もいますし、何より授業が終わった後に質問しに行っても嫌な顔をせずにしっかりとこちらが理解できるまで付き合ってくださる先生がいる点を俺は挙げます」

 コンパクトにまとめた意見を述べるとそそくさと座る。衣笠がその動作を怪しいとみてすぐに質問する。

「本当にそんな教師がいたのか?」

「……、も、黙秘権を行使する」

「おいおいおい」

 衣笠がさらに追及しようとするが、部長がそれを制する。そして優しい声で長谷川に問いかける。

「長谷川くん、ちなみに実際のところは?」

「……思いつかなかったので適当に言いました」

 衣笠が呆れて両手を広げる。美優は可哀そうな視線を長谷川に送る。数原は特に気にしてはいなかった。

「ツーアウトね」

「えっ?」

 部長の予想外な言葉に長谷川だけでなく全員が驚く。

「学校の良いところを見つけ出せないのがまずワンアウト。自分が今置かれている環境に関して、何の興味も抱いていない事になるわ。そんな無関心人間と仲良くやっていきたいと思う?」

 部長から厳しめの言葉をもらって萎縮しながらも、長谷川は首を横に振る。

「さらに嘘をつくなら徹底的に嘘とわからないようにしなさい。衣笠君の質問に対して何も答えないのがツーアウト。本当の就職での面接なら相手は実際の学校のことなんてわからないんだから、相手を最後まで騙そうとしなさい」

 部長からの騙すという発言に驚き、長谷川は思わず席を立って反論してしまった。

「騙すなんてそんな卑怯なことしたくありません!」

「じゃあそんな卑怯なことをしなくても良いように、意見をきっちり出せるようにこれから頑張ってね」

 最後に部長の伝えたかった部分を聞いて、長谷川は脱力して席に座りながらはいと返事をする。

「それじゃ次はどっち行く?」

 部長はまだ意見を言っていない二人を見る。衣笠がそれに応える。

「じゃあオレだ。正直オレも長谷川と同じで良いところがあまり思いつかなかったが、オレは図書室が良いところだと思う」

 初対面で誰もが不良っぽいと思う見た目の衣笠の口から図書室のワードが出てきたことに全員が驚く。

「何と言っても冷暖房完備なのが素晴らしい! 教室には付けられていないから昼休みはここで過ごすことを勧める! 静かだから昼寝にもうってつけだしな!」

 理由を聞いて誰もが『あ、いつもの衣笠だ』と納得した。衣笠はそれだけだとあっさりと意見を言い終えて着席する。これまで静観していた数原がツッコミを入れる。

「その提案は発目くんの設定でいくと逆効果だと思いますよ。それに図書室を推すなら蔵書数とかを数値で具体的に出さないと……」

「わかってるよ! だから発目の意見を聞いた時にもう心の中でダメだって思ってたよ! 観念するから質問はなしにしてくれ!」

 衣笠が数原に対して両手を合わせて頭を下げる。部長は潔さは認めるけど少しは粘ろうよと言いつつ、次の数原の意見を聞き出す。

「僕の意見は学校行事が楽しい点ですね。文化祭や合唱祭に限らず、球技大会に百人一首大会もあり非常に楽しく学校生活を送れると思います」

 数原が淡々と説明して座る。何か質問はありますかと問いかけると衣笠が質問する。

「それこそやる奴のやる気次第だろ。百人一首大会が楽しいとは普通思わないだろ?」

「でも他ではない行事だとは思いませんか?」

 まあ確かに珍しさはあるけどと衣笠は納得しかけている様子だった。他には特に質問がなさそうなので部長が最後に意見を発表する。

「私のは美優ちゃんや数原君に近いわね。生徒が自主的に活動できる点がこの学校の良いところよ」

 部長が自信満々に意見を発表していく。

「まずこの部活が何よりの証拠、私がこういう部活を作りたいと言ったら特に問題なく受諾されたわ。それから文化祭とかも生徒の自主性を高めるために担任の先生はあまり関わらないようになってるの。だから自分のアイディアややる気がそのまま反映されるから、何かをやりたい人にとっては最高の環境だと思います!」

 部長にしては珍しく熱意のある発表だなと全員が思わされる発表だった。

 特に質問が出なかったので部長が票数を取る。部長の意見に五票すべてが揃った。

「発目の意見と数原の意見を合わせると部長の意見になるって感じだったな」

 衣笠が冷静に分析を始める。それに続けて部長が今回の議題の裏の目的を話し始めた。

「意見に関してはそうね。ただ今回は単純に意見の良し悪し以外の所も見ていたのよ」

 部長の次の発言に全員が注目する。

「学校の良いところだから、かなり主観的な意見が入っても良いのよ。だってその学校に通っているのはみんななんだから。だからこそ熱意をもって発表する必要があったのよ。それをクリアしてたのは美優ちゃんくらいね」

 美優が思いがけずまた褒められたので照れる。他の三人は美優だけ褒めていた理由が他に会ったことに驚きを隠せなかった。

「これは実際に就活の面接で私のお兄ちゃんが経験した話だから、男子三人はその辺りをもっと考えて発表しましょう。特に数原君、時には大きな声を出すのも大事って覚えておきなさい」

 名指しで注意されて少し数原はひやっとする。しかし表情には決して出さずに肝に銘じておきますと答えた。

「うん、それじゃ統括は終わり。綾ちゃんのお見舞いに行くわよ!」

 部長がみんなから紙を集めながら、早く行くから支度しなさいと指示を出す。

この質問は就活中に実際にあった質問です。就活中の皆さんは頑張ってくださいね。

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