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15.初めてのお買い物

「---お兄様ってどんな感じなの??ほとんど覚えてない---あと、あのレッドって人・・・??」


 メイド3人組みに身支度を整えてもらっいながら、お兄様についての情報収集をすることにした。

 ---知らないと対応に困るじゃん、いろいろと。


「カインセミュー様は、旦那様にそっくりなのです。---レッド様は、カイン様のお友達として数日他滞在予定です」


 ・・・ふ~ん。そうなんだ。---でもお父様にそっくりってなんだ。何がそっくりなのか全然わからないよ。見た目に顔つきと目色が同じくらいだな。髪の色はお母様似で、私と同じ銀髪だから。


「---どこのあたりが、そっくりなの??」


「そうでね~、お仕事をしている旦那様とお勉強中のカイン様のお姿や、性格も似ていらっしゃると思います。一番分かり易いのは、お嬢様が大好きで、同じ人物ですか?と聞きたくなるくらい、態度が変わる事とか・・・ですね」


 ---・・・えー、それって残念情報じゃない?!確かにお父様のお仕事中の姿は素敵だ。ギルベルトさんとのツーショットは、とても絵になる。私はいつまでも眺めていてもいいと思うくらいに!!


 ・・・おっと、わたしの残念具合がでてしまったが、お父様の私に対するデレ加減は結構凄いと思う。とりあえず、恥ずかしのでやめたいのだが、朝の挨拶は通常モードで日課となっている。・・・あれをし忘れて執務室に行くと、真っ暗なオーラを纏ったお父様と遭遇する事になり、膝に乗せられお菓子を食べさせられるという、苦行を行う嵌めになるのだ。

 ・・・あのキラキラが、目の前に迫って『はい、あーんして!』とか、どこのバカップルだよ。しかも、ギルベルトさんや、フォードおにいちゃま、スミス先生に見られながら・・・ほんとやめて欲しい!!


 ・・・あれと似ているですと?!


 訝しげな顔で、情報元のアンリを見ると、考え込みながら口を開いた。


「う~ん、そうでねぇ・・・膝に乗せてお菓子を食べってよくおっしゃっていましたし、お嬢様のホッペにチューとか、髪型に拘るとか、可愛いものを買ってくるとか・・・洋服選ぶとか、色々ですよ?---覚えていらっしゃらないのですか??」


 ---・・・覚えておりませんとも!幼児は覚える事が沢山あるから忘れたんだよ!!きっと・・・そういう事にしておいてよ。


 そうか、たまに会いに来ては、過剰な愛情表現してきた訳だな・・・ふむふむ。


「---『レッド』様ですが、カイン様のご学友としか聞いておりません。殿下に似ているが、別人だと聞いております・・・」


 なんと!!別人設定とは!?・・・そうか、王子も大変なんだなぁって趣味なのかな?---仮の姿設定の付き合わされるお兄様・・・なんてお可哀相なの~。なんて、そんなメンドクサイのと付き合わないといけないなんて大変だね~。


 くくくっ・・・レッドだもんね~お兄様も仮の姿設定すればいいのに!!そう思うと楽しい~私の今日のカラーはピンク!!ピンクちゃんなのだよ。戦隊ものには、ピンクは必要だからね。





「---おにいさまぁ」

 カインセミュー・・・もうメンドクサイから、カインお兄様でいいか。足元まで、とててて・・・と小走りに走りより、ギュッと洋服を掴む。---それはもう、大好きだから一緒にいてね?的な眼差しで。


 アンリに連れられて、私は玄関の外ポーチまでやって来た。もちろん馬車に乗る為だ。


 馬車の近くには、フォードおにいちゃまも居たのだが、・・・今回は我慢した。本物のお兄様を優先したのだ。

 私は出来る子なんだぞ!ちゃんと空気を読んだんだ!・・・ここでフォードおにいちゃまに駆け寄ったら、馬車の中が微妙な空気になって、カインお兄様に睨まれるフォードおにいちゃまが可哀想だ!!


