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流星のプラネタリア  作者: 嶋里 和人
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二章 第七話

掲げた右手に呼ばれるように弥生の後方空中に大小五つの魔法陣が出現する。

それらは美しい円を描きながら回転し、徐々に弧を小さくしていく。

「落下速度及び落下地点の演算完了。魔力収束、陣の形成率安定域」

円から列へ。五つの陣が小さいものから順に並び、一つの砲塔を形作る。

「行ってください!」

弥生が右手を前へ下ろす。瞬間翠緑の閃光が走り一直線に空を駆ける。

怒れる羊の突進が空中で朦朧とする司へ向かう。

弥生は勝利を確信した。

雄羊の角が司を貫こうとしたその時だった。

「映せ、創世の天鏡(ポリマルト・ミラー)!」

弥生でもなく、司でもなく、ましてや睦月の声でもない。どこからか新たな声が響く。

それと同時に司の前に立ち塞がるものがあった。

巨大な鏡。楕円形の鏡面は一切の穢れがなく、豪奢な縁が鏡を飾る。二枚の清廉な翼を持ち、祈導の羊角に相対する。

「その鏡が何かは知りませんが、このまま貫かせてもらいます!」

しかし弥生の思う通りにはならなかった。

鏡は迫り来る光線を鏡面に映した途端に「祈導の羊角アジテーション・ホーン」を放った。

「どうして祈導の羊角が!?」

2つの祈導の羊角が衝突する。その凄まじい衝撃は辺り一帯を震えさせた。

焦りと驚きで弥生の意識が乱れたその一瞬に鏡の「祈導の羊角」が弥生の「祈導の羊角」を押し返す。

両者の真ん中で二匹の羊が激しくぶつかり合う。しかしどちらが押し切ることもなく、押し切られることもない。完全な拮抗状態だった。

「このっ……真似しないでください!」

右腕に並べるように左腕も前に突き出し、魔法陣へ魔力供給を増加させる。

それに呼応して緑光が膨れ、鏡の祈導の羊角を喰らい、あと一歩の所まで押し進めた。

しかし二度目の驚愕が弥生を襲う。

わずかに耐えた鏡の祈導の羊角。その光の強さが確実に増していた。

「そんな、どうして!」

この鏡の能力は相手の技をコピーして使う、というものでしょうか。それなら神使の黄金羊(ハマル・アリエス)で直接叩けば……。いえ、今「祈導の羊角」を止めれば周囲に被害が出てしまいます。このまま押し切るしか……。

しかしもう弥生にはあまり魔力は残っていなかった。瞬間的に一気に魔力を放出した反動もあり、弥生の体には異常なストレスがかかっていた。

だんだんと祈導の羊角の光が弱く、細く、輝きを失っていく。鏡の祈導の羊角も同様に細くなっていくが、弥生の意識はそれにすら気がつけないほどに沈みかけていた。

「このままじゃ睦月君が……」

私が倒れれば次は睦月君が狙われる。そうなるとまだ力のない睦月君では一瞬で……。

負けるわけにはいかないんです。

体が今にも倒れそうなほどぐらつくが、何とか右足を一歩踏み込むことで踏みとどまる。

「まだやれます、まだ戦えます!だからまだーーー」

視界が揺らぎ、焦点が合わなくなる。

「今度は、私の番なのに……」

ぷつん、と弥生の意識が途切れた。まるで魂のない人形のように、膝をつき、ゆっくりと崩れ落ちる。

体が地面に倒れる前に誰かが弥生の体を支えたが、弥生には知覚することはできなかった。

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