二章 第三話
「も、もう一度聞いてもいいかな?」
「だから、その、私たちが付き合っていることになってまして……」
だから放課後も俺の様子を見に来る奴らがいたのか。
睦月は心配していた。それは睦月自身のことではなく、弥生のことだった。明日からも弥生が好奇の目に晒され、嫌な思いをするのではないかと。
「困ったことになったね。一体どうすれば……」
「そ、そうですよね。困りますよね……私と付き合ってるなんて」
「え?いやそうじゃなくて!栢橋さんみたいな可愛い人にそんなスキャンダルみたいなことがあったら大変だなって思ったんだけど……」
「か、可愛い!?そそそんな私なんて可愛くないでしゅよ!」
「……そういう所が、可愛いなって」
俺は急に何を言っているんだ?
「いえ!私なんか睦月君と釣り合いませんから!あ!か、かっこいいということですよ!?」
「その……ありがとう」
「あ、はい……こちらこそ……」
気まずい。互いが互いにフォローし合い、褒め合って、後から自分が言ったことを恥ずかしがって。
顏が熱くなっているのがはっきり分かる。
「と、とりあえず帰ろうか。栢橋さん」
「そ、そうですね!帰りましょうか!」
目を合わせることができない。唯一できるのは歩調を合わせることくらい。まだ少し顔の火照りを感じる。どうしたものか……。
「あ、あの睦月君。今日はこの後時間ありますか?」
上目遣い気味に弥生が尋ねる。その表情に睦月の鼓動が高鳴る。
「大丈夫だけど、どうかした?」
「は、はい。大事なお話があるので、私の家に来てくれませんか?」
「いきなり!?ちょっと早すぎないかな……?」
「……だめですか?」
「喜んで行かせてもらいます」
可愛さには勝てませんでした。