 ---だから、ごめんねフォードおにいちゃま。忘れてないよ・・・巻き込んでごめんなさい。



 さて、外出メンバーは、私、レッド・・・ぷぷっ。カインお兄様、フォードおにいちゃま。スミスおじいちゃま、護衛の人数名です。まぁ、御者もしないといけないし、レッドもいるからね~。


 楽しみにしていた馬車が到着!!レトロな木製の箱馬車だ!!---私の感覚でレトロなイメージなんだけどね。お兄様とかはレトロじゃないと思う。だって、王子様乗るんだから・・・最新型のニューモデルに違いない!!


 馬車の中では、護衛の人以外が乗り込んで座る事になった。


 ---何故か、私はカインお兄様の膝の上。・・・この馬車狭くないよ。大人一人しか乗ってないから私の座る場所あるのに、なんでこの位置なの!


 と抗議したいところなんだが、アンリ情報を聞いてしまったので断れなかった。・・・目の前には、一口サイズのお菓子を持ったカインお兄様。


 ---いや~本当にやめてください!!精神年齢高いので、ホント無理です。全員の視線が私に向いている中で・・・やめて。


 ガリガリと精神が削られていく中・・・一口。食べないと終わらないこの苦痛・・・一口は食べたので、誰か助けて下さい。


「---私にもやらせろ」

 って、オイオイ!空気よめよ。馬鹿レッド!!---お菓子を指先で摘み、私の口元に運ぶ。---だから~やめろって言っているだろ!!・・・って声に出してないから言ってないね。


 プイっと、そっぽを向いたら、フォードおにいちゃまと眼が合った。

 お父様との遣り取りを知っているだけあって驚いてはいないが・・・その後、書庫でクデ~ンと魂の抜けた状態で机にうつ伏して、暫く現実逃避している私を見ているので、気の毒そうな顔をしていた。


 スミスおじいちゃまは、困ったのぉ・・・と本当におじいちゃんモードだった。


 く~う・・・カインお兄様には負けたけど、レッドのお菓子は食べなかったよ!!私勝った!!


 ・・・レッドは、苦虫をつぶしたような顔していたけど、私は知らんもんね~。ひょっとこ出のお子様になびく程軽い女じゃないのだよ~それが、王子だとしてもな!!・・・お兄様が、お菓子を絶対に食べようとしない私を見て、終始にこやかだった。


 ---・・・うん、見なかった事にしようかな。






 そんなこんなをしていたら、目的地の雑貨屋さんについたようだ。・・・全く朝の会話を聞いていなかった私は、何をしに来たのか分からない状態だった。なんて事はない、ただの王子の我がままだ。


 自分で店に行って、買い物したかったんだって~。お金を持って行って、支払ってみたかったと・・・なんだよ、初めてのお使いか?!---いや、自分の物を買うのだから、初めての買い物だな。


 ・・・何事も勉強だって、スミスおじいちゃまが言っていたけど・・・そうか、いいとこの坊ちゃんは、買い物は自分で行かないよね。金額も気にした事ないのかもしれないね・・・。自分で稼ぐとかも経験すればいいのにねっ!!



 お店の中には、いろいろ雑貨やアクセサリーなどが置いてあった。お兄様たちは、文房具に夢中だ。剣の形をしたペーパーナイフや、色とりどりの羽ペン。カラフルなインク、あとは、いろいろな石・・・水晶とかの原石だ。


 うん・・・キラキラきれいだね。


 紫、白、黄、黒の水晶や天然石の原石のままのものが置いてある。窓辺に置いたら光が反射してきれいだよね~。金色のやらマーブル模様やらいろいろ。


 ??石に何かついているね?

 指先で、そおっと取る。これは針金かな?切れ端みたいだけど?くっついていた?


 もう一度、そおっ~と、黒い菱形の結晶が付いた天然石に近づけてみる。


 ・・・ピッとくっついたよね。大発見だよ!これ欲しい!・・・後、この針金の長い物ないかな?


 私の後ろでカバンやノートを見ているフォードおにいちゃまの洋服を、チョンチョンと引っ張る。


「おにいちゃま、これと同じので作ったものある?これの長いのでもいいんだけど?!」



 少し首を傾げ、考えていたみたいだけど、思い当たらなかったみたいで、店の店主に聞きに行ってくれた。


 私が、フォードおにいちゃまに何かお願いしたのに気がついたカインお兄様がやってきた。

「何か気に入った物があったら、私に言うんだよ」


 私の目線まで腰を落として聞いてくれた。


 お~、メイドさん情報間違いなさそう。ちゃんと私の話聞いてくれるんだね!


