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16.私の記憶・・・

ピッ・・・ピッ・・・


 なんか懐かしい機械音。

 薄ぼんやりと、白い天井が、視界に入った。見たいわけではないが、動かす事が出来ないので、仕方ない。いつもは意識をしないでも動く筈の瞼が動かない、意識をしないと動かないもののなのかなぁと思うほどだ。


 なんとか開いた瞼が、とても重くて開いているのが大変で・・・もう・・・閉じてしまう。


 次第に狭まる視界の中に飛び込んできたのは、旦那様。・・・何か言っている。ごめんね、何を言っているのか、聞こえないよ・・・もう、瞼が重いの。---ちょっと寝てからで良いかな?とっても近くに居るのに、大きな声を出している様な感じの旦那がチョット可笑しくて、少し笑ってしまった。


 ・・・何かを伝えようと頑張っているのに、笑っちゃった。今は・・・寝ます。ごめんね、聞いてあげられなくて---。










 ---ごめんね。って、ポロリと涙が溢れていった。



 頬を伝う雫が流れ落ちるのを、感じて目が覚めた。


 頬を触れると、濡れていた。・・・私、泣いていた?


 遠い記憶の彼方にあった、ほんの僅かな一室に居た時の夢を見た---それは旦那様との最後の瞬間だったと・・・思う。

 今更だけど、ちゃんと聞いておけば良かったかな。

 でも、あんなに必死で声かけてくれたのに聞こえないなんて、耳がもうダメだったって事かなぁ?


 口の動きを思い出し、声を・・・何を伝えたかったのか、想像するが、上手くいかない。


 しばらく目を閉じて、イメージを膨らませていたが、睡魔に襲われ眠りについた。


 あれ程、これは夢だと思っていたこの世界が現実で・・・現実だと思っていたのが遠い昔の記憶だった。---今ならあれは夢なのだとわかるのだけど・・・なんで会えないに覚えているの・・・。


 最後の記憶は、病院の一室だった・・・真っ白い部屋、視界の端に見えていた点滴、白い服の人達・・・旦那様の後ろには、そんな人達が居た。・・・子供達は居なかったなぁ---学校の時間だった?


 会いたかった・・・でも、旦那様はしっかりしているし、子供達もそれなりにやるだろう・・・。あんまり心配はしていないんだよね。心配とか、そういうのではなくて・・・会いたいよぉ。



 馬車が倒れてくる時に、脳裏をよぎったのはアルミの塊・・・箱馬車は木でできている、なのにアルミの箱が倒れてくる映像が重なったのだ---。

 ---あの時、私は交差点に立っていた。丁度信号待ちをしていたと思う。信号が変わる直前にスピードを出して右折してきたアルミトラックが横転して・・・巻き込まれたのだと・・・思う。

 アルミの壁が・・・私に向かい倒れ掛かってきた映像が・・・箱馬車と重なって見えたのだ。


 ---記憶が混ざった事により、倒れ来るアルミトラックの壁が・・・私に迫ってきて見えたのだ。その所為で気を失ったというところなのだろう。


 ---怪我は・・・してないと思う。


 ・・・うん、私は大丈夫だ。ただ、予感はしていたのだが、やはりこれが現実だったという焦燥感が襲う。現実を受け入れた事により、ぽっかりと胸に穴が開いてしまったのか・・・寂しい気持ちが---。


 ぽろぽろ・・・と、頬を伝う涙が勝手に落ちてきていた。ごしごしと頬を拭うが、涙はどうすれば止まったんだっけ?何を考えたらとまるのかな・・・。


 ---どうしよう、とまらない。


 枕に顔を押し当てて、私はギュッと体を丸めて、何もかもが小さくなるように、枕と共に小さく小さく丸くなった・・・。








「---・・・キャ・・・ンさま・・・キャロライン様」


 ----・・・??呼んでいる・・・?私のことかな・・・。


 ボーっとする、なにも・・・かんがえたくなくて、なにもせずに、ただズーッとこのままでいたかった。でも・・・だれが・・・よんでいるのかな。


「キャロライン様・・・」


 なんで、---そんなこえでよばないで・・・。もう、なにもしたくないの---・・・に。


「一緒に、本を読みましょう。---スミス先生も待っています。----・・・僕も待っています」


 ---??このこえは・・・だれだっけ?


 なんでそんな泣きそうな声なの?---そんな声で話しかけないで欲しいなぁ。・・・寝ていたのに。




「---キャロライン様、起きて私達の話を聞いてください」

「・・・キャロライン様、何か面白い事をしましょう」

「キャロライン様~、最近デートがつまらないのです、何とかしてください」



 ---・・・って、おいおいおい!何とかって、デートの事なんて知らんよ。

 ・・・メイド3人組か?最後の声はエリーだな。私の事をなんだと思っているんだ・・・3歳児だぞ。恋愛の助言求めるって・・・なんなんだ。



「「「---・・・キャロラインさまぁ--っ」」」


 何・・・どうしたの?


 真っ暗闇で丸くなっていた体を動かして・・・遠くに見える光に手を伸ばす---。何かに届いたかなぁ・・・あまりにも眩しくて・・・目を細めた。


 ---あれ・・・何か言っているね・・・フォードおにいちゃまかな?---メイドさん達も見えるね。


「---・・・まぶし・・いよぉ・・・」


 突然、バタバタと人が動く気配がして、カーテンが勢いよく「シャシャーッ!!」と閉められていく音がする。


 あれ、皆様子が変だね・・・どうしたのかなぁ。朝だから起こしに来たにしては変だね。


 私は、眼を恐る恐る開ける。


「---どうしたの?・・・みんな何かあったの?」


 私の周りには、いつものとおりではないメイドさん達と・・・フォードおにいちゃまの姿があった。


 何!?・・・フォードおにいちゃま、メイドさん達、泣き笑い?半分泣いています??


「---僕!旦那様を呼んできます!!」


 グイッと袖で涙を拭き、大きな声でそう言うと部屋を飛び出して行った。


 ・・・一体何があったのだ?!袖で顔を拭くなんて始めてみたよ。


 メイドさん達はしきりに「良かったです」「安心しました」「---どうなることかと」と言って、三人が抱き合いながら涙を流していた。


 ・・・ほんと、どうしたんでしょうね??





「バターン!!」

 と大きな音共に飛び込んで来たお父様・・・少し遅れてギル様。

 お父様は、ハアァハアァと息を切らしていた。


 もしかして走ってきたの?・・・そんな息切らして、運動不足ではないかな?ギル様そんなに息切らしてないよ?---もしかして以外に高年齢なの?と見当違いな事を考えながら、ぎゅうぎゅうと腕に思いっきり力を入れて抱きしめてくるお父様にそう思った。


 そんなに、縋り付いて涙流さないでもいいんじゃないかな?!ホント何があったのか・・・。ギル様も目に涙を浮かべているのか、ハンカチで目元を抑えている・・・。


「---良かった。ほんとうに良かったよぉ・・・」


 って、しきりに言っていた。


 その後にお母様とフォードおにいちゃまが入ってきて、やっぱりお母様にぎゅうぎゅうと抱きしめられた。




 ---ホントに!何があったの!!


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