 でも、私もお小遣い持っているんだよ~。ジルがちゃんと持たせてくれたのだ『おみやげ楽しみにしています』と・・・。3歳児に頼むの?と変な顔してしまったけど、私は悪くない!


 お金の数え方も習ったし大丈夫。お小遣いでも買えるよ。


「・・・うん、ありがとう」

 了承ともとれる返事をしておく。そして再び周りをキョロキョロ・・・ある物が視界に入ってきた。



 ---あれ、これピアノじゃん。・・・おもちゃの。かわいい~。


 触っても大丈夫かな?


 おそるおそる指を伸ばして、ポオォ~ン。

 おもちゃだけど、良い音しているね。


「気に入ったの?」


 お兄様---まだ居たの?・・・おおっと、顔に出るところだった。


「うん、可愛いよね・・・」


 ほんと、可愛い。ピアノはちょっと弾きたいかも。---いや、練習嫌いだったから、下手なんだけど、近くにないと弾きたく物なのだ。これは小さなテーブルに乗るサイズのピアノだけど、音を楽しむには丁度良い。



 ポ~ン・・・ポポ~ン・・・と音を鳴らし楽しんでいたら、お兄様達の買い物が終わったようだ。おっと私のリクエストあったかなぁ・・・。


 皆が思い思いの物を手にしているのだが、フォードおにいちゃまはまだ店主とお話中。私がそおっと、傍に近づくとニッコリと私に視線を向けて微笑んでくれた。


「---・・・見つかりましたよ。こちらで良いですか?加工前の材料だそうですけど」


 テーブルの上に載った細い針金を見せてくれた。


 ---どうだろう??・・・ビンゴ!!あたりだよね~。


 私は、手にしていた菱形の黒い天然石に近づけてみると引き寄せられるような感覚があった。


 幾つか太さが違う物があったので、簡単に曲がり過ぎない・・・でも手で曲がりそうな針金を数種類購入する事にした。あと、この黒い菱形の結晶が付いた天然石を・・・購入する事にした。






 私たちは、店を出て馬車に戻る事にした。私たちの乗ってきた馬車は、店の前に私たちを降ろした後、馬車や馬が待つ駐車場のような場所があり、そこで待っているのでそこまで歩く事になった。

 私やお兄様、レッドはキョロキョロしている。・・・一番キョロキョロしていたのは、レッドだけどね。お兄様に手を引かれながら私は歩いていたのだけれど、曲がり角に差し掛かった時・・・走り去った男の人にぶつかって、私は歩道から馬車が走る道に体勢を崩した。


 ---あっ。


 と思った時には、お兄様の手が離れ・・・私の伸ばした指先がお兄様の握っていた手を掴もうと腕を伸ばしていた。


 ---空を掴んだ。耳には、迫る馬車のガラガラという車輪の音---。慌てた御者が馬の手綱を引き方向を変えた・・・が、バランスを崩した馬車の車体が私のほうに傾いてきた---。


「------・・・・!!!」


 傾いた車体は、そのまま私を押しつぶすかと思われたが、店の壁に支えられ、辛うじて転倒を免れたようだった。


 ------・・・いやだ、わたしは---死にたくない。---銀色の壁が傾いてくる・・・イメージが頭の中に浮かんだ。


「----いややゃあぁ~っ!!」


 ペタリ・・・と座り込んだ私は、傾いた車体を見上げながら・・・叫んでいた。

 ---どこか遠くで大きな声が聞こえるなぁって思っいたら、最初は私の叫び声だった。・・・そして、フォードおにいちゃまやお兄様、・・・レッドとかスミスさんとか・・・あとは多分知らない人達の声も混ざっているなぁ・・・なんて、思っていたら---視界がぼんやりとして、そのまま白だか黒だかわからないけど・・何も考える事が出来なくなった。




評価していただいてありがとうございます。しかも高評価!!びっくりしてます!!

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